噺の話

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ある日の、八五郎とご隠居の会話ー天下り、そして格差社会。

八五郎 いますか?
ご隠居 おや、八っつぁんじゃないか、お上がりよ。
八五郎 言われなくても、上がらせていただきやす、よっと。
ご隠居 どうした、やけにご立腹じゃないか。
八五郎 そりゃぁそうですよ、ご隠居。
ご隠居 何かあったかい。
八五郎 何かどころじゃねぇですよ、あの天下りの件でさあ。
ご隠居 ああ、文科省の嶋貫というOBが天下りを斡旋した、ってえ
    やつだね。
八五郎 そうそう、それですよ。ひでぇじゃねぇですか、国の教育を
    考えなきゃならねぇ役人が、あんなことやってていいんですか。
ご隠居 たしかに、そうだねぇ。
八五郎 人間は平等だとか、公平だとかってぇことを教えるのが教育
    じゃねぇんですか。
    あんなことやって、何が平等で公平か、ってんですよ。
    そんで、そのOBってぇのが保険屋さんに月二日行っただけで、
    一千万ももらってんですってね。驚くじゃねぇですか。
ご隠居 他にも財団法人や文科省の火災保険の代理店から報酬をもらって
    いるらしいね。
八五郎 前川とか言う先(せん)の事務次官とかが、「万死に値する」
    なんて言ってましたが、その後で嶋貫と顔を合わせて笑ってまし
    たぜ。
    まったく、反省なんかしてませんぜ、あいつらは。
    責任とって辞めたって言ったって、前川の退職金は8000万
    とかって聞きますぜ。それだって税金からでしょう。
    「万死に値する」と思っているなら、返せって言いてえ。
ご隠居 まぁまぁ、八っあん、少し落ち着いたらどうだい。
八五郎 これが落ち着いていられますか、ご隠居。
    あっしの築地に勤めていた仲間は、その店が豊洲に移転でき
    ねぇんで、店をたたんじまったもんで、仕事なくしちまったん
    ですぜ。
ご隠居 ああ、前にも聞いたが、勝っあんのことだね。
    だが、文科省の天下りと勝さんの話は、別じゃあないかい。
八五郎 あっしがいいてぇのは、お上(かみ)のやることで仕事をなくす
    奴がいるってぇのに、お上では、仲間内でろくに苦労しねぇで、
    天下っている、ってえことですよ。
    勝の野郎、今は日雇いの力仕事をしてますが、まだ子どもは
    小せえし、かみさんだって仕事してますが、万が一どっちかが
    倒れたら、てぇへんなことになりやす。かみさんは、スーパーで
    レジ打ってますが、子どももいるんで働く時間もすくねぇもんで、
    辞めたって失業手当ももらえねぇんです。
    他の長屋の連中も、みな大変なんですよ。親の面倒をみてるかみさん
    なんか、働きにも出れねぇ。
ご隠居 そうだね、親御さんの介護をしている人は大変だなぁ。
八五郎 どうも、世の中、不公平でならねぇ。
    役人やでっけえ会社の勤め人はいいかもしれやせんが、長屋の
    連中は、いっこうに給金は上がらねえわりに、税金やら保険
    やらが上がって、ピイピイ言ってますぜ。
    それに比べて、税金で高い給料や退職金もらっていながら、
    辞めた後も天下りで甘い汁を吸っている連中は許せねぇ。
    格差社会、って言われますが、それをなんとかするのが、役人の
    仕事じゃねえんですか。
ご隠居 八っあんの言うことは、ごもっともだ。
    そうそう、格差ということでは、いろいろ統計からも裏付けされて
    いる。
    先進諸国が加盟するOECDの統計がある。
    2015年5月にOECDから「格差縮小に向けて」というレポート
    が出ているので、その中から紹介しよう。
「格差縮小に向けて」(OECDのレポート-2015.5)
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ご隠居 これは、ジニ係数のグラフだ。0に近ければ格差が少なく、1に近づく
    と格差が大きいことを示す。
    オレンジ色が日本のジニ係数の推移だね。
    アメリカほどではないが、フランスやOECD加盟国平均より1に近い
    のが分かる。ここ数年、1に近づいてきているのが確認できるね。

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ご隠居 こっちのグラフが、所得上位10%の平均が、下位10%の平均の
    何倍あるか、という国別のグラフだ。まさに、格差を表す数字だね。
    オレンジが日本。
    これらのグラフを見ながら、レポートの次の内容を読むと、
    分かりやすいのじゃないかな。

日本における所得格差は、OECD 平均より高く、1980 年代中盤から拡大している。これは、大半のOECD 加盟国と同様の傾向である。日本では2009 年には、人口の上位10%の富裕層の平均所得は、下位10%のそれの10.7 倍になり、1990 年代中盤の8 倍、1980 年中盤の7 倍からの増加となる。2013 年のOECD 平均は9.6倍だった。

相対的貧困率(所得が国民の「中央値」の半分に満たない人の割合)は、日本では人口の約16%である*
(これはOECD 平均の11%を上回るもの)。相対的貧困率は、世代間では、高齢者が最も高く、66 歳以上の約19%に影響をもたらしている。
 *別の統計である全国消費実態調査によると、2009年の所得不平等や貧困の水準はもっと低い。

総じて、1985 年以降、日本では、家計収入の平均はほとんど増加しておらず(毎年約0.3%増加)、さらに下位10%の貧困層では家計収入が毎年約0.5%減少している。格差は2006-2009 年の金融危機の間にも引き続き拡大し、人口の上位10%富裕層の所得は横ばいだったものの、可処分所得は合計で5%減少した。

ご隠居 数字で見ても、間違いなく格差が拡大しているね。
    このレポートによると、所得の再分配においても、日本は決して
    褒められる国とは言えない。税や給付などの再分配の度合いで、
    日本より低いのは、チリ、韓国、アイスランド、スイス
    だけだった。
八五郎 なるほどねぇ。格差は拡大しているのに、貧しい人間を
    国が救う手を打ってねぇということですね。
    こういう数字ってのは、動かぬ証拠です。
    どっかで聞いた科白ですが、数字はウソをつかねぇや。
    こういう問題をなんとかするために、政治家や役人は税金から
    給金をもらっているんでしょうが。
ご隠居 OECDは、政策決定者に求められること、として次のような提言
    をしているんだ。
◇職場ベースの社会保険制度によって非正規労働者の社会保障を拡大する。そのためには例えばコンプライアンスの向上や、フルタイムに近い実質労働時間のパートタイムへの適用拡大などがあげられる。
◇非正規労働者が正規労働に移行しやすくするために研修機会を推進したり、昇進ができるように日本版職業能力評価制度を構築する。特に家計における第二の稼ぎ手に働く意欲を与えるために、就業中の給付や財政措置を強化する。
◇利用しやすい保育を増やし、父親に育児休暇取得を推進する等、仕事と家庭のバランスを改善できるような対策を発展させることで、女性の労働市場参加を増やす。
◇低所得者のために勤労所得税額控除の導入を検討する。

ご隠居 二年前の内容だが、状況はあまり変わっていないように思うねぇ。
    「一億総活躍」とか政府は言っているが、具体的な策が打たれている
    のかは疑問だ。
八五郎 そう言えば、共働きのカミサンの稼ぎで税金が控除される金額が
    変わりますね。103万から150万になるってぇんですが、なんか
    中途半端じゃねぇんですか。
ご隠居 お、よく知ってるね。配偶者控除の上限が上がるんだが、その
    通り、中途半端だ。これ位じゃ、女性が活躍する社会などには
    つながらないねぇ。いっそ上限をなくし、共稼ぎができやすい
    仕組みを考えて欲しいものだね。そして、女性の出産や育児を
    考え、勤務時間が短いパートさんでも失業手当が受けられるなど、
    いわゆるセーフティネットを設けなければ、いけないねぇ。
    そして、母子家庭や父子家庭、子どもの貧困問題など、問題は
    山積みだ。
八五郎 そうそう、あっしの家も、いろいろやることが山積みだった。
    ご隠居、ありがとやんした。
    今日は、いろいろ、タメになりやした。
    ・・・ちょいと帰る前に、はばかり貸してもらいてぇんですがね。
    どうも、食ったものが悪かったのか、朝から腹が、ピーピー
    言ってましてね。
ご隠居 そうだったのかい。早く行っておいで。
八五郎 はばかりながら、お借りします。
    そうか、役人は天下りで、あっしは腹下り、えれぇ格差だ!

  ・
  ・
  ・
オソマツさまでした。

Commented by saheizi-inokori at 2017-02-16 10:08
ハっつあん、ご隠居と世の中慨嘆はいいけれど、気をつけてね。
壁に耳あり障子に目あり、共謀罪でやられないように。
Commented by kogotokoubei at 2017-02-16 12:04
>佐平次さんへ

まぁ、こんな弱小ブログにまでは、被害が及ばないでしょう。

次は、共謀罪をネタにしようかな^^
Commented by ぱたぱた at 2017-02-17 21:43 x
ご無沙汰いたしております。格差といえば3年近く前に「21世紀の資本」という格差をテーマにした本がベストセラーになったことを思い出しました。確か労働所得より資産を運用してカネを稼いだほうが金持ちになれる、だから富の再分配が必要ということが書かれていたと記憶しています。
Commented by 創塁パパ at 2017-02-18 09:36 x
トランプとの外交で大騒ぎしてますが、あいつは海外ばっかりいって、国内を全く見ていない。ほんと、嫌いです!!!
Commented by kogotokoubei at 2017-02-18 10:21
>創塁パパさんへ

まぁまぁ、落ち着いて^^
なんとか、もう少し気の利いた二人の会話にしたいのですが、最近はだんだん、ご隠居が先生みたいになってきたのが反省点。
「やかん」、を見習わなきゃ。
Commented by kogotokoubei at 2017-02-18 13:51
>ぱたぱたさんへ

ピケティのベストセラーですね。
アメリカの所得と富の格差についてはロバート・B・ライシュが「最後の資本主義」という本でも書いていますね。
大企業、ウォール街、遺産による大金持ちなどが、政治的、経済的な支配力を強化してロビー活動資金や政治献金を使い自分たちの都合の良いようにルールを作って、ますます富める仕組みがあることが明かされています。
兄弟ブログ「幸兵衛の小言」で記事を書きましたので、ご興味があればご覧ください。
これが第一回目の記事です。
http://koubeinoko.exblog.jp/d2017-02-02/
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by kogotokoubei | 2017-02-15 21:39 | 八五郎とご隠居 | Comments(6)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛