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噺の話

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柳家小満んの会 関内ホール(小ホール) 7月18日

 五月の会は、野暮用で来れなかったので、三月から四か月ぶり。

 通算140回目とのこと。

 日中の豪雨は上がり、蒸し暑い中を関内へ。
 いつものように、コンビニで買ったおにぎりを食べながら、モニターで柳亭市坊の『転失気』を聴く。
 市坊のサゲ少し前に会場に入って後ろで待って、市坊が下がってからほぼ中央の空席へ。
 五割ほどの入りか。いつもながら、なんとも残念な客席だ。

 ネタ出しされていた三席について、順に感想などを記したい。

柳家小満ん『王子の幇間』 (22分 *18:45~)
 一席目は、最初の師匠文楽の十八番。初代円遊作と言われるが、文楽は三代目の円遊から稽古してもらったとのこと。
 お店では、その口の悪さで嫌われている、神田の幇間、平助。
 「平助入るべからず」という魔除けの札を門口に張ったが、「この札、十枚集めたら、何かいただけますか」という調子者。
 その平助の、とどまることのないヨイショの体裁をした毒舌の語りが、絶妙。
 最初の標的となった女中おなべどんには、白粉(おしろい)が厚いから話をすると白粉が落ちる、「おひろい、おひろい」やら、「その帯、雑巾をうまくつなぎましたね」とか「その皺だらけの顔・・・あなた、薩摩の生れでしょう・・・かおしま県」などと言って泣かせてしまう。足のアカギレの間から青い物が芽を出していて、それが田舎で踏んでいた粟だという設定が頗る可笑しいが、それを見て「かかとに田地を持っているのは、あなた一人だ。かかとを抵当に借金ができる」と平助絶好調。
 鳶の頭がやって来て、これまた平助の標的に。
 吉原の茶屋の二階で三味線を弾いて歌っていたことを大きな声で暴露したものだから、頭から殴られるが、なかなかへこまない、実に骨太の幇間^^
 実は、旦那と女房が示し合わせて、旦那は留守ということにして悪口を言わせ、出入り止めにしようという策略があった。
 ついその芝居に乗せられた平助、旦那が吉原の花魁を見請けしているから女将さんは追い出されますよと、出まかせを言う。
 女将さんが「それじゃ、私と一緒に所帯を持とう」と言って、つづらに金の延べ棒が六十三本入っているからと言って背負わせ、ついでにからくり時計に鉄びん、猫のミーまで平助に持たせたところで、隠れていた旦那が登場。
 つづらには、石臼に漬物石が二つ三つ入っていると明かされる。これは、重いはずだ^^
 旦那「平助、いったいなんてぇザマだ」に、平助が「御近火のお手伝いにまいりました」と答える。
 後からYoutubeで聴いた文楽版は、ここでサゲとしているが、小満んは、旦那が「火事などどこにもない」と返し、平助が「私の顔から、火が出ています」でサゲた。 

 矢野誠一さんの『落語手帖』によれば、上方落語の二代目染丸作『茶目八』を、三代目染丸が『顔の火事』で演じていたが、全体の筋立ては『王子の幇間』とほぼ同じとのこと。
 小満んは、師匠文楽版に、上方のサゲをブレンドしたのかもしれない。
 いやぁ、この平助、なかなか憎めない^^
 もちろん、今年のマイベスト十席候補だ。

柳家小満ん『大名房五郎』 (37分)
 いったん下がって再登場。
 マクラで説明しなかったが、この噺は宇野信夫が三遊亭円生のために作ったもの。
 宇野信夫による落語、となると、2015年5月のこの会で、『江戸の夢』をかけている。
2015年5月19日のブログ

 また、雲助は師匠馬生のために宇野が作った『初霜』を、浅草見番で演っていた。
2014年1月26日のブログ

 宇野信夫が若い頃から多くの落語家と交流があったことを著作から紹介したこともある。
2015年5月24日のブログ

 マクラで、なぜ「大名」なのか仕込みがなかったのは、残念。

 いつもお世話になる「吟醸の館」サイトの「落語の舞台を歩く」に、この噺が紹介されているので、引用する。
「落語の舞台を歩く」の該当ページ

房五郎と言うのは、下谷車坂に住む大工の棟梁。茶席を作らせると、この人の右に出る者が無いと言う。仕事も上手いが、今で言う、設計も優れておりまして、頭がいい。歳は二十九で、九代目の市村羽左衛門に生き写しと言う、誠にいい男です。まだ、女房を持ちませんで、お大名や旗本のいいお得意はあるので、かなりの収入はあったが、年中火(し)の車と言う。それは、居候を置きまして「ま、い~やな、俺ンとこへ来ていろ」と、年がら年中貧乏すると言う誠に変わった人でございます。
 余技に書画骨董の目が利いておりまして、見ると「こりゃこう言うもんでございます」とはっきり断定した。目利きの天才でございました。「あれはどうも普通の人間じゃァないね、大名の落とし子かじゃないか」なんてぇ事を言う。そこで「大名房五郎」と言う渾名(あだな)が付きました。

 昨夜の居残り会で、私は大名のように施しをするから「大名」と、お仲間の皆さまにとんでもない嘘をついてしまった^^
 そもそも、大名が、施しをするか!

 佐平次さん、Iさん、Fさん、実はこういうことですので、お詫びして訂正します。

 ということで、筋書きなどは吟醸さんのサイトでご確認のほどを。

 それほど楽しめるネタではなかったのだ、正直なところ。
 房五郎の設定は、ちょっとだけ『名人長二』を思わせ、ケチな質屋をやり込めるという内容は『五貫裁き(一文惜しみ)』に似ていなくもないが、どうも中途半端な作品という印象。
 これは、小満んのせいではない、あくまで、このネタの問題。

 ここで仲入り。

柳家小満ん『湯屋番』 (28分 *~20:29)
 設定が、浜町の梅の湯で、前半にも妄想場面があるから、元は円生版と思われる。
 若旦那は、すでに梅の湯に行っており、二十二~三の美人の女房と、青白い顔をして痩せた(“ハイガラ”)亭主がいることを下調べ済み。
 初回は、のぼせて醜態を見せて湯屋の女房に介抱してもらい、その後に菓子折を持って礼に行った、という設定だから、居候先から紹介状をもらう必要はない。
 それにしても、風呂で一足三十の都々逸にとどまらず、清元二段、常磐津二段、端唄、小唄に、八木節まで唸っていれば、のぼせもするだろう^^
 亭主が死ねば、あの女房と湯屋は自分のものと、前半の若旦那の妄想が楽しい。
 世話好きの吉兵衛さんが湯屋の裏に呼び出して、かんな屑の上で内緒話。
 「まるで、猫のお産だね」で笑った。
 隘路を「英語でネック」なんてぇのも、この人らしい。
 立花町の頭が入ってくれて、話はついている。勇躍、梅の湯に乗り込む、若旦那。
 そこからの妄想は、通常のこの噺とほぼ同じだが、演じ手が違うとこうも変わるかという、なんとも言えない味わいと、楽しさが横溢した高座。男湯の「七ケツ」の中で太った男のそれは燃料になるだろうから、役所に脂肪届をしたらいい、なんてのも実に可笑しい。
 彫りものをした御爺さんの背中の獅子と牡丹は、もちろん、ブルドックとキャベツでブルキャベ。
 清元の師匠との艶っぽい妄想の世界も、若手の落語家とは、一味もふた味も違うのだ。
 若旦那が体をくねらせる様子を女中お清が「まるで、印旛沼の鰻みたい」なんてぇ科白は、なかなか決まるものではない。
 艶っぽい妄想の世界から、男湯の客に現実に戻された若旦那。
 サゲは、下駄の後送りで、「最後の人に、下駄をあずけます」と綺麗に収めた。
 こちらも、今年のマイベスト十席候補にしないわけにはいかないね。

 
 なんとも、楽しい高座の後は、その余韻を楽しむ、居残り会。
 佐平次さん、I女史l、F女史とのよったりで、関内ではお決まりのあのお店。
 定番のくさやはもちろん、岩牡蠣、めごちの天ぷら、ほや・・・などなどを肴に、佐平次さんの初恋談義まで飛び出せば、男山の徳利がどんどん空く。

 看板まで居座っていれば、帰宅はもちろん(?)日付変更線越であった。

 『王子の幇間』といい、『湯屋番』といいい、小満ん落語の真髄とも言える二席、今でも平助や若旦那の名調子が耳に残っている。

 次回は9月19日(火)、『渡しの犬』『酢豆腐』『九州吹き戻し』とネタ出しされている。
 何かと野暮用の多い時期だが、なんとか駆けつけたいものだ。
 ちなみに、会場はまだ関内ホール。


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by kogotokoubei | 2017-07-19 12:12 | 寄席・落語会 | Comments(0)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛