ジョン・ル・カレの訃報で思うこと。
2020年 12月 16日
全著作とは言えないが、彼の多くの本を読んだし、原作とする映画も何本か観ている。
拙ブログを始める前から、Amazonのレビューを書いているが、書き始めて間もない頃、『ナイロビの蜂』を取り上げた。
Amazonの該当ページ
発行は2001年だが、日本では2003年、2005年に制作された映画を観たこともあり、このレビューを書いたのだった。
名前は、小言幸兵衛ではなく、ドナルド・E・ウエストレイク作品の主人公からいただいた、ドートマンダーである。
古いレビューで、文章も稚拙だが、ご紹介しよう。
ドートマンダー
5つ星のうち4.0 あまりにも悲しく、そして鋭い―ル・カレの新たな傑作
2006年7月26日に日本でレビュー済み
もちろん、ル・カレの代表作は『寒い国〜』やスマイリー三部作などのエスピオナージだが、今日的な題材で70歳にして新境地を切り開いたともいえるこの作品の素晴らしさには新鮮な感動をおぼえた。もちろん、後味が良いとはいえないが、この作品としてはこのエンディングが必然なのだろう。ケニアの首都ナイロビの英国高等弁務官事務所の外交官で、庭いじりの好きな温厚な紳士ジャスティン・クエイル。彼の日常は、若妻テッサの死を契機に変貌をとげる。大製薬企業、新薬を開発した医師、そして利権をむさぼる複数の者たち。巻末にある「著者の覚え書き」に、「いっさい現実世界にもとづいていない」とことわっていること自体が、大いにミステリーなのだ。
Wikipedia「ナイロビの蜂」から、執筆の背景を引用。
Wikipedia「ナイロビの蜂」
執筆の年からさかのぼる20年前、ル・カレがバーゼルのビヤホールにいたとき、黒いひげにベレー帽の男が両開きのドアから自転車ごと入ってきてテーブルのそばに自転車を置いて座った。男は化学者で、対人毒物の研究に参加することを拒絶して今は無政府主義者だと話し始めた。その人物はライン川上流の河岸にひしめく「マルチ」と呼ばれる多国籍製薬会社の悪行をル・カレの脳裏に焼き付けた。ル・カレはいつの日かこの男と「マルチ」のことを書こうと思い、ひげやベレー帽や自転車は捨てても、男の怒りだけは将来のためにとっておこうと思ったという。
ル・カレは小説の舞台をアフリカにすることを考えた。まず、国際石油企業に略奪され、汚染されたナイジェリアを舞台にすることを考えたが、どうも平凡に思えた。そんなとき、赴任先のほとんどがアフリカだった元MI6のテッド・ユーニーが製薬業界はどうかと提案した。ル・カレはケニアを取材。そして調査すればするほど、アフリカにおける製薬会社の無法ぶりに憤りを覚えたという。
本作品は「イヴェット・ピエルパオリに捧げる」との献辞がある。慈善活動家のピエルパオリはル・カレの古い友人で、登場人物のテッサ・クエイルのモデルとされている。「アフリカの貧しい人々、とくに女性への献身、慣習への軽蔑、断固己の道を行く異常なまでの信念は、かなり意識的にイヴェットに倣った」と彼は述べている。
ル・カレの作品に限らず、エスピオナージは、いわば冷戦が生み出した産物だと思う。
表立った戦争ではなく、諜報や暗殺などを中心とする東西陣営の攻防。
スパイがたくさん活躍した。
ブライアン・フリーマントルのチャーリー・マフィンのシリーズも好きだなぁ。
冷戦の終結で、作家のテーマは変貌を迫られるわけだが、70歳にして、この作品を書いたル・カレは、常に巨大な悪、権力への問題意識を持ち続けたのだと思う。
その対象の一つが、巨大医薬品企業。
そこで思うのが、コロナワクチンのこと。
今は、多くの国民が、その開発を待ち望んでいるとは思うが、果たしてワクチン開発を手放しで待望するだけで良いのか。
巨大医薬品企業は、その開発によって、どれだけの利益を上げるのか。その背景に、利権をめぐるきな臭い動きはないのか。
ル・カレの訃報で、自分の昔のレビューを思い出すとともに、そんなことを考えていた。
古典と新鋭の作家の作品とのあいだを行ったり来たり
ジョン・ル・カレ「寒い国から帰ってきたスパイ」これから読もうとしているところに伝わってきた訃報であります
そうですか、せひご一読を。
古典というと、「あるスパイの墓碑銘」なんかも好きです。
最近は、マイクル・コナリー作品が好きですが、刑事や弁護士が主人公ですね。
スパイの出番がなくなってきた^_^
海外ミステリ、冒険小説について書くときりがないですね
気にいっている作家のごく一部 C.J.ボックス(米) マーク・グリーニー(米) ジョー・ネスボ(ノルウエー) ユッシ・エーズラ・オールスン(デンマーク)
