噺の話

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あらためて、大相撲を考える(1)ー中島隆信著『大相撲の経済学』より。

 元横綱日馬富士傷害事件の話題が、まだメディアを賑わわせている。
 
 他のスポーツのように透明性を、などと指摘をする人たちは、あの興行と他のスポーツの違いについて、どこまで分かった上で発言しているのだろうか。

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中島隆信著『大相撲の経済学』(ちくま文庫)

 中島隆信という人や著書『大相撲の経済学』については、2011年の八百長事件の際に、その名にふれたことがある。

 2月10日の記事は、中島氏が出演したNHKスペシャルの感想、翌11日の記事は、「日刊ゲンダイ」が、中島氏の著者を引用し「八百長擁護派」とレッテルを付けた記事への小言だ。
2011年2月10日のブログ
2011年2月11日のブログ

 あの記事を書いた後に『大相撲の経済学』を入手し読んでいたが、まだ紹介したことがなかった。
 この本は、2003年に東洋経済新報社より単行本が発行され、2008年にちくま文庫に加わった。
 私が読んだ文庫の記述は、平成20年初場所時点と「序章」で記されている。

 同書を元に、まず、大相撲と他のスポーツとの大きな違いを中心に、紹介したいと思う。

 大相撲は、個人の総当たり制ではない「部屋別総当たり制」である、ということ。

 「第一章 力士は会社人間」から、引用。

 総当たりではない
 相撲は個人競技だが、個人別総当たりではない。、力士は日本相撲協会の一員であると同時に相撲部屋に所属している。相撲部屋には指導にあたる親方衆と先輩力士の兄弟子、後輩の弟弟子がいる、本場所の取組では、同じ部屋の兄弟弟子とは割が組まれない。つまり、対戦がない。このシステムを「部屋別総当たり制」と呼び、昭和40年から採用されている。
 それ以前に採用されていたシステムは、「一門系統別総当たり制」といって、同じ一門に所属する相撲部屋の力士同士は本場所での対戦がなかった。さらに昭和22年までは基本的に「東西制」で、力士が東方と西方に別れて対戦するというものであった。

 このことからも、大相撲は、あくまで興行であって、他のスポーツとは大きな違いがあることは明白だ。

 他の個人同士が対戦するスポーツ、テニスやバドミントンや卓球といった球技でも、柔道や空手でも、公式競技で、同じ会社や学校や道場などに所属する選手同士が対戦しない、などというルールのある競技は存在しない。
 
 大相撲の「部屋別」総当たり制は、次のような現象をもたらす。
 グループ内の取組がなければ、それだけ対戦の組み合わせの数は少なくなり、競争の程度が軽減されることは明らかだ。たとえば、平成13年春場所では、横綱、大関七人のうち、武蔵川部屋が四人(横綱一人、大関三人)を占めていた。個人別総当たりならば横綱、大関同士で21あるはずの取組が、部屋別総当たりのときは15に減ってしまう。また、武蔵川部屋に属さない幕内上位力士は横綱、大関七人全員と取組があるのに対し、武蔵川部屋の力士はそのうちの三人とだけ対戦すればよいのである。

 ちなみに、平成13年春場所は、横綱が貴乃花と武蔵丸(武蔵川部屋)、大関が魁皇、千代大海に加え、武蔵川部屋の武双山、出島、雅山という顔ぶれだった。
 この場所では、千秋楽に魁皇が武双山を下して、13勝2敗で二度目の優勝を果たしている。

 部屋別総当たり戦での例外は、同部屋同士が同じ勝ち星で優勝決定戦を争う場合。

 記憶に残る、あの一戦。

 平成7年九州場所千秋楽の優勝決定戦、横綱貴乃花と大関若乃花のあいだで、同部屋力士による史上初の兄弟対決という取組が実現した。このときにおテレビ視聴率は58%を記録したという。完全個人別総当たりを望む声は強い。

 しかし、大相撲の協会と部屋の関係は、個人別総当たり制の実現を難しくしている。
 大相撲では衣食住の日常生活は部屋単位、鍛錬のための稽古は一門単位でなされることが多い。かつて一門別から部屋別総当たり制に変更した際にも、「一門でいつもけいこをやっていたし、地方場所では宿舎も一緒だった」(出羽海・元理事長談)仲間と本場所では対戦しづらかったようだ。
 第5章で詳しく述べるが、日本相撲協会は力士の育成に関して各相撲部屋にほぼ「丸投げ」の状況である。力士育成にかかわる補助金や奨励金の類はすべて部屋単位ないし部屋を所有する年寄単位で支給される。つまり、弟子を鍛えるインセンティブは各部屋に与えられているのである。
 こうした状況にあって個人別総当たり制を採用することは「合理的」どころかむしろ非合理である。同じ部屋に所属する力士同士が対戦するようになれば、部屋の親方は力士を鍛えることよりむしろ、弟子たちの間での白星と黒星の配分の方に気を遣うようになるだろう。昇進のかかった力士の対戦相手が同部屋だったりすれば、勝ったとしても裏で星のやりとりがあったのではないかと疑われよう。真剣勝負は減少し、角界にとってもファンにとっても決してプラスとはいえない。

 たしかに、同じ部屋の力士が、千秋楽で対戦することになり、かたやすでに勝ち越し、もう一方が七勝七敗なら、その結果がどうなりそうか推測できる。

 今回の騒動で、他のスポーツと同一視して発言している人は、この「部屋別総当たり制」という仕組みを充分に認識しているのかどうか、怪しいものだ。

 では、その部屋と協会は、どんな関係にあるのか・・・・・・。

 次回は、そのあたりについて、ふれるつもり。

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by kogotokoubei | 2017-12-13 12:18 | 大相撲のことなど | Comments(0)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


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