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やはり、天才なのかーNumber 1010「藤井聡太と将棋の天才。」より(5)


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 さて、五回目。

 「木村一基 受け師は 何度でも甦る。」より。

 書き手は、このシリーズ第一回で紹介した、藤井聡太の章を担当していた北野新太。

 取材をしての実感を得られないシリーズだった。豊橋での開幕戦から札幌、有馬、福岡と現地に赴いたが、コロナ禍の影響で対局室に入ることは一度もなかった。失冠の談話も、画面上の中継映像で聞いた。
「どれも頑張ったんですけど、実力がなかったと感じています。ストレート負けは恥ずかしい限りで申し訳ないです。一から出直します。実力ですから仕方のないこと。またやり直せというころでしょう」
 防衛戦を見つめる過程で、あの夜が何度も思い出された。2019年9月26日、王位戦七番勝負終局。時の名人だった豊島将之との激闘の終わりに、下馬評を覆した苦労人が頂点に立った。
 私は終局後に問い掛けた。「誰よりも喜んでいるのは奥様と娘さんだと思います。ご家族の存在と支えについて言葉を頂けないでしょうか」。木村は沈黙に落ち、涙を拭った。眩しい光の中で勇敢だった挑戦者は「家に帰ってから言いたい・・・・・・伝えたいと思います」と泣きながら笑った。

 この、最年長タイトル位獲得後のインタビューの様子は、20日のNHKスペシャル「藤井聡太二冠 新たな盤上の物語」で見ることができた。

 見逃した方は、再放送が9月23日 午前0:30 ~ 午前1:20 、今日の深夜。

 紹介されている木村一基のプロフィール。

 1973年6月23日、千葉県生まれ。佐瀬勇次名誉九段門下。亜細亜大学卒業後の’97年に四段。’17年九段。’09年の棋聖戦と王位戦ではあと1勝の所で敗退。7度目のタイトル挑戦だった昨年の王位戦に勝ち、46歳3カ月での初戴冠は歴代最年長。解説での軽妙なトークも好評

 今年の王位戦で、藤井聡太に四連敗した木村の様子しか知らない方は、この「解説での軽妙なトーク」を知って欲しい。

 二年前、第76期名人戦第六局、佐藤名人が羽生竜王を破った棋戦を木村九段が解説している動画があった。

 それほど笑わせる場面はないにしても、ご本人の声をお聞きいただくたけでも、印象は変わると思う。


 ねっ、印象が変わったでしょ!

 
 さて、王位戦第四局から四日後、すでに木村は、第70期王将戦第二次予選の決勝に挑んでいた。
 相手は、同学年の三浦弘行。

 三浦との決勝は木村らしい勝局になった。自らの生命である王将を戦地で遊泳させ、弾薬が果てるまで耐えた後、一瞬の反抗で討ち取った。

 これで、木村九段は、渡辺明王将への挑戦者決定リーグに出場することができた。

 将棋連盟のサイトから、挑戦者決定リーグの組合せをお借りした。
将棋連盟サイトの該当ページ
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 木村は、このリーグで藤井と再戦する。

 さて、引用の続き。

ー再び頂点を目指していく。
「もう一度、あの場所に行きたいと思うけど、もちろん大変だと思います。去年、挑戦する前に取材して下さった時も、私は『最後の挑戦になる』と言ってましたから、今回4連敗したのに、また力を上げて臨めるのか・・・・・・ちょっとネガティブに考えたりします」
 夕暮れ時、JR千駄ヶ谷駅の改札口に到着した。ふと木村の歩について思った。
 35年前、四街道の少年は奨励会に入会し、千駄ヶ谷で夢を追い始めた。17歳で三段まで達したが、23歳まで四段昇段を果たせずに退会の恐怖と戦った。タイトル挑戦は6度も実らなかった。堪え忍ぶ棋歴を投影したような棋風を評し、いつからか「千駄ヶ谷の受け師」という異名が与えられた。
 改札を抜けた木村は、東行きのホームへの階段を上がっていく。
「でも諦め始めたら現状維持も無理ですからね。勝っていれば、まだまだまだ木村はやれるって周りは思う。自分も変わっていける。負けていれば、もう木村は落ち目ってなります。だから今日は少しホッとしました。将棋指しとして生きていくことはとても長いし、できたら勝ってやっていきたい。読む能力が衰え切らないうちに全力で続けなくちゃいけないです。今の時分が前向きなものか悲観的なものなのか、整理はできないけど」
 動き始めた車両の中から含羞の笑顔を見せ、不撓の棋士は頭を下げた。
 木村一基は何度でも甦る。屈辱からわずか四日後、再出発の一日だった。

 木村九段と藤井二冠の、王将戦挑戦者決定リーグでの対決、実に楽しみだ。

 実は、今日は、そのリーグの初戦、羽生善治九段と藤井聡太二冠の対局が行われており、私は、ケーブルテレビの「囲碁・将棋チャンネル」でその対局を見ながら、この記事を書いているのであった。

 注目の対局だ。

 スポーツニッポンから引用。
スポニチの該当記事

 永世7冠資格保持者の羽生にとって藤井は過去3戦3敗(未放映対局を除く)と分が悪い相手だが、竜王戦7番勝負挑戦者に決定したばかりで上昇ムード。熱戦の期待度は120%だ。

 竜王戦挑戦者決定戦を制した19日夜の記者会見では興味深いやりとりがあった。藤井に代表される若手棋士の台頭を受け、世代間ギャップの意識を尋ねられた羽生は「同年代でも久保(利明九段=45)さんが王座に挑戦中。同世代が変わらずに活躍している。あまり世代にこだわらず目の前の一局一局を一生懸命やっていくだけ」と力強く回答。藤井の活躍は刺激になるのか、の質問には「刺激というか、2冠ですから実績を残している。(藤井の)日々の対局や棋譜を見て参考にしている、勉強しているところです」とコメントした。

 可愛い後輩として藤井を意識しているわけでは決してない。あくまで倒すべき相手の一人に見なしている。眼鏡からのぞく柔らかい瞳の奥に燃えたぎる熱い思いが隠されている。

 18年暮れに竜王位を失冠以来、タイトル戦出場すら逃していた。無冠の2年間については「移動が少なくなって体調面では楽になったというのはあります」と明かすが、今後は忙しい日々が復活する。竜王戦は10月に2局、11月に3局。2日制なので移動を含めれば1局につき4日間の拘束だ。この間に王将戦挑決リーグが計6局。かつてのハードスケジュールに再び身を置く羽生は「その辺りどうなるかはやってみなければ分からないですが」と苦笑いするものの、タイトル獲得通算100期に向けて意欲満々だ。

 かつての十段戦、竜王への挑戦権を獲得したばかりの羽生。現在49歳、来週27日に50歳となる羽生や、現在王座戦を対局中の“振り飛車”久保利明九段が45歳、そして木村九段47歳。

 おじさん棋士たちを応援する人も多いと思うが、私からは皆、一回り以上下^^

 たしかに、彼らにとって、AIとともに強くなった世代とはギャップもあろうが、まだまだ頑張って欲しい。

 その下に続くのが、次のようなタイトルホルダー。

 渡辺明三冠(名人・王将・棋王)は、36歳。
 「魔王」は、健在だ。

 豊島将之竜王が、30歳。
 藤井二冠の“天敵”^^

 永瀬拓矢二冠(叡王・王座)が、28歳。
 Numberのこの号で、この人の章がなかった。理由は、何となく、分からないでもない。

 そして、藤井聡太二冠、18歳。

 将棋界が、今、まさに熱いのである。

 今、羽生九段が長考に入った。
 藤井二冠が席を外した。

 大事な局面を迎えている。

 ということで、今回は、これにてお開き。

Commented by たろー at 2020-09-23 08:26 x
将棋藤井さん特集ナンバー1010号、異例の即日重版
将棋特集は創刊40年で初めて 発行部数は増刷分と合わせて計15万部!
人気高いですね

わたしは1011号欧州サッカー開幕特集を手に入れました
「巻頭インタビュー 久保建英」が目当て
久保君はスペインのレアルマドリーが獲得した18歳(現在19歳)
スペインリーグ強豪ビリャレアルに武者修行のため期限付き移籍中
と書きましたがサッカーに興味ないかたもいるのでここまで
動画サイトで試合をチェックしていて目下の楽しみです

Commented by kogotokoubei at 2020-09-23 11:09
>たろーさんへ

売れましたね、このNumber 1010は。

昨日は、羽生復活を思わせる勝利でした。
久保と藤井との対談をNumberで企画して欲しい!
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by kogotokoubei | 2020-09-22 16:23 | 今週の一冊、あるいは二冊。 | Trackback | Comments(2)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛