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核燃料サイクルがないと原発が動かない? まず、原発をやめるのである。

 自民党総裁選選挙に立候補した四人の、核燃料サイクルについての見解について、ロイターのサイトから共同通信の配信記事を引用。
ロイターサイトの該当記事

国内政治(共同)
2021年9月26日10:50 午前7時間前更新
4氏、核燃料サイクル賛否割れる
共同通信, Kyodo

 自民党総裁選に立候補した4氏は26日のフジテレビ番組で、使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」を巡って討論した。見直しを唱える河野太郎行政改革担当相に対し、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行は維持を主張。靖国神社に関しては高市氏だけが参拝を続ける意向を示し、賛否が分かれた。

 核燃料サイクルについて、河野氏は「合理的な政策とは言えない。なるべく早く方向転換する必要がある」と指摘。岸田、高市両氏は核燃料サイクルを停止すると原発を稼働できなくなると反論した。野田氏も「電力の安定供給は使命だ」として続けると明言した。【共同通信】

 岸田、高市、野田の三候補は、核燃料サイクルについて、どこまで知っているのか疑問。

 今は更新が止まっている兄弟ブログ「幸兵衛の小言」2015年11月20日の記事では、11月19日の東京新聞の社説を引用した。
「幸兵衛の小言」2015年11月20日のブログ

 核燃料サイクルの象徴ともいえる「もんじゅ」を例として、この政策がどれほど高くつくか実に分かりやすい内容なので、あらためて紹介したい。


【社説】
原発ゼロへ再考を 原子力は高くつく
2015年11月19日

 きょうは原発推進の人たちにとくに読んでいただきたい。原子力発電は結局、高くつく。そろばんを弾(はじ)き直し、原発ゼロへと考え直してみませんか。

 やっぱり金食い虫でした。

 原子力規制委員会が日本原子力研究開発機構に示した、高速増殖原型炉「もんじゅ」の運営を「ほかの誰かと交代せよ」との退場勧告は、その操りにくさ、もろさ、危険さを、あらためて浮かび上がらせた。

 そして、本紙がまとめた「核燃料サイクル事業の費用一覧」(十七日朝刊)からは、もんじゅを核とする核燃料サイクルという国策が、半世紀にわたって費やした血税の大きさを実感させられる。

◆巨費12兆円を投じて

 原発で使用済みの核燃料からプルトニウムを抽出(再処理)し、ウランと混ぜ合わせてつくったMOX燃料を、特殊な原子炉で繰り返し利用する-。それが核燃料サイクルだ。

 その上もんじゅは、発電しながら燃料のプルトニウムを増やしてくれる。だから増殖炉。資源小国日本には準国産エネルギーをという触れ込みだった。

 それへ少なくとも十二兆円以上-。もんじゅの開発、再処理工場(青森県六ケ所村)建設など、核燃サイクルに費やされた事業費だ。

 国産ジェット機MRJの開発費が約千八百億円、小惑星探査機「はやぶさ2」は打ち上げ費用を含めて二百九十億円、膨らみ上がって撤回された新国立競技場の建設費が二千五百二十億円…。

 十二兆円とはフィンランドの国家予算並みである。

◆1日5500万円も

 ところが、もんじゅは事故や不祥事、不手際続きで、この二十年間、ほとんど稼働していない。止まったままでも一日五千五百万円という高い維持管理費がかかる。

 もんじゅは冷却に水ではなく、大量の液体ナトリウムを使う仕組みになっている。

 ナトリウムの融点は九八度。固まらないように電熱線で常時温めておく必要がある。千七百トンのナトリウム。年間の電力消費量は一般家庭約二万五千世帯分にも上り、電気代だけで月一億円にもなるという。

 発電できない原子炉が、膨大な電力を必要とするという、皮肉な存在なのである。

 もんじゅ以外の施設にも、トラブルがつきまとう。さらなる安全対策のため、再処理工場は三年先、MOX燃料工場は四年先まで、完成時期が延期になった。MOX燃料工場は五回目、再処理工場に至っては、二十三回目の延期である。

 研究や開発は否定しないが、事ここに至っては、もはや成否は明らかだ。これ以上お金をつぎ込むことは是とはされまい。

 核燃料サイクルが、日本の原子力政策の根幹ならば、それはコストの面からも、根本的な見直しを迫られていると言えそうだ。

 欧米で原発の新増設が進まないのは、3・11以降、原発の安全性のハードルが高くなったからである。

 対策を講ずるほど費用はかかる。原発は結局高くつく。

 風力や太陽光など再生可能エネルギーにかかる費用は普及、量産によって急速に低くなってきた。

 国際エネルギー機関(IEA)の最新の報告では、太陽光の発電コストは、五年前より六割も安くなったという。

 ドイツの脱原発政策も、哲学だけでは語れない。冷静に利益を弾いた上での大転換だ。

 原子力や輸入の化石燃料に頼り続けていくよりも、再生エネを増やした方が、将来的には電力の値段が下がり、雇用も増やすことができるという展望があるからだ。

◆そろばん弾き直そう

 核燃料サイクル事業には、毎年千六百億円もの維持費がかかる。

 その予算を再エネ事業に振り向けて、エネルギー自給の新たな夢を開くべきではないか。

 電力会社は政府の強い後押しを得て、核のごみを安全に処理するあてもまだないままに、原発再稼働をひたすら急ぐ。

 金食い虫の原発にこのまま依存し続けていくことが、本当に私たち自身や子どもたちの将来、地域の利益や国益にもかなうのか。政治は、その是非を国民に問うたらいい。

 持続可能で豊かな社会へ向けて、そろばんをいま一度弾き直してみるべきだ。

 もんじゅは、この社説からほぼ一年後、2016年12月に廃止が決まった。

 なんと無駄で、危険な試みであったことか。


 核燃料サイクルの危険性については聞く耳をもたないかもしれない自民党総裁候補も、これだけ経済性でも問題があることを、知っているのだろうか。


 そして、次にその危険性について。

 原発そのものも実に危険なのだが、MOX燃料を使うことにより、さらに危険性は高まる。

 「幸兵衛の小言」の2014年3月23日の記事では、核燃料サイクルの危険性について、ある組織のサイトやある本を引用して記事を書いたことがある。
「幸兵衛の小言」2014年3月23日のブログ

 冒頭には、オランダ・ハーグで開催される核安全サミットで、当時の安倍総理が、「核燃料サイクル」をすることを独断で表明しようとしているという東京新聞の記事の引用がある。

 核燃料サイクルでは、使用済み燃料を再処理して取り出したプルトニウムとウランを混合してつくった混合酸化物燃料、MOX燃料を使って原発を稼働させようとするのだが、このMOX燃料が、実に危険なのである。

 また、使用済のプルトニウムを再処理して使用することをプルサーマルと、日本では言っている。
 かつて世界でも複数の国で行ってはいたが、その危険性と経済性の問題から、今ではフランス以外では行われていない。
 リンク先の古い記事では、原子力資料情報室の、関電によるMOX燃料輸送に関する反対声明も引用しているが、割愛する。
 ぜひ、こちらもリンク先でご確認いただきたい。


 故高木仁三郎さんによってできた原子力資料情報室は、福島第一原発事故の後、私がもっとも信頼して、サイトや月報、著作で原発のことを学んでいた組織だ。

 そして、高木仁三郎さんの著作、監修した本は、ほぼ全て読んだつもりだ。

 その中の一冊から、あらためて核燃料サイクルの危険性について紹介したい。

 MOXは、原子炉のブレーキに相当する制御棒が効きにくいなど原発稼動中の危険性も大きいが、その燃料を作る過程や再処理まで危険がいっぱいなのである。

 『新装版 反原発、出前します-高木仁三郎講義録-』(反原発出前のお店編、高木仁三郎監修、七つ森書館)から引用。
 重要部分を太字にする。総裁選候補の方にも分かりやすいように。
核燃料サイクルがないと原発が動かない? まず、原発をやめるのである。_e0337865_16393072.jpg

『新装版 反原発、出前します』(七つ森書館)

 MOX燃料を使うためには、ウラン濃縮度がいろいろ違った燃料を作らなくてはなりません。さらにプルトニウムの冨化度(濃度)もいろいろと違ったものを作らなくてはいけないのです。仮にそれを再処理するとなるとどういうことになるかを考えると、頭が混乱してきます。同じ組成のものは一度に再処理できますが、違った組成のものは一度に再処理できないので、原子炉からでてきた使用済み燃料を何通りにも分けなくてはなりません。このように核燃料サイクルがきわめて複雑になるのです。
 もう一つ、MOX燃料加工の場合に問題になるのは、プルトニウムn半減期の問題です。プルトニウム-239の半減期は2万4000年ですが、プルトニウム-240の半減期は6600年です。それからプルトニウム-241の半減期は14年で、プルトニウム-242の半減期は37万年です。このような放射能ができるのです。これが原子炉ごとに違ってくるのですが、問題はプルトニウム-241です。この半減期が短いので早く崩壊していって、アメリシウム-241になります。半減期が14年ですから、一年もすればけっこうたまってきます。アメリシウム-241はガンマ線を強く出しますので、取り扱いが面倒な上に核特性が違ってきます。燃料としては品質が劣化します。このアメリシウム-241がMOX燃料の加工をやっているうちに、たまってきてしまうと、強いガンマ線のために工場に立ち入れなくなることもあります。ですから、「プルトニウムを長い間置いておくな!」「プルトニウムは取り出したらすぐ使え!」といわれています。


 通常のウラン燃料さえ原発のゴミはやっかいなのに、MOX燃料の原発でできるゴミは、もっとやっかいだし、危険性が増すばかりなのだ。

 利用目的の不明確なプルトニウムを所有することが、核兵器保有につながる危険性があると非難されるので、核燃料サイクルをする、というのは悪魔のサイクルである。

 核燃料サイクルがないと原発が動かない、というのは、まったく核のゴミの危険性を分かっていない人の発言であり、まず第一に原発を稼働しないことが、最優先なのである。

 プルトニウムをこれ以上持たない、原発稼働による危険な核のゴミをこれ以上出さずに、すでに出来てしまったプルトニウムの処理方法を真剣に考える、ということがあの事故を経験した日本の選択であるべきだ。


 唯一の被爆国でありながら、核兵器禁止条約に批准しない。

 そして、史上最悪の原発事故を経験しながら、いまだに原発を稼働させ、危険極まりなく、その保管に数千年も必要な核のゴミを増やそうとしている。

 そんな政府は、もうたくさんである。

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by kogotokoubei | 2021-09-26 19:27 | 原発はいらない | Trackback | Comments(0)

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by 小言幸兵衛