噺の話

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NHK新人落語大賞の“動画”を見て。

 昨日の記事で書いた通り、11月4日に放送された「NHK新人落語大賞」は、録画予約を忘れてしまった。

 しかし、ネット、SNSの時代、動画で見ることができるということに気が付いた^^

 Daily Motionで二つに分けて動画が掲載されているのを発見。
Dailymotion該当動画前半
Dailymotion該当動画後半
 
 出演者は、高座順に、立川こはる、桂三度、古今亭志ん吉、三遊亭歌太郎、笑福亭喬介。
 事前に出演者が分かっていたので、私なりの予想(希望かな)を書いた。
2017年10月13日のブログ

 結果はwebニュースなどで知っていたので、大きく外れ^^

 どんな高座で、どう採点されたのかは気になっていた。

 その気になる審査員は、桂文珍、柳家権太楼、近藤正臣、やまだりよこ(演芸ジャーナリスト)、井上勝弘(NHK大阪制作部長)。

では、まず出演者とネタ、私の感想と採点。

立川こはる『権助魚』
 私が「○」の対抗と予想した人。
 短いマクラで、これでも女の子です、は余計だったかな。
 本編に入り羽織を脱ごうとするが、少し時間がかかったのは、印象的には良くなかったかもしれない。
 ネタそのものは、なかなか楽しかったし、この人の口調の良さは相変わらずだ。
 しかし、女流落語家は、えてして女性の描き方で損をする場合もある。二人以上登場するのなら描き分けの妙で見せ場をつくれるが、このネタでは女房一人。登場人物ではなく、自分の柄に見えてしまうのだ。男性の噺家が女を描く方が色気が出るのは、志ん吉の高座でも証明されている。難しいところだなぁ。
 もっと持ち味の江戸っ子の啖呵が生かせるネタの方が良かったかと思わせた。私の採点は、「8」点。
 文珍が「最初は大変だね、あったまってなくて」と同情するような講評だったが、そんなに悪かったか?
 そのコメントを聞いたこはるの口から、予選参加含めて初めての良い経験と聞いて、来年頑張れ、と思ったなぁ。

桂三度『つる(と、そのつづき)』
 今回も「お邪魔いたします」で始まったのは、感心しない。
 甚兵衛さんにつるの名の由来を聞く中で、「なんで、首が長いんです?」は、言い間違いだろう。
 また、タケやんのところから甚兵衛さんの家に戻ってから「タケやん・・・タケやん違う、甚兵衛さん」と言い直して笑って誤魔化したのも、短い時間の高座においては、減点材料。創作した鷺を使った内容やサゲも、取り立てて良いとは思えなかった。
 権太楼が年齢(48歳)を聞いて「だからいいんだね」と褒めたのは意外だった。
 やまだりよこが面白いネタのスライドの仕方、と評価したが、彼女の鑑識眼は、採点を含め大いに疑問。
 私の採点は「7」。

古今亭志ん吉『紙入れ』
 私が優勝の本命にした人。
 若手には難しいネタだが、女房の色気もほどほどに描いたし、旦那、新吉という登場人物全員がしっかりと造形されていた。
 審査員の近藤正臣が女房の艶っぽさを褒めていたが、同感だ。
 権太楼は、旦那が登場する場面での演出に具体的な助言をしていたが、これは、高座全体を評価していたからでもあるだろう、とこの時は思っていた。
 講評を聞いた志ん吉が、もっと上方では笑いがないかと心配していたが、思いのほかだったと答えていたが、笑いが少ないのは、このネタそのものの特性。
 権太楼は、このネタを古今亭の十八番、と言っていたが、そうかな。
 ちなみに、志ん生は十八番だったかもしれないが、志ん朝が396回の主要落語会で演じた485席の題目に、この噺は二回しか存在しない。私は、この噺では、権太楼の師匠、五代目小さんの音源が好きだ。
 それはそれとして、私の採点は「9」。そんなに悪くない。

三遊亭歌太郎『磯の鮑』
 ここからの二席は、鸚鵡返しの可笑しさが主体となる噺が続いた。
 このネタは、与太郎が登場するネタでは、彼がもっとも賢く描かれている噺と言えるだろう。
 なんといっても、教わった科白をカンニングペーパーなしで、ある程度は覚えているのだから。その間違った覚え方が、笑いを誘うネタだが、なるほど、歌太郎はこの噺の勘所を外さず、メリハリをつけて演じていたと思う。
 文珍が、不思議な魅力と講評したが、明るい個性にはニンのネタが好印象を与えたのは事実だろう。
 私の採点は、「9」。
 私は予想する上で、この人の線の細さから本命にも対抗にも穴にも推さなかったが、なかなか堂々とした、ある意味で開き直りもあるような高座だった。
 放送では語らなかったが、前日新幹線の中に11時間閉じ込められていたらしい。そのハプニングが、なるようになれと腹を決めることにつながったのかもしれない。

笑福亭喬介『牛ほめ』
 予想で、穴「▲」印をつけた人。
 この人の生の高座は、にぎわい座と国立で二度聴いているが、どちらもこのネタだった。
2014年2月16日のブログ
2015年9月14日のブログ
 よほど好きなのか、得意なのだろう、科白が体の中にしっかりと定着しているような印象。前のネタと同じような鸚鵡返しネタだが、こちらは紙に書いた科白を読む中で可笑しみを出す演出。掛け合い漫才のような池田の伯父さんと甥の会話のリズムも良かった。私の採点は、「9」。
 

 ということで、私の採点結果は次の通り。

        こはる   三度   志ん吉   歌太郎   喬介
幸兵衛      8    7     9     9     9


 審査員の採点結果は、次のようになった。

        こはる   三度   志ん吉   歌太郎   喬介
桂文珍      8    9     9     8     9 
柳家権太楼    8    9     8    10     9 
近藤正臣     8    9     9    10    10
やまだりよこ  10   10     8    10    10
井上勝弘     8    9     9    10     9
 合計     42   46    43    48    47


 いろいろ言いたいことはあるが、歌太郎の優勝は、良かったと思う。
 文珍は、三度の点以外は、そう不思議ではない。
 権ちゃん、志ん吉の8は、厳しすぎるんじゃないの。
 近藤の採点、三度以外は、理解できる。
 志ん吉のみ8点で、他は10点と採点する審査員の顔は、来年は見たくない。
 井上の採点は、三度以外は、まあ許容範囲。

 ということで、なぜあの三度の高座に、全員が9以上なのかが、大いに疑問。
 どうしても作為的なものを感じるのは、私だけか。

 来年は、どうなるものやら。
 志ん吉、こはるには、来年もぜひ挑戦してもらいたい。
 とはいえ、小辰や小痴楽の顔も見たいものだ。

 ということで、動画のおかげで書けた記事であった。
 
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Commented by 山茶花 at 2017-11-07 22:55 x
日曜日に録画していた物を見ました。

私も志ん吉さんの「紙入れ」で笑いましたし、「上手いなぁ」と感じました。結果は知っていた物の、この人が優勝でも不思議はないなと私も感じていました。

三度さんの「つる(とそのつづき)」は、笑えません。何でこの人が勝ち残ったのかも疑問。

こはるさんは、上方の露の眞さんと同じタイプみたいですね。彼女も「男と間違えられます。たまにおかまと間違えられます」と枕で言っておられます。彼女の師匠も「禍は下」を演じておられますね。

歌太郎さんが上手いのは判ります。ただ私にとっては志ん吉さんの方が面白かっただけかも知れません。

喬介さんの「牛ほめ」、私も生で聞いた様に思います。こなれている印象がありますね。師匠 三喬(現松喬)さんの得意ネタである泥棒噺を演じてみても良かったのにとも感じました。
Commented by kogotokoubei at 2017-11-08 12:08
>山茶花さんへ

私と同じような感想をお持ちのようで、安心しました^^

三度の高座が、なぜ9点だったり、10点なのか、不思議でなりません。
おっしゃる通り、予選を勝ち上がったこと自体が、大きな疑問です。
やはり、公開すべきですよね、予選を。

志ん吉、歌太郎、喬介の私が同じ9点を付けた三人のうち、誰が優勝しても異議ありません。
正直、頭一つ抜けた人がいなかった。
文菊(菊六)や一之輔が優勝した時のような、ぶっちぎり感はないです。

喬介が泥棒噺で会場を沸かせたら、優勝もあったかもしれませんね。

くどいようですが、予選の公開を強く望みます。

Commented by 遠州屋小吉 at 2017-11-08 16:30 x
私の採点は、こはる 8点、三度 7点、志ん吉 6点、歌太郎 9点、喬介 10点。

初めて聞きましたが、不思議な魅力を感じた喬介が1位です。先入観無く、採点は、番組で流れた落語を見ただけで付けたもので、順位を明確にするために点数が重ならないようにしてますが、実際はもっと僅差で、95点、93点、88点、87点、80点って感じです。

志ん吉は、五人の出演者のなかでは一番出来がよくなかったと思います。ネタの選択がよくなかったんでしょう。稚拙さを感じてしまいました。

三度はそんなにひどかったですかね?思ってたよりも口調がよくなってて、ちょっと見直しました。放送作家もやっていたせいでしょうか、改作したがるのは欠点ですが、本格的に古典に取り組めばもっと良くなる人だと思います。

やまだりよこの採点は、テレビで見たときは、私も「何だこれって?」思いましたが、志ん吉以外の4名が接戦ということを言いたかったんでしょう。(審査員としては、10、9、9、9、8とすべきですし、もう二度と審査員として使うべきではないと思いますが。)
Commented by kogotokoubei at 2017-11-08 18:26
>遠州屋小吉さんへ

コメント、ありがとうございます。

喬介の「不思議な魅力」には同感です。

私もできるだけ先入観を排して採点したつもりですが、好みが影響する面は否定できないですね。
私の場合は、志ん吉を応援する気持ちだってあります。
逆に、三度の高座については、初めの一言を聞いた途端に、あれは落語ではなく漫談ではないか、という思いが強くなってしまう。

公正、中立ってのは、なかなか難しいですね。

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by kogotokoubei | 2017-11-07 08:47 | テレビの落語 | Comments(4)

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by 小言幸兵衛