池袋演芸場 四月中席 昼の一部・夜の部 4月13日
2018年 04月 15日
そのため、残念ながらお目当ての一人だった春風亭小柳枝の復帰高座には間に合わなかったが、昼の主任の鯉朝は一度聴きたかったし、夜の立川談幸の主任も楽しみなので池袋へ。また、夜の膝前は、寿輔。これまた目当ての一人。加えて、色物の膝替わりも良いしね。
三時過ぎに入って、楽屋脇のモニターを見ると、日替わり出演の上方のべ瓶が『もぐら泥(おごろもち盗人)』)途中。
一服していると、ボンボンブラザースのお二人が相次いで楽屋入り。なるほど、ああいうバッグにいろいろ入っているのか、と新たな発見。べ瓶の後の遊馬の次が出番。
べ瓶がサゲたので客席に入ると、四割ほどの入り。
まず、最後列のパイプ椅子に座り遊馬を聴いて、その後、三列目の上座側に座った。
昼の部で聴いたのは、膝前、膝、トリだった。
順に感想など。
三遊亭遊馬『権助魚』 (19分 *15:13~)
久しぶり。少し痩せたかな。
将棋の羽生の1400勝などの短いマクラから本編へ。
こういう噺は、ニンだなぁ。
旦那が「権助を連れて行くなら犬のほうがマシだ」には、笑った。
権助が魚屋で仕入れる網取り魚は、鰊、スケソウダラ、目刺し、蛸、蒲鉾だが、蛸の時に、魚屋が「魚のことは何でも知ってる」と言ったのに権助が「蛸のイボイボはいくつあるかね」と聞くのは珍しい。
ボンボンブラザース 曲芸 (13分)
繁二郎さん十八番の紙を鼻に乗せる芸、なんと、客席に降りて一周してくれた。
お手伝いしたお客さんも、なかなかのもの。芸協の色物の中心コンビ。膝の役割をしっかり。
瀧川鯉朝『死神』 (32分 *~16:19)
お目当ての一人。ようやく聴くことができた。
マクラで、今回の席の裏テーマは、療養していた小柳枝の復活だった、と語る。
この日も元気に出演したようだし、前日は、柳昇一門の落語会があり、そちらにも総領弟子として出演したとのこと。なお、鯉朝も最初は柳昇に弟子入りした人。
モニターで小柳枝の高座を見ていた一門二番弟子の桃太郎が、ぼそっと「大丈夫だ」と呟いたのを、鯉朝は耳にして嬉しかったと語る。なかなか、いい話だ。
ネタは、サゲを改作しているが、私としては、今一つ、という印象。
しかし、小柳枝の近況報告は、嬉しかった。
なお、鯉朝のブログを見ると、この日の出演者の写真の中に、その小柳枝も含まれている。
瀧川鯉朝の該当ブログ
小柳枝は五月の池袋上席の昼の部、鯉昇と交互出演とのこと。
高座がはねてから、鯉朝は客席を回って割引券を配ってくれた。この人、お客への気配りを感じる。新作もやるようだ。また、聴きたくなった。
昼の部がはねても、八割位の方はそのまま残っていたような気がする。
さて、夜の部始まり。
立川幸吾『子ほめ』 (12分 *16:33~)
初。談幸の弟子。
この後の吉幸が、まだ入門数ヶ月、二十歳と言っていた。
声が大きくはっきりしているのは良いのだが、ほとんど、棒読み。
精進していただこう。
立川吉幸『大安売り』 (15分)
兄弟子として幸吾のことをフォローするようなプロフィール紹介の後、相撲の話題になって、栃ノ心が好き、と語る。なぜなら、怪我で幕下まで降格して復活したから。降格は、辛いですよー、と自虐ネタ。
自分も芸協に入って前座からやり直したからねぇ。
そういった苦労を重ねた吉幸の高座は、寄席ならではのネタ。本人が実に楽しそうに演っているように見受け、降格の苦労の甲斐もあったように思う。
宮田 陽・昇 漫才 (15分)
中国各州の位置ネタ、十八番とはいえ、何度聴いてもたいしたものだ。
「重力波」->「十六茶」のネタなど、全編笑えた。芸協の色物、充実している。
笑福亭里光『東の旅・発端』 (16分)
最前列に前の日にもいらしたお客さんを発見し、「同じネタですんません」と詫びる。
東京の下座さんとはいくつも合わせるのが難しいので、という言訳だったが、この人は鶴光の弟子で東京で活動している。他のネタももっているだろうに、と思う。
リズムが今一つだった。
六年前の6月、縁あって同じ池袋の真打昇進披露興行に来ている。
2012年6月17日のブログ
本当はその日の主任の予定だった柳城が病気で出演できなくなり、彼のお客さんを前に柳城の十八番ネタを演るという気配りのある噺家さん。
東京で初の上方落語の真打という謳い文句だった。ぜひ、今後も精進して欲しい。
神田紅『髪結新三・鰹の強請』 (15分)
この人の講談は好きだ。
新三、弥太五郎源七、大家の長兵衛それぞれが生き生きと描かれた。
長兵衛は三十両を並べる際、講談では五両包みで六つだが、歌舞伎では一枚一枚、などという解説も親切。
最前列の前日も来られたお客さんは、しっかり続き物として楽しめただろう。
マジックジェミー 奇術 (12分)
卵のネタをお客さんを舞台に上げてやったが、お客さんがなんとも味のある方だった。
柳亭楽輔『天狗裁き』 (19分)
ずいぶん久しぶり。五年前の国立演芸場以来。
芸風は小遊三に似ているのだが、もう少し粗っぽい、という感じ。
桂歌春『元犬』 (21分)
仲入りは、この人。歌丸の総領弟子だが、最初は桂文生と同じ二代目桂枝太郎に入門した人だ。
大学は葉室麟と同じ。
昭和24年生まれだから古稀だが、高座はいつも明るく若々しい。しかし、良くも悪くも、軽妙という形容が当てはまりそうだ。
鏡味よし乃 太神楽 (12分)
くいつきは、初めての女性一人の太神楽。
協会のプロフィールを確認すると、ボンボンブラザースの繁二郎さんの弟子のようだ。
五階茶碗から傘を披露。明るい笑顔を一所懸命の芸、好感が持てた。
立川幸之進『のめる』 (19分)
談幸の二番弟子を初めて聴くことができた。
この日は、兄弟子の吉幸と順番が入れ替わって、深い出番。
まだ、細かい所作、たとえばご隠居の家の戸を開ける仕草に戸の重さを感じないなどの問題はあるが、全体には、楽しい高座だった。弟弟子も入ったことだ。今後も頑張ってもらいましょう。
古今亭寿輔『堀の内』 (21分)
久しぶりだ。
黄色のテトロンの着物が、なんとも言えない。
「男ばかりだねぇ」と一言。たしかに、四十人位の客席、女性は四名だったかな。
最前列のお客さんが前日も来ていたことを思い出し、「ネタ、替えなきゃいけないじゃないの」と笑う。実際にネタを考えていたようで、「三年で四回位しか演らないネタ」と本編へ。
家を出て間違えて着いた場所が浦安。途中で道を尋ねた人が走り出し「こら、逃げるなぁ」と言うと、「ジョギングしているんです」は可笑しかった。本来の内容に、独特のクスグリを挟むが、これが大爆笑。女房が金坊に「お父っつんに湯屋に連れてってもらいなさい」と言うと、「いやだ。それくらいならイスラム国に行く」は、少し旬を過ぎたネタとはいえ可笑しかった。湯屋で手拭いを前に出す仕草をして、「この噺、円遊師匠に教わったんですが、こうやって手拭いを前に出すんですよ」と回想。そうだったんだ。
連日のお客さんのおかげで、寿輔の珍しいネタを楽しむことができた。
寄席の逸品賞候補として、印をつけておく。
東京ボーイズ 歌謡漫談 (14分)
いつもの、何とも言えない味の漫談。
♪高崎は今日も雨だった、は、ぜひCDリリースを期待したい^^
立川談幸『宗珉の滝』 (31分 *~20:32)
かつての落語の名人は、まず高座に着いてから、お湯を口に含み、痰を切り、なかなか話し始めない。一番の名人は、何も話さず終わる、と喜多八を思い出させるマクラから本編へ。
師匠横谷宗珉をしくじり、上方に旅に出た宗三郎が、旅籠岩佐屋に泊まる。
実は無一文、という筋書きは『抜け雀』や『竹の水仙』に似ている。大きく違うのは、この岩佐屋の主人。宗三郎の仕事が彫り師と聞いて、何か作った物があるかと、宗三郎が持っていた鍔を見る。そして「どうして、こんな死んだ虎を掘ったんだ」と言う。それを聞いた宗三郎、姿勢を正して頭を下げ、「この虎を死んでいると言ったのは、師匠の次にご主人が二人目」と、破門のいきさつを話す。その主人の目利きを頼りに、これから修業をし直すので、弟子にして欲しいと頼む宗三郎。主人も意気に感じて空いた部屋で修業をさせる。そんなある日、紀州藩留守居役の木村又兵衛が宿を訪れて・・・筋書きはこのへんまでにしておこう。
前半は、宗三郎の江戸っ子の滑らかな口調が心地よい。そして、怒った時の岩佐屋の主人が、なんとも威厳があり、それまでの柔らかな高座が、しっかり引き締まった。
かと言って、固い調子がずっと続くわけでもない。酒を飲みながら三日三晩、殿様のために彫った那智の滝の鍔が二度殿様に受け入れられず、岩佐屋の主人に一喝されて心を入れ替え、那智の滝に二十一日打たれ断食した後に彫った鍔も駄目なら腹を斬る、と言った宗三郎に、よし私も腹を斬ろう、そして、お前達も、と使用人たちに言う場面などは、実に可笑しい。
サゲの後、なぜ、見た目は前の二作より劣るように見えた鍔が、殿様の目に留まったのかを木村又兵衛を通じて確認した後、志ん朝などの音源では、晴れて破門が解け、二代目宗珉を継いだ、となるのだが、談幸は二代目になったとはしなかった。
これは独自の解釈なのかどうか、わからないが、そもそもこの講談が元の噺の主人公は実在したかどうか不明なので、必ずしも二代目としなくても良いのだろう。
江戸っ子の流れるような語り口は、一朝と双璧ではないかと思った好高座。今年のマイベスト十席候補としたい。
約五時間半の池袋、やや腰に疲れを感じたものの、夜の寿輔と談幸の二席だけでも、来た甲斐があった。
やはり、寄席はいいねぇ。
芸協は色物が充実している反面、落語がちょっと物足りなく感じることもあります。
志ん輔がマクラでよく「あたしね、池袋が嫌い。あそこ、男ばっかりだもん」と言ってますが、確かにここは男性客が圧倒的です。こうなったら松之亟でも連れてきますか。
ホントは小柳枝に間に合いたかったのですがね。
ですから、鯉朝の近況報告とブログは嬉しく思いました。
末広亭もいいのですが、あの池袋の高座と客席の一体感が今は一番しっくりくるのです。
寿輔の「ラーメン屋」も、いいですよね。
芸協の寄席、結構好きなんです。
五月上席、なんとか行けないものかと思っています。
そうですね、あと二十人位入って欲しかった^^
末広亭の今席の芸協の芝居でも、上方交互出演、立川流の交互出演もあり悩んだのですが、池袋にしました。
たしかに、男が多かったですねぇ。
松之丞なら、女性客で満員御礼になるかな。
5時間半は無理ですが。
末広亭の昼の部、土橋亭里う馬と立川談之助が交互出演になっています。
これも談幸効果ではないでしょうか。
私は、談四楼が著作で「ら族」と言う、人気者以外の立川流の人たちを寄席で聴きたいと思っています。
志の輔、談春、志らく・・・今はあまり食指が動きません。
夜になると客席は6割くらいに減りましたが、なかなかいい顔付けでした。
昼の部トリの鯉昇の千早振るは、また進化したというのでしょうか、サゲが変わっていました。
浅草昼の部 途中から 桃太郎/可龍 江戸売り声/章司 人形買い/遊吉 松山鏡/鯉太 相撲漫談/一矢 酢豆腐/小文治 寿限無/雷蔵 漫才/ナイツ 漫談/可楽 仲入 動物園/昇也 ウクレレ漫談/ぴろき 義眼(?)/笑遊 小言念仏/寿輔 曲独楽/南玉 千早振る/鯉昇
(夜の部)
堀の内/遊七 やかん/遊かり バイオリン漫談/マグナム小林 六尺棒/柏枝 松山鏡の途中まで/枝太郎 漫才/京丸京平 浮世床/遊之介 親子酒/遊三 奇術/瞳ナナ 結婚相談所 /桃太郎 仲入 動物物まね/まねき猫 熊の皮/遊喜 看板の一/金太郎 コント/D51 漫談/楽輔 太神楽/正二郎 佐野山/遊馬
詳細なご報告、誠にありがとうございます。
あら、松山鏡が、ついちゃいましたね^^
これはご本人がネタ帳を良く見ず、前座もが途中でダメ出ししたのかな。
寿輔の「小言念仏」は楽しかったことでしょう。
鯉昇は、「千早振る」と「時そば」は、変えることに生きがいを感じているのではないかな。
浅草の土曜、ナイツ、とはいえ、芸協の芝居が盛況なのは、嬉しい限りです。
里う馬こそ文字助を除けば総領弟子の正統派、談之助は所謂個性派・・・
私も「ら族」は大歓迎、ぜん馬、龍志、談四楼も聴きたいと思います。
芸協の他一門や上方との交流は、かつて、寄席の入りが悪い時に新宿の席亭から苦言があった時に改善を図ろうとしたことが生きたのかもしれませんね。
私も、名前の挙がった「ら族」を、ぜひ寄席で聴きたいと思います。
