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国立演芸場 五月中席 四代目三遊亭圓歌襲名披露興行 5月15日

 なんとか、国立演芸場の中日、四代目圓歌の襲名披露興行に行くことができた。

 三月二十一日、鈴本の下席から始まり、末広亭、浅草、池袋を経て四十五日目、残り五日となった定席での披露目。

 開場直後の12時20分頃、演芸場に到着。

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 四代目圓歌の幟が、旗めいていた。

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 なんと、平日の昼なのに、「満員御礼」とは。

 後で知るのだが、居残り会では合流したOさん、当日券で大丈夫だろうとタカをくくていたため、チケットを入手できなかったのであった。

 そんなことは露知らずで、会場へ。

 最初の後ろ幕は、「贔屓与利」で、富士山がシンプルな線で描かれて、「晴れてよし くもりでもよし 不二のやま」と書かれていた。
 結局、この日三つの後ろ幕は、すべて「贔屓」贈呈。二枚目は結構派手だったが、最後三枚目は、「寿」の字と女性の絵の描かれた艶っぽいもので、結構だった。

 私は四列目だったが、まだ、前の列にも空席のある状態で、開口一番が始まった。
 その後、客席はほぼ埋まっていたなぁ。

 出演順に、感想などを記す。

三遊亭歌つを『牛ほめ』 (13分 *12:47~)
 開口一番は、初めて聴く前座さん。
 落語協会のHPのプロフィールによると、2017(平成29)年3月三遊亭歌奴に入門、2018(平成30)年1月21日前座となる。前座名「歌つを」、とのこと。
 白酒が「待機児童」と呼んでいた見習い期間が、結構長かったということか。
 髪の毛も短めでスッキリしているし、清潔感のある印象で、見た目は悪くない。しかし、声が高めでキンキンする点は、今後の要改善点。父親とおじさんの口調も、あまり変わりがなく、前座さんではやむをえないかもしれないが、今後の精進を期待しましょう。

春風亭一花『やかん』 (16分)
 日替わりの二ツ目さんの出番、この日は一朝一門のこの人。三度目。
 2014年7月の関内ホールでの師匠の独演会、そして、2016年9月の同じ会場での、小満んの会で聴いている。どちらも、好印象だった。
 この高座も実に良かった。
 知ったかぶりの先生の口調なども悪くない。歌つをは、袖で聴いていて勉強になったのではなかろうか。
 猫も杓子も--->女子(めこ)も赤子(せきし)も、など、三代目金馬の音源を思い浮かべながら聴いていた。講釈部分も、よどみなくリズムが良い。
 立川こはるを初めて聴いた時も感心したが、芸風は違うものの、女流落語家ながら、しっかり古典を語れる人として、今後も期待。
 個人的には、この日一番の高座だと思う。
 何か賞をあげたいので、朱の色を付けておく。
 
三遊亭多歌介 漫談(師匠の思い出、など)(17分)
 ずいぶん久しぶりと思っていたら、2009年の池袋以来、十年ぶりだ。
 あの時は『短命』だったようで、結構、印象が良かったようだ。さすがに、記憶は残っていない^^
 志ん朝の葬儀における名(迷)スピーチなどの師匠三代目圓歌の思い出や、自分の地方での講演での逸話など。この人、講演や講演&落語で全国各地を回っており、平成30年の講演(数?)日本一とのこと。
 でも、ネタをやって欲しかったなぁ。

鏡味仙三郎社中 太神楽 (16分)
 4月29日の末広亭では、親子二人だったが、この日は仙三郎と仙成の二人。
 いつものように、傘の芸で仙成が鞠と升を回したが、茶碗になって仙三郎が「これは難しいから私が」と代わった。しかし、最初に茶碗を乗せようとして上手く収まらず、やり直そうとして茶碗を舞台に落してしまった^^
 なかなか、お目にかかれない光景。
 五階茶碗を仙成が演じ、仙三郎が土瓶の芸、そして、花笠と撥で締めた。
 
三遊亭若圓歌 漫談&『授業中』 (19分)
 初。経歴を後から調べたら、内弟子を終えて、最初は漫談家としてスタートしたらしい。
 師匠の思い出を語りながら、師匠が昭和天皇に『授業中』を披露してこのネタを封印したため、師匠に代わってこの噺をするようになった、とのこと。
 震災後のボランティアでも、何度も演じたらしい。
 後半の短い時間で、相当はしょってのネタになったが、なかなか味わいがあったので、もっと長く演って欲しかった。

柳亭市馬『粗忽の使者』 (19分)
 日替わりの仲入り、この日は協会会長。
 客席から「待ってましたぁ!」の声がかかったが、この興行が何か分かっていない、野暮な行為としか、私には思えない。
 去年の鈴本夏祭り以来。あの時は『山号寺号』に、噺家の名を取り入れて楽しませてくれた。
 冒頭部分を省略し、大工の留っこが、地武太治部右衛門と田中三太夫のやりとりを盗み聞きした内容を、仕事仲間に話す場面から。
 こういう噺は、ニンだと思う。侍はサマになっている。一時、首の振りが極端だったり、途中で歌を挟むのが嫌で、敬遠していたが、やはり、芸達者であるなぁ、と思わせる高座だった。
 
 口上を楽しみに、一服。

口上 (16分)
 五人並んだ。下手から、司会の多歌介、若圓歌、四代目圓歌、歌司、市馬。
 若圓歌が、七年の内弟子を終えることができたのが、彼の次に入門した歌之介のおかげ、と言っていたが、今では途絶えてきた内弟子仲間の絆は強いものがあると感じた。授業中、浪曲社長、月給日などの師匠の作品は手がけず、自分の作品を大きく育ててきた弟弟子を褒める言葉にも、心がこもっており、圓歌一門の好ましい関係をうかがうことができたなぁ。
 歌司が、三十五年ほど前、宴席で師匠の隣に座っていて、「圓歌は歌之介に継がせたい」と言われたと語る。兄弟子としては、辛い話であったろうに、それを納得させるだけの、一門の歌之介への評価もあったということか。
 歌司は、昭和50(1975)年にNHK新人落語コンクールで『あくび指南』で優秀賞を授賞した人。ちなみに、その時の最優秀賞は『たがや』を演じた小丸、現在の柳亭金車。
 この人が古典重視ということも、三代目が新作派の歌之介に継がせたかった理由かもしれない。
 市馬が、「手を取って 共に登らん 花の山」という三代目圓歌の言葉を聞かせてくれたので、ほぼ七年前のこの会場での一之輔の真打昇進披露のことを思い出した。私は圓歌が披露目すべてに出演した一朝は偉い、と言った言葉と「手を取って~」で、目頭が熱くなったのだ。
2012年5月19日のブログ

 さて、その市馬の音頭で、三本締め。
 圓歌一門の絆の強さ、温かさが伝わる口上だった。

アサダ二世 奇術 (13分)
 いつもの「今日は、しっかりやりますから」に、嘘はなかった^^
 「あと、三分」とか「二分」とか言いながら、芸を始めようとしては、またマイクに戻り、寄席の下座さんがどれだけ大変か、などと話す、その間が絶妙。
 お客さんが選んだトランプを風船の中から取り出す十八番も、良かったよ。

三遊亭歌司『蜘蛛駕籠』 (14分)
 「91になりまして・・・ウェストが」でまず、客席を笑わせる。去年は「86」だったと記憶しているので、太ったか^^
 酔っ払いの繰り返しの科白の部分でも、大いに客席を沸かせる。
 寄席体験の少ないお客さんも多かったとは思うが、芸達者でなければ、この噺の可笑しさをあれだけ引き出すことは難しい。

立花家橘之助 浮世節 (14分)
 二年前の二代目橘之助襲名で、一回り芸が大きくなったようだ。
 最後は時間切れと短めではあったものの「たぬき」を聴かせてくれた。

三遊亭圓歌『母ちゃんのアンカ』 (35分 *~16:21)
 『母のアンカ』が、正式な演題なのかもしれないが、私はサゲで本人も使っていた『母ちゃんのアンカ』の方が良いように思う。
 この噺では、師匠が亡くなって五日後、末広亭の夜の主任を白酒の代演(代バネ)で涙ながらに聴かせてくれた高座を思い出す。
 あの時は、最初『B型人間』だったのが、この噺に代わり、ややとりとめのない流れになったのだが、それもやむなし、という時期だった。
2017年4月30日のブログ
 前半は、小ネタをつないで、客席を温める。4月1日に「令和」の発表で驚いたらしい。師匠の最初の奥さんが、令子、次の奥さんが、和子・・・とのこと。
 師匠の家にいた寒さに弱いアイヌ犬のことや、たわけもの・大納言などの言葉の語源のことで、笑いを取る。おっぱいの元は血液、という話あたりは、ネタとの関連性が、少しはあるかな。
 そして、11月の寒い時期、高野山に招かれ、その宿坊で寝た時の思い出から、ネタそのものは始まる。零下三度、布団には、湯タンポが入っていた。
 その湯タンポで足を温めていると、自然に、子どもの頃、寒いときに布団の中で、足を母ちゃんのまたぐらに入れて、温めていたことを思い出す・・・ということで、さまざまな少年時代の母との逸話が語られる、爆笑ネタとは言えない演目。
 四代目圓歌作の、人情ばなし、とも言えるかもしれない。
 私は、この人は、今後も古典に挑戦などしなくてもいい、爆笑ものの新作を聴きたいと思う。何度聴いても笑える噺、という点で、間違いなく師匠の芸の精神を継承する人だろう。


 さて、お開きとなれば、楽しみは、居残り会。

 佐平次さんの地元の「はじめ(一)」で、ちょうど五時の開店時間から。
 Iさん、Nさん、そして、チケット入手ならずお店に直行して、すでにビールを始めていたOさんの五人。
 最初は生ビール。そして、次々に出される、薬味ハンバーグや鯵の刺身、などなど美味しい肴のおかげで、お勧めの日本酒を一升瓶ごといただき、結局二升が空になった。
 その後は、燗酒も呑んだはず。
 途中で、絶品の揚げパンが出され、また生ビールもらったりしたな。
 話はあっちこっちに飛んだようにも思うが、部分的に覚えていない^^
 落語のサワリをご披露したようにも思うが、よく覚えていない^^

 四時間ほど、宴は続いたのかな。

 とにかく、楽しい居残り会でござんした。

p.s.
 新宿末広亭の披露目にいらっしゃったIさんがお聞きになった後ろ幕の情報を入手。
 最初の富士山の幕は、中村天風作、2枚目のやや派手な幕は、佐藤勝彦作で、お二人とも圓歌本人とご縁のある方らしいです。三枚目の美人画は先代ゆかりのもの、とのことです。。
Commented by 彗風月 at 2019-05-16 17:28 x
お疲れさまでした。飲みましたねー。私は明日の夜席に行くことにしました。ええ、きちんとチケットも押さえましたともww。
Commented by kogotokoubei at 2019-05-16 17:32
>彗風月さんへ

肴も話も楽しいと、あっと言う間に飲んでしまいますね。
ハハハッ!
チケット事前に入手しないとね。
お楽しみください。

Commented by 生禿 at 2019-05-16 17:48 x
私は、浅草で聞きました。落語を始めて寄席で見る女房を連れて。
女房は初めての生は凄いんです。
最初にジャズクラブに連れて行ったときも、レコーディングを終えたばかりの皓正が、Body&soulでの、日野皓正-元彦さの火を噴く演奏を聴かせた。
初めて野球場に連れて行った時も、さよなら満塁ホームランだった。
それらにも勝る火の噴き方だった。感動しました。
Commented by kogotokoubei at 2019-05-16 17:51
>生禿さんへ

ご無沙汰しております。
奥さん、持ってますね!
お二人ともお元気そうで、何よりです。
Commented by 建半 at 2019-05-16 19:01 x
>>客席からの声が…、この興行が何か分かっていない、野暮な行為としか、
そういうお客がおりますねぇ!?とにかく売れっ子や有名芸人が登場するだけで掛け声を発する人。そう言えば、以前に歌之介師が登場した時にも、客席から「待ってましたぁ!」と。誰の興行だったかは忘れましたが(笑)…。
Commented by kogotokoubei at 2019-05-16 19:07
>建半さんへ

市馬のファンだったのでしょうが、市馬ご本人が、「困ったもんだ・・・・・・」というような表情で、まったく声のことにふれませんでした。
会長ですから、もちろんわきまえているわけです。
後、記事には書きませんでしたが、後ろの席に、連れの女性に話し続ける能書きおじさんがいて、困り者でした。
酔っ払いの親子の小咄で、サゲ前に「あれ、父親なんだ」なんて呟くんです。
入れ替えの間で、三代目圓歌のことをダラダラ説明したり。
困ったものです。
(なんて、書くと、「偉そうにするな!」なんてコメントがくるかな^^)
Commented by saheizi-inokori at 2019-05-16 23:31
小言幸兵衛さんですから⬆️
でも総体的には私の方が点は辛かったかな、飲み過ぎて記憶が下方修正されたのかもしれないです。
Commented by kogotokoubei at 2019-05-17 09:14
>佐平次さんへ

あの木戸銭で、ほどよい所要時間・・・あまり小言を言うのも申し訳ないかなと思います。
全体的には披露目のお祝い気分を味わえたと思います。
日替わり出演枠で誰の日になるか、も結構当り外れがあるでしょうね。
なぐり書きのメモの字が判読できなくて困りました^^
後ろ幕の説明も、口上でして欲しかったなぁ、なんて今になって思っています。
Commented by ばいなりい at 2019-05-17 10:50 x
中澤圓法師の説法(高座)は地元の公演でも拝聴致しました。CD通りでしたが。
でも、、、先代の三回忌(実質2年)で四代目を襲名とは、いささか急ぎすぎでは?
この記事を見て、慌てて三遊亭歌之介の高座録画をネットで見ましたが、う~ん・・・
そういう意味で、二代目圓歌に興味がわいてきました。
Commented by kogotokoubei at 2019-05-17 12:57
>ばいなりいさんへ

悩ましい問題ですが、三代目圓歌の遺言でもあったようなので、早すぎるということはないかもしれません。
当代小さんや文楽よりも、「なんちゃって」襲名度合いは低いと思いますよ^^
二代目圓歌、ですか。
北海道で偽名(三遊亭柳喬、だったかな)で公演していたのを、旅興行の一員に見つかり、その旅の一座の一人だった志ん生が怒鳴り込んだ、という逸話が有名ですね。
三代目同様、吃音の噺家さんでした。
Commented by at 2019-05-18 06:35 x
そういえば、随分昔、こんなTV番組を見ました。
歌司が真打になるとき(だったと思う、いい男でした)、先代圓歌が切り火で送り出すというシーンを今でも覚えています。
そのときのあまりに厳しい表情も。
Commented by kogotokoubei at 2019-05-18 08:55
>福さんへ

そうでしたか。
あらためて三代目圓歌一門のチームワークの良さのようなものを感じた披露目でした。
歌司は、以前、協会の常任理事でしたね。
今は、歌る多が理事ですが、あの一門、結構大きな存在かもしれないなぁ。
Commented by 彗風月 at 2019-05-20 17:48 x
野暮かもしれませんが、17日夜のご報告を。

前座~間に合わず
わん丈「近江八景」
歌橘「宗論」
仙三郎社中
歌る多「松山鏡~南京玉すだれ」
市馬「禁酒番屋」
中入り
口上(歌橘、歌る多、圓歌、歌司、市馬)
アサダ二世
歌司「お化け長屋」
橘之助
圓歌「幕末龍馬伝」

この日は漫談なく、皆なかなかに気合の入った高座でした。わん丈は実は結構注目しているのだけれど、こんな珍品を持ってくるとは思わなかった。これ、だれで聴いたんだったかなー。市馬は今席は歌を封印ですね。口上では国立に来る直前まで国技館で相撲観戦をしていたことを暴露され大汗。そりゃテレビカメラで抜かれればばれるわw。三本締めの際「国技館の千秋楽で三本締めをやると叱られますが、ここはひとつ」。転んでもただでは立ち上がらない。橘之助、浮世節の前に三味線の説明。「これが本調子、これが二上がり、これが三下がり。ただこれだけでも詰まんないから、どなたかの出囃子をやってみましょうか。じゃあ、志ん朝師匠の老松で」というと、楽屋から前座が太鼓を持って登場。そしてその後ろから笛を手にわん丈くん。「あら、悪いわねえ」間違ったら承知しないよ、と始まった老松、結構なもんでした。わん丈くん、笛がとても達者ですねえ。そして圓歌。幕末龍馬伝。40分たっぷり。国立なんて知ったことかの大暴れ。大爆笑でした。
スミマセン、人ん家で長々と。
Commented by kogotokoubei at 2019-05-20 17:58
>彗風月さんへ

なかなか充実の夜席だったようですね。
わん丈『近江八景』とは、なかなか洒落たネタ選び。私は、今松で聴いています。
橘之助、15日も、野崎、老松を弾いてくれていたなぁ。
市馬、相撲甚句も封印してくれましたか^^
龍馬伝で客席ドッカンドッカンしている様子が目に浮かびます。
ご報告、ありがとうございます。
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by kogotokoubei | 2019-05-16 12:59 | 寄席・落語会 | Trackback | Comments(14)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛