新宿末広亭 12月下席 夜の部 12月27日
2016年 12月 28日
なんとか時間のやりくりがついて、コンビニに寄ってから、開演の五時直前に入場できた。
仲入り後で、客席は七分から八分の間位の入りだったろうか。
開口一番の金原亭小駒が『からぬけ』のサゲ近くだった。
好きな下手の桟敷は、最前列も空いていたので場所を確保。
この日は、色物でいじられそうな出演者もいないようだったしね。
久しぶりの古今亭志ん八から、感想などを備忘録代わりに記すことにする。
古今亭志ん八『ざるや』 (6分 *16:59~)
ほぼ二年前、2014年11月の落語研究会以来。志ん五門下から今は志ん橋の元にいる人だが、すぐ近くで拝見すると、意外に渋い顔つきだったことが分かる。協会のプロフィールを確認すると四十路を越えていた。童顔のイメージがあるが、だんだん噺家らしくなってきたかな^^
短いながら寄席らしい噺を器用に聴かせた。来秋、真打昇進。一層の飛躍を期待したい。
林家楽一 紙切り (9分)
初、である。こんな人がいたのか、と思ったが、協会HPで確認すると2001年に正楽に入門しているが、協会には昨年入会とのこと。
ご挨拶代わりの「横綱の土俵入り」の後は、最前列のお客さんが雑誌を渡してのリクエストで「チアリーダー」。なかなかの出来映え。次に、上手の桟敷最前列にいた母親と一緒に小学生らしく女の子からの「ピッチャー」のリクエスト。自分も野球(ソフトボール?)をしているらしい。三人目のお客さんの「水族館」までを無難にこなした。
語りの面ではまだまだ慣れが必要だろうが、紙切りの技量自体は、悪くない。
数少ない伝統芸の色物に、こういう若手が登場するのは、大歓迎である。
隅田川馬石『反対俥』 (13分)
お目当ての一人。昨年4月に池袋でも聴いたネタ。
マクラは、7月に初めて行った「シブラク」の扇辰との二人会でも聞いた浅草の人力車のことだったが、渋谷ではその後に『野ざらし』だった。
池袋でもそうだったが、末広亭も桟敷の最前列となると、俥屋と客の息遣いまでよく分かる。噺家さんによっては袴でなければ裾が乱れるネタなのだが、激しく動きなからも、まったく着物に乱れがないことに、もっとも感心した^^
雲助一門トリオの中で、寄席がもっとも似合う人だと思うし、今後も寄席の顔付けで名前を見るのが楽しみな人だ。
入船亭扇辰『一眼国』 (16分)
デジャブ、という感じ。馬席との渋谷での二人会で聴いたネタ。
とはいえ、あの時は、馬石の浅草の人力車のマクラをひきとって長いマクラがあったので、今回は本編のみ。
扇辰の高座については、極端な表情の変化など、彼の特徴的な演出に対し賛否両論かと思うが、こういう噺には、この人のそういった個性が活きる。
『団子坂奇談』などもニンな噺で、少し怪談めいたネタが合うのかもしれない。
「巡錫」のみぎり、なんて言葉、もはや落語でしか出合えないのではなかろうか。
とんぼ・まさみ 漫才 (15分)
やはり、私はこの人たちの漫才とは、相性が悪い。
無駄な間も含め、聞いていて少し辛かった。
昼から時間がとれれば、池袋の昼の部から新宿にはしごを目論んでもいたが、それは出来なかった。池袋、はん治の主任で、笑組も出演だったのだ・・・・・・。
これも、縁だね。
橘家蔵之助『ぜんざい公社』 (15分)
この人はそう多くは聴いていないが、このネタは二度目。
あれ、ぜんざいの代金を支払う場面あったっけ?
桂才賀『カラオケ刑務所』 (15分)
10月9日、橘家文蔵襲名披露興行の日の昼の部、主任の高座で聴いた爆笑ネタの新作。
最後には踊りまで披露の、元気一杯の姿を見せてくれたなぁ。
2016年10月10日のブログ
二年まえの新作台本コンテストの準優秀作品で、柳昇の『カラオケ病院』への“オマージュ”作品。
サゲの後に「これで、現金20万円ですよ。来年6月まであります。ぜひご応募を!」と応募を勧めていたのは、応募作品が少ないのだろうか。書いてみようかな、と少し思っている^^
柳家紫文 三味線漫談 (13分)
この人も、私には相性が悪い。長谷川平蔵ネタは、まだ古典化するような域には達していないのだが、いつもあればかり。知っていても笑えるような内容ではないで、聞いていて辛い。
三味線の技量はあるのだから、もっと芸の幅を広げて欲しいと思うのだが・・・・・・。
金原亭馬生『辰巳の辻占』 (14分)
師匠の十八番。しかし、この人の丁寧な語り口とは、今一つ合わないネタのように感じた。この男女、もっともっと因業に描くべきではなかろうか。
このへんは、個性とネタの相性という面で、なかなか難しいところだ。
三遊亭歌之介『お父さんのハンディー』 (13分)
仲入りは、この人。
いつもほどは会場の爆笑度合いはなかったように思うが、それはネタのせいもあるか。ゴルフ知らないと笑えないからね。
この人の『爆笑龍馬伝』などが、知っていても笑える、古典化する新作の名品、ということなのだ。
古今亭菊千代『権助魚』 (15分)
仲入り後、いわゆる“クイツキ”でこの人とは意外。
しかし、歌る多とともに東京落語界で女性初の真打になった実力は、伊達じゃない。
権助も女房も、生き生きと演じ、会場を沸かせた。十分に役割を果たした高座。
ペペ桜井 ギター漫談 (17分)
ギターの音にやや雑音が混じったが、元気でいていただければ、それだけで結構。
吉原朝馬『六尺棒』 (14分)
このネタで、倅が人力車で家の近くまで来る場面は、初めて聴いたように思うが、道理だろう。
どうしても、文蔵襲名披露興行の日の才賀が主任の昼の部、春風亭正朝の名高座と比べてしまう。噺本来の可笑しさで十分に楽しめるはずなのに、なぜ隣が錦織さんの家である必要があるのか、疑問。テニスをクスグリに使ってもいないし。
自分なりに噺を変えること自体は悪いとは思わないが、それが裏目に出ている印象。
桂南喬『壺算』 (15分)
寄席に欠かせない人。
噺の基本をほとんど変えないのに、しっかりと笑いが起こる。
女房を呼び捨てにして山葵卸しで顔を削られた、で爆笑。
要するに、聴く側との共感性の問題なのだろう。
瀬戸物屋の主の困惑が伝わり、可愛そうになってくる、そういう感情を共有できた好高座だ。
アサダ二世 奇術 (9分)
勝丸の代演。
最初のスカーフの芸で拍手が起こり、「そんなたいしたことないんです」で、会場から笑いを招く。
ヒザの役割を短い時間で果たした。
むかし家今松『ねずみ穴』 (38分 *~21:10)
生で聴くのは、2012年5月、博品館の喜多八以来だ。
2012年5月17日のブログ
あの時は、絶品の『短命』の印象が強く、この噺はそれほど記憶に残っていないのだが、ご一緒した佐平次さんは、居残り会で褒めていらっしゃったはず。
では、今松はどうだったのか。
結論から書く。
これまでの印象を払拭した、と言うと誤解を招くかもしれないが、実に見事な高座だった。
淡々と語る独特の高座、という思いが強かったが、顔の表情の変化を含め、こんな劇的な今松の高座は初めて体験。
もちろん、底に流れる主旋律とでも言うべきものは、今松ならではの重低音なのだが、場面場面での演出は、活き活きとしていた。
また、こんなに顔の表情が豊かな人だったことを再認識させられた。
たとえば、夢の中でのことだが、火事で焼け出された竹次郎が娘のお花を連れて無心のために兄を訪ねた場面。
まず、お花を見た兄のこぼれるような笑顔に、この人が根っからの守銭奴ではない、ということが伝わる。だから、弟に三文しか渡さなかったのは、あれから十年後の酒盛りで兄が語った通り、あくまで弟のためを思ってのことなのだと得心。
そして、その兄が夢の中では守銭奴そのもので、竹次郎が店を再開するための金は返ってくるアテがないのにで貸せないと言い、挙句の果てに竹次郎が兄に殴られた後、お花に向かって「よく見ておけ、お花。これが鬼の顔だ」という場面の竹次郎の表情を含む、静かな中での壮絶さも、見応えがあった。
全体の情景描写も、過不足はない。
三つの蔵に火が入って崩れ落ちる場面も、しっかり目に浮かんだ。
この噺、以前はそれほど好きではなかった。
同じ夢の噺にしても、『天狗裁き』や『夢の酒』のような落語的可笑しみはなく、後味が良いとも思わなかった。
しかし、竹次郎が自前の店を持てと兄に渡された金の入った財布の中身を見る前、「これで江戸の酒でも」と呟く場面に、人間の本質的な弱さを覗き見、また、たった三文と知って落胆し、憤慨した後、思い直して「いや、地べたを掘っても三文出て来るわけはではねぇ」と一念発起する心情の変化には、十分に説得力があったし、竹次郎がんばれ、と思わせてくれた。
また、今松の高座には、夢ではあっても、人が儲かっている時と奈落の底にある時とで、周囲がどう接するものか、いわば、人間の業を淡々とした中で表現していたようにも思う。
桟敷最前列という場所の良さもあったのだろうが、表情、仕草、語り口の全体で、実に活き活きと兄と弟の愛憎劇を描き出した。
元は上方ネタで、三代目円馬が東京に写し、六代目円生が継承したと言われる。
文楽が十八番としなかったのは、その長さもあると思うが、好きな噺ではなかったのではなかろうか。
それだけ、難しいし、夢の噺に共通する“損”なネタでもあるのだろう。筋書きを知っていれば、夢だった、ということの客の驚きはなくなるからね。
田舎言葉の扱いも含め、噺家さんが、躊躇うネタの一つではなかろうか。
そんな噺を好きにさせてくれそうな今松の高座、今年のマイベスト十席候補とするのを躊躇わない。
仲入りで、同じ下手の桟敷で、顔見知りの今松ご贔屓の落語愛好家の方にお会いした。
帰り際にお会いした時の立ち話で、あれほど今松師匠が表情豊かだったとは思わなかったと申し上げると、あの噺ではいつもとそう変わらないとのこと。
とするならば、それは、結構凄いことだと思うなぁ。
よくお聴きになる方は、きっと当たり前になっているのかもしれないが、初めて末広亭で聴いてからの私の印象は、大きく変わった。
久しぶりの今松、なおかつ初のネタを楽しめたのは、僥倖だったことを再認識。
さて、そろそろ、今年のマイベスト十席を選ぶ時期がきた。
数年前からは行った落語会や寄席は少ないながらも、候補はそれなりにある。
ある噺家さんは複数選んでいるし、選ぶのは簡単ではなさそうだ。。
毎年暮れの、うれしい悩み、ではある。
『仲蔵』では芝居の所作を見事にこなし、『替り目』では珍しくサゲ(うどん屋との掛け合い)まで演じていました。
この人のちょっとトボケタ味わいが好きです。
マイベスト十席、楽しみにしています。
残念でございました…
この興行はメロスやら妖怪やら童謡やら
毎日ネタを替えて励んでおりましたのに…
もしかして、今年は一度もご覧頂いてないんじゃ?
来年は是非とも、うちの会にもお運びくださいませ!!
では、佳いお年をお迎えください。
私、昼席から居続けでした。飛び入りで綾小路きみまろ先生出演! 馬風師から“年に一度くらい寄席の高座に出なさい”と言われて、やっと時間を作ったとのこと。昼席は二階が開きました。
実は、下手側の桟敷の前から二番め、克明にメモを取っている方の隣で膝にコートを掛けてボ~ッと聴いてたのが、私です(;^_^A。
芸術協会の芝居に行くことが圧倒的に多いけど、南喬師、今松師という魅力的な顔付けには適いません。年休取って行きました。
よい高座でしたね!
雲助三羽烏のうち、寄席にもっとも似合うのが馬石だと思います。
『反対俥』は、現役の噺家さんでこの人が際立っているのではないでしょうか。
パアパアうるさいだけの人が多い。
マイベスト十席、悩んでます^^
あら、ずいぶんお近くにいらっしゃったんですね!
少し、赤面・・・・・・。
できるだけ、他の方にご迷惑をおかけしないようメモっているつもりなんですが、まだ修業が足りませんね。
ご指摘通り、南喬、今松、実に結構でした。
そして、馬石もね。
もし、今後お会いできたら、ぜひご挨拶させていただきます。
