池袋演芸場 六月上席 夜の部 6月8日
2018年 06月 10日
短い休憩時間で、夜の部始まり。
少し減ったとはいえ、客席の八割は埋まっていたように思う。白酒の人気かな。
では、開口一番から順に感想など。
林家きよひこ『狸の賽』 (12分) *16:48~)
初の女流噺家。彦いちの弟子のようだ。
昼の部では、小せんの弟子を聴いた。結構、若手も弟子をとっているんだなぁ。
後で歌之介が、本名が尾崎、だから、きよひこなんでしょう、と謎(?)の答えを明かしてくれた。
見た目は、立川こはるに、少し似ているかな。元気な高座は好感が持てる。それにしても、女流の噺家、増えたねぇ。
初音家左吉『代書屋』 (15分)
初、かと思ったら、五年前の九月、同じ池袋で『家見舞』を聴いていた。
その時の印象として、しん平に見た目が似ている、と書いているが、変わらない。
客席は結構笑ってくれたが、今一つリズムが悪い。
入門、二ツ目昇進が、昼の部に出ていた柳家ほたると同じ。
来年には真打昇進があるだろう。もう少し、精進してもらいましょう。
金原亭馬治『牛ほめ』 (13分)
ずいぶん久しぶり。調べてみると、2011年、まったく同じ6月8日の人形町らくだ亭以来。あの会では、小満んとさん喬のリレーで『おせつ徳三郎』が聴けた。その会の記事では、宮治の『元犬』の方を褒めていた。
さすがに七年前の高座はよく覚えていないが、間違いなく成長していると思う。二ツ目の左吉の後だから、ということもあろうが、なかなか楽しい高座だった。
すず風にゃん子・金魚 漫才 (13分)
金魚さんの頭の上は、ジューンブライド、ということで百均で仕入れたストロー製のウェディングドレス。
「ウェディングベルメゾン 嫁っ子」というネーミング、何度聴いても秀逸。
この人たちの漫才は、いつも元気をもらえる。
蜃気楼龍玉『夏泥』 (14分)
あの漫才の後は、やりにくいだろうなぁ、と思っていたが、すぐに龍玉ワールド(?)へ誘い込む。二ツ目弥助の頃からの十八番と言えるだろう。
泥棒から質草を出す金をめぐんでやろうと言われる度に、一文無しの男が、「すまねぇなぁ、ありがとよ、その親切は、涙が出るほどうれしいが」という科白が繰り返されることで客席から笑いが起こる。
質屋に預けた道具箱、着物のみならず、ためた家賃の二か月分までをむしり取られる泥棒が、なんと可愛そうなことか。
この人の名は三代目だが、真打に昇進しこの名を襲名してからは、実に存在感のある噺家さんになった。人情噺も怪談噺も手掛けているが、私はこの人のこういう軽い滑稽噺、好きだ。寄席の逸品賞候補として朱色をつけておこう。
橘家円十郎『猫と金魚』 (18分)
座る際の「ヨイショ」は、定番。
今年の初落語の同じ池袋で『宮戸川』を聴いている。
明るく楽しい高座ではあったが、白酒と同じ2005年9月の真打昇進を考えると、もう少し落ち着きも欲しいかな。
林家正楽 紙切り (11分)
ご挨拶代りの「相合傘」から「小鹿のバンビ」「オナガドリ」「雲助と白酒」と見事に切り分けて、さっと下がる。名人芸だ。
三遊亭歌之介 漫談 (19分)
マクラでは、すでに書いたように、女性の前座さんの出身(長野)や本名のことにふれた。
漫談、とは書いたが、十八番ネタの部分的なクスグリが満載なので、客席が湧かないはずがない。フランス語を学んでいて「ジュとジュでニジュウ、あとジュでサンジュウ」なんてネタでも、大爆笑。
来年は円歌襲名で忙しくなるだろう。去年の師匠が亡くなった後の末広亭の高座での涙を、思い出した。
五街道雲助『粗忽の釘』 (15分)
仲入りは、この人。弟子にとっては嬉しい、師匠の援護。
ほぼ一年前、末広亭で居続けをしたが、その時と同じネタ。
とはいえ、やはり、楽しいのだ。なかでも、熊が女房との馴れ初めを、聞いてもいない隣りの住人に披露する時、最初に家に女房を連れてきた夜、台所の汚れ物を洗う彼女の後ろから近づき、八ツ口から手を入れてくすぐっているうちに、「そこは脇の下じゃないわよ・・・てな具合で一緒になりました」が、なんともいえない大人の落語で、いいのだ。
春風亭三朝『そば清』 (16分)
夜のクイツキは、この人。
清兵衛さんと蕎麦がいくら食べられるか賭けよう、と若い衆が相談する中で、六ちゃんだけが、何か気が乗らない様子。「六ちゃん、どうしたい」「いやね、てぇっことは、もり蕎麦をかけ蕎麦にすんの」が、可笑しかった。
五十枚の掛けの日、最前列で見学する席が「つゆっかぶり」というのも、笑える。
ウワバミが飲んだ不思議な薬草のことを説明するのに、アルマイトの弁当箱と梅干が登場するが、若いのに、よく知っているねぇ。
昼の部と夜の部のクイツキが一朝門下、というのは、あの一門の層の厚さを物語っている。
桂南喬『千早ふる』 (17分)
夜の部の膝前は、大好きなこの人。肩を少し丸めて高座に登場する姿も、なんとも言えない。
昼の部の一之輔の『加賀の千代』とツクといえないこともないが、それはよしとしよう。
噺本来の可笑しさで、客席をわかせる。この高座も寄席の逸品賞候補だなぁ。
伊藤夢葉 奇術 (13分)
いつものネタなのだが、その話術に笑ってしまう。
少し顔色が黒いが、ゴルフか^^
桃月庵白酒『お見立て』 (27分 *~20:31)
昼の部で、満席で立ち見が出たのに、いつものようにパイプ椅子を置かなかったのが不思議だったのだが、マクラでその疑問を解いてくれた。消防署の立ち入りがあったらしい。そうだったのか。また、いつ来るか分からないから、椅子を出せないようだ。
その後、昔の池袋演芸場の「お茶セット」のことや、とても明かせない政治ネタを少しふって本編へ。
杢兵衛が、とにかく可笑しい。この人の持ち味は、いわばデフォルメの芸だが、田舎者の杢兵衛大尽の言葉や仕草の、まぁ凄いこと。
また、この人ならではのクスグリのセンスの良さは、喜助の喜瀬川への言葉などで発揮される。喜瀬川が杢兵衛に会いたくないあまりに病気だとか死んだという嘘を平気でこしらえるのに対し、「また、腹にないことをいけしゃあしゃあと言えますね」という言葉も、実にタイミングよく挟まれるので、可笑しいのだ。
喜助がお茶を目に塗って泣いた真似をしていると杢兵衛が、「喜助、茶殻が目についとるぞ」、喜助が「悲しいとこうなるんです」に「体質改善しろ」にも笑った。
笑わないようにと喜助が自分の体をつねったりする仕草も、なんとも言えず楽しい。
それでいて、噺本来の味は、決して壊していないのだ。
久しぶりの白酒の高座、今年のマイベスト十席候補にしない理由はない。
終演後は、外は白酒がマクラで嬉しそうに言っていたように、小雨。
居残りもなく、家路を急ぎ、帰宅して飲みながら、じっくり居続けの落語の余韻に浸っていた。
実は、今日6月10日で、拙ブログを始めて、満十年となった。
早いものだ。
ある落語会への小言から始まったのだが、その後は、いろんなことを書いている。
3.11以降は、やや時事的な内容が増えて、それらの記事は、兄弟ブログに引っ越した。
引っ越しと言えば、FC2からExciteへの引っ越しもしたなぁ。
そんな記念の日に、居続けの寄席の記事を昼夜とも記事にできたことは、雨のおかげもあるが、喜んでいいのだろう。
昔なら、時の記念日か。
結果として、いい日に始めたと言えるのかもしれない。
自分の備忘録のみならず、コメントを通じて、落語愛好家のお仲間もたくさんできた。
あらためて、これまでご覧いただいてきた方や、コメントまでちょうだいした方、すべての皆さんにお礼を申し上げます。
池袋も私が行くときは大抵ガラガラですが、この日の様に顔づけが良いと客は入るんですね。権ちゃんや白酒の人気もあったでしょうが、ベテラン、中堅、若手とバランスの良さも感じます。
こういう日に当たるのも、幸兵衛さんの日頃の行いのせいでしょうね。
日頃の行い、それほど良いとは思えませんが、良い日にご縁がありました。
権ちゃん、白酒がそれぞれ柳家の十八番、古今亭の十八番で締めてくれました。
あっと言う間の十年でした。
いろいろありましたが、まだ落語を楽しむことができるということは幸福なんだと思います。
今後も、ご指導のほどをよろしくお願いいたします。
池袋演芸場の平日の昼間で立ち見ですか。
客席の間の通路にあったパイプ椅子がなかったということでしょうか?
「お茶セット」って、お茶がいくらで、座布団1枚がいくら、という話ですかね?
確かに、6月上席はいい顔ぶれでしたね。下席も悪くないですよね。
6月上席、良い顔付けでしたね。居残りお疲れ様でした。
小生も昨日行きましたが、雨にも関わらず立ち見が出ていました。
権太楼 死神(風邪で本調子ではなかったです)
馬石 粗忽の釘
雲助 お菊の皿
白酒 転宅
が印象に残りました。
円十郎、白酒と同期でしたよね。禁酒番屋をやりましたが、うーんって感じでした…
同期で体格も似ているのに、トリを取れるか取れないかの差は何なのか?色々とあるでしょうが、声の質とセンスなのかな?とつらつら思った次第です。
ありがとうございます。
パイプ椅子の件、混んでいる時に通路と後ろに並べられていましたが、、一席もありませんでした。
「お茶セット」は、以前の池袋演技場でのことで、お茶とお菓子(白酒いわく、いつ食べても湿っている煎餅^^)のセットだったようです。
今月は、芸協の寿輔主任の昼の部と真打昇進披露の夜の部も含め、池袋の番組は良いと思います。
ありがとうございます。
昨日は、日曜の千秋楽ですね。混んだでしょう。
権ちゃん、さすがに楽日は疲労もたまっていたのでは。
白酒の「転宅」も、楽しいですよね。
円十郎の持つ明るい雰囲気は嫌いではないのですがねぇ。
いれていますのでこれからも楽しみに拝読します。^_^
ところで、貴ブログ10周年おめでとうございます。10年1区切りで、次の挑戦をお待ちします。
ありがとうございます。
「次の挑戦」ですか・・・・・・。
継続は力なり、ということでご理解のほどを。
南喬のような噺家さんこそ、若手には見習ってほしいと思います。
落語は、噺本来の可笑しさをしっかり表現できればいいのであって、笑わせようなどと思って無理なクスグリを入れることなど必要ない。
そういう大事なことを教えてくれます。
