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中村哲『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』(聞き手 澤地久枝)より(14)

 今日は、全国で三万人を超える感染者数で、過去最多とのこと。
 なかでも、大阪がひどい。
 しばらく、過去最多が続くのだろう。

 今日、明日は、飲食店のアルバイトは昼間のシフト。
 来週は、夕方からラストまでのシフトもある。

 神奈川県にあるお店なので、21日から、まん延防止等重点措置により時短になるのだろう。

 それにしても、昨日申請が出ているのに、今日には確定できず、なぜ明日まで正式決定が遅れるのだろう。

 さまざまな“調整”があるのかもしれないが、飲食店に勤める者にとっては、営業時間変更の案内を作成するとか、時短によるシフトの変更など、やるべきことは多い。

 早く決めてもらわなくては、結局、現場にしわ寄せがくるのである。

 なかなか決められない人が多いなか、そうじゃなかった方のことを考えることにしよう。

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『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』

 『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』の副題は「アフガンとの約束」となっている。

 澤地さんが中村さんの活動を支援したいと思い、中村さんに会って本を出そうと考え、ようやく2008年と2009年に実現した対談を元にした本。
 2010年に岩波から単行本が刊行され、昨年9月に岩波現代文庫で再刊された。
 十四回目。

 目次をご紹介。
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はじめに
Ⅰ 高山と虫に魅せられて
Ⅱ アフガニスタン、命の水路
Ⅲ パシュトゥンの村々
Ⅳ やすらぎと喜び
あとがき 澤地久枝
あとがきに添えて 中村哲
岩波現代文庫版あとがき 澤地久枝
[現地スタッフからの便り1] ジア ウルラフマン
[現地スタッフからの便り2] ハッジ デラワルハーン
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 第四章「やすらぎと喜び」から。

 今回は、この章冒頭の澤地さんの文章のみご紹介。

 中村医師が己を語ろうとしないのは、自慢話は死ぬほど嫌であることのほか、苦労や愚痴は言ってどうなるものか、という誇りもしくはあきらめあってのものと思える。
 死の危険に幾度も直面し、しかしその瞬間、これで楽になれるという思いがひらめいたという。それだけ、生きていいれば逃れられない重い荷物を背負っているのだ。アフガンとの約束は容易ならない。
 誇り高く、伝統文化をしっかり守って生きてきたアフガニスタン人の周辺には、この二十数年、国際援助の名のもとに「巨額」の現金が寄せられた。一部の人は、それで「富貴の夢」をみたし、忘れられている貧しい人々との格差は絶望的なものになった。
 この「新」風潮は、古風なアフガンの人たちすべてを捲きこまずにはいなかったのではないか。人には欲望があり、他人よりわずかでも豊かであることを「幸福」を思う。利にさとくなる一面が生まれることも、避けがたかろう。三千メートル以上の孤立した山岳の村は、大統領選挙の投票に参加する機会さえとざされているように思えるが、一様ではないとしても、アフガン気質にさまざまな変化があるのは自然であろう。

 国際機関や国からの“金”による支援のもたらすものは、必ずしも貧しい人のもとに届くとは限らない。
 そして、その金をめぐって、中村医師にも、無理な注文があった。

 用水路保全のために設けられた池には、生きものがもどってきているが、そこを養魚場にしたいという米軍がらみの要望がアフガン人から寄せられたことがある。用水路は建設の途中であり、洪水への対応、冬の川の水位低下にそなえる緩衝地として、試行錯誤の上で作り得た「池」である。
 これは話し合いでことわったという。個々の問題にペシャワール会の日本人職員が分業で交渉にあたり、中村医師は全体状況の把握と判断ののちに方針を決めてきた。心中あだやかではないような勝手な申し出にふつかっても、決然とした方針と姿勢をつらぬき、あとはこだわっていない。

 決然とした方針と姿勢をつらぬきーという部分、日本の政治家や自治体の長に聞かせたい科白だ。

 水路建設という現場での指導のみならず、さまざまな阻害要因を解消するためにも、中村医師は現地にいる必要があった、ということなのだろう。

 ドクター・サーブ。つまり「お医者さま」と特別の敬称で呼ばれる医師は、休むことなく、現地の水路建設現場や農場で働く日本人ボランティアと、現地人スタッフを中心に、アフガン人の労働力を得て事業をすすめてきていた。
 資金は、ペシャワール会会員の会費と人々の寄付。
 クリスチャンにして、現地での二十五年間にボランティア活動、妻子とは別居ーと書くと、かた苦しく生真面目な人、笑うこともない人を思い浮かべるかも知れない。
 喜びがない仕事は、長くつづかない。人を信じられなくては、異国の地にとどまることなどできはしない。中村医師は「わが歳月」を思い、人は愛するに足るものであり、真心は信じるに足ると考える境地を生きている。そして、もちろん、「趣味とよろこび」のある生活ー。

 本書の題名が、登場した。

 次回は、中村医師の趣味などについて、ご紹介したい。


 あらためて、澤地さんが中村医師のことを形容した、“決然とした方針と姿勢をつらぬく”という言葉について。

 リーダーたる者が、強固な信頼関係のもとに多くの人々の協力を得て、困難な目的を達するには、まさに、決然とした方針と姿勢をつらぬくことが求められる。

 人の話を聞くことも重要だが、それは、決然とした方針と姿勢をつらぬくことにつながらなくては意味がない。
 

 はたして、オミクロン株による感染拡大中の今、根拠ある基準をもとに決然たる方針と姿勢をつらぬいている人が、いったいどれだけいるだろうか。

 たとえば、大阪府吉村知事の今回の対応の遅れは、犯罪的でもある。
 今日の感染者数は5000人を超える過去最多で、なんと東京をも上回っている。

 すでに、医療崩壊に近い状況にあったにも関わらず、首都圏、中部圏が動き出して初めて、重い腰を上げる始末。

 そして、沖縄や広島、山口などで三連休での成人式を中止していることなど度外視し、大阪では大規模会場で大勢が参加する成人式が開催され、松井市長自身も出席していた。

 大阪府の成人式では感染者も確認されている。

 中村医師の爪の垢を煎じて飲ませたい人は永田町に大勢いるが、今もっとも多いのは、大阪の維新陣営かもしれない。

中村哲『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』(聞き手 澤地久枝)より(14)_e0337777_19335607.jpg


 今日は旧暦十二月十六日の満月。

 そんな月も、あまり楽しくは眺められないのが正直なところだ。
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by kogotokoubei | 2022-01-18 19:27 | 今週の一冊、あるいは二冊。 | Trackback | Comments(0)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛
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