核兵器禁止条約に署名さえしない日本は、どんな“橋渡し役”をすべきなのか。
2020年 10月 26日
ビジョンもなければ、最新の国際情勢について論究することもない。
2050年の脱炭素社会は、とてもイメージできない。
安全最優先で原子力政策を進める、なんてことは無理なのだ。
原発は、人間が管理、制御できる範囲を超える巨大かつ危険なシステムなのだから。
唯一の被爆国として世界平和に貢献する、なんてことは微塵も言わなかったね。
もちろん、核兵器禁止条約のことも、スルー。
核兵器禁止条約の批准した国が50か国となり、来年1月から発効する。
ちなみに、条約への書名と批准の違いは何かというと、批准は、署名より一歩進んでその条約に対して取り組むこと。
署名をした条約の内容について国が最終確認を行い、その条約に拘束されることについて同意を与えることが、批准。
署名をした後に、国会や議会で承認を得るなどの手続により、その条約に同意することの確認を行い、批准書を作成する。
その批准までこの条約にコミットすると宣言した国が、ホンジュラスのおかげ(?)で、50か国となったのである。
なぜ、世界で唯一の被爆国である日本が、批准はおろか署名さえしないのか。
首相や官房長官の言葉は、日本の公式な見解を繰り返すばかりであるから、その見解を確認しておこう。
外務省のサイトにこの条約に関するページがあり、そこに、「日本政府の考え」とされるものが掲載されている。
引用する。
外務省サイトの該当ページ
日本は唯一の戦争被爆国であり、政府は、核兵器禁止条約が目指す核兵器廃絶という目標を共有しています。一方、北朝鮮の核・ミサイル開発は、日本及び国際社会の平和と安定に対するこれまでにない、重大かつ差し迫った脅威です。北朝鮮のように核兵器の使用をほのめかす相手に対しては通常兵器だけでは抑止を効かせることは困難であるため、日米同盟の下で核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要です。
核軍縮に取り組む上では、この人道と安全保障の二つの観点を考慮することが重要ですが、核兵器禁止条約では、安全保障の観点が踏まえられていません。核兵器を直ちに違法化する条約に参加すれば、米国による核抑止力の正当性を損ない、国民の生命・財産を危険に晒(さら)すことを容認することになりかねず、日本の安全保障にとっての問題を惹起(じゃっき)します。また、核兵器禁止条約は、現実に核兵器を保有する核兵器国のみならず、日本と同様に核の脅威に晒(さら)されている非核兵器国からも支持を得られておらず、核軍縮に取り組む国際社会に分断をもたらしている点も懸念されます。
日本政府としては、国民の生命と財産を守る責任を有する立場から、現実の安全保障上の脅威に適切に対処しながら、地道に、現実的な核軍縮を前進させる道筋を追求することが必要であり、核兵器保有国や核兵器禁止条約支持国を含む国際社会における橋渡し役を果たし、現実的かつ実践的な取組を粘り強く進めていく考えです。
要するに、北朝鮮による核兵器の脅威とバランスを取っているのがアメリカの核であるから、抑止力となるアメリカの核の傘の下にいるためには、この条約には賛成できない、ということ。
そして、ドイツやイタリアなどNATO加盟諸国も、アメリカの核の傘の下にあり、わが国だけでなく、ヨーロッパの多くの国も署名をしていないのだよ、と言いたいわけだ。
たしかに、この50か国の批准国だけで、この条約が発効しても、実効性は低いに違いない。
実態として、核兵器を地球上からなくすには、どうすべきか。
本当に、日本という国がそのことを真剣に考えるのなら、やるべきことは何か。
外務省のサイトにある文章、“核兵器保有国や核兵器禁止条約支持国を含む国際社会における橋渡し役”を果たすとは、どういうことか。
広島県は「国際平和拠点 ひろしま」というサイトを設けている。
そのサイトに「核兵器禁止条約」の批准した国を世界地図で表している。
これが、その地図だ。
「国際平和拠点 ひろしま」サイトの該当ページ
禁止条約への批准国が北半球にはほとんどないということが一目瞭然なのである。
ちなみに、ヨーロッパで批准しているのは、オーストリア、サンマリノ、バチカン。
中央アジアで目立つのは、カザフスタンだ。
核兵器保有国と核兵器禁止条約支持国を含む国際社会における“橋渡し役”か・・・・・・。
かたや、核保有国とその核の傘の下にいる国、かたや、その脅威にさらされている、南半球中心の国々。
それらのグループの間に入っての橋渡し役って、いったい、なにができるのかイメージできない。
違うんじゃないか、と思う。
もし、日本が署名も批准もしていない立場でやるべきことは、核保有国同士の橋渡し役ではないのか。
「もう、核の抑止力なんて怖いことは、お互いやめて、地球上から核兵器をなくそう!」と、相対する核保有国の両方の橋渡し役をする、ということだ。
もし、被爆国日本がすべきこと、そして、それをすることで国際社会から尊敬される国になるためには、次のような構図での橋渡し役ではないのか。
拉致問題を含め、日本が北朝鮮と交渉すべきことが存在する。
北朝鮮は、日本にそれを期待しているかどうかは、正直、分からない。
しかし、やってみる価値はあるだろう。
米中関係の現状を考えると、中国が仲介役となるのは、難しいだろう。
韓国も、動き方がなかなかに難しい。
日本こそ、橋渡し役として相応しいように思う。
金正恩とトランプは、2018年にシンガポールで初会談、昨年は板門店でも対面している。
さて、それで何か変わったか・・・・・・。
日本こそが、核兵器禁止という目標を掲げて、米朝の仲介役となるべきだと思わずにはいられない。
菅ちゃん、「絆」が大事というなら、地球を“総合的”に“俯瞰”して「絆」のこと考えてみてはいかが。
携帯電話料金の値下げもいいけど、「未来志向」という言葉をよく使う内閣のトップなんだから、それ位スケールの大きなことに挑戦してみたはどうか。
その結果、世界で尊敬される国になれたなら、それこそが国民のために働く内閣ではないかと思う。