新宿末広亭 九月下席 夜の部 柳亭小痴楽真打昇進披露興行 9月26日
2019年 09月 28日
桟敷も八割ほどになっていたかな。まだ、二階は、開演時には開いていない。
楽しみな披露目の興行、出演順に感想などを記す。
後ろ幕は、昼の部の芸協の「寿」の幕から、「本寸法噺を聴く会」「町内の若い衆」「武蔵境商店連合会」「武蔵境自動車教習所」の四団体(?)によるものに替わった。
立川幸吾『牛ほめ』 (10分 *16:45~)
昨年6月の国立以来だが、同じネタ。
最初に昨年師匠が主任の池袋で聴いた『子ほめ』から、だんだんと良くなっている。
前回も感じたのだが、「売る人も まだ味知らぬ 初なすび」を其角の発句としていたが、人によっては去来の発句とする場合がある。これ、どっちが正しいのかな。
与太郎が、牛の褒め言葉をスラスラ言うのは、やや違和感あり。
橘ノ圓満『豊竹屋』 (12分)
夢丸の代演は、久しぶりのこの人。
圓満の都合なのか、二ツ目の前での出演だったが、噺の持ち味を十分に引き出す、なんとも楽しい高座。豊竹屋節右衛門と花梨胴八の掛け合いが、最後まで客席を沸かせていた。いいなぁ、こういう人のこういうネタ。まさに、寄席の逸品である。ということで、色をつけておこう。
ねづっち 漫談 (16分)
生で寄席では、初。
なるほど、こういう芸だったか。
ナイツのことを褒めて、「演芸(園芸)に、土屋(土や)塙(花わ)欠かせない」なんてのは、見事。
最後にお客さんからの題で締めたが、内容は・・・秘密^^
柳亭明楽『まんじゅうこわい』 (13分)
四年前7月、夢丸の国立での真打昇進披露興行で、同じネタを聴いて以来。
あの時は、ただただ“暗~い”という印象だったが、この高座は、その暗さはほどほどで、独特の間も、持ち味になりつつある、そんな印象。兄弟子の披露目なので、弟弟子の信楽と、何かと忙しい日々が続くだろうが、しっかり小痴楽のために裏方を務めて欲しい。
昔昔亭桃之助『お菊の皿』 (12分)
相変らず、末広亭のプログラムは、昔々亭。
草津温泉ネタのマクラが、ようやくなくなったのは、良いと思う。
明るい高座は好感が持てるのだが、もう少し、緩急がつけられると良いのだが。
宮田 陽・昇 漫才 (12分)
ネガ・ポジ会話と、十八番の地図ネタで、若い人の多い客席を沸かせる。
池袋のチョーさんに、会いたいものだ^
三遊亭朝橘『桃太郎』 (13分)
圓楽一門の枠で、本来は萬橘だが、弟弟子のこの人が代演。
橘也時代に、2015年、横浜にぎわい座のげシャーレで、小痴楽たちとの東西交流落語会で『もぐら泥』を聴いている。
あの会では、小痴楽の見事な『佐々木政談』を聴くことができたことを思い出す。
2015年11月26日のブログ
その翌年には、さがみはら若手落語家選手権で、『死ぬなら今』の大幅な改作を聴いた。
冒頭、圓楽一門がわたしで、「成金」の交替出演が小笑、大変な日にご来場で、と自嘲していたが、そういうことも寄席でのめぐり合わせなのよ。
見た目は、笑福亭鉄瓶が“しゃべるゴリラ”と称しているように、なかなかにいかつい。噺のほうも、パワーとスピードで一直線、という感じ。「深川の師匠」圓橘門下で、二年前に真打になっている人。今後、もう少し落ち着いた高座に出会いたいものだ。
春風亭柳橋『やかん』 (12分)
文治と交替出演枠で、この人。
ずいぶん久しぶりだ。ブログを書く前に聴いて以来になる。
こういう人のこういうネタが、寄席らしい空間と時間をつくってくれる。
「縮れっ毛の高島田」->「結(言)うに結(言)えない」
なんて、いいなぁ。
「九時だ」は静岡弁で「くじら」になり、「まっ黒」は、群馬弁で「まぐろ」になった、というのは初めて聴いた。
寄席の逸品賞候補としたい。
ここで、二階が開いた。
江戸屋まねき猫 ものまね (14分)
「小痴楽の母です」と言う理由は、父の猫八が亡くなってから、小痴楽の父、五代目痴楽の世話になり、小痴楽のことは小学生時代から知っている、とのこと。
小学四年生の頃の小痴楽は、大工さんになりたい、と言っていたらしい。
しかし、父の下で落語家を目指すことになり、なぜ大工になるのをやめたのか聞いたら、大工は算数ができないといけないから、とのこと^^
その小痴楽の披露目の初日のネタが『大工調べ』だったと明かす。
ネタのほうは、にわとりシリーズで、あの♪チキンソングも披露。
この人と小痴楽との縁を、知ることができたのは、貴重。
桂小文枝『孝行糖』 (17分)
上方の交替枠は、この人。
私にとっては、まだ、きん枝。
高座は初。正直なところ、あまり良い印象を持っていないタレントだったし、今回の襲名も賛成できない。
とはいえ、せっかくなので(?)高座をしっかり聴いたが、「あら、落語、結構出来るじゃないの」という印象。
芸歴からは当り前だが、初めて聴く新鮮さは、あった。
この噺は、上方が元で、三代目圓馬が東京に移したもの。オリジナルを生で初めて聴いた。
春雨や雷蔵『強情灸』 (15分)
仲入りは、小遊三に替わって、この人。
この噺をこれだけ聴かせて、笑わせる、というのが凄いと思う。
モグサをたっぷり腕に乗せ、「そりゃぁ、見ねぇ、浅間山だ」なんて科白も心地よい。
「障子を開けるな、風が入る!」というのは、あまり聞かない科白のように思うが、効いている。
さて、仲入り。
ほぼ一階は椅子席も桟敷も満席。二階も、ほどほど入っている。
平日の夜なのに、それだけこの披露目の人気が高いということ。
披露口上 (13分)
後ろ幕が、明星学園「明星会より」に替わった。
下手から、司会の遊雀、柳橋、本人、小文枝(きん枝)、米助
柳橋が、小痴楽が小学生の頃に作った俳句が、新聞に載ったことを紹介し、その句を読んだ。内容は・・・秘密にしておこう^^
きん枝が、「襲名はしないんだ」と不思議に思っていたが、「二度やるな」と思った、というのは、たぶん正しい読み。
米助は、父の痴楽、小遊三との三人でつるんでいたと明かす。小痴楽は、トリのマクラで、もう一人、円雀の名も挙げていた。
遊雀が、なんとも真面目な司会ぶりだったのが、妙に印象深い。
三遊亭小笑『粗忽の釘』 (11分)
成金の交代出演は、朝橘がバラしていた、この人。初。笑遊の弟子。
なんとも言えない雰囲気。人によっては、フラがある、と言うかもしれない。
粗忽者が、釘を打ち込んだお隣へ行って、お茶とお茶菓子をいただくというのは、珍しい。
頭髪は、もっと短くして欲しいが、この人の不思議な高座は、今後も聴きたくなった。
三遊亭遊雀 漫談 (5分)
この人も次の米助も、小痴楽の時間を作るための漫談。
とは言うものの、一つのネタにはなっていた。拾った千円札の話。
『巡る千円札』とでも名付けようか。
「皆さん、いい日に来られましたねぇ、今日の小痴は凄いですよう!」とふっていたが、なるほど、凄かった^^
桂米助 漫談 (8分)
長島茂雄ネタを中心に、短く下がった。
しかし、トリで再登場するのだが。
ボンボンブラザース 曲芸 (7分)
真打昇進披露の膝は、この人たちが多いが、それも道理だ。
たったこれだけの時間で、しっかりとトリにつなげる。
柳亭小痴楽『らくだ』 (46分 *~21:00)
マクラでは、子供の頃の思い出を披露。
父と飲み仲間の小遊三、米助、そして圓雀が飲んでいる居酒屋に呼び出されて、よく、いじられたとのこと。ズボンとパンツを脱がされて、というのは、ほとんど、虐待^^
その犯人(?)の米助が、「今日はおまえの噺を聴く」と、楽屋で一杯やっているとのことで、「帰ったらいいのに!」と言うと、私服になってコップを持った米助が上手から飛び出した。ネタかな。
酔っ払いのマクラからこの噺は、実に真っ当。
この人の持ち味は、何と言っても江戸っ子の語り口の良さ。
この噺では、その啖呵がふんだんに登場する。
前半は、らくだの兄貴分、後半は屑屋。
構成にも工夫があって、屑屋が、月番、大家、八百屋に兄貴分の伝言を告げに言った際、「あのぉ、らくださんが」「やめて!」「いえ、らくださんが死んだんです」「いい!」というやりとりが繰り返されることで、笑いが起こる。現代的な言い回しの工夫が、効果的。
また、独特のクスグリも、この人ならではで、たとえば、屑屋が四回目の酒を兄貴分に催促する時、「日本語分る?」は、一瞬、十代目馬生の音源を彷彿とさせた。
四杯目を屑屋が一口飲んだ時に、屑屋が一瞬の間から「なめるなぁ、この野郎!」と大声を発し、完全に主客逆転。
らくだの髪の毛を毟ろうと酒を含んだ屑屋が、それを飲み込んで「あっ、飲んじゃった」なんてのも、可笑しい。
さて、落合の火屋へ行く段で、ほんの少しの地の語り。
他は、ほとんどが、兄貴分と屑屋、そして他の多くの登場人物との会話と仕草で構成される、それだけ難しいネタだ。
火屋の安の酔っ払い方も、なんとも楽しい。
願人坊主のサゲまでの通しを、見事に、そして自分の噺として聴かせ、見せてくれた。
今年のマイベスト十席候補とするのを、まったく躊躇うことはない。
満足して末広亭を出ると、人だかり。
一枚だけということで、小痴楽が写真を撮らせるサービス。
ガラケーを出して慌てて撮ったら、やはり、ブレていた^^

帰宅の電車の中で、いろいろ考えていた。
果して、小痴楽は、今後どんな噺家になるのだろう。
一之輔は、古典基本を外さず、彼ならではの現代風のクスグリや脚色で、彼ならではの噺を仕上げる。
小痴楽は、どうだろう。
一之輔とは、相当味わいが違う。
安定性は、一之輔には劣る。
しかし、どんな高座になるのか、という期待感、あるいは、スリルは、ずっと小痴楽に感じる。
ある意味、その危なっかしさがは、時間を経るうちになくなるのかもしれないが、持って生まれた落語家の血に、この人の持つ野生的な感性が加わり、とんでもな噺家になるような期待を抱かせる。
披露目、もう一日は行きたいなぁ。
先代文枝師のお孫さん、小きんさんは上方落語協会の名鑑に載っていますが、まだ見た事がありません。
数回の「旅成金」で聴いただけですが、期待していた程の高座には残念ながら出会えませんでした。「旅成金」の他のメンバーの瀧川鯉八君や神田松之丞君の高座に比べると…。
言葉につっかえて流暢に噺が進まない、急ぎ過ぎて言葉が聴き取れない、等々…。一番期待していただけに残念でした。しかし彼の雰囲気がとても好きでずっと見続けていたいなと思っていますが、手放しでは評価出来ないな…とモヤモヤしておりました中、
小言幸兵衛様のおっしゃる「安定性は劣る」「危なっかしさ」の言葉に、少しスッキリしましてコメントさせて頂きました。
そう言った面も芸人さんの「味」と捉えれば良いのかな、と。でも、生の高座はそれ一回きりですから、その出来が良くなければ評価出来ないですし査定も下がりますし…。
あぁ、やっぱりまだモヤモヤします(笑)
モヤモヤしますが、真打になられた小痴楽師匠の今後を今まで以上に楽しみにしている事には変わりないんですけどね。
末広亭で、まさかの、きん枝でした^^
なるほど、『孝行糖』は、十八番の一つなんですね。
しかし、雀三郎、染二を聴いた後では、ねぇ。
落語芸術協会の寄席では、他流派は上方からの出演もあるのは、番組としては良いと思います。
小痴楽、まだまだ、危なっかしいところあります。
出会う高座によっては、当たり、ハズレもあると思います。
私は、まだまだ、彼のその危なっかしさが持ち味の一つではないか、なんて思っています。
やんちゃな兄ちゃんですからね。
しかし、落語にかける思いは、なかなかのものですし、潜在能力はとんでもなく高いと思います。
ぜひ、長い目で見てあげて欲しい噺家さんです。
お返事ありがとうございます。
まだお若いですしね、その危なっかしさも持ち味かも知れませんね。これから真打としてキャリアを重ねて、もっともっと素晴らしい噺家さんになって頂きたいですし、彼にはその「匂い」みたいなものを感じますよね。
2016年のNHK新人落語大賞のドキュメント番組で彼の落語への想いを感じ、より一層好きになりました。今後が楽しみな噺家さんのお一人です。
そうでしたか。
噺本来の可笑しさを引き出して、それだけで十分に聴かせることができる人だと思います。
雷蔵、マクラにいいんですよね。
八十歳を超えたケチなお婆さんが、三途の川の船の代金を払いたくないので泳ぎを習う、という小咄のマクラ、私の落語で使わせてもらっています^^
