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噺の話

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鈴本演芸場 七月上席 昼の部 7月7日

 二週続いて、昨日も雨でテニスが休み。

 そうなると、落語の虫がうずうずする。

 上野広小路亭、南なんが主任の席にも食指が動いたが、久しぶりに志ん輔を聴きに鈴本へ。
 
 この人のことで気になっていたこともあった。

 帰りがけに撮った、幟。
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 客席は、最終的に、七割ほどだったか。
 日曜であることを考えると、若干雨の影響もあったかと思う。
 とはいえ、鈴本の席数は三百近い。末広亭なら一階は満席で二階を空ける人数。池袋なら、立ち見でも全員は入れない^^

 久しぶりの鈴本だが、ご通家さん割合が低い印象。
 四~五名のお仲間が多く、その方たちの大半が、寄席体験の浅い方だったように察する。
 噺家さんが上手から顔を出しても、なかなか拍手が起こらない、不思議な空間だった。

 さて、出演順に感想などを記す。

柳亭市松『道灌』 (14分 *12:16~)
 初。市馬門下、その後も増えてるねぇ。見た目はサッパリと清潔感があって悪くはない。ただし、落研の落語を聴いている印象。昨年から前座修行開始では、しょうがないか。

古今亭志ん松『近日息子』 (15分)
 始との交互出演。この人は、『不精床』に出会うことが多く、犬好きの身にはあまり笑えないのだが、この日はこの噺。
 悪くはないが、途中気になる科白でひっかかる。
 息子が気を回して医者が来た際、父親が「お医者さまではないですか」と言うのは不自然。「○○先生ではないですか」と名を言うか、「先生じゃないですか」でよいのではないかな。

鏡味仙三郎社中 太神楽 (14分)
 親子で登場。近くでお仲間数人でいらっっしゃったお客様が、初めて見ると思しく、さかんに「ほう!」「へぇ!」「凄い!」などと小さな声で歓声。
 私も最初に見た時は、心の中でそう思っていたはず。だんだん、嫌な寄席の客になってきたかもしれない^^

鈴々舎馬風 漫談 (15分)
 定番に時事ネタを交えた漫談だった。
 「ゴーンといえば、鐘(金)はつきもの」は、私の落語のマクラでいただこう^^
 今年の師走で、この人も小三治も満八十歳。そろそろ、元気な姿を見ることができるだけで嬉しい、という噺家さんになりつつある。

古今亭菊志ん『だくだく』 (14分)
 やはり、この人はいい。先月国立で聴いた『野ざらし』も良かったが、こういう掛け合いの多いネタは、持ち味のスピード感、リズムの良さが生きる。というか、この人で、ハズレたことがない。
 菊朗時代から注目していたが、豊富な陣容を誇る圓菊一門でも、決して、兄弟子や弟弟子に負けない実力者だと思う。

すず風にゃん子・金魚 漫才 (11分)
 金魚、頭の上は、もちろん、七夕。
 定番ネタだが、そろそろ聴いていて辛くなってきた。
 
金原亭伯楽『猫の皿』 (16分)
 四月に末広亭で聴いたネタ。マクラの志ん生の思い出も、ほぼ同じ。となると、少し眠くなってしまった。それだけ、語り口が柔らかい、ということでしょう。

三遊亭歌奴『佐野山』 (13分)
 一之輔の代演。なんと、ワイヤレスマイクを持参し、国技館の館内放送の声色を披露。へぇ、あれって行司さんがやるんだ。呼び出しの声、市馬よりいいんじゃないか^^
 途中で携帯が鳴ったが、びくともせず客席から笑いをとる。
 人によって設定や相撲の決まり手が違うが、歌奴は、病気なのは佐野山の父親、決まり手は、谷風の勇み足にしていた。実に、楽しい高座。

ぺぺ桜井 ギター漫談 (14分)
 昭和10年生まれだから、今年84歳。
 元気な姿を拝めるだけで、嬉しい。ギターの出来栄えは、二の次^^

古今亭文菊『長短』 (16分) 
 仲入りは、久しぶりのこの人。いつもながらの、青々とした頭。
 マクラのオカマちっくな語り口は、いつからなのだろう。あまり、感心しない。
 本編、長さんでこれだけドスの利いた語り口は初めて。話しぶりではなく、動作や程よい間で、長さんの気の長さを造形していたが、これは、生で見なけりゃその良さが分からない。短七さんの気の短い江戸っ子ぶりとの演じ分けも見事。やはり、この人は達者だ。
 ネタが良かっただけに、マクラが残念だ。以前は、落語は弱い芸で、という内容が中心だったように思う。
 この人なら、その時々のニュースも取り入れてどうにでもマクラにできるはず。男前で落語家らしくない、なんて気障を演じる必要はなかろう。
 ネタに登場する江戸っ子との対照を考えた演出なのかもしれないが、私は、あまり楽しくなかった。師匠亡き今、周囲に忠告する人はいないのだろうか。

 エレベーターで一階におり、喫煙室で休憩。

 さて、後半。

松旭斎美智・美登 奇術 (13分)
 ハワイアンをBGMに、小さな傘の芸から紐。定番のキャンディーの後に、時計とパン。
 近くの団体さんから、さかんに「へぇーっ!」「すごい!」の歓声。

桂才賀『カラオケ刑務所』 (15分)
 ここ数年、このネタ以外を聴いたことがない。
 気になるのは、この作品が落語協会が募集した新作落語台本の準優勝になったのは、2014年で、五年前。そろそろ「一昨年の準優勝」というのは、あらためましょう^^

林家正蔵『お菊の皿』 (15分)
 『味噌豆』以外のネタは、久しぶり。
 マクラで、八代目正蔵が、怪談ばなしの勉強会を開いてくれた、という話は知らなかった。声の強弱などのメリハリのある高座で、そう悪くはない。「やればできるじゃないの」という印象。とはいえ、香盤からは当り前とも言える。副会長、だしね。

林家二楽 紙切り (13分)
 ご挨拶代わりの「桃太郎」から「七夕」「赤鬼と青鬼」。
 最後のお題で、信号機を使って赤と青を切り分けた機転に拍手^^

古今亭志ん輔『唐茄子屋政談』 (35分 *~16:35)
 昨年も、雨でテニスが休みになり行くことのできた、龍志との二人会以来だ。
 今年二月の国立での名人会で『中村仲蔵』をお聴きになった居残り会メンバーの酷評を耳にしていたので、気になっていた。
 結論から言うと、不安は払拭された。
 時間の関係もあるだろう、徳が吉原田圃で「唐茄子や~でござい」の掛け声を稽古しながら、つい吉原の花魁との蜜月を回想する場面でサゲたが、良かった。
 なかでも、叔父さん夫婦が良い。吾妻橋で身投げをしようとした徳を助けて叔父さんが本所の家に帰ってくる。叔母さんは、徳が臭うのだろう、袖で顔を隠す。このあたり、なるほどと思わせる所作だ。
 心を鬼にして徳を鍛えなおそうとする叔父さん、徳が不憫でならない叔母さん。唐茄子を担いで売りに行かせる直前のやりとりで、目頭が熱くなった。
 徳が着替えてからの姿は、叔父さんの言葉が描写する。煤掃きで着たはんてん、大山に行く時の笠。「股引の膝が破けてる・・・そのほうが風通しがよくっていいや」「あとは足袋だ、白足袋と黒足袋が片っぽずつ・・・まぁ、いいや、色どりがよくって」
 そんな格好で外を歩いて、知っている人に会ったら・・・と腰が引ける徳。「嫌ならやめろ。とっとと出て行け」と叔父さん。その叔父さんをなだめようとし、徳に謝れと言う叔母さん。
 徳が子ども時分に、叔父さん夫婦に可愛がられたことが察せられる。子どものいないような叔父さん夫婦に、徳は自分たちの子どものように思えていたことが、この場面でしっかり伝わってくる。
 やっと、ふんぎりがつき、荷を背負い唐茄子を売りに出かけた徳だが、汗が目に入り、石につまづいて転んだ田原町。
 もちろん、あの人のいいお兄さんも健在だ。
 このお兄さん、私が好きな落語の登場人物のベスト3に入るなぁ。
 さて、荷が軽くなってからの徳。吉原田圃の回想場面で、花魁と鍋をつついた思い出も、志ん生のように夏の雨の日ではない。かといって師匠のような季節の明確ではない雨でもなく、はっきりと冬の雪の日に設定。花魁の舌の先で、しらたきが結ばれるのも、抜かさない。
 口ずさむのは、小唄♪のびあがり。これは、志ん生の♪薄墨を、師匠志ん朝が変えている形の継承。なかなか結構な一節を披露。
 特徴でもあるが、場合によっては障りにもなる独特の長い間はほとんど挟まず、リズムに乗った一席。とはいえ、人物描写は、決して軽くはない。
 今年のマイベスト十席候補とする。

 
 外はまだ雨。

 このところ、三度、雨の恵みでの落語だ。
 
 さて、徳の叔父さんの住いは、本所達磨横町。
 ここは、『文七元結』の左官の長兵衛さんの住んでいる場所でもある。
 昨年、しばしばお世話になるサイト、「はなしの名どころ」の管理人さん田中敦さんの著作『落語と歩く』から、達磨横町のことを紹介した。
2018年4月6日のブログ

 せっかくなので(?)、再度ご紹介。

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田中敦著『落語と歩く』(岩波新書)

 「第3章 まだ見ぬ落語をたずねて」の「失われた地名」から。

 本所達磨横町は、二席の落語にとって、とても大事な地名です。「文七元結」の長兵衛親方の住まい、「唐茄子屋政談」の酸いも甘いもかみ分けた叔父さんの家が、達磨横町にあります。昭和五十八年(1983)に、江戸本所郷土史研究会が墨田区東駒形一丁目に木製の立て札を建てています。区画整理によって道筋が変わっていますので、多少場所はずれているようですが、本当にありがたいことです。写真では文字が見えませんので、一部を引用します。

    旧本所達磨横町の由来

  江戸時代から関東大震災後の区劃整理まで此の辺りを本所表町番場町と謂い
  紙製の達磨を座職(座って仕事をする)で作っていた家が多かったので、
  番場では座禅で達磨出来るとこ と川柳で詠まれ有名であり天保十年(1839)
  葛飾北斎(画家)が八十一歳で達磨横町で火災に遭ったと謂われる。
  初代三遊亭円朝口演の「人情噺 文七元結」は六代目尾上菊五郎丈の当り
  狂言で(中略:文七元結の梗概)文七とお久は偕白髪まで仲良く添い遂げた
  と謂う。(後略)

 風情ある立て札でしたが、墨色は次第にあせてきており、ついには木札が朽ちてしまったのでしょうか。今は、区の教育委員会が建てた将棋の木村義雄名人の生誕地を示す金属製のプレートに置きかわっています。

 本書には、「旧本所達磨横町の由来」の立て札の写真も掲載されている。

 さすがに、終演後に本所に立ち寄ることはせず、帰って一杯やりながら、「いだてん」を観た。
 いいじゃないの、視聴率なんて関係ないよ。
 今後、若き志ん生と田畑政治をどうからませるのか、楽しみだ。
 つい、うとうとして、早めの就寝。
 ということで、やはり、その日のうちには書き終えることができなかったのであった。

 ところで、志ん輔の日記風ブログ「日々是凡日」では、6日土曜に『唐茄子屋政談』にしようかな、と思いながらも客席を見て、もっと楽しいネタということで『お見立て』をかけ、昨日は、終演後に、昨日のような日は別のネタにすべきで唐茄子屋は選択ミスだった、なんて書いている。
「志ん輔日々是凡日」
 さて、昨日、どんなネタにすべきと思っていたものやら。

 彼のブログ、いろいろ謎かけをしてくれるんだよね。

 まぁ、そんなところも、志ん輔らしさかな。
 

Commented by saheizi-inokori at 2019-07-08 17:38
それはよかった!また聴きに行こうかな。
だくだくとお菊の皿は今日私も聴いてきました。
Commented by kogotokoubei at 2019-07-08 17:50
>佐平次さんへ

二月の名人会は、どういうわけか調子が悪かったのでしょうね。
昨日は、良かったですよ。
今日は国立での芸協の真打昇進披露ですね。
明日のブログが楽しみです。
Commented by 喜洛庵上々 at 2019-07-08 21:28 x
幸兵衛さん
志ん輔師は寄席の尺だと(余分な事を挟まないので)良いのかも知れませんね。
文菊師は気障を売りにしようと意識していますが、それがそれているのは現状の芸が同年代では抜けているものの、左程に誇る程でもない所為かしらん。
Commented by kogotokoubei at 2019-07-08 22:03
>喜洛庵上々さんへ

志ん輔の名人会の日のブログを確認すると、「釣狐」をどうしても出したかった、と書いていますね。
そういう背景も長いマクラとなった理由なのでしょう。
ブログを拝見しても、芸に一途なことは、よく分かります。
文菊は、余計なことを考えず、菊六の頃の勢いを取り戻して欲しいと思います。
三三も、若くして老成した印象がありますが、いろいろと挑戦することで、壁を破っているような気がします。
文菊も、そろそろ圓朝ものへの挑戦など、次へのステップが必要なのかもしれません。
Commented by kanekatu at 2019-07-09 18:46
私もブログで文菊のあのマクラには度々苦言を呈しています。本来は一之輔を追う一番手になるべき素質でしょうが、変に纏まって伸び悩んでいる気がしています。
ご指摘の様に、そろそろ殻を破っていく段階だと思います。
Commented by kogotokoubei at 2019-07-09 22:03
>kanekatuさんへ

そうなんですよね。
菊六の時の勢い、というか若々しさがなくなってきたような気がします。
三三も、老成した印象がありますが、彼の落語との相性は悪くなく、それを生かしてきたような気がしますが、文菊には無理があると思います。
超えなければならない壁かもしれません。
Commented by at 2019-07-10 06:41 x
馬風は小噺やシャレがたのしいですね。
新幹線でパターの練習している客が注意されてさ、「いいんだよ、ここはグリーンだ」って言ってやがんだ、とか。
寄席の番組の半ばに出てきて一種の清涼剤を提供してくれます。
Commented by kogotokoubei at 2019-07-10 08:39
>福さんへ

漫談が一つのネタになっている稀有な噺家さんだと思います。
昨年、『親子酒』を聴きましたが、この人だけは(?)、漫談を聴きたい^^
Commented by 彗風月 at 2019-07-11 17:57 x
6月の終わりに龍志との二人会に行きました。そこで掛けたのが七段目と唐茄子屋政談。唐茄子屋は勘当が解けて店まで持ったという大団円まででした。結構な出来だったと思いますが、私が感じるに、この噺はどうしても前半が中心になってしまいがち。(ですから吉原田んぼのくだりで切ってしまうことも多いのでしょうが)でも、実は後半にも面白いエピソードがたくさん盛り込まれているので、セリフや演出をもっと工夫すると、かなり面白い唐茄子屋が出来上がるんじゃないかなあ、と思うのです。志ん輔に、新しい唐茄子屋にチャレンジしてもらいたいなあ。
Commented by 寿限無 at 2019-07-11 18:55 x
お久しぶりです。
確かに菊六時代は達者な噺家だと思って見ていました。
文菊は、「圓朝に挑む」という企画で「心眼」をやっています。(国立演芸場)
三三も真打になってしばらくして伸び悩んでいた時期がありました。
その後、小三治について全国を回るうちに抜け出してきたように思います。
古今亭と柳家の芸風の違いもあるようにも思いますが……。
Commented by kogotokoubei at 2019-07-11 20:50
>彗風月さんへ

時間があれば、志ん輔も通しで演りたいネタだと思います。
今月の落語研究会は、間違いなく通しでしょう。
子供が徳の食べる米の飯を欲しがる場面や、帰った徳と叔父さんとの会話など、後半も聴かせどころはあります。
昭和の名人たちの多くはハッピーエンドですが、八代目の正蔵は、誓願寺店の女性が亡くなる演出。孫弟子の小朝の高座を聴いていますが、やはり同じでした。
個人的には、やはり、生きていて欲しいですね。
Commented by kogotokoubei at 2019-07-11 21:02
>寿限無さんへ

お久しぶりです。
文菊の『心眼』は、良かったようですね。
基本的には、彼の実力の高さを評価していますし、そう心配はしていません。
三三は、一時、人情噺が中心でしたが、『粗忽の釘』などの滑稽噺を演ることで、一皮むけたと思います。
文菊も、あまり気負わず、滑稽噺などももっと手がけることで、壁を破ることができそうな気がします。
たしかに柳家と古今亭の違いはありますが一門の先輩に良いお手本もいますからね。
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by kogotokoubei | 2019-07-08 12:57 | 寄席・落語会 | Comments(12)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛