人気ブログランキング |

噺の話

kogotokoub.exblog.jp
ブログトップ

歌丸独演会、始まるー『歌丸 極上人生』より(1)


 この本の紹介の前に、私が、長い間聴かず嫌いだった桂歌丸という噺家さんに驚かされた高座のこと。

 2012年4月国立演芸場中席の『双蝶々 雪の子別れ』について、こう書いていた。
2012年4月14日のブログ

桂歌丸『双蝶々 雪の子別れ』 (48分)
 どう言えばいいのだろう。なぜ今までこの人を聞かず嫌いでいたのかを、今は反省している。音源なら何と言っても円生になるが、最近は五街道雲助一門が、『長屋』~『定吉殺し』~『権九郎殺し』~『雪の子別れ』の通しで演じるなど、新たな試みもあって決して過去の噺ではなくなったが、歌丸の円朝もの(このネタは円朝作ではないという説もあるが)への取り組みは年季が入っているようだ。
 談志と同じ昭和11年生まれ今年76歳の歌丸の口跡ははっきりしているし、地の部分と登場人物が語る部分も流れるように展開されていく。たしかに、白酒が一門の会の楽屋ネタとして、この噺は病気の老人の噺でつまらない、という会話があったと言っていたが、本来『双蝶々』と言えば、この噺。終盤、雪に見立てた紙吹雪の演出と三味線も程よく効果的。この高座に出会えただけでもこの中席は満足である。もちろん、今年のマイベスト十席候補とする。


 終演後に玄関脇で一服していて思ったのが、下座さんの素晴らしさ。唄わないうめ吉の踊りに三味線と唄をつけ、歌丸の高座でも効果的な鳴物。出囃子はもちろん、曲芸でもその三味線が一味違っていた印象。

 歌丸会長の高座を見て、芸協の若手、中堅、そしてベテラン陣も何か考えることがあるはず。十日間通しの『雪の子別れ』、実は客のためだけに歌丸が演じているのではないのではないか、そんな気がした。

 補足すると、この日、うめ吉は風邪で喉の調子が悪く、踊りだけ6分の出番だった。

 この高座、結果としてはその年のマイベスト十席には選ばなかったものの、今でも強く印象に残っている。

 圓朝作品を手掛けるより前、テレビの人気者になった頃ではあったが、歌丸は噺家としての土台づくりとなったであろう独演会を開いていた。

 では、ようやく本の内容から。

e0337777_16271073.jpg

『歌丸 極上人生』

 『歌丸 極上人生』は、最初は平成18年に、うなぎ書房から『極上 歌丸ばなし』として発行され、平成27年に加筆・修正の上で、祥伝社黄金文庫で再刊。

 山本進さんの聞き書きが元となっている。

 第一回目は、三十歳台で始めた会のこと。

 あたしの住んでいる横浜の真金町のすぐ近く、中村川にかかっている三吉橋のたもとに三吉演芸場という、小劇場があります。昭和五年に開場したという建物が、戦災をのがれて、主に大衆演劇をかけていました。うちが近いもんですから、あたしも昔からときどき見に行ったこともあります。本田さんという方が持ち主なんですが、戦後長い間、別の興行主に貸していたんだそうです。それが立ちゆかなくなって、小屋が返ってきたのが昭和四十八年。それじゃァひとつ、自分たちでやってみゆかというんで、すっかり改装して再開場した、お披露目のパーティーがりまして、あたしも呼ばれました。
 そのときに、近所に住んでいるんだから、月の三十一日あたりを借りて、こういうところで独演会をやってみたいって、あたしのほうから言い出したのが、ことの始まりなんです。そしたら、本田さんのほうも、ぜひやってほしい、じゃァやりましょうって、急に話が決まって、翌年(昭和四十九年)の一月三十一日に第一回をやりました。

 前身の「金曜夜席」が、昭和40年(1965)年3月12日から昭和41(1966)年4月22日まで第2・第4金曜日の22時30分から放送され、その後、日曜夕方に「笑点」としてスタートしたのが昭和41(1966)年の5月15日。
 だから、三吉演芸場での独演会を始めた時は、約八年の月日が経っていた。

 その前は、独演会ってものはやった覚えは、あんまりありません。そのころあっとこっちで、いろんな人が独演会をやっていました。圓楽さんは、かなり前から上野の鈴本でやってましたし、談志さんが「ひとり会」ってのをやってました。確か小三治さん、志ん朝さんもやっていたと思います。だからあたしも独演会ってものを持ちたいなと、真打になってしばらくしてから、そういう気はありました。やっぱり、独演会をやらなきゃ噺は増えないと思いましてね。苦しまなきゃ増えない。そりゃ楽をしようと思えば勉強しないですむんですよ。でも、それきゃァ噺家になった意味がないと思ったんです。
 昭和四十九年、三十八歳での独演会の幕開け。

 その独演会で、どんなネタを披露していたのか、などは次回。

名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by kogotokoubei | 2019-05-08 12:36 | 落語の本 | Comments(0)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛