映画「パラサイト 半地下の家族」の魅力(3)ー構成と演出。
2020年 01月 24日
「パラサイト 半地下の家族」公式サイト
映画「パラサイト 半地下の家族」の感想、三回目。
構成や演出といった監督の手腕による、この映画の魅力について。
---まさに、ネタバレになるので、ご注意のほどを---
(1)コメディ/コン・ゲーム/ミステリー/ホラーの全てを味わえる魅力
前半は、キム一家が、パク一家に寄生(パラサイト)するプロセスをコミカルに描く、良質のコメディの楽しさがある。
もっと言えば、キム一家が、一人づつ偽装してパク一家に寄生していくプロセスは、コン・ゲームとしての楽しさがある。ジェフリー・アーチャーの「百万ドルを取り返せ!」を彷彿とさせる、騙しの手口を見るワクワク感があった。
寄生する順番で書くと、キム家の長男ギウは、名門ソウル大学の学生として、妹ギジョンが作った偽の大学合格証を持って、パク家を訪ねた。
妹は、アメリカで美術を学んだと偽りパク家を訪問。パク家の長男ダソンの絵を観て、彼には心の病があると指摘し、ネットで知った美術による診療が必要と母親を説得。その際、これは偶然としか思われないが、ダソンに小学一年生のとき、何かトラウマになる事件があった、と言い、母親は驚き、ギジョンにすっかり騙される。
そして、ギジョンは、女好きと思われるパク家の運転手にベンツで送ってもらう途中で、なんと下着を脱ぎ後部座席に捨てる仕掛けを施す。見事に、この下着をパク家の主人が発見し、妻と相談して穏便に運転手を辞めさせる。
まんまと策略が功を奏して、ギジョンは、親戚の金持ちの運転手をしていたと偽り、父ギテクを紹介。
ギテクがギウと一緒にベンツのディーラーへ行って試乗しながら構造を覚えるなんて姿も、なかなか可笑しかったなぁ。
さて、最後は、家政婦への攻撃だ。
なぜか子供たちが好きな桃を出さないのは、桃アレルギーと知り、家政婦ムングァンへの桃作戦を開始。
ムングァンが病院に行く様子をスマホで取ったギテク。その映像をパク家の母ヨンギョに見せて、「実は、ムングァンは結核だ」と告げる。ムングァン、理由もなく解雇。目出度くキム家の母、チュンスクが、新しい家政婦となって、キム一家四人全員の寄生が完成。
この前半のコン・ゲーム的なコメディで、大いに笑った。
そして、パク一家が、息子の誕生日は外で祝うという恒例行事のためキャンプに出かけた、雨の夜。
コメディーは元家政婦ムングァンの訪問から、いきなりミステリータッチになり、地下の存在が明かされてからは、ホラーの色彩を強く帯びてくる。
こんな、ごった煮的な、お腹いっぱいの映画だから、人によっては、その展開についていけないかもしれない。しかし、このリズムに乗れたら、これほど楽しい映画もないだろう。
(2)“外し”の巧みさー予定調和ではない魅力
次に構成、演出上での魅力を挙げるなら、観客の思いを、見事に裏切ってくれることだろう。
たとえば、あの雨の夜、見る者は、次第に勢いを増す雨から、「おい、パク家が帰ってくるんじゃないか、大丈夫か?」という不安を抱いて当然。そこに、チャイムの音だ。「ほーら、帰ってきた!」と思ったら、ドアチャイムの映像には、あのムングァンが、雨に濡れ、情けない様子で写っているではないか。
なんとも、巧い、外し方。
そして、地下の秘密が明かされ、つい、隠れそこなったキム家とムングァン夫婦との、壮絶な戦いとなる。その様子につい見入っているところへ、電話。
パク家が、あと8分で家に着く、とのこと。着くまでにジャージャー・ラーメンを作ってくれ、と家政婦となったチュウスクに注文。
母はジャージャー・ラーメン作りを急ぎ、他の三人は、地下を片付け、また、宴の後を片付け・・・という中で、パク一家のご帰還。
まだ、見られたくない場所が、あちらこちらに。このあたり、「見つかったら、どうなる?!」と観客への不安の与え方も、巧いのだ。
外し方の魅力は、最後の方にもある。
それは、キク家の長男ギウが、金持ちになって、父が地下に隠れたままの元パク一家の家を買う、という夢の映像。これ、空想の映像と分った人もいるかもしれないが、私は騙された^^
「えっ、もうそんなに金持ちになっちゃったの?」と思っていたら、残念でした、となるわけだ。
なんとも、見事な外し具合であろうか。
(3)セットの魅力
あの半地下の家も、高台の豪邸も、セットと知って驚いた。
プロダクション・デザイナーのイ・ハジュンが、監督ポン・ジュノの難しい注文に応え、半地下は、そのかび臭い臭いもしそうな空間に仕立て、高台の豪邸は、一階のみ200坪という、誰もが羨む豪邸に作り上げた。
半地下の家の周辺には、農薬を撒く前に、ハエやゴキブリも撒かれていた^^
この細部までの入念な作り込みは、「万引き家族」で是枝監督がこしらえたあの家のことを思い出させる。しかし、ポン・ジュノ監督とイ・ハジュンの方が、スケールは大きい。
アカデミー賞美術賞の方が、作品賞より受賞確率が高いのではなかろうか。
それだけの魅力が、あのセットにはあった。
ということで、映画「パラサイト 半地下の家族」の魅力についての記事、これにてお開き。
アカデミー賞ノミネート作品、もう一本くらいは観ておきたいものだ。
現世よりももっと高み?階層社会を超えている?
父親が地下から送ってくるモールス信号のメッセージを確認しましたね。
そうそう、パク家の長男ダソンも、テントからムングァンの夫の信号を解読できたのに、その後に何らアクションはなかったなぁ。この映画を観ての、数少ない疑問の一つです。
