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相澤冬樹著『メディアの闇ー「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』より(4)

 森喜朗会長が、ようやく辞任するらしい。

 とはいえ、後任も、ほぼ同じ八十代の男。

 日本の男“ムラ”、年寄り“ムラ”重視の構造は、変わらない。

 敬老の心がないわけではないが、出てくる名前は、いつも同じような人なのは、今回の本質的な問題解決として不満だ。

 いっそ、高齢の方でもいいから、女性の後任は見当たらななかったのだろうか。

 探せばいると思うのだがねぇ。

 そういう発想がなかった、ということなのかもしれない。

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相澤冬樹著『メディアの闇ー「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』

 元NHK記者、現在は大阪日日新聞編集局長兼記者である相澤冬樹の本からの四回目。
 本書は、2018年12月に文藝春秋から単行本として出された『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』を改題し、加筆した文庫版。初版は、2021年1月10日。

 「第2章 一転して大報道合戦 ~小学校認可の行方~」より。
 
 第1章では、2017年2月、豊中市議会市議が、国有地の森友学園への売却金額の開示を国に求める裁判を起こし、その土地には安倍昭恵が名誉校長となる小学校が建設中であることが分かった。NHK大阪の記者相澤は、いち早く記事を書いたのだが、それは関西のみ放送のニュースのため、翌朝2月9日の朝日新聞の記事が第一報として認識されたことを、まず紹介した。
 そして、その報道から数日後、籠池理事長へのインタビューにより、森友学園からは国有地値引きへの要請をしていなかったこと、そして、10年分割としてくれたことで、賃貸より負担が大きく減ったことなどを聞き出した相澤だが、そのニュースはデスクに書き換えられた上で、またもや関西地区だけの放送だったことまでをご紹介した。

 それからの経緯について。

 今から、たった四年前のこと。

 森友学園の籠池理事長(当時)への報道各社のインタビューが行われた13日以降、籠池氏のキャラが抜群に面白いことに民放各社が気づいた。そこで全国放送のワイドショーなどで大々的に放送を展開し始めたのである。こうして森友学園と国有地売却の問題は全国の視聴者の知るところとなる。
 ところがNHKだけ全国放送で出していない。これに対して視聴者から「なぜNHKは報道しない? 政権に遠慮しているのか!」とお叱りの声が殺到したというのである。私は正確には知らないが、150件ほどの苦情があったと聞いたことがある。NHKは受信料不払いにつながることを一番恐れる。そこで報道局幹部から取材現場に「森友問題を徹底報道せよ」と指示が出たという。

 なるほど、視聴者の声で報道姿勢が変わることも、あるんだね^^
 
 有馬キャスター降板についても多くの視聴者から抗議があったと思うが、その声は、予定の人事異動として無視されるのだろう。

 その後、あの日を迎えた。

 ちょうど2月17日には、国会で安倍首相が「土地取り引きに私や妻が関与していたら総理大臣はもちろん国会議員も辞める」と答弁した。政治部がこの発言を受けて原稿を書いた。これが森友事件についてNHKの全国放送が報じた最初のニュースだ。
 だが、何しろ全国ニュースではそれまでまったく森友事件を報じていないから、なぜ首相がこんな答弁をするのかが伝わらない。そこで私がそれまで大阪で出していた原稿をもとに、森友事件についてまとめた原稿を書いた。これが、この問題で大阪から東京に送られた最初の原稿である。
 この日以降、東京でも政治部、経済部、社会部が競うように森友関連の原稿を出すようになった。それは当然、全国ニュースで大々的に伝えられる。私の原稿も以後は東京に送られて全国放送されるようになった。やれやれ、やっとまともに報じてもらえるようになった。その喜びは大きかった。

 あの2月17日の発言が、その後の文書改ざんのつながり、そして、一人の、まさに国民のために働いていた公僕を死にに追い込んだのである。

 当時の焦点は、問題の小学校が認可されるかどうかだった。

 二か月後の4月には開校予定で、すでに大阪府の私立学校審議会(通称・私学審議会)から条件付きで「認可適当」の答申を得ていた。
 通常は、そのまま開校直前に認可がおりるのだった。

 しかしこの頃、森友学園の幼稚園で「安倍首相ガンバレ」と園児に叫ばせたり、教育勅語を暗唱させたりするなど、理事長の思想信条に基づく独自の教育方針が映像と共にテレビで繰り返し伝えられるようになり、大阪府には「認可すべきではない」という声が多数寄せられるようになっていた。

 たしかに、あの頃、テレビで森友学園幼稚園の映像は、結構見たなぁ。

 私学審議会は、2月22日に臨時審議会を開催した。
 予定時間を過ぎても終わらず、その審議会後の会見は大幅に遅れた。
 その会見後の質疑で、相澤は、会長の梶田叡一と大阪府私学課の吉本課長に、食い下がる。
 
相澤 会長は先ほど「認可についてはさらに慎重に検討する」とおっしゃいましたが、それは「認可しないこともありうる」ということですか?
梶田 認可適当(の答申)が出ていれば、通常はそのまま認可します。しかし今回の場合、慎重に検討を要する。その結果、認可を認めないということもありえます。

 そして、会見終了後も相澤は、梶田、吉本を取材し、梶田からは、「認可しなかった場合に子どもたちをどうするか検討するように、事務方に指示しています」という言葉を引き出した。
 そして、吉本からは、「入学希望者をすべて把握していますから、そのすべての地元自治体と話をしています」という回答を得た。

 もう間違いない。子どもたちの地元自治体すべてと話をするなんて、認可しないつもりだからだ。私は自分の判断に確信を持った。
 ところがどういうわけか、共同通信が「小学校 認可の方針」という原稿を配信してきた。私の原稿と180度方向性が違う。こういう原稿を見るとデスクはびびる。
デスク 共同がこんなのを打ってきたんですけど、どうなんですか?
相澤  私は会見の後で梶田会長と吉本課長と話をして、二人とも認可しなことを前提に準備していることを認めました。本来なら「認可しない方針」と書きたいくらいだけど、それも差し障りがあるから、会見で会長が述べた範囲で「認可しないこともありえる」と書きました。だから大丈夫ですよ。
 これでデスクも納得し、私が当初書いたとおりの内容でニュースが出た。ところが翌朝、新聞各社もかなりが共同通信と同様に「認可の方針」のニュアンスで書いてきた。これは会見で梶田会長が「認可適当が出れば通常はそのまま認可する」と述べたところをとらえている。しかし梶田会長はその後「しかし今回は認可しないこともありうる」と述べているのである。この二つを並べれば、「認可しない」方に重点があるのは明白だが、あの会場にいた多くの記者はそのことを理解しなかったとみえる。私はこれを「記者のリテラシーの欠如」と呼んでいる。結果を見れば、どちらが正しかったかは明らかだ。

 今回は、NHKで記者であることに執着してきた著者の取材の心がけのようなものを、あえてご紹介した。

 さて、問題は、せっかく“記者のリテラシー”の高い人材がいても、その組織が生かしきれるのか、ということ。

 有馬キャスターの降板でも思うことだが、NHKには、上司部下の信頼を基盤として人を育てる“組織としてのリテラシー”が欠如していると思う。


 次回は、少し、時間を進めてご紹介する。
 
 さて、これから時短になった飲食店のアルバイトだ。

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by kogotokoubei | 2021-02-11 16:05 | 今週の一冊、あるいは二冊。 | Trackback | Comments(0)

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by 小言幸兵衛
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