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噺の話

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長男、金原亭馬生が語る、志ん生(1)ー岡本和明著『志ん生、語る。』より。

 古今亭志ん生について書かれた本は、たくさんある。

 その中には、私と同様、生の志ん生の高座を知らない著者による本もあった。

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岡本和明著『志ん生、語る。』(アスペクト)

 岡本和明著『志ん生、語る。』(アスペクト)が、それだ。

 志ん生と、りんさんの実にいい写真がカバーとなった本は、平成19(2007)年の発行で、内容は平成6(1994)年から発行が始まった『これが志ん生だ』(三一書房、全十一巻)の月報の中から選んで編まれている。

 この本、副題が「家族、弟子、咄家たちが語る内緒の素顔」とあるように、志ん生 “が” 語るのではなく、志ん生 “を” 語っている本。

 まだ、「いだてん」を充分には楽しめなかった頃、志ん生についての誤解(?)を解くべく、本書から二度、記事にした。

 一つは、先代圓歌による、高座で寝た志ん生の目撃談。
2019年4月2日のブログ

 もう一つは、榎本滋民さんが証言する、志ん生の“ダンディズム”について。
2019年4月3日のブログ

 昭和二十七年生まれで、私と同世代の著者の「あとがき」から、ご紹介。

 『これが志ん生だ!』(全十一巻・三一書房)の第一巻が出たのは平成六年(1994年)の九月だからもう十三年、準備の段階から入れると十六、七年の歳月が流れている。
 当時、私は落語というより、五代目古今亭志ん生の熱烈なファンだったが、生で志ん生を見たことは一度もないのである。

 生で高座を見たことはなかったが、著者は志ん生について書かれた本を読み漁り、LPやカセットを聴きまくり、ますます志ん生への思いが募る。
 その結果、志ん生の本を出版することになるのだが、そのため多くの関係者に取材することになった。

 その取材対象者の中には、もちろん、家族も含まれる。

 先日、『柳田格之進』を楽しませてくれた、むかし家今松の師匠十代目金原亭馬生は、父志ん生についてどんなことを語っているか、ご紹介したい。

 題は、「ふだんちっとも面白くないからこそ、高座が面白かったんですよ」となっている。
 冒頭から引用。
 オヤジさんが死んでからも、いろんな人にオヤジさんのことを聞かれますけど、人について語るなんておこがましいですよね。まして、オヤジのこととなると、そうでしょ?だから、できるだけオヤジさんのことは話さないようにしてるんですけどね。その点、
「名人です。うちのオヤジは名人です」
 って言ってる志ん朝のほうが利口ですね。だから、
「オヤジさんは面白い人でした」
 それでいいんです、それは。でも、みなさんは納得しないで、何かと聞くわけです。だからここで、まあ、これが最後ってわけじゃないと思うんですけど、あたしなりのオヤジさんの話をしてみようと思うんです。

 ということで、実に貴重な記録と言えるだろう。

 この後、すぐ、襲名のことに話が及んでいる。

 みなさんが気になっているのは、あたしが六代目を継ぐかどうかっていうことなんですけど、これはもう志ん朝に継がせることに決めたんです。別に誰に言われたってわけじゃなくて、あたしが自分で決めたんです。オヤジさんの遺言じゃない。
 オヤジさんはもう志ん朝がかわいくて、かわいくてしょうがないんですよ。歳をとってからの子供でしょ。それがパーッと素直に育って、パーッと売れたでしょ。だから嬉しくてしょうがないわけです。だけど、あたしという者がいるから、心配なわけですよ、もう。そこになると単なる世間のお父っつぁんになっちゃうですね。ええ。だから、生前、
「安心しなよ。志ん生は志ん朝に襲名させるから」
 って言ったら、もう、涙と洟(はなみず)でクシャクシャになって、
「ありがとう・・・・・・ありがとう」
 って。で、おふくろからも、
「お願いします」
 って両手をつけられて、それじゃあしょうがないでしょう。わずらってるおふくろに、
「お願いします」
 って、手をつかれちゃったら。・・・・・・それであたしが志ん生になったら馬鹿ですよ。

 ということで、せっかく兄が気配りして父、そして母に約束した弟の六代目襲名だったが、それは、結果として実現しなかった。

 本書の馬生の聞き書き、ご本人の生きた言葉が聞こえるようで、なかなかいいのだよ。

 初回は、このへんでお開き。
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by kogotokoubei | 2019-06-14 12:47 | 落語の本 | Comments(0)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛