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噺の話

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ウイルス、そして感染症について学ぶ(1)ー石弘之著『感染症の世界史』より。

 新型コロナウイルス感染拡大に関し、ネットでは有益な情報も得られないことはないが、もちろんデマや、偏見、誤った楽観主義もはびこっている。

 専門家と言われる人々の意見もメディアで聞くのだが、対処の方法などはためにもなるが、より基本的な知識の習得にはなりにくい。

 そもそもウイルスとは何で、感染症には、これまでどんな歴史があったのか。

 先日書店で見つけた本が、これだ。

ウイルス、そして感染症について学ぶ(1)ー石弘之著『感染症の世界史』より。_e0337777_14485301.jpg

石弘之著『感染症の世界史』
 2014年に洋泉社から発行された後、一昨年、角川ソフィア文庫で再刊された『感染症の世界史』。私が入手したのは、今年2月の第四版。売れているのだ。

 著者の石(いし)弘之さんは、昭和15年生まれで、朝日新聞社でニューヨーク特派員や編集委員などを経て退社され、ザンビア特命全権大使や国際協力事業団参与などを務めた方。 
 代表作と言える著書『地球環境報告』(昭和63年、岩波新書)は、ずいぶん前に読んだ。
 世界八十か国以上を自ら調査し、地球生態系の崩壊が加速度的に進行し、砂漠化、森林の消滅、さらには酸性雨、フロンガス、食品の化学汚染などが危機的な状況にあることを指摘したルポルタージュの傑作だ。

 そして、今、この状況の中、新たな代表作になりつつあるのが、この本。

 「はじめに」の最後の部分を、ご紹介。

 地球に住むかぎり、地震や感染症から完全に逃れるすべはない。地震は地球誕生からつづく地殻変動であり、感染症は生命誕生からつづく生物進化の一環である。十四世紀のペストといい、二十世紀初期のスペインかぜといい、感染症は人類の歴史に大きく関わってきた。今後とも影響を与えつづけるだろう。
 微生物は、地上最強の地位に登り詰めた人類にとってほぼ唯一の天敵でもある。同時に、私たちの生存を助ける強力な味方でもある。その絡み合った歴史を、身近をにぎわす感染症を選んで、環境史の立場から論じたものが本書である。この目に見えない広大な微生物の宇宙をのぞいていただければ幸いだ。

 石さんは、感染症の原因となる微生物は、人類よりはるか昔、四十億年前からずっと途切れることなくつづいてきた「幸運な先祖」の子孫であり、人間が免疫力を高め、防疫体制を強化すると、微生物もそれに対抗する手段を身につけてきた、と説く。

 環境破壊や感染症の現場を、石さんは体を張って取材してきた。
 
 「あとがき」の冒頭部分から、そんな著者の病歴(?)をご紹介。

 人間ドックで書類をわたされて、検診の前にさまざまな質問の回答を記入せよという。面倒な書類なのでいい加減に欄を埋めて提出したら、若い看護師さんから「既往症をしっかり記入してください」とたしなめられた。
 しかたがないので「マラリア四回、コレラ、デング熱、アメーバ赤痢、リーシマニア症、ダニ発疹熱各一回、原因不明の高熱と下痢数回・・・・・・」と記入して提出したら、「忙しいんですからふざけないでください」と、また叱られた。
 ふざけたわけではなく、アフリカ、アマゾン、ボルネオ島などで長く働いていたので、注意はしていたつもりでもさまざまな熱帯病の洗礼を受けた。ジャングルのテントの中で高熱で半分意識を失って横たわっているのも、トイレに座ったきり一晩中動けないのも、思い出すだけでもつらいものだ。よくも生き残ったと思うこともある。

 なんとも凄い体験であろうことか。

 それだけ、ジャーナリストとして体を張った取材をしてきたということだろう。

 「序章 エボラ出血熱とデボラ熱」の中で、「森林破壊が引き出したウイルス」という項目の部分に、こう書かれている。

 過去のエボラ出血熱の流行の大部分は、熱帯林内の集落で発生した。だが、ギニアの奥地でも人口の急増で森林が伐採されて集落や農地が広がってきた。森林の奥深くでひっそり暮らしていたオオコウモリが、生息地の破壊で追い出されてエボラ出血熱ウイルスをばらまいたのかもしれない。
 映画『アウトブレイク』のなかで、アフリカの呪術師のこんな言葉が引用されている。「本来人が近づくべきではない場所で人が木々を切り倒したために、目を覚ました神々が怒って罰として病気を与えた」。
 エボラ出血熱の流行は大規模な自然破壊の直後に発生することが多い。たとえば、ガボンはマンガン鉱、ウラン鉱などの地下資源の宝庫だ。1994年にガボンでの流行は、金鉱山の開発で広大な森林が破壊された直後に発生した。
 かつて国土の大部分が熱帯林でおおわれていたシエラレオネでは、国土の4%しか森林が残されていない。それも壊滅するのは時間の問題だ。リベリアで残された熱帯林は20%以下で、その森林の伐採権の多くが海外の企業に売り渡されている。
 以前にコートジボワールのタイ国立公園を調査したことがある。手つかずの熱帯林が残され、コビトカバやボノボなど絶滅危惧種に指定された希少な動植物の宝庫で、世界自然遺産にも登録された。だが、焼き畑が虫食い跡のように広がっているのを目の当たりにして愕然とした。
 近隣のマリ、ニジェールなどサハラ砂漠南縁のサヘル地帯では、過去四十年間に繰り返し深刻な干ばつに見舞われてきた。そこから逃げ出した飢餓難民が国立公園内に入り込んで違法な農業で暮らしている。ここで「タイ森林株」のエボラ出血熱ウイルスが発生したことは容易に理解できる。

 長年環境問題を取材してきた石さんとしては、環境破壊と密接な関係にある感染症への調査は自然の流れだったのかもしれない。

 環境破壊と貧困は、感染症と深く結びついている。


 さて、石さんの本で、感染症の勉強を続けようと思う。
 
 次回は、ウイルスとは、いったいどんなものなのかということを中心に、紹介したい。

 最後に、KADOKAWA WEB文芸マガジン「カドブン」に、2月20日付けで石さんへの、新型コロナウイルスに関するインタビューが掲載されている。

 この本の重版に合わせた記事のようだ。

 一部引用する。
「カドブン」の該当インタビュー

――今後の流行をどうみていますか。

石:感染症の拡大パターンについては、さまざまなシミュレーションが行われてきました。2 つの予測を紹介しましょう。

 新型インフルエンザ流行のときに、国立感染症研究所がつくった感染拡大のシミュレーションがありますが、これには背筋が寒くなりました。

 ある男性が新型インフルエンザにかかって電車で出社すると、4 日後には 30 人だった感染者が 6 日後には 700 人、10 日後には 12 万人に広がるという結果でした。むろん、コロナウイルスがこうなるとは限りませんが。

 もう一つ、「スモール・ワールド現象」といわれる数学的なシミュレーションがあります。小説の題材になり、TV番組でも取り上げられました。米国の心理学者ミルグラム教授が、米国中部のネブラスカ州の住人 160 人を無作為に選び、東海岸の特定の人物に知り合いを伝って手紙を受け渡せるか、という実験をしました。

 その結果、わずか 6 人が介在すれば、まったく知らない人にまで届くことができました。各国の同様の実験でも同じような結果でした。

 つまり「人類は 6 人が仲立ちすればすべて知人」ということです。手紙をウイルスに置き換えてみてください。容易ならざる事態であることは理解いただけるでしょう。

 世界で感染症を取材してきた人の言葉である。

 たしかに、「自粛」期間の辛さは募るが、そのストレスに耐え、ウイルスとの闘いに勝たなければならないのだろう。

 イギリスのジョンソン首相は、日本時間の本日早朝、必需品の買い物や治療、絶対的に不可欠な仕事への通勤などごく一部の理由によるものを除く外出を、ただちに禁止すると発表した。

 では、日本は・・・・・・。
 外出禁止令が出されていない以上、自分たち自身で、判断し行動しなければならないし、日本人は、それができるはずなのだ。

 今日は、久しぶりに会社もアルバイトも休み。
 犬の散歩以外は家にいて、この本を読んでいた。

 時差出勤とはいえ、それほど空いていない電車での通勤や、人出不足の中でのアルバイトはしょうがないとは思うが、不要不急の外出は戒めなければ、と思う。

Commented by saheizi-inokori at 2020-03-25 16:06
六人必要なケースは少ないのじゃないかな。
トランプなんて二人で届く。もっとも有名人のほうが届きやすいかも。
それにしてもあべや小池のだらけぶり!救われませんね。
Commented by kogotokoubei at 2020-03-25 20:53
>佐平次さんへ

なるほど、一人で三人分くらいの感染力のある人物も、たしかにいるでしょう。
五輪開催の時に自分が首相や知事でありさえすれば、他のことはどうでもいい、そういうゲスな本音が透けて見えます。
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by kogotokoubei | 2020-03-24 19:36 | 今週の一冊、あるいは二冊。 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


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