二人三客の会 横浜にぎわい座 4月11日
2018年 04月 12日
6時半には桜木町駅に着き、急いで一蘭で腹ごしらえ。
会場の入りは八割ほどだっただろうか。
睦会の時も、満席になった記憶はないので、まあまあということか。
こんな構成。
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(開口一番 三遊亭馬ん長『つる』)
入船亭扇遊 『厩火事』
春風亭一朝 『蛙茶番』
(仲入り)
林家 花 紙切り
瀧川鯉昇 『味噌蔵』
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出演順に、感想などを記す。
三遊亭馬ん長『つる』 (16分 *19:00~)
初。円馬の弟子とのこと。
ご隠居が、若い衆のような口ぶり。全体に粗っぽいが、勢いを感じ、私の印象はそれほど悪くなかったのだが、終演後の居残り会で、他のお三方は全員「うるさ過ぎ」とのことで、評価は悪かったなぁ。
入船亭扇遊『厩火事』 (28分)
自分が入門した時は、両協会を含め、真打ちは百人くらいだった、と振り返る。
最近の言葉は判らない、KYなんて、柳家小三治でしょう、で笑った。
この噺は、十八番の一つと言って良いだろう。
お崎、旦那、亭主、それぞれの人物がしっかり演じ分けられていた。旦那が、亭主の悪口を言った時の、お崎のなんとも言えない表情などに、女性を演じることにかけて、東京落語界では屈指の芸達者であると感じさせる。
落語の教科書のような高座。
調べてみたら、2012年と2014年の扇辰との二人会で、この噺を聴いている。
また、同じ会場の、この会の前身の睦会では2009年1月に聴いている。
2009年1月6日のブログ
2012年8月8日のブログ
2014年4月23日のブログ
何度聴いても、流石、である。
春風亭一朝『蛙茶番』 (25分)
芝居の大向こうについてのマクラから、この噺か、あるいは『芝居の喧嘩』か、どっちかなぁ、と思いながら聴いていた。どちらにしても、十八番、と言えるだろう。
とにかく、半公の喜怒哀楽が、聴きどころ、見どころだった。
舞台番という役目にふてくされていた半公を丁稚の定吉が、呼びに行く。
お店の旦那に、化け物の芝居をする時は役をやる、今回は舞台番、と言われたと言って怒りまくっている半公の“怒”の場面は、江戸っ子の立て板に水の啖呵が心地よい。
いったん帰った定吉が番頭に知恵を授けられあらためて半公を訪ね、半公が惚れているミー坊の名を出した際、喜びのあまり半公の声が裏返ったのには、笑った。
湯屋に縮緬の褌を忘れているとも気づかず、かしらとその娘に往来で出会い、つい、着物の裾をめくってみせた場面の可笑しさは、なんとも言えない。
下手に演じると、下品になる噺だが、流石の一朝、楽しく仕上げた。
マクラを引くとほぼ二十分。寄席で鍛えた技量と言えるだろう。
昨年6月、新宿末広亭で弟子一之輔の見事なこの噺を聴き、年間マイベスト十席に選んでいる。
2017年6月9日のブログ
弟子の好高座は、その手本が良いからだ、ということを再認識。
仲入りで、佐平次さん、I女史、F女史と立ち話。
I女史と、「今日は、それぞれの十八番の日だね」ということで一致。
林家 花 紙切り (19分)
2011年の新宿末広亭初席以来。
2011年1月8日のブログ
その時、こんなことを書いている。
◇花:へぇ~っ、芸協には、こんな美人の女流紙きり芸人さんがいるんだ、と楽しく見させてもらった。トークもほど良い毒があり、私は好きだ。たしかに美人の部類ではあると思うが、あれから七年も経つと、やはりねぇ・・・・・・。
ご挨拶代りの「京の舞妓」、リクエストで「藤娘」(あまり舞妓と違わないのでは^^)、なかなか声がかからないので「大谷翔平」(今ひとつ)、遅刻気味のリクエストで「パンダ」、師匠の今丸と同じように、最後はお客さんの横顔。加えて「長崎ぶらぶら節」を踊るサービス(?)付き。
なお、女性の紙切りは、もう一人、三遊亭絵馬がいる。
成瀬の東雲寺のさん喬、新治の会に出演していた。
2013年11月4日のブログ
その時に新治が説明してくれたが、あの会の第一回では、花も出演したとのこと。
技術は二人ほぼ互角かなぁ。トークは絵馬の方が上だと思う。
絵馬は、東京演芸協会の所属で、こちらがプロフィール。
東京演芸協会サイトの該当ページ
瀧川鯉昇『味噌蔵』 (41分 *~21:24)
十八番の日なら、きっと食べる場面のあるネタか、と思っていたら、この噺。
マクラでは、五年前、飛行機のチケットを買う際、年齢の欄に正直に60歳と書いたら、係の人から「正直に書いてください」と言われた、というネタで会場が爆笑。
仲入り前の二人は、落語協会で、きっちり、長い噺を聴かせる。芸協は、「あれ、終わったの!?」という高座。九十代で現役の噺家は芸協にしかいない。それだけ、力を抜いて楽にやる、などとふっていたので、逆に長講になるだろうと予想していた。
ケチな味噌屋の主人が、周囲の薦めで嫁をもらう、というプロローグを長めに挟むが、他の人にはない鯉昇ならではの構成。
番頭が、好きなものを順に言え、というのに対して、甚助さんが考えた挙句「梅干し」というのが、なんとも可笑しい。番頭が他にないかと言うのに「納豆」、でも笑った。木の芽田楽を売り出したのは「角のカラ屋」。その豆腐屋では、ただのオカラしかもらったことがないから、カラ屋だと思っていたという話には、彼ら使用人の日々の悲惨な食生活を思い、泣けてくる^^
好きなものの中に「蒟蒻畑」が登場するのも、妙に笑える。
女房の実家に泊まるはずの旦那が帰った後のドタバタで、蛸の酢の物の大皿を股の下に隠す甚助さんの何とも言えない表情が、秀逸。
その酔った甚助さんの、解読不能の言葉にも会場大爆笑。
食べる場面は、お手のもの。
たっぷりの山葵で刺身を挟んで食べた時の驚愕の表情や、芋の煮っころがしをフウフウしながら頬張る場面などは、面目躍如。
三人とも十八番ネタの競演の中で、芸協を代表して(?)の好高座、今年のマイベスト十席候補とする。
終演後は、楽しみにしていた居残り会。
リーダー佐平次さん、やはり事前にチェックしてくれていた。
本命だったにぎわい座裏の居酒屋は、カウンター席のみで満席に近く、四人では無理。しかし、佐平次さんは他の店にも目をつけていた。流石。
今年開店したばかりの焼き鳥がメインの、洒落たお店があり、ちょうど、テーブル席が空いていた。
入ると、BGMが、ジャズ。
なかなか、いい感じだ。
焼き鳥や、焼き竹の子や卵焼き(焼きづくし^^)など美味しい料理を肴に、落語のことや能のこと、そして、I女史が、八十代、七十代、六十代の女性よったりで行ったフランス旅行のお話などで盛り上がり、高清水の二合徳利が次々に空く。今月中に、またお会いすることを約束し、名残惜しくお開き。
帰宅が日付変更線を越えたのは、言うまでもない。
あらためて、久しぶりの鯉昇も良かったし、扇遊、一朝も十八番で楽しませてくれた良い会だったと思う。
そろそろ、喜多八ロスから、仲の良かった噺家さん達も、そして聴くこっち側も立ち直りつつあるような気がする。
昨夜、我々が焼き鳥を串から外して食べていたのを、喜多八は空の上から、「そりゃぁ本寸法じゃござんせんぜ!」と、睨んでいたにちがいない^^
ここの睦会では、喜多八が亡くなった直後に二人で開いた会がほぼ満員でした。
鯉昇が、一人いなくなるとこれだけお客が増えるんなら、もう一人いなくなれば超満員になるなんて軽口を叩いてましたが、鯉昇流の喜多八を悼む言葉だったと思います。
何か意味のあるような言葉になってしまうのです。
きのうあの近くに住んでいる子に、あの店のちょっと先にお薦めのフグやがあると聞きました。
シーズンにはお供しましょう。
おっしゃる通り、実に結構な三席でした。
あの三人は、ただ打ち上げの酒でつながっていたわけではない^^
協会の枠を超えた友であり、ライバルとして芸を競い合っていたのだと思います。
