新宿末広亭 10月上席 夜の部 三代目橘家文蔵襲名披露興行 10月9日(1)
2016年 10月 12日
三代目橘家文蔵襲名披露興行だ。
前にも書いたことだが、この定席寄席での興行日程、落語協会のホームページでは、ポスターの各寄席の披露興行日程を確認せよ、とばかりに不親切なのだが、次のようになっている。
9月21日(水)~30日(金) 鈴本演芸場 夜席
10月 1日(土)~10日(月・祝) 新宿末広亭 夜席
10月11日(火)~20日(木) 浅草演芸ホール 昼席
10月21日(金)~30日(日) 池袋演芸場 昼席
11月 1日(火)~10日(木) 国立演芸場 昼席
*4日(金)のみ昼夜二回公演
なんとかどこかで、と思っていたが、雨のおかげ(?)で、ご縁があった。
さて、入れ替え後の客席は、相変わらずの満席に近い状態。
とはいえ、桟敷は若干空きが増えて、少し前の方に場所を替えることができた。
緞帳が上がり、お約束の後ろ幕。
「おたこん落語会」「高円寺ノラや」「贔屓連」連名だった。
後で、文蔵本人が言うように、実の派手な色合い。それも、ご本人には相応しいかもしれない。
出演順に感想などを記す。良い印象を受けた高座に色をつける。
春風亭朝太郎『一目上がり』 (10分 *16:49~)
今年の「さがみはら若手落語家選手権」の開口一番以来。
正直な感想は、これまで聴いた中では、もっとも残念な内容。
満席近い客席を見て緊張したのかもしれないが、噛みまくっていたなぁ。
しかし、この人は将来性を感じる。何と言っても師匠が良い。
古今亭駒次『電車戦国絵巻』 (9分)
この人の十八番。まさか十分を切った高座だったことを後で確認し、あらためて見事な筋書きと演出に驚く。この高座だけ聴けば、十分に真打の中堅どころだ。
東急電鉄の東横線がグループから離脱してJRグループに寝返りったことを契機に、東急グループが助っ人の加勢を得てJRに立ち向かおうとする内容なのだが、新作としての出来栄えは、相当高いと思う。
文蔵の高座で恒例(?)となっている写真撮影タイムでは、なかなか達者に笛を吹きながら登場した。
来春の五人、来秋の三人の真打昇進の後に二ツ目では香盤のトップになる。
再来年の昇進披露興行で、ぜひ、師匠の元気な笑顔を拝見したい。
米粒写経 漫才 (9分)
初である。サンキュータツオは「しぶらく」で落語愛好家には名が知られていると思うが、相方の居島一平は知らなかった。ネタは、その居島一平が主役で、どんな県でも客席から言ってもらえれば、その県の有名な出身者や歴史、名産さどを立て板に水で語る、という内容。鹿児島県-秋田県-兵庫県について、なかなかの博識ぶり(?)を披露した。これはこれで聴かせるものはあったが、次の機会には掛け合いの芸を聴きたいものだ。
三遊亭萬窓『悋気の独楽』 (15分)
この人は地味だが、もっと評価されていい。寄席らしい、とはいえ、今では得難い味のある高座で、私は、声質などはまったく違うのだが、どこか八代目春風亭柳枝のような趣きを感じる。
柳亭左龍『宮戸川』 (13分)
何度も書いてきたが、“眼力(めじから)”の強い人で、そこに顔の表情も大いに個性的。
半七が口をパクパクさせると霊岸島の叔父さんが「酸欠のボラか」というのが、可笑しかった。
ペペ桜井 ギター漫談 (10分)
体調を崩されていたを伝え聞いていて心配していたが、声は少しかすれていたものの、いつもの達者な芸に安心。昭和10年10月10日生まれの81歳。それでも新ネタ(「古井戸」)を披露するあたりが、凄い。
巧妙なギターの演奏と、あのなんともいえない間のサゲに、寄席で出合い続けたい。
柳家小せん『千早ふる』 (14分)
いつ聴いても、声の良さが印象的だ。ほぼ小三治型と言ってよく、もしかすると稽古してもらったのかもしれない。こういうネタは実に上手い。
五明楼玉の輔『紙入れ』 (21分)
少し長めの時間をもらったようで、定番のマクラからこの噺へ。
マクラも本編も、会場を沸かせる技量は高い。でも、古典を演じても、なかなか江戸の情景が、私には浮かんでこないのは、相性が良くないということか。この人の軽妙さを好む方も確実にいるのだろうが、これだけはどうしようもないかなぁ。
ホンキートンク 漫才 (12分)
今、両協会の若手・中堅漫才では、間違いなくトップクラスにいると思う。
『芝浜』や『時蕎麦』の落語を取り入れたネタは、寄席のお客さんの爆笑を誘わずにはいられない、という感じだ。いいなぁ、この漫才。
柳亭市馬『二十四孝』 (15分)
交替出演、この日は落語協会会長。
久しぶりなのだが、以前よりはムダに首を左右にふることが少なくなって、見ていていらつかなかった。
時間の関係だろうが、サゲまで演じずに終わったのは、残念。
林家木久扇 漫談&『彦六伝』 (14分 *~19:15)
仲入りは、本来の一朝の代演で人気者のこの方。
「笑点」ネタは、この人だと許せる気がするのは、人柄だろうか。彦六ネタは、まさに“テッパン”で、会場を大いに沸かせて前半終了。
今回は二回に分けるので、披露口上以降、文蔵の名高座までのことは次回ということでご容赦のほどを。