柳家小満んの会 関内ホール(小ホール) 11月27日
2016年 11月 28日
ネタ出しされていて、『子別れ(上・中・下)』とあっては、テニスを途中で抜け出してでも、と駆けつけた。
通算で136回目。
一時過ぎ、少し早めに関内に着いたので、念のため会場へ。
ホール前には桂歌丸独演会のポスター。大ホールだ。
時間的に余裕があったにもかかわらず会場に行ったのは、関内ホールのサイトに、この歌丸独演会の案内はあったものの、小ホールの小満んの会の案内がなかったから。
事前に電話して27日の2時開催とお聞きはしていたが、ちょっと心配だった。
催し物を案内する掲示板が見当たらないので事務所へ行って確認する。間違いなく、2時からとのこと。しかし、まだ誰も来られていないと聞いて、少し心配。
時間つぶしで近くでお茶を飲んでから開演20分ほど前に会場に戻ると、大ホールの開場が始まっており、混雑の中を階段を降りて地下の小ホールへ。
入口に、いつもの奥さんとお嬢さんの姿がない。
ボランティアの方がいらしたので年会員証をお見せすると、まだ師匠が到着していない、とのこと。
ロビーでしばし待っていると、開演10分前に師匠とお嬢さんが到着。持参された、いつもの小さい入場券(栞)を頂戴した。
会場の中は、いつもよりは多く、七割程度の入りにはなっていたように思う。
さて、どの位遅れて開演できるのかな、と思って待っていた。
開演3分ほど前に前座の上がりがかかったが、緞帳は下りたまま。
なんと、もう一度かかったが、誰も登場せず。
二時を4分ほどすぎて、出囃子がきこえ緞帳も上がった。
めくりに「こわめし」と書かれている。「あれ、開口一番は、なしだ」と思っていると、小満ん登場。
その後の感想などを記す。
柳家小満ん『子別れー上・こわめしー』 (33分 *14:04~)
めくりには「こわめし」とあったが「強飯の女郎買い」が一般的だろう。
冒頭、“前座にけられまして”と語った。開口一番を頼んだ前座が、いつものように夜の開催だと思っていたらしい。ありえる話だ。私も電話したが、開演時間の問い合わせが多かったと言うのは、しょうがないでしょ。前回は、まだ開演時刻未定とおっしゃっていたし、ホールのサイトにも書いていないのだから。
なぜ日曜昼開催だったかについて、「最終回のつもりで、昼に公演、夜はパーティーと思っていた」とのこと。ところが、高校の後輩の方を中心とする有志が「それは困る。手伝うから続けて欲しい」と慰留されたので来年も続けます、で会場から大きな拍手。
奥さんからは、「まだ、やるの」と言われているらしいが、継続となって私も嬉しい。
そういった、この会そのものの説明に続き、昔の弔いのことへ。葬式では菓子を出すことが多かったと説明し、“いまさか”や“ようかん”を六寸角の菓子折りに入れて持ち帰ってもらった、酒好きの人には般若湯。土瓶に酒を入れ、赤い糸でコヨリをつけてお茶と区別できるようにした、なんてぇマクラを聴くと、開演直前に会場入りしたことなどを、忘れさせる。
近所のご隠居が九十を過ぎての大往生の葬式で、般若湯を飲み過ぎた熊さんの科白や啖呵が実に結構。
寝ていたところを起こされた熊さんの「めでたいね、バンザーイ!」も可笑しいし、「しめた」と言う場面での「しめこのうさぎ」なんてぇのは、死語だなぁ。
熊の「弔いは、ハネたか?」に、近江屋の隠居が「寄席じゃないよ」と返すところも、笑った。
その近江屋の隠居に向かって「まだ、こっちにいるつもりか」と毒づいたり、吉原に行こうと熊が誘うのに対し、隠居が「子供の着物でも買うか、女房に美味しいものでも食べさせてやれ」と言って「お帰り、お帰り」というと、熊が「おかえり、おかえりだとぅ、犬がついてきたんじゃねぇやい」と返す科白が楽しい。
しめこのうさぎ、なども含めたその昔の江戸っ子の科白、大事にしたいねぇ。
紙屑屋の長さんをからかう場面も、楽しい。長さんの懐には三銭のみ。熊さんは親方から前借りした五十五円がある。吉原へ向かう途中、長さんが水たまりがあるから危ない、と熊さんの背中を叩いたため弁松の別あしらえの弁当から汁がこぼれたという場面は、後で吉原の若い衆に対して回想として語った。入れ忘れたのか、元々の筋なのか。今回は、通常の筋書きから割愛している場面もいくつかあるので、あえてそうしたのかもしれない。
吉原に上がってから豆どん(禿)に弁当をやろうとして「いりまへんわ」と断られ、若い衆にあげるのだが、その若い衆から「しのだ(信田巻)とがんもどきのおつゆが」と言われて「待ってろ、今腹巻から絞ってやるから」でサゲ。褌じゃなく腹巻にするところが、綺麗ごとで結構。
開演十分前到着、四分遅れで始まったという慌ただしさを感じさせない、科白も含めて楽しい高座だった。
柳家小満ん『子別れー中ー』 (29分)
一度下がって登場したが、前座がいないので、自分でめくりを替えた。開口一番含め、誰も手伝いがいない、ということか。
冒頭で「これが独演会というものかもしれません」とは、なんとも言い得て妙。
酒の上での間違い、ということから本編へ。これは、熊という人物を造形する上でも、重要な点だろう。
吉原で、かつて品川で贔屓にしていたお勝にバッタリ出会い、結局三日、四日と居続けしてしまった熊さん。五十五円持っていた金もなくなると、遣り手婆さんから体よく追い払うように帰されたが、そのまま家に帰る前に、仲間の家で酒を飲んで勢いをつけた。
この熊さんは、「酒さえ飲まなければ」良い男で腕のいい職人。また、居続けの後に吉原から真っ直ぐに帰るだけの度胸のない男、という人物造形なのだ。
女房のお徳さんからは、なぜ帰りが遅くなったかを聞かれ、町内生え抜きの若い衆仲間の六兵衛さんと焼き場で通夜をした、などと嘘をついていたものの、つい、吉原で昔の馴染みに会って逗留したことを白状。お勝から引き留められた自惚れ話に、さすがのお徳さんも、きれた。
二人の話を聞くでもなく聞いてしまった隣の半治が間に入るが、熊さん「うるせぇ、この野郎」と逆に喧嘩になって、次に吉兵衛さんが仲裁に入るも反省の色なし。
「本木に勝る末木なし」でサゲ。
この「中」は、別名「浮名のお勝」とも言うが、通しでなければ滅多には聴けないし、通しでも、地で語られることが多い。しっかりと熊とお徳とのやりとりやその後の騒動を聴けたのは、実に貴重だった。
2012年2月に「ざま昼席落語会」で聴いた、むかし家今松の通しは、実に結構だったが、「中」は、ほとんど地で語っていたので、「上」「下」の通し、という感じ。
2012年2月12日のブログ
古くなるが、NHKの日本の話芸で柳家権太楼が「浮名のお勝」として、「中」のみが放送された。東京落語会の高座だろう。それを見たことから、原作者のことなどについて書いた記事があるので、ご興味のある方はご参照のほどを。
2009年4月18日のブログ
なお、同じ頃に、柳家小三治の本多劇場での通し公演のことについて、京須さんの本の引用を中心に書いた記事もある。
2009年4月21日のブログ
さて、ここで仲入り。
柳家小満ん『子別れー下・子は鎹ー』 (30分 *~15:49)
仲入り後、いつものように着替えて登場。どの着物も、さまになる。
昔の三行半のことを話す中で、ある逸話が「ここだけの話」として紹介された。もちろん、秘密^^
鎹の説明、玄能の言葉の由来などをしっかりとふってくれた後で、「中」でのいきさつを少し振り返ってから、「手に取るな やはり野におけ 蓮華草」と挟んで、三年後の物語へ。
お店の番頭が訪ねる場面を割愛し、二人で木場に向かう会話で始まった。女房に会いたいとは思わないが、亀には会いたい、饅頭屋の前を通る度に、饅頭が好きだった亀を思い出し、つい涙が出る、と言ったあたりは、やや「クサいかな」とも思ったが、酒をきっぱり止め、仕事一本の今、熊さんは「あぁ、馬鹿なことをしてしまった・・・・・・」と反省の日々なのだろう。
亀と熊さんの再会場面、亀は先生から親孝行が大事だと言われた、と言った後で泣き出す。「孝行するから、帰っておくれよ」とせがむ亀を見て、熊さんも涙。やや、こっちも目頭が熱くなったぞ。
亀が帰った後のお徳さんとのやりとりも、他の噺家さんのように、過度に芝居がからずに自然な母と子のやりとりに思えて良かった。
亀が熊さんからもらった五十銭を見つけたお徳さん、亀から「お父っあんからもらったんだい」と聞いて、玄能を持っていた手を下げた。
冒頭の歩きながらの会話から、番頭さんが「お徳さんが見つかれば、私が仲をとるから」と言っていたように、鰻屋に番頭さんがいる。この番頭さんが熊さんとお徳さんの、まさに仲人役として語っている。お徳さんが「熊さんさえ、良かったら」と言うと、番頭さん、「それは大丈夫だよ、ほら、ここでこんなに小さくなっている」と言う横に、熊さんが頭を下げている姿が見えた。
マクラで仕込んでいるので、サゲはもちろん金槌ではなく玄能。
終演時には、受付に奥さんの姿を確認。
日曜でもテニスを途中で抜けて駆けつけただけはあった、素晴らしい“通し”だった。
全体として、今年のマイベスト十席候補としたい。
ほぼ30分づつで演じられたが、「上」では酒の勢いで陽気な熊さん、「中」では、その酒のせいもあってつい居続けし、帰ってからもつい調子にのって、最愛の妻と子を失う熊さん、「下」では、酒を断った、本来の気のいい、腕の立つ職人の熊さんが見事に描かれた。
単独で「下」を演じるなら番頭さんが熊さんを訪ねる場面から小満んも始めるのかもしれないが、この通しでは、割愛してまったく違和感はなかった。
また、笑いをとろうとする、野暮なクスグリなどもなく、無駄を削いでいることを感じた。
たとえば、人によっては、熊さんと亀の会話を傍で八百屋が聞いているのを熊さんが怒る、などのクスグリを入れたりするが、私は不要だと思う。
また、この高座では番頭さんが重要な役割を果たす。これは道理だ。
鰻屋の二階で番頭さんという仲人をはさんで、うつむいている熊さんとお徳さん、横で笑顔の亀ちゃんという光景は、実に結構だ。それは、この高座全体が、自然にそう思わせたのでもあるだろう。
小満んの高校の後輩の方を中心とするご贔屓の皆さんの支援もあって、来年もこの会が続くということが、実に嬉しい。
次回は、1月19日の木曜。平日の夜に戻る。
ネタは『千早ふる』『姫かたり』『質屋庫』とのこと。
『姫かたり』は、以前、雲助で聴いたことのある、師走のネタ。
当日が、旧暦12月22日であることを、十分にわきまえた上でのネタ選びなのだと思う。
三席とも、実に楽しみだ。
せっかくなので、もう少し宣伝していたらと思います。勿体ない。
1月19日、是非行こうと思っています。
もう少し宣伝、とのご指摘ごもっともです。
この会は日曜昼ということもあって八割ほど会場が埋まっていましたが、平日夜の場合は五割から六割程度の入りです。
年会員中心の手作りの会で、無理に宣伝するつもりがないのだろうとは察しますが、やはり、もったいないですね。
1月、ぜひ!
