赤木雅子・相澤冬樹著『私は真実が知りたい』より(2)
2021年 02月 20日

赤木雅子・相澤冬樹著『私は真実が知りたい』
文藝春秋より2020年7月15日初版発行された『私は真実が知りたいー夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』から二回目。
本書は、森友関連の公文書の改ざんを強いられたことで心身ともに疲れ果て命を絶った赤木俊夫さんの奥さん雅子さんが、NHKを退職し、大阪日日新聞に転職した相澤冬樹記者の協力を得て出版したものだ。
前回は、「序章 トッちゃんの本を出すわけ」から、2018年3月7日、近畿財務局勤務の赤木俊夫さんが自ら命を絶ったこと、そして、その姿を発見した妻の雅子さんは、「財務省に殺された」という思いから、つい119番ではなく、110番に通報したことなどを紹介した。
大好きだったトッちゃんのためにも、本書を出版することを含め、行動に出た雅子さん。
もう少し、その日のことを“第1章 トッちゃんが遺した「手記」”から、ご紹介したい。
なお、太字は、原文のままである。
走り書きのメモ
トッちゃんのまだ温かい胸に手を当てて必死に心臓マッサージをしているうちに、遠くからサイレンの音が近づいてきた。私はトッちゃんと一緒に救急車に乗って病院に向かった。病院の先生は最後まで救命措置をしてくれた。
病院で待っていると、警察の人がやってきた。地元の警察署の刑事さんだ。刑事さんが捜査用の車で私を自宅まで送ってくれた。一緒に部屋に入った刑事さんは、居間の机の上に手書きのメモがあるのを見つけた。私は動転していてそれまで気づいていなかったが、トッちゃんがノートに走り書きしたメモだった。そこにはこんなことが書いてあった。
森友問題
佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、
それにNOを誰もいわれない
これが財務官僚王国
最後は下部がしっぽを切られる。
なんて世の中だ、
手がふるえる、恐い
命 大切な命 終止府(ママ)
私はびっくりした。えっ? 佐川さん? 国会で「文書はない」と言って散々矢面に立っていた、あの人?
私以上に刑事さんがびっくりしていた。亡くなったのは、あの森友事件の関係している人?! と言う感じであわててどこかに電話していた。しばらくして相次いで警察の人がやってきた。そしてみんな同じことを聞く。
「ご主人はどういう仕事をされていたんですか?」
「森友学園の件とはどういう関係があるんですか?」
私は次々に来る警察の人に六度も同じ説明をする羽目になった。
前シリーズで相澤冬樹さんの『メディアの闇ー「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』を紹介した中で、赤木俊夫さんが亡くなった直後、情報は錯綜し、中には、「遺書に森友関連の記載なし」と報じた新聞もあったことを紹介した。
特ダネを急ぐあまり、そういう間違いもあるということだろうが、しっかり、メモにも森友、佐川の文字があったのである。
そして、走り書きのメモ以上の情報を、赤木俊夫さんは遺していた。
刑事さん達はトッちゃん遺した物をあれこれ調べだした。その一人が言った。
「奥さん、このパソコン起動できますか?」
トッちゃんが自宅で使っていたパソコンで、私はパスワードを知らない。でもいつの間のか、パスワードを書いた付箋がキーボードのそばに貼ってあった。その通り入力するとパソコンが立ち上がった。すると、いきない画面上に文書が現れた。
「手記」
私は、昨年(平成29年)2月から7月までの半年間、これまで経験したことがないほど異例な事案を担当し、その対応に、連日の深夜残業や休日出勤を余儀なくされ、その結果、強度なストレスが蓄積し、心身に支障が生じ、平成29年7月から病気休暇(休職)に至りました。
これまで経験したことがない異例な事案とは、今も世間を賑わわせている「森友学園への国有地売却問題」(以下「本件事案}という。)です。
本件事案は、今も事案を長期化・複雑化させているのは、財務省が国会等で真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因でありますし、この対応に心身ともに痛み苦しんでいます。
この手記は、本件事案に関する真実を書き記しておく必要ああると考え、作成したものです。
「森友学園への国有地売却問題」と、その問題をめぐる公文書の改ざんについて、いきさつを克明に記した文章だった。
これを見つけて私も驚いたが、刑事さんたちはもっと驚いていた。いきなりプリンターで印刷を始めたので私は言った。
「私の手元にも置きたいので二部プリントしてください」
その間、刑事さんたちは盛んにどこかと連絡を取っていた。プリントし終わると、A4で七枚の文書をすべて写真に撮り始めた。鑑識の人がカメラで撮るのはもちろん、刑事さんもスマホで撮っていた。そして撮り終わった画像をLINEで送り始めたのでこれにも驚いた。
「LINEで送るんですか?」
「奥さん、今はLINEで送るのが一番早いんですよ」
二部プリントしたのだから、当然一部を持ち帰るのだと思ったら、どうも電話での指示は違ったようだ。
「奥さん、私たちはこれ、持ち帰りませんから。残していきますから。間違いなく残しましたよ。確認してくださいね」
そう言い残し、プリントした手記を持たずに引き上げていった。でも、画像にとってLINEで送っておいて「持ち帰らなかった」はないでしょう!
赤木俊夫さんは、その手記を見てもらいたいがために、パスワードを書いた付箋を貼っていたのだ。
そこには、本来なら、政権にとって壊滅的な情報があったのだが、残念ながら、財務省も、当時の安倍内閣も、誰も罪を問われていない。今のところは。
雅子さんは、刑事との別れ際に、当時“文春砲”としてスクープ記事を連発していた文春に、その手記を渡すかもしれないと言った。
しかし、翌日、検視をしている病院に同じ刑事がやって来て、「文春はやめたほうがいい。マスコミはどこも怖いですよ。マスコミに渡すのはやめた方がいい」と言われ、手記の公表を思いとどまった。
カメラで撮ってLINEで送っておいて、プリントは持って帰らなかった、ということを念押しする刑事。
そして、怖いからマスコミには渡すな、という刑事。
さて、その時、この刑事には、どこからどんな指示が出ていたのものやら。
雅子さんは、三回忌をきっかけに決断した。
こうしてすぐには日の目を見ることのなかったトッちゃんの「手記」。私は二年をかけて、ようやく公表を決意できた。
本年(注・2018年)3月2日の朝日新聞の報道、その後本日(3月7日現在)国会を空転させている決裁文書の調書の差し替えは事実です。
元は、すべて、佐川理財局長(当時)の指示です。
(中略)
役所の中の役所と言われる財務省でこんなことがぬけぬけと行われる。
森友事案は、すべて本省の指示、本省が処理方針を決め、国会対応、検査院対応すべてを本省の指示(無責任体質の組織)と本省による対応が社会問題を引き起こし、嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです
この事案は、当初から筋の悪い事案として、本省が当初から鴻池議員などの陳情を受け止めることから端を発し、本省主導の事案で、課長クラスの幹部レベルで議員等からの要望に応じたことが問題の発端です。
いずれにしても、本省がすべての責任を負うべき事案ですが、最期は逃げて、近畿財務局の責任とするのでしょう。
怖い無責任な組織です。
トッちゃんは後悔と恐怖に押しつぶされてしまった。私はトッちゃんの代わりに、知っていることをすべてこの本で明らかにして、まだ知らない真実を追及したいと思う。
赤木俊夫さんの手記には、佐川の名は出ているが、その黒幕には、もちろん安倍晋三がいたし、当時の菅官房長官が関わった可能性が濃厚だ。真実が明らかにあれば、当然、彼らの名が出てくるはずだ。
昨年9月のLITERAの記事から引用する。
LITERAの該当記事
公文書改ざんは2017年2月17日の「私や妻が関係していたということになれば、私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」という安倍首相の国会答弁がすべてのはじまりだったが、安倍首相は「総理を辞める」宣言のあと、菅官房長官に「私の家内の名前も出ましたから、しっかりと徹底的に調べるように」と指示を出していたことを国会でも認めている。
実際、菅官房長官はこれを受けて、同月22日に財務省の佐川理財局長と中村稔・総務課長、太田充・大臣官房総括審議官(いずれも当時)を呼び出している。ここで佐川氏は、昭恵夫人付職員だった谷査恵子氏が森友学園の小学校に賃料引き下げの優遇措置を適用できないかなどと財務省に照会していたことを報告。そして、この面談から4日後の26日から改ざん作業ははじまり、財務省の指示により真っ先に昭恵夫人や安倍首相の名前が入った箇所がことごとく削除されていく。その作業を強要されたのが、自殺した近畿財務局職員・赤木俊夫さんだったのである。
もう、財務省関係者全員無罪の背後にいたはずの、東京高検黒川検事長は、いない。
しかし、総理大臣は、改ざんに大きく関与した当事者と見られるあの男だ。
手ごわい相手だが、雅子さんは、戦っている。
日刊ゲンダイの昨日の書名記事で、相澤冬樹さんが、現在行われている裁判について書いている。
日刊ゲンダイの該当記事
赤木雅子さんは、改ざんの経緯を書き残した、いわゆる「赤木ファイル」の存在を信じ、裁判官が強制的に文書の提出を求めることのできる「文書提出命令」を国に対し出して欲しいと、裁判所に申し立てた。
俊夫さんは生前、妻の雅子さんに繰り返し「自分のやってしまった犯罪行為はすべて書き残してある」と語っており、上司だった池田靖さんも、その文書が確かにあることを雅子さんに打ち明けていた。
17日の法廷で前回に続き本人が意見を読み上げた。
国が、そのファイルの存在の有無について回答する期日は、3月22日。奇しくも雅子さんの誕生日になった。
がんばれ、雅子さん。
「ぼくの契約相手は国民です」と語っていた一人の優秀な公僕と、親の後援者の会社に職を得て、倫理に反する役所への接待に励む総理の子息は、なんとも対照的である。
私はCSの「囲碁・将棋チャンネル」をよく見ていたが、今は見るのが嫌になった。
将棋はAbemaチャンネルなどでも楽しめる。
今回の総務省接待事件は、森友事件、加計疑惑と同じ構造が問題の根底にある。
まさに、時代劇と同じような、密室での悪代官と越後屋の関係が存在することを示している。
ドラマと違って、印籠を持った副将軍や、背中の桜吹雪も鮮やかな奉行は存在しないが、国の主権者の国民はいる。
もう、こんな政治を放っておくのは、やめにしよう。
今年は衆議院選挙がある。
そこで、森友事件を含め、権力者の犯罪をあらためて裁くことができる政府をつくることに一票を投じたい。
次回は、赤木俊夫さんの人柄や、趣味なども紹介したいと思う。
