青山透子著『日航123便墜落 疑惑のはじまりー天空の星たちへー』(河出文庫)より(6)
2021年 08月 24日

青山透子著『日航123便墜落 疑惑のはじまりー天空の星たちへー』
7月に発行された、青山透子さんの第一作の文庫版『日航123便墜落 疑惑のはじまりー天空の星たちへー』から六回目。
本書は、最初マガジンランドから2010年に『天空の星たちへー日航123便 あの日の記憶』として発行され、2018年に河出書房新社から復刻版が単行本として発行されていた。
引き続き、「第二部 エマージェンシー 墜落か不時着か」の「第三章 原因は何か 新聞報道の陰から見える事実」から。
前回ご紹介したように、まだ、ボイスレコーダー、フライトレコーダーの内容が解明されていない八月十六日に、圧力隔壁説の第一報が新聞に掲載された。
前の記事では毎日新聞朝刊の内容を引用したが、今回は、別の新聞の同じ日の夕刊から。
「同機が飛行中に何らかの強い力を受け、後部から破壊されるという『航空機事故史上極めて異常な事故』としたことから、十六日、事故調内部に金属疲労、機体構造に関する専門委員会を設置、徹底した原因究明に当たることを決めた。垂直尾翼の破壊につながる直接原因は明らかではないが、尾翼の主要構造部が外からの力に極めて強いものの、内部からの力がかかった場合、比較的弱い構造になっていることを重視。機体最後部にある客室の隔壁など外壁に亀裂が入り、与圧された空気が噴出して破壊が起きた可能性もあると見ており、機体構造、亀裂の原因となる金属疲労など、広範囲な分野の専門家を原因究明に当てることになった」とある。
「運輸省、日航は、相模湾で発見された垂直尾翼の前縁上部の分析を進めていたが、主要構造部の各上部が同時に吹き飛ばされたと断定した。このような破損は、外から加わる力では、衝突などのような異常な衝撃以外には考えられず、機体内部から強い力がかけられた場合には、十分可能性があるとしている。 -略ー
こうした破壊力について、技術陣は、主要構造部は横風など外から加わる力には十分耐えられる設計となっているので、飛行機同士の衝突など異常な衝撃が加わったケースなど以外には、外からの力による破壊の可能性は小さい。しかし、内側から加わる力に耐えることは設計の前提になっていないため、『内部からの力には非常に弱い』としている。
一方、生き残ったアシスタントパーサーが、①上の方でバーンという音がして、客室の空気圧が急減した現象が起きた②客室最後部のトイレの天井が落ちたと証言している。
このことから、このトイレ上部付近から胴体下部までつながっている客室と機体後部のアルミ合金製の隔壁が金属疲労で破裂、高圧の空気が爆発的に機体後部へ流れ込んだことや、金属疲労などで、機体外壁自体に亀裂が入り、尾翼を破壊したことなどが可能性の一つとして浮かびあがっている」(1985年8月16日付読売新聞夕刊)
八月十六日、朝刊での圧力隔壁説報道は毎日が“スクープ”したのだろうが、読売は後追いながらも運輸省などを取材し、こういう記事が夕刊に載ったのだろう。
青山さんは、この記事について、こう書いている。
この記事は非常に大きなヒントを含んでいるではないか。
つまり、このような垂直尾翼の破損は、外から加わる力で、飛行機同士の衝突などのような異常な衝撃で生じるのだと書いてあることになる。
それ以外には機体内側より与圧された空気など強い力が噴出した場合にも十分考えられるとのことだ。ということは、逆に主要構造をちぎるほどの強い爆風が起きなければ、外から加わった衝突の説となる。外的要因と内的要因の二者択一ということだ。
生存者や落合さんの証言に出ている事実は、機内で減圧現象が起きたのは一時的で、一瞬周りが白くなったがそれもすぐさまおさまったということだ。さらに、生存者の証言によると、爆発的空気の流れや爆風ではなかったということも分かってきた。つまり誰ひとりとして機外へ吸い出されず、機内の荷物も散乱せず、突風も吹かなかった。落合さん自身の鼓膜も無事だったからインタビューにもすぐ応じられた。
そうなるとつまり、残るひとつ、外からの衝突などの強い力が加わった説も考えなければならない。
しかし。なぜか外的要因をまったく考えずに内的要因による原因への絞られていく。
近くを飛んでいた飛行機がいなかった、他の接触は考えられない等の意見は出ているが、まったく事故原因からはずすことは出来ないのではないか。内的要因だけとなると、どうしても生存者の証言と食い違っていくからだ。
このように新聞を読んでいくと、次の日から内的要因のみで事故原因が歩い出していったのが不思議でならない。
では翌日、どのような記事が新聞を賑わわせたのだろうか。
隔壁破れ垂直尾翼破壊が原因か?-八月十七日の事故原因
この日の新聞は、全紙一面がすべて隔壁破壊説で埋め尽くされている。
産経新聞では隔壁に亀裂が生じて、与圧された機内の空気が尾翼へ急激に流れ込み、垂直尾翼を拭き飛ばしたとある。尻もち事故の後遺症が考えられるとしている。
毎日新聞では、日米合同現場調査で隔壁(アフター・プレッシャー・バルクヘッド/直径4.5メートル)が破裂していたことを確認し、客室内部で与圧された空気が尾翼内に爆風となって流れ込んだための事故としている。(十六日に合同調査実施)尻もち事故の修理ミスも原因のひとつではないかとのことだ。
ただし同日朝日新聞夕刊では、事故調査委員会のメンバーのひとりがこのような発言をしている。
「事故直後十三日に機体後部が見つかった谷底で、お椀状の原型をとどめたほぼ完全に残った隔壁を発見。アルミ合金製の隔壁に放射線状の亀裂が数か所入っていることを確認した。写真に収めているのでその後分析が必要。隔壁はその後捜索活動の中で、エンジンカッターで切断されてバラバラになったらしい」
したがって破裂ではなく、エンジンカッターでバラバラにしてしまった後に検証しているという事実だ。
産経、毎日は、外的要因を無視し、隔壁破壊説をとっている。
しかし、毎日の「破裂していたことを確認」と、朝日が取材した調査委員会メンバーの発言、「原型をとどめたほぼ完全に残った隔壁を発見」とでは、あまりにも違う。
また、捜索のためカッターで切断された前と後の姿は、違うのは当然だ。
なぜ、切断したのか、それは、事故調査委員会の承諾を得たものだったのか。
青山さんは、地元の上毛新聞の記事も紹介している。
上毛新聞の十八日の記事では、十七日も午後四時まで報道陣をシャットアウトして調査が続いたこと、調査について委員会メンバーは「ノーコメント」としていると報じている。
いずれにしても、圧力隔壁は当初ほぼ完全に残った状態で発見され、十五日の救出活動中にカッターで切断した際に五分割された。その後に検証し、検証過程は報道陣関係者を締め出して行なわれたという事実が分かる。
ちなみに客室内では、飛行中は0.8気圧前後の状態に保っており、この与圧はボーイング社の資料によるとジャンボジェットの場合、約2万5000フィート(7620メートル)上空で、一平方メートルあたり、3から4トンの圧力となる。このため胴体、隔壁など安全率も考慮して十数トンの圧力にも十分耐えられるように設計されているのである。
さらに破れた隔壁発見という記事の中で隔壁の現状を次のように書いてある。
「この隔壁は遺体収容作業時に、遺体確認と運び出しの邪魔になるとして切断され、再度調査委員会が発見現場を訪れた時は、亀裂と放射状の骨組みにそって細かく切り刻まれたうえ、積み重ねられていた」
細かく、切り刻まれて積み重ねた状態になっている隔壁を調査するということか?
各新聞記事には、必ずしもその原因を全面的に支持しているとは言えない部分も見られる。
「亀裂と収容時の切断面と判別は可能としており、隔壁の破損が飛行中に起こったのか墜落した衝撃によるものかは、現段階では不明としている・・・・・・客室部分からの与圧は均一にかかるため、お椀状のアルミ合金製表面材は、数か所がめくれ上がるような形になる。しかし、機首から地面をこするような形で山頂へ向け墜落しているため、フレームの破損でめくれ上がることも考えられ、運輸省内部などにも、客室内の与圧が加わってのものとは速断出来ないとする見方もある」
隔壁の破損は、飛行中なのか、墜落衝撃によるものか、さらに救出活動の中でカッターで切られた際に亀裂が入ったのかどうか不明だとある。切断面を詳細に調べることが不可欠のようだ。
上毛新聞の記事内容は、先入観なしに、丹念に調べているように思う。
私には、朝日の取材に答え、ほぼ原型をとどめていた、と語った調査委員会メンバーは、その後、どのように事故調査に関わったのか、気になる。
別の視点からも、青山さんは、隔壁説への疑問を募らせる。
隔壁破壊が墜落の原因とすると、客室内を爆風が吹き抜けることが前提条件となる。
そうなると爆風によって生存者たちの体にはどんな症状が出ていたのだろうか。
爆風が吹くほどの急激な減圧となると、耳は聞こえなくなり、航空性中耳炎となる。さらに肺から一気に空気が吸い上げられことにより、肺出血もありうる。そのような症状が四名にあったのだろうか。医師のコメントでは四名に見られる症状として、骨折しか見当たらないが、落合さんやほかの生存者もインタビューに答えていることから、鼓膜は破れていない。助かった四名は皆最後部の席でり、ちょうどトイレの向こうにある隔壁に一番近い席である。このトイレの前の席で、さらに最強の垂直尾翼を吹き飛ばすほどの爆風を体験した四名が生き残っているという事実・・・・・・。
この説は本当なのだろうか。どうも客観的事実と食い違っていする。
もうひとつ不思議なことがあった。事故直後早々来日していた米国国家安全委員会(NTSB)、米航空局(FAA)、同機を製造した米ボーイング社の三者からなる米政府事故調査団は十六日午前九時二十分すぎに、米軍のヘリで現地入りし、墜落現場を中心に日本の事故調査委員会と初めて合同調査を行った、とある。
「初めての合同調査」とあるが、十三日にアメリカを出発して今まで日本側と会わずに、どこで何をしていたのだろうか。相模湾で回収された垂直尾翼の検分を、墜落現場へ行くことよりも先に行った以外は、一切ニュースになっていないのが気になった。
前回の記事で浮かび上がった疑問を含め、青山さんは、多くの「なぜ?」を募らせていく。
なぜ、山下運輸相は、12日の深夜に「人災」と語り、翌13日には、墜落現場で「天災」と信じたい、と語ったのか。
なぜ、ボーイング社と米運輸安全委員会(NTSB)の動きが、従来とは違って迅速だったのか。
そして、なぜ、彼らは事故現場よりも先に、海から回収された垂直安定板を調べたのか。
なぜ、ボイスレコーダーとフライトレコーダーの解明が進んでいない段階で、圧力隔壁説が新聞で報道されたのか。
なぜ、垂直尾翼の破壊には、外からの衝撃も原因と考えられるのに、その外的要因説が無視されているのか。
隔壁破壊による爆風があったとしたら、なぜ、その近くの席にいた四人の生存者に、その爆風による症状がないのか。
なぜ、米側の調査委員は、十六日まで、日本側と合同調査をせず、その間、何をしていたのか。
そして、その後の新聞記事に、もっと不思議な内容があったのであるが、それは次回。
高齢Wワーカーの私は、これから飲食店のアルバイトに行かねば。
北海道と中部三県(愛知・三重・岐阜)が、まん延防止等重大措置から、緊急事態宣言に変更されるらしいが、あまりも後手後手、五月雨式の対応だ。
全国一斉緊急事態宣言にしない理由が、まったく理解できない。
パラリンピックが今夜から開幕するという。
子どもたちも見学させるという。
憂鬱な日々が続く。
