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相澤冬樹著『メディアの闇ー「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』より(6)

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相澤冬樹著『メディアの闇ー「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』

 元NHK記者、現在は大阪日日新聞編集局長兼記者である相澤冬樹の本からの六回目。
 本書は、2018年12月に文藝春秋から単行本として出された『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』を改題し、加筆した文庫版。初版は、2021年1月10日。

 前回に続き、「第6章 背任の実態に迫る特ダネに報道局長激怒」から。
 
 近畿財務局が森友側に国有地売却について、事前に支払い可能限度額を聞き出し、実際の売却額がその範囲内であったという特ダネをつかんだ相澤だったが、その内容は、国会開会中に小池報道局長が認めるはずがない、という社会部長の判断(忖度?)で、陽の目を見なかったことを、前回紹介した。

 相澤は、LデスクとK社会部長に一任した。

 では、国会が閉会したら、状況は変わったのか。

 7月に入った。さあ、そろそろ出せるかと思いきや、いっこうに出る気配がない。大阪から社会部に戻ったLデスクが電話で理由をいろいろと説明するが、要は報道局長の説得に手間取っている。タイミングが悪いということに尽きた。「ほんとに出せるのだろうか?」と疑念がわいてきた7月下旬が電話してきた。
「相澤さん、たびたび申し訳ありません。報道局長を説得するのが難しいらしくて、説得のために、何とか追加取材をお願いできないでしょうか?」
 おいおい、またハードルが上がるの? もう充分このネタを出せるだけの取材を重ねたじゃないの。・・・・・・でも、そんなことはLデスクもK社会部長も、もちろんわかっている。わかっているが、小池報道局長を説得する材料としてほしがっているのだ。仕方ない。やるか。

 相澤は追加取材の結果、大阪地検特捜部もこの情報を把握しているということを確認し、これで、小池報道局長を説得できると思った。
 本書には、結構長めの相澤の原稿も掲載されている。

 この原稿は、2017年(平成29年)7月26日の夜、「ニュース7」で放送された。ついに決定的特ダネを出したぞ。記者はネタを出してなんぼ。成果があがること、視聴者に自分のネタが伝わることが何よりの喜びだ。私とLデスクは、大阪と東京で互いに喜びあった。
 ところがその日の夜、異変が起きた。小池報道局長が大阪のA報道部長の携帯に直接電話してきたのだ。私はその時、たまたま大阪報道部のフロアで部長と一緒にいたので、すぐ横でそれを見聞きしていた。小池報道局長の声は、私にも聞こえるほどの大きさだ。「私は聞いてない」「なぜ出したんだ」という怒りの声。
 聞いていないと言うけれど、社会部長が説明したはずだから、聞いていないはずはない。これは、社会部長がネタを通すため、うまい具合に重要性がわからないような説明をしたのだろう。それで「そんな重要な話だとは聞いていない」と怒っているのだろう。
 電話はいったん切れても何度も繰り返しかかってくる。実はこのネタは大阪報道部を通さず、東京社会部から出したものだ。A報道部長は直接関知していない。しかしA部長は小池局長と同じ政治部出身で、しかも初任地が小池局長と同じ鳥取で、重なっている。小池局長にしてみれば、昔からの後輩で文句を言いやすい相手なのだろう。最後に電話を切ったA報道部長は、苦笑いしながら言った。
「あなたの将来はないと思え、と言われちゃいましたよ」
 その瞬間、私は悟った。それは私のことだ。次の人事異動で、何かあるに違いない・・・・・・。
 このネタの続報が、翌日の朝用に準備されていた。だが、小池報道局長の怒りを受けて何度も書き直され、意味合いが弱められた。さらに、翌朝のニュース「おはよう日本」でのオーダーも、後ろの方に下げられた。
 かくて、忖度報道が本格化していく。

 小池報道局長は、現在、小池英夫理事となっている。

 ここで、第6章がお開き。

 次の第7章では、籠池理事長取材に関して、籠池氏の代理人的な存在だった、菅野完(すがのたもつ)や菅野の協力者と相澤とのやりとりや、検察が補助金不正容疑で籠池氏が逮捕される経緯などが紹介されている。

 籠池理事長は、2017年7月31日、詐欺容疑で逮捕された。

 財務省の背任容疑から目をそらし、その罪を籠池理事長に押し付けようとする目くらましだ。
 
 この逮捕に、当時の東京高検黒川弘務検事からんでいることは、まず間違いない。
 もちろん、その背後には、安倍晋三がいた。


 さて、「第8章 取材体制変更で担当を外された私」から、ご紹介。

 やはり、人事で相澤に変化があった。

 NHKは例年、7月下旬の一般職人事に合わせて取材体制を見直す。森友事件が継続中の2017年(平成29年)7月の時点で、私は大阪の司法担当キャップになってまだ1年しかたっていなかった。この担当は普通2年はするものだ。しかも森友事件が進行していうこともあり、私は当然、もう1年司法キャップとして残るものと思っていた。
 一方、管理職の人事は、一般職に先立って例年6月に行われる。私が信頼する大阪報道部ナンバー2、本物の事件記者のT統括は、この年の人事で別の部署に異動してしまった。代わって着任したのは、T統括の1年後輩のS統括である。社会部出身だが災害報道が専門で、事件取材にはうとい。彼は着任早々、私にこう言った。
「相澤さん、司法クラブは三人じゃ大変でしょう。4人のほうがいいですよね」
 いや、まったくその通り。前々から人手不足だと思っていたのに、さらに森友事件が降ってきた。ほんとにてんてこまいで、猫の手も借りたいとはこのことだ。そこにこの発言。まさに我が意を得たり。私からお願いする前に向こうから言ってくれたというのが、またうれしい。記者の新体制は、報道部ナンバー2の統括が決める。いったい誰が増員で来てくれるのだろう? 私はわくわくして発表を待った。
 そして迎えた7月の一般職異動内示後の新体制発表。体制表を見ると・・・・・・司法クラブは3人のまま・・・・・・それより、私が司法クラブから外されている。遊軍になっている。どういうこと? もう森友事件を取材しなくていいってこと?
 報道部長と統括が2人そろって私に説明した。
「相澤さん、もうそろそろ後進に道を譲ってください」
 後進に道を譲るもなにも、私は別に誰もが望む地位にいるわけではない。いずれはこの立場を交代せねばならないとはわかるが、事件進行中の今、代える? どうかしてるんじゃないの? という思いがこみ上げた。だが、組織の一員である以上、途中で意見は述べても、上司の最終判断には従わざるをえない。

 やはり、人事異動が、小池報道局長の怒りに触れた相澤を待っていた。
 それも、手の込んだ方法で。

 後任の司法担当キャップになったQは、まったく取材をしなかった。

 それは、その後の人事を暗示するもと言える。

 彼は本当に回らなかった。あきれるほど。検察で取材に行くのは、地検の広報対応の窓口になっている次席検事だけ。司法クラブに行くと、いつも自分の席にでんと座っていた。森友事件でほとんとネタをとらず、原稿を書かなかった。そして翌年、2018年(平成30年)夏の異動で、彼は希望通り東京社会部に行った。そして私は、記者を外された。
 人事は組織の意思を示す。NHKの記者はみな、この人事が示す組織の意思がわかったことだろう。

 この人事が示す組織の意思の補足として、昨年、小池報道局長が理事に昇格した直後のデイリー新潮から引用する。
デイリー新潮の該当記事

今井補佐官との蜜月

 NHKは4月14日、民間企業の役員にあたる理事人事を発表した。その中で、小池英夫報道局長が理事に昇格することがわかった。
「85年入局で政治部では傍流でしたが、小池さんは特ダネ記者として皆に認められる存在でした。同期はあの大越キャスター。大越さんの方が視野の広さなど総合力でリードしていたんですが、安倍官邸に嫌われたせいでキャスターを降板してラインから外れます」
と、NHK関係者。
 そこから小池氏の出世に弾みがつく。
「政治部長から報道局長へ。そして、ここ数年、安倍政権で補佐官を務める今井尚哉さんと気脈を通じて睨みを利かせているんです」
 今井氏ら官邸中枢とはそれこそ連絡を密に取り合って、密閉、密会、密接の3密でもって局内で地場を固め、このほど報道局長から理事へ上り詰めた。
「色んなところに電話をして、警戒を怠らない。何かアンテナに引っかかったら番組の編集責任者に電話をし、5階の自室にしょっちゅう呼び出していました。小池さんの頭文字を取って、『Kアラート』と恐れられてきたんです」
 コロナ禍の中では全く存在感のない北朝鮮の飛翔体だが、アレが飛んでくると鳴るJアラートをもじったものだ。


 Kアラート、という言葉は、相澤の本にも出てくる。

 前回、小池理事は最初の勤務地鳥取で、当時鳥取県警トップの本部長だった杉田和博と知己を得たこと。
 そして、現在の杉田内閣官房副長官が、小池氏と「時々電話している」とある人物に語っていたことを相澤は危惧していたを紹介した。

 官邸とあまりにも“密”な人物が、NHKの理事になっている。
 その密接な関係から、どんなウイルスが感染しているのだろう。


 次回は、事件発覚から一年余り後の、あの悲しい出来事について。


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by kogotokoubei | 2021-02-17 12:47 | 今週の一冊、あるいは二冊。 | Trackback | Comments(0)

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by 小言幸兵衛
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