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芸術祭受賞、ホール落語会への出演ー『歌丸、極上人生』より(3)


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『歌丸 極上人生』

 『歌丸 極上人生』は、最初は平成18年に、うなぎ書房から『極上 歌丸ばなし』として発行され、平成27年に加筆・修正の上で、祥伝社黄金文庫で再刊。

 少し間が空いたが、この本からの三回目。
 
 これまでに、昭和49年、家の近くの三吉演芸場で歌丸が三十八歳の時に始めた独演会で、古典に挑戦していたことを紹介した。

 その独演会開始から十五年目、平成元年の芸術祭で、「桂歌丸独演会」の成果が認められて、演芸部門の芸術祭賞を受賞している。
 ちなみに、その前後における演芸部門で落語家の受賞は、昭和61年に雷門助六、62年に林家正雀、前年63年に三遊亭圓楽、翌平成2年が、小文枝時代の五代目桂文枝。

 さて、もっと前から、あるホール落語にも出演していた歌丸だが、三吉演芸場で古典に取り組み始めてから、他の伝統あるホール落語への出演要請が増えてきた。

 一番早かったのは、NHK東京落語会で、昭和40年7月、第79回公演に初めて出演しまして、その後の二年か三年にいっぺんづつ出さしてもらいましたが、当時はまだ新作専門のころですから、出し物も『乗車券』『京の舞妓』『時間売ります』『姓名判断』『新聞記事』といったような新作を出してます。昭和55年12月の公演で『おすわどん』を出しまして、以後は古典ものばかりになりました。
 その55年9月には三越落語会に初出演(『お茶汲み』)、58年12月にはTBS落語研究会(『三味年栗毛』)59年6月には紀伊国屋寄席(『鍋草履』)と、次々に定評のある落語会に出していただくようになり、このころには、もう逆に古典専門になってしまいました。
 『鍋草履』『三味線栗毛』は、両方とも春風亭の先生のものです。六代目の柳橋師匠・・・・・・このかただけは、「師匠」じゃなくて「先生」と言わないといけなかったんです。なにしろ昭和5年に芸術協会ができたときからの会長ですから、お稽古してもらうどころか、ぴょこぴょこの真打なんか、なかなか口をきいてももらえませんよ。

 意外に思うのは、東京落語会が、二ツ目時代の新作派の歌丸を出演させていたこと。
 「笑点」が始まるのは昭和41年だから、その前年に初出演。

 『鍋草履』『三味線栗毛』が、柳橋譲りとは知らなかった。とはいえ稽古をつけてもらったのではないけどね。どのように譲り受けたのかは、後でご紹介。

 歌丸の『鍋草履』は、2012年の新宿末広亭9月下席、十一代目桂文治の襲名披露興行で聴いている。
 その時の感想を、あらためて確認。
2012年9月27日のブログ

桂歌丸『鍋草履』 (15分)
 談志と同じ昭和11年生まれ、今年76歳になる芸協会長が健在で良かった。トリへの配慮がうかがえる軽い噺ではあるが、こういうネタをしっかり出来ることが、落語家にとって重要なのだと思う。口跡もはっきりしていて、聴いていて疲れない高座。ある意味で、落語の教科書とも言える内容に感じた。
 昨年末、この寄席の席亭が発した苦言を契機に、このところ芸協は頑張っているように思う。全員の実力が一気に上がることはありえないが、米助の古典への挑戦なども含め、背後に歌丸会長の思いが、良い方向に向かわせているような気がする。この席でも千秋楽に当代円楽が出演するようだが、それは披露目での特別なもの。定席では、他の一門の助けなど借りずに、客を呼べるだけの勢いがつきつつあるのではないだろうか。だから、会長にはまだまだ元気でいて欲しい、と思う。

 最近は、過去の記事を読み直して、ようやく少し記憶が甦る・・・のである。

 そうそう、この披露目は、前年末に席亭から苦言があった、その末広亭だった。

 ちなみに、この日は、口上でもなかなか味のある話をしてくれた鶴瓶が、『青木先生』を披露した。
 これまで私が聴いた、鶴瓶の唯一の高座。
 たしかに、十分ほどで客席をドカンドカンさせた話芸は、たいしたものではあった。
 トリ文治の十八番『源平盛衰記』も、大いに笑った。


 さて、歌丸は、どうやって「先生」と呼ばれた芸協のドン、柳橋からネタをもらうことができたのか。

 こっちがやっと少し認められるようになってから、あるとき楽屋で、春風亭の先生に謎をかけたんです。「先生、あの『鍋草履』は、先生はレコードにはお入れになってないんですか」って、あたしが聞いたら「いや、俺は『鍋草履』はレコードに入れてないぞ」「ああそうですか」「なんだ」「いや、いい噺だと思いまして」「なんだ、やりてえのか」「やりたいですねェ」ったら、「ふーん」って、その日はそれっきり。で、次の日に「『鍋草履』の音はNHKにあるぞ」って言ってくれたんですよ。NHKに音があるぞってえことは、こりゃァやってもいいって言ってくれたようなもんだと、こっちは解釈しますよ。
 それからNHKのプロデューサーのかたにお願いをして、まだカセットのないころ、オープンリールのテープにダビングしてもらった音をいただきました。それで春風亭の先生のところへ行って「先日はありがとうございました。NHKに音がありました。プロデューサーのかたからいただきました」って言ったら、「うん、そうか」って、それでおしまい。それ以後やらしていただいてます。

 なるほど、そういういきさつだったか。

 オープンリールですぜ。
 
 カセットでさえ知らない人のほうが多くなっただろう令和の時代、オープンリールなどは、もうじき死語になるのではなかろうか^^

 次回は、あるホール落語会のプロデューサーからの要請から、また一つ桂歌丸という噺家さんの引き出しが増えた、というお話。
 
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by kogotokoubei | 2019-05-17 21:36 | 落語の本 | Comments(0)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛