五輪開催支持に誘導する、NHKの歪んだ世論調査で思うこと。
2021年 06月 18日
yahooニュースの記事から引用。太字は、原文のママ。
yahooニュースの該当記事
東京五輪 NHK世論調査の衝撃~「諦め」と「誘導」で開催派が急伸!?~
鈴木祐司 | 次世代メディア研究所代表/メディアアナリスト
6/15(火) 23:09
東京オリンピックの開会式まで1か月余り。
G7首脳宣言に東京オリパラ支持が盛り込まれ、菅首相が「感染症対策を徹底して安全安心のオリンピックを行う」として、開催準備が着々と進められている。
いっぽう組織委員会の説明不足もあり、感染症の拡大を懸念する反対や延期の意見も根強い。
6月7日の読売新聞朝刊は「五輪『開催』50%『中止』48%」という見出しが一面だった。
6月5~6日のJNN世論調査は、「中止」31%と「延期」24%で過半となった。そして観客数ごとの3択を合計した「開催」は44%と過半数に達しなかった。
果たして国民の本当の意見は、どこにあるのか?
NHK世論調査の3つの疑問
こうした中、6月11~13日に行われたNHK世論調査の結果は以下の通り。
「これまでと同様に行う」3%
「観客の数を制限して行う」32%
「無観客で行う」29%
「中止する」31%
「開催」が3択合わせて64%で「中止」の2倍を超えた。
しかもNHKの世論調査では、ほぼ同じ時期に調査した他のメディアと比べて、「開催」支持が群を抜く高さとなった。摩訶不思議な現象と言わざるを得ない。
実はこの調査には3つの疑問がある。
まず東京オリンピック・パラリンピックについてのNHKの世論調査では、「延期」の選択肢が無い。今年1月の調査までは、「開催」「中止」「さらに延期」の3択で答えてもらっていた。しかし2月の調査では、回答の選択肢が変えられていた。
「開催」を「これまでと同様に行う」「観客の数を制限して行う」「無観客で行う」の3つに分類した。そして「開催」以外では、「延期」を削除して「中止」だけにした。
「開催を支持する数が大きくなるような誘導」「これでは世論調査ではなく世論操作」などの批判が出たくらいだ。
2番目は、選択肢の前提となる質問文の問題だ。
やはり今年1月までは「東京オリンピック・パラリンピックの開催についてどう思いますか」と単純に聞いていた。しかし2月調査では、質問に「IOC=国際オリンピック委員会などは、開催を前提に準備を進めています」との言葉を入れた。
「開催が前提」との意図をにじませた異例の世論調査に見える。やはり誘導尋問の匂いがする。
3番目は、5月調査以降行われた変更。
「開催の是非」ではなく、「開催を前提に適正な観客数」を問うことが目的のような調査に変更されたように見える。
正確には「東京オリンピック・パラリンピックの観客の数について、IOC=国際オリンピック委員会などは、来月判断することになりました。あなたは、どのような形で開催すべきだと思いますか」と5月調査で書き換えられ、そして6月調査では、「来月判断」が「今月判断」に置き換わった。
なんとNHKの世論調査が、露骨なことか。
この記事の執筆者、次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは、元NHKの職員で、かつて真っ当だったNHKの姿を内部で体験している方だ。
その鈴木さんは、この記事を、こう締めくくっている。
東京オリパラは感染症対策と並ぶ政治課題であり、菅政権の命運を左右するともいわれている。
その東京オリパラについて、NHKは番組やニュースで政権への忖度が働いているのではと疑われる出来事が幾つかあった。
五輪聖火リレー中継での音声中断問題や、NHKスペシャルの延期問題などだ。
これらに加えて、守るべき最低ラインを逸脱した世論調査を続けるなら、もはやNHKは菅政権への忖度を疑われるにとどまらず、「忖度でなく、もはや一体」と見られてもやむを得ない。
会長をはじめとするNHKの経営は、公共放送の筋を通す矜持を示せるのか。
その能力もなければ、そもそも意図もないとしたら、黙々と受信料を払い続ける視聴者は救われない。
まったく、同感だ。
なぜ、NHKは、こんな世論調査をすることになったのか。
これは、公共放送という看板で誤魔化されがちだが、NHKがオリンピックに膨大な金額を投資しているからだ。
NHKと民放を含む“ジャパンコンソーシアム”でオリンピックやサッカーW杯の放映権を管理するようになって以降の放映権料を、Wikipedia「ジャパンコンソーシアム」で確認できる。
Wikipedia「ジャパンコンソーシアム」
冬季 1998年 長野オリンピック 3700万ドル(39億円)
夏季 2000年 シドニーオリンピック 1億3500万ドル(142.7億円)
冬季 2002年 ソルトレイクシティオリンピック 3700万ドル(49億4000万円)
夏季 2004年 アテネオリンピック 1億5500万ドル(170.5億円)
冬季 2006年 トリノオリンピック 45億3000万円[
夏季 2008年 北京オリンピック 1億8000万ドル(198億円)
これ以降は、冬季&夏季を合わせた放映権。
冬季 2010年 バンクーバーオリンピック
+
夏季 2012年 ロンドンオリンピック 325億円(日本円建て)
冬季 2014年 ソチオリンピック
+
夏季 2016年 リオデジャネイロオリンピック 360億円(日本円建て)
冬季 2018年 平昌オリンピック
+
夏季 2020年 東京オリンピック 660億円(日本円建て)
冬季 2022年 北京オリンピック
+
夏季 2024年 パリオリンピック 440億円(日本円建て)
この放映権は、電通が独占している。
ジャパンコンソーシアムを構成するのは、NHKと民放各社。
放映権料はNHKと民放各社が負担するのだが、その70%をNHKが支払っている。
平昌&東京の660億円のうち402億円、北京&パリの440億円のうち308億円がNHKの支払いなのだ。
だから、IOC(国際オリンピック連盟)が、放映権料をどんどん値上げしようが、もし7割を占めるNHKがその値に応じれば、電通はいっきに数百億の売上を得ることになる。
電通にとっては、民放のみならずNHKも重要なお客様、ということ。
2014年のサッカー・ブラジルW杯の放映権料のことなどを書いたことがあるが、サッカーW杯も、同じ構造である。
2014年6月30日のブログ
もし、五輪が中止となった場合、アメリカのNBCが払う巨額な放映権料や、日本のコンソーシアムが払う660億円は、返還されるのか。
朝日新聞から引用する。
朝日新聞の該当記事
批判を浴びても開催に突き進むIOCの本音は、どこにあるのか。
まず大きいのが、テレビ局からの放映権料だ。IOCは、2032年までの夏冬6大会における米国内での放映権について、米NBCと76億5千万ドル(約7780億円=当時)の契約を結ぶなど、収入の約7割をテレビ放映権料から得ている。たとえ無観客でも、大会が開かれれば、放映権料を受け取ることができる。
IOCは支出の約9割を、アスリート育成や世界各国の五輪委員会や競技団体への分配に使っているとしている。仮に大会が中止になり、放映権料を払い戻すことになれば、特にマイナー競技の団体は分配金が減って資金難に陥る可能性がある。
組織委や東京都も減収の可能性
また、東京との関係では、IOCは大会組織委員会に850億円の拠出金を支払っている。しかし、大会が中止となって放映権者が放映権料の返還を求めた場合、組織委は拠出金をIOCに払い戻さなければならない契約になっている。大会が中止になった場合、IOCだけでなく、組織委や東京都も大きな減収に直面する可能性がある。
まさに、カネ、カネ、カネのための、開催強行なのだ。
しかし、その、カネまみれ五輪プロジェクト(?)に加わっているとはいえ、NHKが、こうも露骨な開催への誘導を世論調査で行っているのだから、もう公共放送などとは言わないでもらいたい。
この高額な放映権料は、視聴者の負担になるのは、当然だ。
NHKの改革などと言われるが、まず、こんなカネまみれの構造から脱して受信料を下げるのが、改革の第一歩なのではないか。
そうすれば、忖度もせず、公正な世論調査もできる、というものだ。
利益相反の指摘を受けないようバイアスをかけない調査をすべきと思います
NHKが、聖火リレーの番組を毎日放送しているのも、開催容認ムードづくりのためですね。
IOCは放映権料を戻したくない、五輪組織委員会は、拠出金も戻したくない。
政府は、NHKに開催支持を増やすための圧力をかける。
そういったカネまみれの人々にとって、国民の安全や命は、菅総理の壊れたテープレコーダーからの空念仏でしかない。