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噺の話

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「贋作男はつらいよ」ー桂雀々の名演で思うこと。

 山田洋次脚本、桂雀々主演のNHK BS プレミアムドラマ「贋作男はつらいよ」の第一回を見のがしたので、昨日午後四時半からの再放送を見てから、午後十時からの第二回目を見た。

 NHKのサイトにあるように、葛飾から東大阪市・石切神社の参道にある甘味どころ「くるまや」に舞台を移した、関西版。
NHKサイトの該当ページ

 雀々が寅さんにふんして注目を集めた落語会「桂はつらいよ」を山田洋次が見たことで、新しい寅さん像を着想した、と説明されている。

 なるほど、桂雀々の演技には、感心させられた。

 吉永小百合がマドンナとして有名な「柴又慕情」と「寅次郎恋やつれ」が下敷きとなっている。
 吉永小百合と松下奈緒、さくら役、倍賞千恵子と常盤貴子を、あえて比較することもないだろう。
 
 このドラマは、パロディではなく、なるほど本物がつくったあらたな本物のドラマだと思う。

 何と言っても、雀々の寅さんが、いい。

 その演技の背景には、雀々の少年期の体験が大きく影響しているような気がしてならない。

 相当前になるが、彼の著作『必死のパッチ』を紹介した。

 彼は、父親から心中の巻き添えにされかけた経験をしている。

 最初に人前でしゃべってお金をもらったのは、一人ぼっちになった中学一年の時、家にやって来た借金取りへの泣き落としの一席(?)だった。


 雀々がどんな過酷な少年期を過ごしたのか、以前のブログを引用したい。
2010年4月30日のブログ

そう、オトンは屋台のうどん屋だったのだが、博打好きのため多額の借金を抱え借金取りがやってくるようになり、そんな生活に耐えられずに母親(オカン)が、小学校六年生の時に先生との三者面談が終わってから家を出てしまった。そして父子二人の生活がしばらく続くのだが、中学一年になりゴールデンウィークを直前にしたある日(今頃の季節ということですなぁ)、最後の博打のつもりでオトンが買ってきたピラニア五匹が、水道水を入れっぱなしの水槽の水面にプカァッと浮いて死んでいた夜、心中未遂事件があり、その翌日オトンも消えていった。

 それでも、一人になったことをプラスに転じ、あるきっかけ から落語家への道を邁進してきたこの人のバイタリティには、 ただただ圧倒される。もちろん、親には恵まれなかったが、近所には貢一少年に愛情を降り注ぐ人たちがいた。それが出山商店のおばちゃんであり、民生委員の加藤さんの家族、そして親友のヤンピたち。
 そうだった。あの頃は近所は家族の延長だった。私の家の近所にも、両親が仕事で忙しい時に遊びに行ける家もあったし、何かと面倒を見てくれる近所のおばさんもたくさんいた。怖いおじさんもいたけど、あのあじさん達に叱られて学んだこともたくさんある。

 柴又から石切に舞台も代わり、登場人物も時代も変わったが、どちらにも共通しているのは、いわゆる“共同体”である。

 その石切の大きな家族の中で、新たな雀々の寅さんは、輝いている。

 それは、ドラマの舞台が、彼にとつて原風景にも似た世界だからかもしれない。彼の演技がなんとも自然に感じられるのは、あのような環境で、愛情に飢えながら育った半生が背景にあると思う。

 次回は、芸者ぼたんが登場。

 これも楽しみだ。
 

Commented by 山茶花 at 2020-01-13 17:39 x
贋作「男はつらいよ」毎回楽しみにしています。石切神社は東京のとげ抜き地蔵と同じくお年寄りが多く「おばあちゃんの心斎橋」というニックネームでも呼ばれています。

昨日(2020/01/12)は、リリパットアーミーのわかぎゑふさんが老婦人役で出演されていましたが、「でんぼの神様」の名の通り、皮膚病・腫れ物の神様として知られています。私が生後数ヶ月の頃、頭に原因不明の湿疹が出来て両親と行ったそうですが、勿論その時の事は記憶にありません。6年前に名物「よもぎうどん(蕎麦もあり)」とよもぎ天ぷら、よもぎ団子を楽しみに石切神社(奥の院まで足を伸ばしました)と司馬遼太郎記念館へ。生駒の麓ですから、坂の町です。沿道は漢方薬とお年寄りが好きそうな佃煮や洋服、杖、餅菓子や落雁・生菓子等が売られています。

柴又も草団子が名物だそうですが、石切の名物もよもぎ団子。阪本マムシで有名な阪本漢方もここが発祥の地です。

雀々さんの演技、落語で培ったものでしょうね。非常に自然体での演技です。師匠の枝雀さんも「なにわの源三」や「良寛」等のドラマ、舞台カフカの「変身」等役者としても活躍されていました。兄弟子の雀三郎さん、文之助さんも小劇団の芝居に出演、筆頭兄弟子の南光さんもドラマや舞台で活躍。

この時期、生駒おろしで石切さん(関西では神社仏閣に「さん」を付けます)辺りも寒いです。寒い時期は、よもぎうどんとセット品は蒸し寿司。

神信心が無くても面白い参道です。
Commented by kogotokoubei at 2020-01-13 20:11
>山茶花さんへ

「おばあちゃんの心斎橋」ですか^^
上方落語で「でんぼ」を初めて耳にしたのは、たぶん枝雀かなぁ。
次に大阪でお会いする時は、ぜひ石切にご一緒しましょう!

渥美清は、結核になって、一時はどん底を見たのでしょう。
しかし、もう激しい動きのある役はできないと諦め、療養所のベッドで啖呵売の稽古をしていました。
雀々は、子どもの時に両親に捨てられ、どん底を見たのでしょう。
しかし、その逆境をはね返すバイタリティを、山田洋次は見出したのではないでしょうか。
次回も、楽しみですね。
Commented by kanekatu at 2020-01-14 10:59
久々に面白いドラマを観ました。寅さんと雀々の人生が二重のパロディになっていて、脚本も「男はつらいよ」と同じ人が書いてますのでしっかりしています。ここはオリジナルのあの場面のパロディだなと、想像する楽しみがあります。前の方が書いておられますが、大阪の風景を知っていると更に楽しめるのでしょう。
Commented by kogotokoubei at 2020-01-14 11:32
>kanekatuさんへ

ご覧になりましたか。
良かったですね、雀々。
彼が談春との二人会で『田楽喰い』と『夢八』で圧倒したのを思い出します。
どん底を味わった人は、精神的に強いですね。
今後は役者としての出番も増えることでしょう。
さて、次回は、田畑智子が、どこまで芸者ぼたん役で、太地喜和子に迫れるのか、楽しみです。
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by kogotokoubei | 2020-01-13 11:47 | 寅さん | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛