青山透子著『日航123便墜落 圧力隔壁説をくつがえす』より(7)
2020年 08月 10日

青山透子著『日航123便墜落 圧力隔壁説をくつがえす』
元日航のCAで、先輩CAも犠牲になった日航123便墜落事故の真相を、地道な調査で検証してきた青山透子さんの最新刊『日航123便墜落ー圧力隔壁説をくつがえす』から、七回目。
「第三章 沈黙と非開示ー罪を重ねる人々」から、真相究明のための青山さんや遺族の皆さんの、国側との格闘をご紹介。
青山さんや遺族の方は、事故調査委員会の議事録などの公文書に、何らかのヒントを求めてきた。
しかし、真実にたどり着くための道筋は、そんなに平坦なものではなかった。
当時の事故調査委員会が、異常外力着力点という事実をなぜ調査対象から外したのか。
本来、そこからスタートすべき事故調査報告書に、墜落原因は圧力隔壁という理由を後から付けたのは何故なのだろうか。軍事行為による「異常外力発生」によって墜落したことが間違いないとすれば、それを記したる公文書は果たしてどこに存在するのだろうか。
昨年、ご遺族の一人が請求人となって、国土交通大臣宛てに情報公開請求を行った。2019年(令和元年)六月十日に最初の結果が来る予定であると、前著『日航123便 墜落の波紋』ではここで終わっている。
この昨年から引き続き行っている情報公開に対して、2020年(令和二年)三月十日にようやく答申がきた。
日航123便墜落から、35年。
この情報公開請求は、昨年のことだ。
日航123便墜落の真相に迫りたかったのは、青山さんのみならず、遺族の方も同様で、その思いは決して30余年にわたってて途切れることがなかったのだ。それは、青山さんのこれまでの著作が支えとなっている面もあるのだろう。
本書からすでに紹介した吉備素子さんもそうだが、多くの遺族の方が、圧力隔壁説には大きな疑問を抱いている。
まず、この情報公開法の仕組みからご紹介。
答申書ー嘘も詭弁もつきたい放題
情報公開法に基づいた請求について、これがどういうものなのか、言葉の説明も含めて先に簡単に説明をしたい。
2001年にこの法律が施行されて、行政機関や独立行政法人などの職員が組織的に使用した文書、図画、電子データなど、保管しているものは、基本的に誰でも請求すれば見ることが可能であるというのが情報公開法の趣旨である。当然、前述した会議の議事録も含まれる。行政文書一件につき三百円の手数料(オンラインは二百円)で、指定されている総務省の開示請求書に必要事項を記入して、それぞれの行政機関や独立行政法人の情報公開の窓口に郵送すれば申し込みができる。非常に安くて簡単である。ただし、開示することで差しさわりがある国家の安全に関わる情報やその他諸々曖昧な基準がそこに存在しており、不開示となる場合も多い。不開示という通知に不服がある場合、審査請求ができる。総務省情報公開・個人情報保護審査課という、第三者の立場の人たち、主として学識経験者や弁護士などによって公平・中立的に不開示について審査をするという諮問会があり、その審査委員は黒塗りされていない原文やそのままの文書や図表などを見ることができる。三名が一つのチームで合議により答申を出す。その結果が「答申書」として請求者に送られてくるのである。
しかし、実際には関係省庁が審査会の結果に従わないケースや、偽の公文書を作っていたケースも明らかになり、制度そのものの形骸化も懸念されているのが現状である。
もし、情報公開法が全うに機能しているなら、財務省や厚労省の公文書で、あのような問題は起こらない。
そもそも、公文書管理の面で、違法なことをしているのである。
青山さんたちはが行った行政文書開示請求の対象は、「日航123便墜落事故のボイスレコーダー、フライトレコーダーその他調査資料一切(マイクロフィルムを含む)」であった。
これに対する運輸安全委員会事務局長からの通知結果は、一部のみ開示、あとは全て不開示であった。その一部とは何かというと、すべて英文の書類である。そこには、日本の事故調査委員会が作成した日本語のものは一つもない。しかもその英文書は、米国での一般的な解説文であり、次の七つだけである。外国人が提供した英文書を公開し、自分たちが作成した議事録おの他諸々すべては不開示という対応である。
これが、本書195ページに掲載されている、公開された英文書のリストだ。

これらはアメリカのNASA(航空烏宇宙局)やFAA(連邦航空局)、NTSB(国家運輸安全委員会)が作成したネット上でも閲覧できるような米国一般文書であって、日本の公文書ではない。日本の事故調査委員会が自分たちで作成したものや日本語の文書は一切含まれていない。この決定からは、
「遺族がその場で閲覧するのだからどうせ英語ならかわらないだろう、適当に英文書を一部開示として伝えれば、統計上一部治として数値が上がって、閉鎖的ではないという体裁が保てる」
と判断したのだと推定できる。
なぜならば、ボーイング社のジャンボジェット機の墜落に対して、わざわざ軽飛行機の衝突実験レポートや他社の別の飛行機、DC-10型機(マグドネル・ダグラス社)のレポートを開示するとしているからだ。
もちろん、この内容を不服とし、青山さんたちは、行政審査不服法の規定に従って審査請求を行った。
審査結果が、今年三月十日出て、その答申書の結論は、「本件対象の文書、その全部を不開示とした決定は妥当」というものだった。
つまり、中立であるはずの審査委員も、不開示が妥当、と判断したのである。
本書では、分厚い答申書の要点を箇条書きでまとめてある。
その論旨について、青山さんはこう記してる。
詭弁の最たるものは、
「本件事故の調査過程で内部での検討のために作成された文書が含まれており、これらは審議途中の検討段階における資料である」
つまり、三十五年間も審議途中で、現在も検討中である、と書いている。いつ審議して、どこにその形跡があるのだろうか。1987年(昭和六十二年)に最終報告書が出されて以降、2011年の解説書で、数ページもかけて相模湾で残骸が発見されない言い訳を書いたのが最後である。
審議中というならば、最も重要な相模湾での残骸引き上げすら行っていないことをどのように説明できるのか。それでもなお審議途中といえるのだろうか。言えるはずもない。なぜならば、2015年8月12日、相模湾で機体の残骸が見つかった際、運輸安全委員会はマスコミに対して、
「すでに事故調査は終了しており、コメントは差し控えさせていただく」と述べている。自らテレビという公の場において、「終了している」ことをはっきり認めているのである。
このシリーズ四回目に、テレビ朝日が、5年前の8月12日に、相模湾の海底に、日航機123便の残骸と思しきものが存在すると報道したことを紹介した。
ANNニュースサイトの該当ページ
これが、その映像の一部。

まだ審議中と重要書類の開示を拒み、相模湾に残骸が発見されると、「調査は終了」と答える。
まったくの誤魔化しであり、その背後には、真相を知られては困る、という国側の理由が明白に読み取れる。
情報公開請求には、関係のない英文資料、それもすでに誰でも入手できる資料を「ほれ、くれてやる」とばかりに出して、統計上は「一部開示」したと誤魔化す。
情報公開法も、他のさまざまな法律同様、ザル法となっている。
本書では、この答申書全文が巻末に掲載されている。
なぜなら、総務省のサイトでいつ消えるか分からないからだ。
さて次回は、本書口絵の次の写真に関連する、墜落原因の真相に、青山さんが迫る部分をご紹介したい。

フライトレコーダーと、調査報告書『別冊』を丹念に掘り起こし、異常外力が垂直尾翼に着地したことが分かった。
では、いったい、何が起こったのか。
