柳亭小痴楽、ちい坊の半生記『まくらばな』より(4)
2019年 11月 26日

柳亭小痴楽著『まくらばな』
この本から、最終の四回目。
巻末にある、「特別収録 澤邊家座談会 もうひとつの『まくらばな』」より。
出席者は、澤邊佳子(小痴楽の母)-佳、と表記-、澤邊真太郎(小痴楽の兄)=真-、勇仁郎(小痴楽本人)-勇-の三人。
勇 誕生日の12月13日ってなんかの記念日だったよね。
真 サダム・フセインの身柄確保だって。
勇 違う違う! 任侠の人たちがお家回りする日で、正月みたいな日だから縁起がいいんだよって親父が言ってた。正月の年神様を迎える日。そうだ鬼の日っていうやつ。
佳 でもパパは、12月14日に生まれるのはいいなって言ってたのよ。
勇 何で?
佳 赤穂浪士の討ち入り(笑)
勇 親父はよく、『仁義なき戦い』と『寅さん』さえ見てれば、学校なんか行かなくても人生大体わかんだよって言ってた。
出ました、父柳亭痴楽の教育方針が^^
年神様を迎える準備を始める。
昔はこの日に、門松やお雑煮を炊くための薪等、お正月に必要な木を山へ取りに行った。
12月13日の「鬼の日」については、少し補足が必要だろう。
江戸時代中期まで使われていた宣明暦では、旧暦12月13日の二十八宿は必ず「鬼(き)」になっており、鬼の日は婚礼以外は全てのことに吉とされているので、正月の年神様を向かえるのに良い日とされていた。その後の暦では二十八宿とは一致しなくなったが、正月事始めは12月13日のままとなった。
二十八宿や「鬼」や「鬼宿日」のことも説明必要かな・・・また、それは別途。
引用を続ける。
真 俺は『ランボー』とか『ロッキー』とか洋画だったけどなあ。みんな、コタツで寝てたよね。
佳 テレビ観ながらね。毎日大晦日な感じ。
勇 真はちゃんとしてたから、両親に「だらしねえな、部屋で寝ろよ」って言ってたの覚えてるよ。
佳 足の向きもちゃんと決まってたでしょ。
勇 3人の定位置だよね。
真 犬も、場所わかってた(笑)
親父は、常に着物の袖にお金を入れてた。日当で給金を受け取っていたからかもしれないけど、その日頂いた分を大胆に使う。
佳 帰ってくると机の上に、裸で結構な額のお金を置くの。翌日、全部持っていこうとするから、そんなにいるのって聞くと、「何があるかわからないからな」って言う。
勇 俺、まるっきり同じことやってるよ。今もポケットに20万くらい入ってる。
真 ホントだ。なんで?
勇 何があるかわかんないから(爆笑)
なんとも強い血の継承であることか^^
まだまだ、楽しい家族の逸話があるのだが、このへんでお開きとし、後は、本書で読んでいただく、ということで。
父五代目柳亭痴楽の子として、多くの師匠たちに可愛がられてきた“ちい坊”は、柳亭小痴楽という、将来性豊かな噺家となった。
真打昇進披露興行はお開きとなったが、彼の噺家人生は、まさにこれからである。
今後も、彼の高座が楽しみだ。
落語は前者の世界に後者の一筋の光明を射し入れようとする試みで、志ん生はそれを見事に具現化していました。小痴楽にもその可能性があると思います。
なるほど、父は、その両面を子供たちに教えようとしたのかな。
いわゆる「フラジャイル」の魅力を、小痴楽は持っています。
予定調和ではないんですね。
驚くほど凄い高座もあれば、とんでもなくスベることもあるでしょう。
たとえば、一之輔は、そんな危険性はない。しかし、まず、安心して聴くことができる。
良い悪いではなく、そういう持ち味の違いがあると思います。
