新宿末広亭 六月下席 昼の部 6月29日
2018年 06月 30日
西野はコロンビアのリードを知り、向こうの試合が、そのままコロンビアの勝利になることに、賭けた。
そして、その賭けに勝った。
もちろん、セネガルが同点に追いつけば、賭けは負け。
しかし、初戦のコロンビア戦から、サッカーの女神は日本に微笑んでいた。
女神は裏切らなかった、ということだろう。
アジア、アフリカから日本のみベスト16という結果は、誇っていい。
そして、ベルギー戦は、蘇った川島に、まだ女神が微笑むことを祈り、2対2でPK戦の勝利を期待する。
さて、昨日は一日時間ができたので、西野ジャパン一次リーグ突破の余韻を感じながら、久し振りに末広亭での居続けだった。
もちろん、夜の部の主任小三治がお目当てだったが、昨年九月下席三代目桂小南襲名披露興行以来の末広亭、時間と空間を、たっぷり楽しみたかった。
さすがにサッカーのせいで少し遅く起き、連れ合いとわが家のシーズー達を風呂でシャンプー洗いして、朝の陽ざしの中を散歩してから新宿へ向かった。
熊本の震災からの復興を祈念し(?)桂花のラーメンセットの昼食、コンビニでいろいろ仕入れて入場したのが、一時少し前。
ストレート松浦の代演丸山おさむの途中。
好きな下手桟敷に空間を発見し、確保。
椅子席はすでに九割ほど埋まっており、桟敷も七割がたは入っていた。まだ、二階席は、この時は開いていなかった。
初めから聴けた高座の内容や感想を備忘録代りに記す。
金原亭世之介『辰巳の辻占』 (15分 *13:04~)
昨年十月、浅草演芸ホールでの二代目古今亭志ん五襲名披露興行以来。その前は、四年前九月の末広亭、師匠十代目馬生三十三回忌興行で、どちらも持ち時間が短かったせいもあろう、漫談だった。
そのうちネタを聴きたいと思っていてので、師匠十八番のこの噺を聴けて、良かった。いつも思うが、器用な人だ。マクラも結構楽しい。年齢を重ねるとともに、寄席で大事な噺家さんになるような気がする。
柳家さん福『おつとめ(尼寺の怪)』 (15分)
初めて聴いた噺。
仲間が蕎麦屋の二階で、怖い話を順に披露して、もし怖くなかったら蕎麦代を全部持つ、ということになり、そんな怖い話を知らない寅さんが、和尚にネタを仕入れに行って・・・という噺。
この人はこれまで何度か聴いているが、あまり良い印象がなかった。しかし、この珍しい噺は楽しく聴かせた。ネタとの相性もあるかな。
話を教わる場面での鸚鵡返しでの間違い(「托鉢」→「爆発!」など)と、それを仲間に披露する場面での可笑しさは、『道灌』や『牛ほめ』『新聞記事』などと相通じる。しばらくは、この噺、さん福の顔と一緒に覚えておこう。
ひびきわたる 漫談 (9分)
この日は、小道具なし。妹親娘の参観日のネタ、山形の食堂のネタ、など。
柳亭市馬『雑排』 (15分)
最近、この人の高座を、以前のような新鮮な気持ちで聴けるようになってきた。
協会の副会長の時、そして会長になった当初は、その政治的な立場への複雑な思いがあって、高座を楽しむことができず、あえて言えば、敬遠していた。池袋でトリの時は、その前に席を立ったこともある。
しかし、一人の噺家さんとしては、やはり上手いし、味がある。
歌いさえしなければ、達者な噺家だ。
ここで二階席が開いた。
柳家小ゑん『レプリカント』 (15分)
これまた初めて聴く噺。
この日は、初めて生で聴いた噺が、昼夜で四席あったなぁ。
理系の学生八木君が主人公で、西村先輩が助演(?)。
酒癖の悪い八木君は、酔ってどうやって家に帰ったか分からない。気が付くと部屋には、あのカーネル・サンダースの人形。前夜一緒に三軒はしごで飲んでいた西村先輩が心配してやって来た。八木君の部屋には、他にも川柳川柳の末広亭の看板やら、星占い付きの喫茶店の灰皿など、酔って持ち帰った戦利品(?)がたくさんある。
さて、カーネル・サンダースを店に戻そう、ということになるのだが。
題は後で調べて知ったのだが、そうなら、「ブレードランナー」にちなむギャグがもう少し欲しかった。
しかし、この人の新作は、なかなか楽しくて、好きだ。
柳貴家小雪 太神楽 (10分)
久しぶりに、この人の女性一人で演じる太神楽に出会った。
調べたら、2011年、当初3月12日の開催が予定されていた「ちがさき寄席」が延期になった11月の会以来だ。
2011年11月23日のブログ
五階茶碗をしながら横笛を吹くのは、この人だけだろう。
夜の部に出演した仙三郎の社中や、翁家社中との芸の違いを感じていたので調べたら、この人は水戸流太神楽、ということらしい。
師匠、正楽の太神楽、というサイトに、プロフィールがあった。
「柳貴家正楽の太神楽」サイト
伝統芸能である大神楽の中でも3大流派のひとつ・水戸大神楽の宗家に生まれ、幼少より芸事に親しむ。5歳の時、実父である18世家元・柳貴家正楽に師事。8歳で初舞台。平成11年1月1日より1人高座を務める。特に清麗な古典曲芸「籠鞠(かごまり)」を得意とする。あら、こういう方だったのか。道理で、達者なはず。
鈴々舎馬風『親子酒』 (13分)
仲入りは、この人。
志ん生の酒、というマクラを聴いていて、漫談で終わるかな、と思っていたら、なんとネタへ。
この人も、小三治と同じ昭和14年生まれで傘寿。
高座で元気な姿と、あの声を聴くことができれば、それで良し、と思う。
仲入りで、一服。
本数は減ったのだが、やはり止められない。
前夜も、日本とポーランド戦のハーフタイムで、ため息と一緒に外で一服していたなぁ。
春風亭一之輔『代脈』 (13分)
予定では文雀がクイツキだったが、順番が入れ替わった。
仲入り後は、この人を含め、トリの歌奴の時間を作るためだろう、皆短く切り上げた。
しかし、このテッパンネタだ。二階は半分位だと思うが、椅子席も桟敷もほぼ満員の客席を、ドッカンドッカンと沸かした。
尾台良玄が銀南に「お嬢さんが、放屁をなさった」と言うと、銀南が「現実から逃げたんですか」に、一瞬の間で良玄が「逃避、ではない。そんな難しい言葉を知っていて、なぜ放屁を分からん」などのクスグリは、何度聴いても笑える。
羊羹茶漬け、コロンボ様なども、この人ならでは。
寄席の大好きな人のネタ、寄席の客も大好きなのだ。
ロケット団 漫才 (10分)
東京の若手(中堅?)しゃべくり漫才では、この人たち一番かもしれないなぁ。
定番のネタでも、何度聴いても笑える。とはいえ、その内容はしっかり変化もしている。四字熟語シリーズでは、一つを疑うとすべてが怪しくなるのは、「疑心暗鬼」ではなく、今回は「日本大学」^^
セキュリティなんて言葉、山形では何十年も前から使っていたんだね^^
桂文雀『木火土金水』 (10分)
これまた、初めて聴く噺。
この人は、昨年6月上席で居続けした時の昼の部でもクイツキで、『虎の子』という珍しい噺を聴かせてくれた。
2017年6月8日のブログ
とにかく珍しいネタが好きなんだなぁ。
ご隠居と八五郎の問答ネタなのだが、ご隠居は、「すべてのものは、五行、木(もく)火(か)土(ど)金(ごん)水(すい)で出来ている」と八に偉そうに話す。
たとえば、八が「じゃあ、家はどうです」と聞くと、「一軒の家でも、木をもって作り、金で出来た釘を討ち、土をこねて壁を塗り、火を焚いて水を使う。木火土金水になっているだろう」という具合。
ずいぶん前に『八問答』なんてネタも聴いた。
そういった珍しいネタも結構だが、たまには、よく知られた古典も聴きたいものだ。
林家種平『忘れ物承り所』 (13分)
十八番ネタ。まさか、次の正楽が、このネタを切ることになるとは、思わなかったろう。
林家正楽 紙切り (5分)
挨拶代りの「相合傘」と「忘れ物承り所」の頭の上の眼鏡もしっかり切って、下がった。
三遊亭歌奴『御神酒徳利』 (36分 *~16:28)
さあ、他の演者が時間をつくってくれての長講は何かと期待していたら、この噺。
もちろん、柳家の『占い八百屋』ではなく、二番番頭善六が主役。
この人の高座は、その清潔感溢れる、とでもいう清々しさが特徴。もちろん、それは実に結構なのだが、反面、人物描写がやや軽くなるような、きらいがある。
しかし、この高座では、数多い登場人物を見事に演じ分け、リズム、メリハリも良く、まったくダレることがなかった。
なかでも、善六の女房の描写が良くて、たとえば、鴻池のお嬢さんのブラブラ病を治しに大阪へ行くことになって弱っている亭主に、「病の占いが、一番やさしい、危なそうなら、祟りでございます、とか、寿命でございます、無常の風は時を選ばず、と言えばいいから」と、父親譲りの策を授ける場面など、たくましい^^
神奈川宿の新羽屋で、紛失した薩摩人の紙入れの有り場所を占うことになった善六。はなれの部屋に入って、「あぁ~!」と大声で歎く場面なども、さもあの場面なら、あんな声も出るだろう、と納得。母親の薬代欲しさに善六の部屋を訪れて罪を告白した女中のおきんには、善六が新羽屋からの当座の礼金二十両の半分十両を渡すのだが、これなども、ほっとさせてくれる。
新羽屋稲荷のおかげで鴻池のお嬢さんの病も治り、目出度く善六は江戸で宿屋の主人になることができた。歌奴の目出度い高座、今年のマイベスト十席候補としたい。
さて、昼の部がお開き。
夜の部は、次の記事にて。
