「贋作男はつらいよ」第三回の感想、など。
2020年 01月 20日
元になったオリジナルは、昭和51年の第17作「夕焼け小焼け」。
マドンナは、芸者ぼたん役の太地喜和子。
宇野重吉が、日本画家の大家、池ノ内青観役。
以前、48作の観客動員数などについて記事を書いた。
2015年6月8日のブログ
動員数は200万越えとはならなかったが、私は、この作品が好きだ。
なんと言っても、太地喜和子が良いし、宇野重吉も渋かった。
古書店、大雅堂の主人に大滝秀治という、贅沢なキャスティング。
寺尾聰も出演したから、父子とも出演という回でもあった。
プロローグ夢のシーンは、前年大ヒットした「ジョーズ」のパロディだったね^^
「雁作」では、ぼたんを龍野芸者ではなく京都の芸子に設定し、田畑智子が務めた。
ぼたんが活躍するのは次回なので、最終第4回を観てから、彼女の演技について感想を書こう。
池ノ内青観役は、田中泯。
宇野重吉に代わる俳優としては、うってつけだろう。
酔っ払って泊めてもらった石切とらやを、宿と間違えるトボケぶりや、だらしない酔っ払い老人の演技、必ずしも宇野重吉に大きく劣るものではなかった。
オリジナルにしろ贋作にしろ、この作品の教えてくれることは多い。
静観は、宿ではなく、だんご屋だと判明し、自分ができる礼のつもりで、サラサラっと縁起物の「宝珠」を描く。
それを大雅堂に持って行くと、なんと20万円の値がついた。
寅は、その金を持ち帰り、おいちゃんおばちゃん、さくらにバラ撒くのだが、さくらにたしなめられる。
さくらは、貧乏老人と思って皆が静観を嫌ったことについて、寅がたしなめてくれたことを思い起こさせる。
これ、オリジナルでは、こんな寅さんの言葉があったのだ。
「男はつらいよ」のデータベースとして有名な、画家吉川孝昭さんのサイトにある「男はつらいよ覚え書きノート」から、引用する。
吉川孝昭さんのサイト
寅 しかしな、おいちゃん、あのジイさんの立場になってみろよ、えっ?
どうせ貧しい借家住まいだよ。
せがれと嫁と孫が二、三人、こんなせまっ苦しいとこに暮らしてたんじゃおまえ、年寄りは肩身の狭い思いをするぜ、ええっ?
夜中にふと目がさめる。
隣でもってせがれ夫婦の寝物語。
そりゃ聞きたくなくたって聞こえてきちゃうもの、ええっ
『ねえパパ、あたし今日友達と会ったの。うらやましかったわあ!お舅さん死んだんだって
うちのおじいちゃんいつまで生きてんのかしら嫌になっちゃう!』
(中 略)
これは地獄ですよ!年寄りにとって!ええ?せめて一日このうちから逃げ出して
意地悪な嫁のいないところでぐっっすり寝てみたい。
この気持ちはよぉーく分かるなあ。
タコッお前人事じゃないぞ。
お前だってすぐアーなっちゃうよ。
タコ社長 そう言われりゃそうだなあ・・・・・・
寅 まあ、夕べは良い功徳をしてやったってことになるわけだい、なっ。あのじいちゃんもどっかで感謝してるよ、え、おばちゃん
皆が、寅の言葉で、無償の奉仕をしたのだ、とさくらは言いたかったのである。
情けは人のためならず、である。
また、今回は、落語愛好家にとっても楽しい場面があった。
ただの可愛そうな老人と思っていた静観が、実は日本画の大家で、その絵に予想外の高値がつくという筋書きが、『抜け雀』や『井戸の茶碗』、『竹の水仙』を彷彿とさせる。
寅が20万円を返しに静観宅を訪れた際に、お互いがその金の入った封筒を相手に押し付ける姿は、まさに落語的^^
そして、その金をパァーっと使おう、ということで両人が合意し、祇園での宴会。
寅が、なんと『池田の猪買い』を余興で演じているではないか。
これは、雀々の寅であればこそ、の演出。笑った^^
山田洋次は、本当に落語が好きなんだなぁ、と思う。
さて、次回は、もう最終回。
ぼたんは、どんな悩みをとらやに持ち込んできて、周囲はどうその窮地を救おうとするのか。
楽しみである。
NHKサイトの該当ページ
田畑智子さんは、実家が祇園の御茶屋。流石、子供の頃から芸妓さんや舞妓さんを見ているだけにサマになっています。
雀々さんのシーン「動物園」のトラが歩くシーンも演じておられましたね。「前足を交互に出すと、トラが歩いている様に見える」という。
本作は先日放送された「浪花の恋の寅次郎」を初めて見ました。これは贋作では扱えないですね。別の地域に移さないと。
来週最終回、楽しみです。
山田洋次さん、ほんとに落語好きなんですよ^^
あの「池田の猪買い」は、一瞬「動物園かな?」とも思いました。
枝雀生誕70年の会で彼の「動物園」に出会いましたが、驚きました。
決して、上方では前座の軽いネタではないですね。
「浪花~」ですか、松坂慶子ですね。
あの作品も好きです。
というか、前半の30作目くらいまでは、全部好き^^
あっと言う間に次回が最終回ですね。
楽しみでもあり、名残惜しくもあります。
今の文治がTBS落語研究会で「ラーメン屋」を演じましたが、ややオーヴァーなのが奏功して涙を誘い、後半の場面は「男はつらいよ」に通じるものがありました。
別の不動産屋は、青空一夜でしたね。
「ラーメン屋」は、寿輔の池袋での高座が印象に残っています。
雲助も悪くないですね。
たしかに、寅さんの世界に通じるものがあります。
今では失われた、共同体の物語ということでしょう。
だから、魅かれるのかな。
