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「まんぷく」は、なかなか腹にたまらない・・・・・・。


 NHKの朝のドラマ「まんぷく」について、やはり小言を書かないわけにはいかない。

 実在の人物を“モチーフ”にした“フィクション”ということなのだろうが、気になることが多すぎる。


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『転んでもただでは起きるな!-定本・安藤百福-』
 中公文庫の『転んでもただでは起きるな!-定本・安藤百福-』は、安藤百福発明記念館の編集による本。

 実際の安藤百福の歩んだ人生や環境などの違いを指摘すると、生まれが当時の日本の植民地であった台湾であるとか、その台湾の地で祖父の経営する織物業を手伝っていたことなどがスルーされていることをはじめ、いくらでもあるのだが、まずは、最近の内容について。
  
 ようやく萬平や従業員の若者たちが進駐軍から解放されて、物語は次の段階に進んでいるが、あの事件、事実とは大きく違っている。

 まず、巻末の年譜から、1946(昭和21)年の出来事を引用。

 1946(昭和21)年・・・・・・36歳

   4月 泉大津の旧造幣廠跡地の払い下げを受け、復員軍人などの若者に仕事を
      与えるため製塩事業(1949年3月まで)を始める。

 だから、あの製塩事業は事実。

 また、翌昭和22年に、国民栄養科学研究所設立(1951年3月まで)し、栄養食品(名称は「ビセイクル」)を開発したのも、事実。

 しかし、ドラマのように萬平(百福)や従業員たちは、その後、手榴弾を海に投げたのから逮捕されたのではないし、捕まったのは百福だけである。

 1948(昭和23)年のクリスマスの夜だった。GHQ(連合国軍総司令部)の大阪文軍政部長が転勤するというので、安藤の経営する貿易会館(大阪府北区)で赤間文三大阪府知事や杉道助大阪商工会議所会頭らを招待して送別会を開いた。会が終わり、正面玄関から客を送り出したあと、会館の裏手に停めてあった車に乗ろうとすると、2人のMP(米国陸軍の憲兵)が安藤の身体を両側から抱え込んだ。有無を言わさずジープに押し込んだ。安藤には何が起こったか分からなかった。
 容疑は脱税だという。泉大津の若者達に渡していた小遣いが給与とみなされ、源泉徴収して納めるべき税金を納めていないというのだ。寝耳に水とはこのことである。善意が踏みにじられた思いだった。

 次に紹介するように、みせしめ、とも言える逮捕だった。
 
 GHQは、国の深刻な歳入不足を解消するために徴税を強める必要があるとして、日本の財務当局を奨励した。これを受けて税務署は厳しく徴収した結果、国民の間から激しい反税運動が起きている最中だった。新しく着任した軍政部長が新聞談話を発表していた。「アメリカでは税金を払うのは国民の義務である。日本人も納税義務を果たすべきであり、違反者は懲罰に処す方針」という。記事の中で安藤が名指しされていた。どうやらみせしめに使われたようだった。

 百福は、提訴に踏み切る。
 京都大学方角部長を務めた黒田覚博士ら6人の弁護団を組織した。

 収監されたのは、あの巣鴨プリズン。

 裁判が進むうち、税務当局の役人が「訴えを取り下げてくれないか」と言ってきた。取り下げるなら、即刻自由の身にしてもいいという。もし裁判で負ければ、反税運動を勢いづかせることにもなりかねない。旗色が悪くなったので、妥協を迫ってきたのだ。

 しかし、百福は、そんな誘いにも応じず、訴訟を継続。
 巣鴨には二年近く収監されていた。

 安藤が折れたのは、仁(まさ)子が息子の宏基の手を引き、まだ一歳半の娘の明美を抱いて面会に来た日だった。大阪から11時の夜行列車に乗り、翌朝東京に着く。朝に事務手続きを済ませて、午後一時からようやく面会が始まる。時間はたった45分しかない。金網を挟んで話をする。仁子は離ればなれになった寂しい生活の苦労を伝えようとうる。あっという間に時間がきて、また家族と引き裂かれる。
 小さな手を振って帰っていく幼い子供達の後姿を見て、さすがの安藤も「もうこのへんが潮時かもしれないな」という気持ちになった。

 私は、ドラマ以上に紹介した事実のほうがドラマチックに思えてならない。

 なぜ、みせしめの脱税容疑で逮捕されたことや、収監先が巣鴨プリズンであったことを、ドラマでは変えたのか・・・・・・。

 まさに、消費税アップを目の前にして、なんとも複雑な制度を導入しようとしている政府への忖度、と言うと大袈裟だろうか。

 筋書きにも閉口するが、期待した安藤サクラも、あの『百円の恋』や『万引き家族』の彼女は、あのドラマにはいない。
 夫を支える明るい妻、というステロタイプな役として、なんとも奥行きのない姿が求められているようだ。

 また、これまで書いてこなかかったが、あえて書こう。

 松坂慶子を、NHKは使いすぎである。

 「西郷どん」の母親役でもがっかりしたが、朝も、然り。

 なんというか、人間が見えてこないのだ、この女優の演技からは。

 そこには、歴史上の人物がいるのではなくて、松坂慶子といういつもの女優がいるのみ。

 別な女優はいくらでもいるだろうに。


 まだ、しばらくは見るつもりだが、少し期待が大きすぎたようだ。

 まぁ、それもいつものことだが。
 
 このドラマ、脚色の仕方、俳優の演技、それぞれが軽いのだ。

 題は「まんぷく」だが、とても、腹にはたまらない。
Commented by 寿限無 at 2018-12-14 20:58 x
フィクションより事実の方がよっぽどドラマがありますね。
Commented by kogotokoubei at 2018-12-15 09:02
>寿限無さんへ

そう思われますよねぇ。
忖度か強制があったのか知りませんが、どうしても税金問題にしたくなかったのでしょう、きっと。
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by kogotokoubei | 2018-12-13 12:36 | ドラマや時代劇 | Trackback | Comments(2)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


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