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あらためて、小痴楽の単独真打昇進のこと、など。

 小痴楽と松之丞の抜擢・一人真打昇進についてはいくつかのメディアも取り上げている。

 スポーツ報知がまとまっていたので、引用する。
スポーツ報知の該当記事

柳亭小痴楽、神田松之丞の真打ち昇進が決定 小痴楽は来年9月、15年ぶり単独昇進 松之丞は20年2月
2018年12月28日12時36分 スポーツ報知

 落語家・柳亭小痴楽(30)、講談師・神田松之丞(35)が真打ち昇進が28日、決まった。所属する落語芸術協会(三遊亭小遊三会長代行)が同日、都内で理事会を開き、来年2019年9月下席に小痴楽の、2020年2月中席に松之丞の真打ち昇進をそれぞれ承認した。

 小痴楽、松之丞は同協会二ツ目11人で結成したユニット「成金」で人気を博した。小痴楽は江戸っ子の雰囲気を色濃く出す落語家として活躍。父親が5代目・柳亭痴楽の2世落語家だが、父親は闘病の末、小痴楽の二ツ目昇進を前に亡くなっている。松之丞は「チケットの最も取れない講談師」との異名を取るなどブレークしていた。

 同協会での真打ち昇進は例年5月で、小痴楽は順当に行けば2020年の5月の昇進だったが、人気、実力を評価。前倒ししての9月の真打ち昇進を決定。単独での真打ち昇進は2004年の桂米福以来、15年ぶりとなる。松之丞は数年前から席亭の推薦での真打ち昇進が協議されていたが、否決されていた。

 松之丞は日本講談協会にも所属。落語芸術協会の二ツ目の香盤では落語家9人を追い抜く形となったが、芸協では、落語家と講談師の香盤は別物と判断。7月2日に亡くなった前会長の桂歌丸さんが抜てき真打ちについて否定的な考えを持っており、意向に沿って、講談師では順番を守る形で、今回の昇進が決まった。

 そうなのだ。
 松之丞の昇進時期は早いように思えるが、もっと抜擢要素の強いのが、小痴楽。

 歌丸前会長は、確かに年功主義ではあった。
 しかし、若手の育成には努めていたようだし、理解もあったと思う。それは、小痴楽たちのツィッターや成金仲間のブログで感じていたことだ。

 会長として歌丸さんを見直したことがある。

 それは、2016年の歌丸会長の新年の挨拶だった。
 紹介したブログから、挨拶の内容を引用したい。
2016年1月2日のブログ
会長新年ご挨拶

あけましておめでとうございます。
平成二十八年元日、晴れやかな新年を迎えました。
私ども公益社団法人落語芸術協会は、初席より都内各定席をはじめ、全国各地で寄席高座を務めております。新年も皆様に「笑い」をお届けするべく、協会員一同全力で取り組んで参ります。どうぞ変わらぬご支援、ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。

本年五月には、きらり改メ神田鯉栄、橘ノ圓満、可女次改メ三笑亭可風の三名が真打昇進致します。三者三様の持ち味を活かし、新たな一歩を踏み出します。彼らの姿にご注目頂ければ幸いです。

ベテランから若手まで切磋琢磨し、当協会ひいては業界全体を盛り上げていきますことをお約束いたします。
本年も何卒宜しくお願い申し上げます。

公益社団法人落語芸術協会
会長 桂 歌丸

 歌丸会長の、“ベテランから若手まで切磋琢磨し、当協会ひいては業界全体を盛り上げていきますことをお約束いたします”という言葉には、強い意志を感じた。

 落語協会のホームページにも、会長挨拶は掲載されていた。
 引用はしないが、昇進する真打が五人いること、ある名跡の襲名があることなどを含んでいたが、その内容はホームページ同様に事務的で空虚だった。

 落語協会は、その無味乾燥なサイトで、来秋四人が真打に昇進することを案内していた。
落語協会サイトの該当記事

 その四人の入門と二ツ目昇進時期は、次の通り。

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柳家わさび  2003(平成15)年11月入門、2008(平成20)年3月二ツ目昇進
柳家喬の字  2004(平成16)年入門、2008(平成20)年3月二ツ目昇進
初音家左吉  2004(平成16)年6月入門、2008(平成20)年3月二ツ目昇進
柳家ほたる  2004(平成16)年6月入門、2008(平成20)年3月二ツ目昇進
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 昨日の記事にいただいた佐平次さんのコメントで、29日の末広亭の夜の特別興行で、権太楼が上の四人の中で出演した二人について、厳しい小言があり、芸協が羨ましい、と小痴楽と松之丞のことを褒めたらしい。

 権太楼も、一度体調を悪くしてから協会の幹部として表立ったことは遠慮しているようだが、思うことはあるに違いない。忸怩たる思い、と言えるかな。

 芸協の来春の二人、秋の一人を並べてみる。吉幸は昨日の記事で書いたように例外的なので、外す。
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瀧川鯉斗   2005(平成17)年3月入門、2009(平成21)年4月二ツ目昇進
橘ノ双葉   2005(平成17)年3月入門、2009(平成21)年4月二ツ目昇進
柳亭小痴楽  2005(平成17)年10月入門、2009(平成21)年4月二ツ目昇進
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 これまで、年度により二ツ目の人数などにも左右されるので、一概には言えないが、年功的には、両協会とも入門14~15年で昇進している。
 
 今年五月に芸協で真打昇進した落語家はこの人。
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桂夏丸    2003(平成15)年3月入門、2007(平成19)年9月二ツ目昇進
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 そして、落語協会で今秋に昇進したのは次の五人。
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古今亭駒次  2003(平成15)年3月入門、2007(平成19)年2月二ツ目昇進
柳家さん若  2003(平成15)年入門、2007(平成19)年2月二ツ目昇進
柳家花ん謝  2003(平成15)年入門、2007(平成19)年2月二ツ目昇進
林家たこ平  2003(平成15)年11月入門、2007(平成19)年5月二ツ目昇進
古今亭ちよりん 2003(平成15)年入門、2007(平成19))年5月二ツ目昇進
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 ほぼ同じに見える。

 では、昨年2017年、春はどうだったか。
 芸協の昇進者は次の二人。
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昔昔亭桃之助 2002(平成14)年3月入門、2007(平成19)年2月二ツ目昇進
笑福亭和光  2002(平成14)年2月入門、2007(平成19)年4月 二ツ目昇進
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 落語協会の昨春の昇進者5人は、こうなっている。
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林家ひろ木 2002(平成14)年入門、2005(平成17)年11月二ツ目昇進
春風亭朝也 2002(平成14)年5月入門、2005(平成17)年11月二ツ目昇進
柳家ろべえ 2003(平成15)年2月入門、2006(平成18)年5月二ツ目昇進 
三遊亭時松  2003(平成15)年4月入門、2006(平成18)年5月二ツ目昇進
鈴々舎馬るこ 2003(平成15)年5月入門、2006(平成18)年5月二ツ目昇進
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 昨年の例で見られるように、どちらかと言うと、入門からの所用期間では、やや芸協側が落語協会よりも長い傾向があったので、私は来年の芸協の昇進はないだろうと思っていた。

 それが、春・秋で分けての昇進に加え、秋に小痴楽の単独とはねぇ。

 落語協会は春に歌之介の圓歌襲名披露興行があることもあってだろう、秋に四人が昇進。

 おや、秋ということは、小痴楽の披露目とぶつかる、ということ。

 先に落語協会が発表しているから、芸協は、それを知っていての決断。

 ということは、来年の九月下席は、こういうことになる。

 2019年9月21日~9月30日
  鈴本演芸場 落語協会真打昇進披露興行
  新宿末広亭 落語芸術協会真打昇進披露興行

 ワ~オ!

 これ、鈴本と袂を別った芸協の挑戦状と言えないだろうか。

 これで両者の復縁は、遠い先になりそうだが、まぁ、そんな簡単に埋まる溝ではないだろうから、こういう趣向も悪くないだろう。

 年の瀬に、来年の東京の落語界に刺激を与えるような、真打昇進のニュースであった。

Commented by 寿限無 at 2018-12-30 16:13 x
ほたるは、権太楼の弟子ですね。
権太楼は自分のお弟子さんには厳しいところがありますからね。
さん光に対してもそうです。
Commented by kogotokoubei at 2018-12-30 16:46
>寿限無さんへ

結構、面と向かって言わないで、高座で楽屋を目指して小言を言っているのかもしれません。
マクラで、スマホでいらぬことをする弟子への小言も定番ですが笑えますね。
佐平次さんのブログによると、権太楼の後に高座に上がったさん喬が、そんな権太楼をたしなめ、バランスをとるような発言をしたようです。
さすが、この二人に会、ということでしょう。
Commented by 寿限無 at 2018-12-30 17:45 x
権太楼の「日曜朝のおさらい会」でよくやり玉に上がっていたのが
さん光(おじさん)です。前座のおじさんと一緒に演じていた
ほたるにはあまり注文を付けていませんでした。
さん喬さんはお弟子さんに優しいのですかね……。
年末のさん喬の一門会で今度弟子が真打になると喜んでいましたからね。
そのときのさん喬の演目は「寝床」でした。
Commented by kogotokoubei at 2018-12-30 18:08
>寿限無さんへ

師匠と弟子との関係は、それぞれですね。
来秋の落語協会の四人の昇進者のなかでは、あくまで個人的には、わさびの披露目に行きたいと思っています。
小痴楽がどんなネタで興行全体を突っ走るかも、大いに興味あり!
Commented by ぱたぱた at 2018-12-31 09:05 x
今年も貴ブログを楽しく拝読しました。
さて、先の末廣亭余一会で二つ目の二人について小言を言っていたとのことですが、2011年か2012年の余一会でも当時の右太楼(現燕弥)の普段の袴、さん弥(現さん助)の壺算について高座に上がるなり公開小言をしていましたので言わずにはいられないのかもしれません。権太楼の公開小言は三田落語会での白酒との二人会での白酒との組み合わせに対する不満、前座の牛ほめに対する小言に遭遇しました。来年9月以降の芸協の真打昇進は、成金ユニットの集客力、小痴楽の実力から再来年よりも早めたのでしょう。芸協としてもドル箱の歌丸が死去し、危機感があるのだと思います。来年も楽しいブログをきたいしております。よいお年をお迎えくださいませ。
Commented by kogotokoubei at 2018-12-31 12:45
>ぱたぱたさんへ

心温まるコメント、誠にありがとうございます。
権太楼は、意図的に小言を言っているのでしょうね。
私と同じか^^
芸協は、歌丸会長亡き後、良い意味で危機感があるのでしょう。
松之丞の人気はバブルですが、小痴楽はもっと多くの人に聴いてもらいたい若手なので、実に良い決断だったと思います。
「成金」は解散するようですが、本当の「金」になっても、勝負はまだまだこれから。
落語協会の若手にとっても、良い刺激になって欲しいと思います。
来年の九月、いろいろと野暮用の多い時期ですが、なんとか披露目には行きたいものです。
ぱたぱたさんも、良い落としをお迎えください。
Commented by ばいなりい at 2018-12-31 23:12 x
6代目圓生が寄席育ちなら、歌丸師は廓育ち。地元横浜に「にぎわい座」をもたらした手腕は「繁昌亭」の三枝師の政治力に匹敵します。あれっ、どちらも亭号は「桂」だ! 偶然でしょうか? まあ、業界にはこういった人たちも必要なんですね。「にぎわい座」についは喬太郎がよく言及しているので、まだ行った事はありませんが、何故かよく知ってます(笑)。
この一年、お疲れさまでした。来年もよい年でありますように。
Commented by kogotokoubei at 2019-01-01 10:01
>ばいなりいさんへ

昨年もたくさんのコメントありがとうございます。
失ってその存在の大きさがますます分かるのが歌丸さんですね。
横浜にぎわい座は、好きな小屋です。
地下秘密倶楽部(?)のげシャーレも、なかなかの空間。
ぜひ、いらっしゃってください。
本年もよろしくお願いいたします。
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by kogotokoubei | 2018-12-30 14:25 | 真打 | Trackback | Comments(8)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛