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落語芸術協会、桂宮治の抜擢真打昇進で思うこと。

 落語芸術協会のサイトで17日付けで案内されているが、桂宮治が、来年二月、抜擢で単独真打昇進をする。
落語芸術協会サイトの該当ニュース

 昨日20日届いたメールマガジンも、次のように伝えている。
この状況下ではございますが、当協会より新しい真打昇進のニュースを発表させて頂きました。来年二月中席より桂宮治が真打に昇進いたします。応援よろしくお願いいたします。その前に本年五月上席より三名の真打が誕生いたします。昔昔亭桃太郎門下、昔昔亭A太郎、瀧川鯉昇門下、瀧川鯉八、桂伸治門下、桂伸衛門の三名です。顔付けも順調に進んでいます。決まり次第ホームページにアップいたしますのでお楽しみに。

 ちなみに、今年五月昇進の中の桂伸衛門は、現在の伸三である。

 たしかに、こんな閉塞感漂う時期、宮治の抜擢は明るいニュースには違いない。

 前座時代から長い間聴いている人なので、少し古い記事を振り返りたい。

 最初の高座は、本来出番がないはずだったのに、周囲に押されて登場した、2009年の「らくだ亭 20回記念特別公演」だった。
2009年5月16日のブログ
 日本橋から離れ、神保町の日本教育会館・一ツ橋ホールで開催された会の開口一番だった。
 
 こんな感想を書いていた。

宮治(14:00-14:04)
 本人いわく、本当は出る予定ではなかったのだが、楽屋の諸先輩に押し出されて出てきたようである。芸術協会で伸治師匠の弟子。昨年入門の前座で30歳を越えているようだが、携帯電話などの諸注意と小噺を4分でなんとかこなし、会場は意外に暖かい拍手で送り出した。なかなか見所がありそうだ。がんばってください。

 あの頃は、開口一番にも、こんな丁寧な表現をしていたんだ^^

 入門が平成20(2008)年2月、3月から楽屋入りだから、入門後一年余りの時期。
 ちなみに、平成24(2012)年3月下席より二ツ目昇進。

 最初に開口一番の正式な(?)高座を聴いたのは、2010年の3月の横浜にぎわい座「西のかい枝東の兼好」。
2010年3月5日のブログ
 『強情灸』について、こんなことを書いていた。
体型や顔の輪郭が、このネタを得意にした五代目小さんに似ていないこともない。元気あふれるキャラクターも好ましいし、なかなか将来が楽しみだ。

 同じ2010年10月、横浜にぎわい座の地下秘密倶楽部(?)のげシャーレで開催された百栄と一之輔の二人会でも、宮治の開口一番を聴いている。
2010年8月20日のブログ
 ネタは、NHKで優勝した際と同じ『元犬』だった。
 飛び入り的な出演も含めると、三度目の高座。
 ずいぶん感心した。
 こう書いている。
宮治 (19:00-19:16)
 昨年のらくだ亭20回記念落語会、そして今年3月の“かい枝・兼好ふたり会”以来の3回目。芸術協会から開口一番での登場は、この後の一之輔のマクラによると歌丸にぎわい座館長への“ヨイショ”とのこと。
伸治門下のこの人には、いわゆるフラも感じるし、見た目も含め噺家にとって得な雰囲気を持っているように思う。噺も聞く度に上手くなっている。やや太めのモヒカン刈りの落語家は、もしかすると大器かもしれない。

 見た目の印象の強さもあるし、大きな所作、語り口のリズムの良さなど、前座の枠を超えた高座だった。

 2012年のNHK新人落語大賞で大賞受賞は、私も納得。
2012年11月4日のブログ

 二ツ目で出会った高座で印象に残ったのは、2014年2月、にぎわい座での柳家三三の会で披露した『宿屋の仇討』だ。
2014年2月5日のブログ

 この会は、家族旅行に行く予定だったのだが、三三からの誘いを断れなかったと語っていた。それだけのことはあった、実に良い出来で、私はマイベスト十席候補とした。
 少し長くなるが、こんなことを書いていた。
 芸術協会の大先輩、昇太との静岡での落語会の帰りの新幹線ネタは、ちょっと明かせないなぁ。それにしても、落語協会の三三にヨイショではなかろうが、あれだけのことを言って笑いをとる宮治、白酒、兼好とともに“ブラック団”の一員として認めよう^^
 そんな爆笑のマクラから本編へ。結論から言うと、こんな弾けながらもよく工夫された『宿屋の仇討』は初めてである。スケールも大きいし、動きもあって、なおかつ頗る可笑しい。 時間の関係でやや駆け足だったが、それが結果として私には心地よいスピード感だった。
 まず、万事世話九郎が良い。伊八を呼ぶ時の声が大きく、よく通る。その声だけで、一時の間と笑いを引きだす。「昨夜は相州小田原の宿~」の繰り返される科白も立て板に水。隣りの三人組が相撲をとり始め二度目に伊八を呼んでからの「今、捨衣(すてごろも)が八連勝中じゃ」には笑った。
 その、源兵衛たち三人。最初の宴会では、最後に裸踊りまで登場するはしゃぎ振りなのだが、相撲で叱られた後、巴寝になってからの場面も良い。源兵衛が川越での一件は、やや怪談話風に声を潜めて語り出し、次第に物語が陰惨となって聴いている二人も固唾をのむのだが、少しの間の後で、「源兵衛は、色事師!」の合唱になり、本人まで、「俺は、色事師!」と歌い出す。緩急のある演出が、ややもするとダレる場面を盛り上げた。
 翌朝の万事世話九郎のとぼけた味、伊八の困惑した表情なども含め、とても二ツ目どころか、真打の中堅どころと言って良い出来栄えの高座、文句なく今年のマイベスト十席候補として推す。
 先代柳朝が師匠彦六からの伝統を引き継ぐ内容など、これまでに幾多の名演のある噺だが、魅せて聴かせる宮治のこの高座は、しばらくこの噺ならこの人、と言わせるだけの内容と言っても過言ではないだろう。恐るべき宮治。私にとっても、彼がグァムに行かなくて良かった。

 二ツ目の高座で、マイベスト十席の候補にしたことがあるのは、一之輔と宮治だけだ。

 さて、目出度い、のではあるが、香盤で宮治の上に五人いる。
 
 芸術協会のサイトの協会員プロフィールから、その五人と宮治の履歴を確認しよう。
落語芸術協会サイトの該当ページ

 ちなみに、全員、生で聴いている。

三遊亭小笑
平成19年(2007年)3月 三遊亭笑遊入門 前座名「小笑」
平成23年(2011年)3月 二ツ目昇進

春風亭昇々
平成19年(2007年)4月 春風亭昇太入門 前座名「昇々」
平成23年(2011年)4月 二ツ目昇進
*平成28年(2016年) 第二回渋谷らくご大賞

春風亭昇吉
平成22年(2010年)5月下席 二ツ目昇進
*平成27年(2015年)12月 第一回若手演芸選手権優勝
*平成28年(2016年)9月 第27回北とぴあ若手落語家競演会 北とぴあ大賞
(注)サイトには書かれていないが、平成19年(2007年)4月 春風亭昇太に入門のはず(管理人記)

笑福亭羽光
平成10年(1998年) 4人組お笑いユニット「爆裂Q」として活動
講談社週刊少年マガジンの第三十五回ギャグ漫画新人賞をきっかけに「のぞむよしお」のペンネームで漫画原作者としての活動を開始する。
平成19年(2007年)3月 爆裂Q解散
平成19年(2007年)4月 笑福亭鶴光に入門
平成19年(2007年)6月 前座となる
平成23年(2011年)5月下席 二ツ目昇進
*平成25年(2013年)3月 第12回さがみはら若手落語家選手権 優勝
*平成25年(2013年)9月 第24回北とぴあ若手落語家競演会 大賞
*平成30年(2018年)12月 2018年渋谷らくご創作大賞

春雨や風子
平成19年(2007年)秋、四代目春雨や雷蔵に入門
平成20年(2008年)2月 浅草演芸ホールで初高座(演目は「転失気」)
平成24年(2012年)3月 二ツ目昇進

桂宮治
平成20年(2008年)2月 桂伸治門下として二月下席より浅草演芸ホール楽屋入り
平成20年(2008年)3月 浅草演芸ホールにて初高座「子ほめ」
平成24年(2012年)3月 下席より二ツ目昇進
*平成24年 NHK新人演芸大賞 落語部門 大賞
*平成25年 にっかん飛切落語会 最優秀賞
*平成26年 前橋若手落語家選手権 優勝
*平成26年度 国立演芸場「花形演芸大賞」銀賞
*平成26年 にっかん飛切落語会 最優秀賞 (二年連続受賞)
*平成27年 第26回北とぴあ若手落語家競演会 北とぴあ奨励賞
*平成27年 第2回高円寺エトアール寄席二ツ目グランプリ決定戦 優勝

 やたら、宮治の受賞歴が多い。

 落語家としてのスタートが遅かっただけ、貪欲に賞レースに参加し、結果を出してきたことは、認める。

 真打としての力は、十分あるのは、あの『宿屋の仇討』で実感している。


 しかし、この五人を抜いて単独で昇進することには、若干の疑問も残る。


 たとえば、昇吉も、実力は十分ある。

 宮治が受賞した2012年のNHKでは、季節はずれの『たがや』で、今一つだったが、二年後の、『紙屑屋』に感心した。朝也(三朝)が、喜多八譲りの『やかんなめ』で優勝だったが、私の採点は、朝也と昇吉が同点だ。
2014年11月3日のブログ

 また、羽光は、「さがみはら」と「北とぴあ」の二冠。
 末広亭の『生徒の作文』で、他の噺家さんではほとんど笑えないこのネタで、私はずいぶん笑ったことがある。

 昇太門下の二人を追い抜く、というのは、会長である昇太だからの決断とも言えるだろう。

 昨年の小痴楽、そして、今年、後半はコロナの影響を受けたが、伯山のそれぞれの単独昇進は、芸協にとってPR効果もあったし、興行的な成果もあったと思うが、どうも三匹目のどじょうを焦って狙っている気がしてしょうがない。

 まず、香盤順に上の五人、あるいは、昇吉と羽光の二人を昇進させてから、単独昇進でも良かったのではなかろうか。

 宮治の動員力は確かにあるだろう。
 苦労人として、これまでの努力が報われることは嬉しいが、あの独特の個性は、人にとっては、好き嫌いがある。

 増長はしないと思うのだが、やや拙速な抜擢に思えるんだなぁ。


Commented by at 2020-03-22 07:20
メディアへの登場が多いことなどが買われたのでしょうか。
初めて見たとき、桂才賀の若き日に似てると思いました。
う~ん・・・たしかに抜かれた五名もそれぞれ頑張っていますよね。
Commented by kogotokoubei at 2020-03-22 08:33
>福さんへ

私は、来年春に昇吉と羽光の昇進、秋に宮治単独の昇進でも良かったのではないかと思っています。
また、ミックス寄席の加藤さんなどが独演会を開催するなど周囲の支援もあっての観客動員です。
小痴楽や伯山のようなお客さんの入りがあるかというと、疑問です。
Commented by よっしー at 2020-03-22 09:02
宮治。確かに好き嫌いのわかれる噺家さんと思います。少し騒ぎすぎですね。
Commented by kogotokoubei at 2020-03-22 15:55
>よっしーさんへ

少なくとも、昇吉、羽光を追い越す抜擢は、賛成できません。
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by kogotokoubei | 2020-03-21 19:36 | 真打 | Trackback | Comments(4)

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by 小言幸兵衛
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