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噺の話

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BS時代劇、葉室麟作品「蛍草 菜々の剣」(1)

 NHKのBS時代劇で、「蛍草 菜々の剣」が始まった。

 2015年にNHK総合木曜時代劇で『銀漢の賦』がドラマ化されて以来の、葉室麟作品の登場、実に嬉しい。

 舞台は、鏑木藩。

 故あって武士の娘であることを隠し、風早家に奉公することになった菜々が主人公。

 清原果耶が菜々を演じている。「あさが来た」にも出ていたし、「なつぞら」では、なつの妹役として、短い間ではあったが出演していた注目株。

 NHKサイトの同ドラマのページにあるように、菜々の父を死に追いやった男と、風早家の主人を陥れようとする敵が同じ人物。
NHKサイト「BS時代劇 蛍草 菜々の剣」のページ

 副題が暗示するように、その仇に立ち向かう菜々の姿を描くドラマが始まった。

 
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葉室麟著『蛍草』
 原作は、双葉社から2012年に単行本、2015年に文庫化された。

 題の由来について、ドラマの第一回でも登場した、風早家の妻佐知と菜々との会話を、原作から引用。
 夏の日はぎらぎらと照りつける。暑さを避けるように築地塀(ついじべい)のそばで日陰になっている草を取っていた時、菜々はふと手を止めた。塀の際に青い小さな花が咲いている。
「露草だー」
 菜々は額の汗をぬぐいながら、うれしくなってつぶやいた。青い花弁が可憐な露草は菜々の好きな花だ。早朝、露が置くことに一番きれいに咲いて、昼過ぎにはしおれてしまうから、摘んだりはしない。見かけた時にひっと眺めるだけだが、それでも幸せな気持ちになってくるから不思議だ。
 菜々がなおも腰を下ろして見入っていると、
「その花が好きなのね」
 佐知の声がした。菜々ははっとして立ち上がった。
「申し訳ありません、草むしりをしていたのですが、花を見つけて、つい手を止めてしまいました」
 菜々が頭を下げて言い訳をすると、佐知はさりげない口調で言った。
「謝ることはありません。きれいな花に目が留まるのは心が豊かな証ですから、ゆっくりと見てかまいませんよ」
 菜々の傍に腰を屈めた佐知は言葉を継いで、
「露草ですね。この花を万葉集には月草と記してありますが、俳諧では蛍草(ほたるぐさ)と呼ぶそうです」
 と教えた。月草や蛍草という名の響きに菜々は目を輝かせた。
「蛍草・・・・・・、きれいな呼び名ですね」
 深く心を動かされたように菜々が言うと、佐知は微笑んだ。
「そうですね。きれいで、それでいて儚(はかな)げな名です」
「蛍草は儚い名なのですか」
 佐知の横顔に目を向けながら菜々は不思議そうに言った。夏の夜に青白い光を点滅させる蛍のことはきれいだと感じるだけだった。蛍草という名を聞いても、蛍が止まる草なのだろう、とぼんやりと考えて、ほかに思いつくことはなかった。
「蛍はひと夏だけ輝いて生を終えます。だからこそ、けなげで美しいのでしょうが、ひとも同じかもしれませんね」
 佐知は感慨深げに言うと、菜々に顔を向けた。
「あなたの立ち居振る舞いを見ていると、武家の折り目正しさを感じます。紹介してくださった方は赤村のお百姓の娘だと教えてくれましたが、武家の血筋なのではありませんか」
 佐知に見つめられて菜々はどきりとした。

 二人の女性の会話が、ミステリアスな今後を暗示させる。

 佐知は、蛍の短い命に、何を思っていたのか・・・・・・。

 それにしても、題の付け方は、葉室麟らしいセンスの良さを感じるなぁ。


 第二回では、佐知と子供達に危険が迫るのだが、原作とは少し設定を変えているようだ。
 いずれにしても、菜々は、その危機を勇気を出して防ごうとするのだが・・・・・・。


 2017年の師走に接した葉室麟の訃報には、驚いた。

 もはや新作が出ないと思うと、未読の作品を、じっくり楽しみたいと思い、最近はあえて読まないようにしていたが、『蛍草』を再読して、やはり、葉室作品の素晴らしさを再確認した。

 『銀漢の賦』の次のドラマ化は、直木賞を受賞し映画化もされた『蜩の記』と同じ羽根藩シリーズ(『潮鳴り』・『春雷』・『秋霜』・『草笛物語』)か、大好きな『川あかり』を期待していた。

 しかし、『蛍草』も、葉室美学が底流に流れる佳品だ。

 日曜に「いだてん」から続けて見ることもあるだろうが、なんとも贅沢な時間になりそうだ。

 Wikipedia「ツユクサ」から、画像を拝借。
Wikipedia「ツユクサ」
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 「露草、月草、蛍草などの名で、秋の季語」と説明されている。

 明日8月1日は、旧暦七月一日。

 そう、暦では秋が始まるのだ。
Commented by 山茶花 at 2019-08-01 19:48 x
BS時代劇、「いだてん」を見た流れで見ています。金曜日NHK関西ローカルの「えぇトコ」が無い時には、金曜日に見ています(関西地区では「チコちゃん」は、土曜日の再放送のみ)。

前作の「大富豪同心」、前々作の「小吉の女房」も非常に面白く今回の「蛍草」も楽しみにしていました。主役が清原果耶ちゃんというのも興味がありました。このところ若手女優といえば、秋元商店の○○○48グループから出ている女の子ばかりで、演技についてはクエスチョンマークでしたから。

彼女は「あさが来た」のふゆ役で注目を浴びましたね。「透明なゆりかご」のアオイちゃんも儚げで「守ってあげたい」と思わせていました。今回の奈々ちゃんも「守ってあげたい」と思わせる様な女の子です。どちらも芯は強い女の子ですね。

「透明なゆりかご」は、8/3から再放送されます。彼女の演技に「近い将来、清原果耶の朝ドラ主役を見てみたいものだ」と識者のコメントが新聞にありました。今回の奈々は、アオイ役に続いて難しい役どころだと思われます。

前回の「大富豪同心」が爆笑時代劇だったのとはうって変わって、シリアス時代劇です。次回が楽しみです。

無理矢理落語に繋げると、ツユクサの青色の「花色木綿」という噺がありますね。
Commented by kogotokoubei at 2019-08-01 22:53
>山茶花さんへ

日曜6時BS「いだてん」から連続なら、まさに、ゴールデンタイム!
私は、犬の散歩にぶつかると、「いだてん」は8時総合になるので、先に「蛍草」再放送を見て少し間を空けて「いだてん」が多くなりそうです。
主役の若手女優さんは、「あさが来た」の“ふゆ”も良かったですね。
「なつぞら」も短い登場時間でしたが、存在感がありました。
原作と、良い意味でどんな脚色があるかも楽しみです。
「花色木綿」、八代目柳枝のこの噺、大好きです。
「出来心」という題もありますが、やはり、「花色木綿」であって欲しい^^
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by kogotokoubei | 2019-07-31 21:36 | ドラマや時代劇 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛