噺の話

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名作落語の夕べ 横浜にぎわい座 10月6日

 落語禁断症状(?)から、なんとか都合がつきそうな5日の夜の三三か、6日の夜のこの会、どちらかの横浜にぎわい座と思い、5日の午前中にぎわい座に電話した。
 前売り完売の三三の会は当日券も含めすでに売り切れ。

 6日は、かろうじて二階席は空いているということで、高座に近い席を予約。

 にぎわい座の二階席は、2011年に三三の『嶋鵆沖白浪』通しの八月の会以来だ。
2011年8月5日のブログ
 にぎわい座の二階席、それほど悪い印象がない。
 高座近くの席なら、表情もよく分かるし、珍しい鳥瞰のアングルで楽しめる。

 百九十三回目になるという「名作落語の夕べ」だが、初めて。

 会場は、実際に一階はほぼ満席で、二階席も半分位は埋まっていたなぁ。

 この日の会は、同じネタでの上方版の会を11月に開催するようで、その江戸版。

 出演順に感想など。

布目さんの前口上(9分 *18:00~)
 にぎわい座のチーフ・プロデューサーである布目英一さんが、いつものように携帯などの注意に続き、この会に関する説明をした。
 東西の同じネタの違い、ということで『愛宕山』や『時そば』『時うどん』などを素材に丁寧な説明。
 また、同じネタでも噺家によって違いが出るし、同じ噺家でも、ネタは生きているので日によって変わることもある、と前夜の三三の『柳田格之進』について、三三が興味深い改作をしたことを付け加えてくれた。へぇー、そんな格之進は、聴いたことがないなぁ。 布目さん、いつもの開演前の注意と同じ、舞台上座隅に立ったままの口上だったが、ぜひ今後は中央に立ってお願いしたい^^

春風亭昇りん『たらちね』 (10分)
 開口一番は、初めての昇太の弟子。いい雰囲気は持っているが、どうも言葉遣いが気になる。八五郎が隣りの婆さんに「てめい」と言ったり、初対面の嫁に「おめぇの名前は」というのは、いただけない。おめぇさん、だろう。

立川志の八『だくだく』 (25分)
 ここからはネタ出しされている。
 志の輔の二番弟子、名前は知っていたが、初めて聴く。
 結論から書くと、良い発見だった。
 スマホに関わるマクラも、結構楽しく聴けた。
 絵の先生が床の間と掛け軸を描く様子はリアルな所作で見せていたが、雑にならず、このスピード感は若々しくて好感が持てた。ラジオは「マホガニー」という科白も、なかなか効いていた。なかなか最近は聞かないね、マホガニー製なんて言葉。
 眼の悪い泥棒が明かすことになるが、壁に描かれた中に「よそう、夢になるといけねぇ」や「半鐘はおよしよ、オジャンになるから」なんて科白が描かれているというのも、可笑しい。
 男が起きてから泥棒との「つもり」の戦いも楽しく演じていた。
 この人、地元横浜出身で、にぎわい座での独演会もあるようだ。
 今後、もっと聴きたくさせる高座だった。

三笑亭夢太朗『時そば』 (32分)
 寄席ではよく聴くが、長講は初めて。
 寄席のある浅草や新宿のことに関するマクラで10分ほどで本編へ。
 最初の男が蕎麦を食べる場面が長々と続き、(そんなに蕎麦が入っているのか?)と疑問を感じたところで、蕎麦屋に「お客様、そんなに蕎麦入っていましたか?」と聞かせると、「今日は30分やんなきゃならねぇんだ」の答えで、満席の会場は爆笑。
 蕎麦屋の屋号が、以前は「築地」で今は「豊洲」、というのは、ニュース性があって良かったと思う。
 二人目の男、あちこち欠けたどんぶりを回しているのを見て、蕎麦屋が「お客様、お茶の心得がおありで」なんて科白も、可笑しい。
 寄席の短いネタでは分からなかった、この人の持ち味を感じることのできた好高座。

 ここで仲入り。

三遊亭兼好『巌流島』 (29分)
 マクラがネタとの関連性もあり、かつ楽しかった。
 いろんな乗り物があるが、海外なら飛行機でしょう、仕事で関西などへ行くなどは新幹線となるでしょう・・・警察に追われたら、自転車ですね、で爆笑。時事性のあるネタは、やはり日頃からネタになりそうな事件などに注意しているのだろうなぁ。
 花見の屋形船での営業や日本丸など遠洋航路での仕事の話から江戸の渡しのことにつなげ、「さあ事だ、馬の小便渡し舟」と、10分余りのマクラで会場を温めてから本編へ。
 船上で職人風の客が、島に取り残された若侍をからかう様子などは、この人の持ち味が生きる。また、殺されそうになった屑屋が何を聞かれても「くず~ぃ」と答えるのが、可笑しい。
 この人ならではのメリハリの利いた語り口や所作が、力量の高さを物語る。
 加えて、若侍の「黒木綿の五つ所紋、段袋の袴ぁはいて、長い朱鞘の大小をさして」いる姿や、「麻の上下に黒縮緬の羽織、供に槍を持たせた」高齢の侍の形容、当り前のようでいて、さらっと語るのは結構難しいのだ。そういう科白がサマになってきたなぁ、と思いながら聴いていた。
 得意なブラックな味わいを抑えてはいたが、関連性のあるマクラと本編を含め、この人ならではの高座には、一種の貫禄まで出ていたような気がした。今年のマイベスト十席候補としたい。

桃月庵白酒『宿屋の富』 (28分 *~20:26)
 短いマクラだったが、にぎわい座のある野毛の街の変貌を語る中で、「昔は、人生を捨てる場所」などの表現が、この人らしく笑った。桜木町の駅を右に行くか左に行くかで大きな違いがあり、以前はにぎわい座に来る時は、電車で関内まで行ってから歩いて戻った、というのはネタだろうが、可笑しかった。
 たしかに白酒が言うように、最近は、野毛近辺もずいぶん洒落たお店が増えたなぁ。
 それぞれの街には、それぞれの役割があって、と馬喰町につなぐ。実にマクラから本編へ自然な流れ。
 この噺の聞かせどころは、冒頭の宿に泊まりに来た男の作り話とそれを真に受ける宿の主人との会話。そして、二番富の五百両が当たるはずの若い男の、妄想ばなしだろう。
 もう少しこの人ならではの脚色をするかと思ったが、ほぼ古今亭の型と言えるだろう。
 一文なしの男の作り話は、使用人は八百人、身の回りの世話だけでも五十人。泥棒が入ったが十五、六人でも持っていった千両箱は八十ぐらい、というのは志ん生版と同じ。
 二番富の男の妄想も、ほぼ古今亭の内容。膳に、刺身、天ぷら、鰻というのは、人によって違うが、基本の展開は踏襲している。
 一番富も子の千三百六十五番。
 この人らしさが発揮されたのは、一文なしも、宿屋の主人も、一番富と分かって宿に帰った時の、言葉にならないあの科白。『つる』や『短命』のご隠居でも発揮される例の、アレだだから、笑わずにはいられない。
 あえていじらなくても、これだけ楽しい噺なんです、とでも主張するような高座。
 「名作落語の夕べ」となると、あまり改作はできないのかもしれないが、十分にご通家が多いと思しき会場を沸かせた。こちらも、今年のマイベスト十席候補としたい。


 久しぶりの生の落語は、実に楽しかった。

 志の八は初めてだったが、今後もぜひ聴きたくなった。
 寄席では分からない夢太朗の持ち味も発見できた。

 そして、兼好、白酒の堂々とした「名作」の高座に堪能した。

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Commented by saheizi-inokori at 2018-10-08 22:17
学生時代に桜木町で西部劇を見た後、駅の近くのバーに飛び込みジョンウエインを気取ってストレートでぐいぐいやったあげく伸びてしまって、椅子に閉店まで寝かせてもらいました。
人生を捨てるまでにはいたらなかったなあ。
Commented by kogotokoubei at 2018-10-09 08:39
>佐平次さんへ

あら、そんな武勇伝がありましたか^^
私も、三十年余り前、始めて関東に出てきた時、一人で野毛や黄金町の怪しげな店で飲んだ記憶があります。
過日、にぎわい座の裏で居残り会がありましたが、あの店もお洒落な焼き鳥屋さんでしたね。
白酒のマクラ、頷きながら聞いておりました。
Commented by ぱたぱた at 2018-10-10 08:46 x
私もこの会に行っておりました。名作落語の夕べは、私の場合は、2013年1月以来、その時にサラ口を勤めていたのが白酒(だくだく)でトリが故歌丸でした。その白酒がトリをとっていたところに時代の流れを感じました。それぞれ演者の高座はおもしろく、いい会だったというのが包括的な感想です。
Commented by kogotokoubei at 2018-10-10 09:00
>ぱたぱたさんへ

あら、いらっしゃいましたか。
ご挨拶するんでした^^

たしかに、全体として良い会でしたね。
なかでも、仲入り後の二人は、あえて持ち味のブラックさを抑えながらも、古典名作をしっかり聴かせてくれました。
私は、白酒、兼好が、地下のげしゃーれ時代を思い出しました。
Commented by kanekatu at 2018-10-11 18:01
名作落語の夕べは、確か去年辺りからだと思いますが企画ものになり、私も時々観に行くようになりました。歌丸が亡くなった直後に、白酒が布目さんが密かに新館長を狙ってるといじってました。
兼好が一段と上手くなりました。ネタを増やして芸の幅も拡がり、ますます楽しみな存在になってきました。
Commented by kogotokoubei at 2018-10-11 18:29
>kanekatuさんへ

布目さん、新館長で良いのではないでしょうか。
落語会が始まる前の注意を含む口上(?)は、この方がもっとも適切だと思っていました。
初めて、注意以外の話を聞くことができました^^
兼好は、勢いだけで噺を進めることがなくなってきたように思います。
あの口調には好みが別れるかもしれませんが、私は好きです。
白酒、体のみならず貫禄がついてきましたね。
六代目志ん生には、もっとも相応しいかもしれません。
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by kogotokoubei | 2018-10-08 18:21 | 寄席・落語会 | Comments(6)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛