柳家三三の「たびちどり」、今月から各地で始まる。
2017年 05月 10日
昨年12月、イイノホールの最終公演になんとか間に合った三三の『嶋鵆沖白浪』。
2016年12月9日のブログ
三三は「たびちどり」と称して、今年は名古屋と大阪、そして福岡で今月から六か月公演を行う。
「ぴあ」に掲載された記事を紹介したい。
「ぴあ」サイトの該当記事
落語の豊かさを伝える“続き物”に柳家三三が挑む
2017/5/8 16:40配信
落語の伝統を守る一方で、独演会ではさまざまな挑戦を続けている柳家三三。昨年は文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞するなど、その活躍がいっそう注目されるなか、六ヶ月連続独演会〈たびちどり〉で挑む演目が、大作『嶋鵆沖白浪(しまちどりおきつしらなみ)』だ。幕末から明治期に活躍した柳派の談洲楼燕枝(だんしゅうろう・えんし)が創作した長編人情噺を、毎回2話ずつ高座に上げ、全12話を通すという試み。長らく演じ手が途絶えていたという本作への想いを、三三に聞いた。
大商人の跡取りでありながら侠客となった“佐原の喜三郎”。物語は彼と、やはり裕福な家の娘ながら芸者から遊女へ身をやつすお虎の運命を軸に、巾着切りの庄吉や、なまぐさ坊主の玄若、三宅島に流された罪人の長・勝五郎、旗本の優男・梅津長門ら多彩な人物を巻き込んで展開する。「人情噺というと泣ける話をイメージするかもしれませんが、元々は広い意味で人情の機微を描いた話のことなんですよ」と三三は言う。「燕枝は九代目市川団十郎と親交が深かったこともあり、この作品も“白浪物”(盗賊を主人公とする物語)や“三尺物”(博徒や侠客が主人公)、“世話物”(町人の人情を活写した芝居)と、色々な要素がたっぷり詰まっているんです」と、その口調にも自然と熱がこもる。
今回はこの大作を12話に分け、三三自ら再構成。「怪僧玄若坊」「闇の島脱け」「お虎の美人局」など、内容に合わせて付けられたタイトルは、どれもワクワクするものばかりだ。「本当にね、なぜこの演目が長い間忘れ去られていたのか不思議なくらい」と三三は話しつつ、「ただ、長編だけにダイナミックな場面と地味な場面とがありますから、そこは1話ずつ観ても楽しめるように調整しました。あとは、初見でも、途中の回を観ていなくても内容が分かるように、前回までのあらすじは読み物で配る予定です」と“続き物”ならではの工夫を明かす。
そんな苦労もいとわないのは、落語のもつ豊かな世界をもっと知ってもらいたいから。「燕枝が活躍した当時は町内に1軒ずつくらい寄席があって、人々は晩ご飯を終えた後、ちょうどテレビを観てくつろぐ感覚で寄席に足を運んだそうですよ」と三三は語る。「だから『あの寄席で面白い“続き物”をやってるぞ』と評判になると、その寄席によその町からわーっとお客さんが集まったりしてね。艶のある場面にドキドキしたり、切った張ったの立ち回りにハラハラしたり。そういった楽しさを、現代のお客さんにどうやったら届けられるか。それだけを考えて演りたいですね」という三三。その言葉からは、名作を伝える演じ手としての覚悟が伝わってきた。
公演は愛知・大須演芸場と大阪・グランフロント大阪にて、5月から10月まで毎月1回ずつ開催。チケット発売中。
取材・文 佐藤さくら
「ぴあ」での取り扱いは名古屋と大阪だが、福岡でも開催される。
「落語 de 九州.com」のサイトに日程などが案内されている。
「落語 de 九州.com」サイトの該当ページ
名古屋・大阪・福岡での全6回の開催日程は、次のようになっている。
会場は、名古屋が大須演芸場、大阪はグランフロント大阪のナレッジシアターー、福岡が森本能舞台。
名古屋 大阪 福岡
① 5/25 5/26 5/27
② 6/20 6/19 6/18
③ 7/12 7/13 7/14
④ 8/17 8/9 8/10
⑤ 9/11 9/19 9/18
⑥ 10/12 10/13 10/14
四回目と五回目を除くと、この三都市にまたがって三日間連続公演になっている。
結構、移動などが大変だろうが、三三の各開催場所への“たび”ちどりによって、お客さんは登場人物それぞれの人生の“たび”ちどりを楽しむことになるだろう。
私は、初演の2010年11月の紀尾井ホール「談洲楼三夜」、初日のみだが行くことができた。
2010年11月16日のブログ
その翌年、横浜にぎわい座での六か月公演では、私は七月の第三夜(『大坂屋花鳥』に相当)と八月の第四夜(三三によると『闇の島抜け』)を聴くことができた。
2011年7月7日のブログ
2011年8月5日のブログ
そして、昨年12月の最終公演と、七年に渡って、序盤、中盤、千秋楽を楽しんだことになる。
三三が言うように、それまでの筋書きを書いたものを用意しているので、通しで聴かなくても十分楽しむことはできる。
もちろん、通しで毎月聴くことができれば、それは生涯忘れることのできない落語体験になるだろうことは、七年かけて聴いてきた私が保証しましょう。
紹介した三三の言葉を借りるが、この作品には、
“白浪物”(盗賊を主人公とする物語)や“三尺物”(博徒や侠客が主人公)、“世話物”(町人の人情を活写した芝居)と、色々な要素がたっぷり詰まっているから、どの回でも、楽しむ要素がある。
それぞれの地域の落語愛好家の方に、ぜひお奨めしたい落語会。
5月25日に大須演芸場で三三師匠の「嶋鵆沖白浪」、楽しんで参りました。
素晴らしい高座でした。一話目も二話目もこれからの展開が気になって絶対に続きが
聴きたくなるような所で終わりますし、長い噺をまとめる構成など相当に考えられたんだろうなぁ、と感じました。
何故、喜三郎が家を出る為に芝居を打たないといけないのか?
わざわざ博打打ちにならないといけないのか?など、噺の内容に関して
ツッコミどころがないわけではないんですよ。でもそんな細かい事気にならなく
なるくらいに三三師匠の語りにグイグイと引き込まれ、噺の展開をワクワクドキドキ
しながら聴きました。
終わった瞬間に「あ~、続きが聴きたい!!」と思いました。残念ながら、次回からの
回はチケットも完売ですし、私自身の予定が立たず、行く事が難しくて・・・。
本当に悔やまれます。
開演前に、三三師匠お手製の、登場人物や地図などが書かれたパンフレットの
ようなものが配られたのですが、本当に達筆で!幸兵衛様も直筆のあらすじを
お持ちでしょうからご存じかと思われますが。あの字と高座を拝見して、
三三師匠のお人柄が少しわかったような気がして、すっかりファンになって
しまいました。
本当に素晴らしい体験だったなぁ、とホクホクした気持ちで帰路に着きました。
若干当日券も出るみたいですので、もし予定が合えば次回以降も是非とも
聴きに行きたいな、と思っております。
そうでしたか。
良かったですね。
私も、この作品をご紹介してきた甲斐がありました。
各地ともチケットの売れ行きが良いようですね。
きっと、これまでも全国で精力的に独演会を開いてきた三三には、固定ファンもいるのでしょう。
中盤のヤマは「大坂屋花鳥」に代表されますが、他の日でも、きっと楽しめることでしょう。
長年磨いてきているだけあって、三三の言うように、登場人物が勝手に動き、語り出しているのではないでしょうか。
当日券での僥倖があることをお祈りしています。