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中村哲『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』(聞き手 澤地久枝)より(1)

 昨夜のバイトは、締めの作業でパソコンがトラブル。
 なんとか回復したが、帰宅が遅くなった。

 今日も夕方からラストまでで、今年のバイトはお開き。
 会社は金曜が私の最終出勤日。
 土曜に北海道の実家に帰省し、日曜が父の四十九日法要と納骨だ。


 維新の松井大阪市長は、カジノに税金は使わないと大見得を切っていたが、案の定、誘致先の土壌汚染対策に800億円を市が負担することを決めた。

 挙句の果てに、その費用には一般会計からではなく特別会計からの借金をあて、その返済は用地売却・貸付の収入をあてるから、税金投入ではない、といつもの詭弁。
 今弾いている経済効果なるものは、まさに机上の空論で、結局、市民の税金がさまざまな補填に使われることは目に見えている。

 れいわの大石あきこ衆院議員が情報公開請求したら、肝腎の金額部分は黒塗りだったとのこと。

 この件は、別途書くつもり。


 維新の出鱈目のことを思うとストレスがたまる。

 こういう時は、世界で尊敬される偉大な日本人のことを考え、気分を変えたい。
 
 中村哲さんの話を澤地久枝さんが聞き手になってできた本を読んだ。

中村哲『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』(聞き手 澤地久枝)より(1)_e0337777_12533020.jpg

『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』

 『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』の副題は「アフガンとの約束」となっている。

 澤地さんが中村さんの活動を支援したいと思い、中村さんに会って本を出そうと考え、ようやく2008年と2009年に実現した対談を元にした本。
 2010年に岩波から単行本が刊行され、今年9月に岩波文庫で再刊された。

 目次をご紹介
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はじめに
Ⅰ 高山と虫に魅せられて
Ⅱ アフガニスタン、命の水路
Ⅲ パシュトゥンの村々
Ⅳ やすらぎと喜び
あとがき 澤地久枝
あとがきに添えて 中村哲
岩波文庫版あとがき 澤地久枝
[現地スタッフからの便り1] ジア ウルラフマン
[現地スタッフからの便り2] ハッジ デラワルハーン
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 対談のみならず、適度に補足的な内容が、澤地さんによって挟まれている。

 その中の一つに、ある時、永田町に中村さんが出向いたことが書かれている。

 「 Ⅰ 高山と虫に魅せられて」の「2001年10月、衆議院」から、引用。

 映画「モーリタニアン 黒塗りの記録」は、まさに、9.11の同時多発テロに関わる映画だったが、あの事件の翌月、中村哲さんは、永田町にいた。

 引用する。

 2001年10月、衆議院

 2001年10月13日、衆議院のテロ対策特別措置法案審議に、七人の参考人の一人として出席した中村医師の発言は、特に記憶にのこしたい。
 9.11事件のあと、米英軍にょるアフガニスタン爆撃がはじまった直後である。この時点で、18年間の現地体験を裏づけとして語られた訴えは、当時の世界のなかでも、きわだったものであった。集団テロの「衝撃」に、浮足立ち、テロ絶滅の戦争かテロ容認か、二者択一を迫る論議が、強権発動のようにまかり通った。心ある人も、沈黙を守らざるを得ないような狂気の風が吹いた。中村参考人の発言要旨。

 ー私はタリバンの回し者ではなく、イスラム教徒でもない。ペシャワール会は1983年にでき、18年間現地で医療活動をつづけたきた。ペシャワールを拠点に一病院と十ヵ所の診療所があり、年間二十万名前後の診療を行っている。現地職員二百二十名、日本人ワーカー七名、七十床のPMS(ペシャワール会医療サービス)病院を基地に、パキスタン北部山岳地帯に二つ、アフガン国内に八つの診療所を運営。国境を越えた活動を行っている。
 私たちが目指すのは、山村部無医地区の診療モデルの確立、ハンセン病根絶を柱に、貧民層を対象の診療。
 今回の干ばつ対策の一環として、今春から無医地区となった首都カブール(カーブル)の五ヵ所の資料所を継続している。
 アフガニスタンは1979年12月の旧ソ連軍侵攻以後、二十二年間、内戦の要因を引きずっていた。内戦による戦闘員の死者七十五万名。民間人を入れると推定二百万名で、多くは女、子ども、お年寄り、と戦闘に関係ない人々である。
 六百万名の難民が出て、くわえて温度の大干ばつ、さらに報復爆撃という中で、痛めに痛めつけられて現在に至っている。
 アフガンを襲った世紀の大干ばつは、危機的な状況で、私たちの活動もこれで終るかも知れない。アフガニスタンの半分は沙漠化し、壊滅するかもしれないと、昨年から必死の思いで取り組んできた。
 広域の大干ばつについて、WHOや国連機関は昨年春から警告しつづけてきたが、国際的に大きな関心を引かなかった。アフガニスタンが一番ひどく、被災者千二百万人、四百万人が飢餓線上にあり、百万人が餓死するであろうと言われてきた。
 実際に目の当たりにすると、食糧だけでなく飲料水が欠乏し、廃村が広がってゆく事態で、下痢や簡単な病気でおもに子どもたちがつぎつぎと命を落としていった。
 私たちは組織を挙げて対策に取り組み、「病気はあとで治せる。まず生きておれ」と、水源確保事業に取り組んでいる。今年一月、国連制裁があり、外国の救援団体は次々に撤退し、アフガニスタンの孤立化は深まった。

 本書では、「要旨」と書かれている通り、中村哲医師の参考人としての発言そのままに紹介しているわけではない。

 衆議院のサイトに、当日の会議録があるので、冒頭部分を引用し補足したい。
 より、生の中村さんの声を感じ取ることがでいると思う。
 ちなみに、委員長は加藤紘一だった。中村さんは、軍事アナリストの小川和久の後に発言した。
「衆議院」サイトの該当ページ

〇中村参考人 皆様、御苦労さまです。中村と申します。

 もう現地に行きまして約十七年半になりますが、私、実は国内で何が起きているのかよくわかりませんで、失礼ですけれども。ただ、向こうから戻りまして、余りに現実を踏まえない図式に基づいた議論だけが先行、失礼な話でございますが、本当にアフガニスタンの実情を知って話が進んでおるのだろうか、率直な意見を持つわけでございます。

 きょうは、私は、全くの政治音痴でして、左も右もわからないという中で、さっき忌憚のない意見ということをおっしゃいましたので、忌憚のない意見を述べたいと思います。

 ただ、その際に、そう言いますと、すぐ烙印を押されまして、日本全体がもうテロ対策、アメリカを守るためにどうするんだ、タリバンというのは悪いやつだという図式で動いておりますので、あたかもこれを守るような発言をいたしますと、すぐタリバン派だと言われる。私は、断っておきますが、タリバンの回し者ではありません。それからイスラム教徒ではありません。キリスト教徒でございます。こういう、憲法がどうだとか、そういう法律のことはよくわかりませんので、ともかく、今現地で何が起きているのか、何が問題なのかという事実を皆さんに伝えたいというふうに思っております。ただ、どうもイメージと違うという点がございましたら、どうぞ忌憚なく後で御質問いただければと思います。

 少し、中村哲さんの顔、表情、肉声が浮かんできたのではなかろうか。
 
 本書からの引用を続ける。

 水源の目標値を今年以内に一千ヵ所、カブール診療所を年内に十ヵ所にする準備の最中に、九月十一日の同時多発テロになり、私たちの事業は一時的にストップした。いま、爆撃下に勇敢なスタッフたちの協力により、事業を継続している。
 私たちがおそれているのは、飢餓である。現地は寒期に入り、市民は越冬段階をむかえる。いま支援しなければ、この冬、一割の市民が餓死するであろうと思われる。
 難民援助に関し、こういう現実を踏まえて議論が進んでいるのか、一日本国民として危惧を抱く。テロという暴力手段防止には、力で抑えこむことが自明の理のように論議されているが、現地にあって、日本に対する信頼は絶大なものがあった。それが、軍事行為、報復への参加によってだめになる可能性がある。
 自衛隊派遣が取り沙汰されているようだが、当地の事情を考えると有害無益である。
「私たちが必死でー笑っている方もおられますけれども、私たちが必死でとどめておる数十万の人々、これを本当に守ってくれるのは誰か。私たちが十数年かけて営々と築いてきた日本に対する信頼感が、現実を基盤にしないディスカッションによって、軍事的プレゼンスによって一挙に崩れ去るということはあり得るわけでございます」。「アフガニスタンに関する限りは、十分な情報が伝わっておらないという土俵の設定がそもそも観念的な論議の、密室の中で進行しておると言うのは失礼ですけれども、偽らざる感想でございます」(議事録では笑った議員を特定できない。しかし語られている重い内容を理解できず、理解する気もなく笑った国会議員がいたのだ)。
 自民党の亀井善之委員が「自衛隊の派遣が有害無益でなんの役に立たないという発言」の取り消しを求めた。
 参考人の意見が賛否の二つに分かれたように、委員会は、テロに敵対する日本に立場を明確にし強化しようとする方向と、憲法違反の自衛隊派遣に反対する立場に二分された。論議は平行線をたどったが、十月、テロ対策特別措置法が成立。自衛隊イージス艦のインド洋派遣となる。十一月、タリバン政権崩壊。
 命がけで医療と水源確保をおこなってきた中村医師の十八年間へ、「日本」が出した結論を心に留めたい。

 本書に掲載された中村さんの発言の「要旨」は、これですべて紹介した。

 もう少し、補足したい。

 衆議院サイトの会議録から、亀井善之の発言取り消し要請に応える中村さんの言葉の一部を引用したい。

それから、私の表現が、書かれた表現が英米の蛮行というふうなことは、やや刺激的な言葉でございますけれども、これは私は、このニューヨーク・テロ事件の蛮行というならば、現在進行しておるアフガニスタンへの空爆は蛮行と……(発言する者あり)それは違うというふうにおっしゃいますけれども、テロリスト、テロリズムの本質は何かと申しますと、これは、ある政治目的を達するために市民も何も巻き添えにしてやるということがテロリズムであれば、これは少なくとも、テロリズムとは言わないまでも、同じレベルの報復行為ではないかというふうに理解しております。

 9.11から一ヵ月、誰もが、あの映像に衝撃を受け、そして、ブッシュを支援するアメリカの多くの国民への同情もあり、アルカイダを支援するアフガニスタンのタリバン政権への報復へと流れようとする中、この正論を公けの場で堂々と言い切った人は、中村哲さん以外に、いないだろう。

 中村医師が、切々とアフガニスタンの現状を訴え、何より現地の人々のことを考え、テロへの報復攻撃に反対したにも関わらず、日本がアメリカの無謀な戦争に加担した結果、アフガニスタンが今どのような状況になったかは、ご存じの通りだ。

 角川の文芸webマガジン「カドブン」に中村哲さんの追悼記事がある。
「カドブン」の該当ページ

 中村さんは、テロ特措法案について、佐高信のインタビューに、こう語っている。

「テロ特措法で、バター味(米国)がしょうゆに入ってきて、バターの側の敵までしょうゆが引き受けてしまったということでしょうね。日本というと、やっぱりアジア諸国の人にとっては大きな心の支えだというのは現地の人の通念だと思うんですよね。ところが、米国支援で、いろんな敵をつくってしまった」

 中村さんらしい形容だ。

 バター味側の敵をいまだに日本は引き受けている。


 次回は、同じ第一章から、中村さんの生い立ちや、ご両親のことなどを紹介するつもりだ。

 著作や本書などを読み、あらためて、世界に誇る偉大な日本人を失ったことが残念でならない。
 
 机上の空論ばかりで血税をかすめ取るばかりの政治家には、現地の人々と一緒に汗を流し、多くの命を救った一人の日本人の爪の垢を煎じて飲ませたい。

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by kogotokoubei | 2021-12-22 12:47 | 今週の一冊、あるいは二冊。 | Trackback | Comments(0)

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by 小言幸兵衛
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