「POPEYE」の特集「ジャズと落語」を読んで(2)
2016年 09月 11日

さて、「POPEYA」の特集「ジャズと落語」の後半。
同誌のサイトから、あらためて特集の目次を引用。
「POPEYE」サイトの該当ページ
特集
ジャズと落語。
028
人生とやらをちょっぴりわかった気にさせてくれるもの。
――立川志の輔
032
ダメなもの、ヘンなことほど惹かれてしまう。
――山下洋輔
036
ジャズと落語の街に行こう。
1. 新宿 2. 神保町 3. 渋谷 4. 浅草 5. 野毛
046
僕の好きなジャズと落語。
060
若きジャズメンと落語家に会ってきた。
――黒田卓也、春風亭一之輔
064
JJとAAの勉強。
066
噺家の落語論イッキ読み。
070
僕はこんなジャズと噺を聴いてきた。
――ピーター・バラカン、東出昌大
074
東京のジャズ喫茶、ときどきバー。
078
ジャズをもっと知りたくて、岩手のレジェンドを訪ねた。
084
JAZZで迷ったらDISC SHOP POPEYEヘ。
088
ポパイの落語プレイリスト。
090
今さら聞いちゃう、キホンのキ。
098
JAZZ & RAKUGO TIMES
JAZZ COLUMN
057
はじめてのジャズ――清水ミチコ
068
街とジャズ――野村訓市
082
日本ジャズ偉人伝――柳樂光隆
096
映画の中のジャズとエロス――三宅 唱
RAKUGO COLUMN
058
はじめての落語――中島 歩
069
噺家異端伝――九龍ジョー
083
落語家のレアグルーブ――横山 剣
097
妄想『笑点』論――せきしろ
とにかく、盛りだくさん!
すべては紹介できないので、絞る。
「すばる」でも登場した名前、春風亭一之輔へのインタビュー記事は、見開き2頁だが、お奨め古典落語4席のイラスト入り説明もあるので、そんなに文章量は多くない。
しかし、この特集のために、直接本人の生の声を聴いたところに価値がある。
「すばる」の「落語の笑い-春風亭一之輔試論」では、一之輔の著作や本や雑誌にある彼の言葉は素材として使われていたが、本人との対談は行っていない。
そのへんは、文芸雑誌と「POPEYE」との大きな違い^^
では、「古典落語は育てていくものwith春風亭一之輔」と題された記事から、少し引用したい。
昔の哲学者の言葉などを頼りにするより、この対談記事の方が、落語の笑いや一之輔という噺家について理解が深まるのは間違いがない。
「すばる」の特集に関する記事でも紹介したように、彼の寄席との出会いは、高校時代の浅草演芸ホール。しかし、落語の語り手の体験は、もっと古いのだった。
「小学生の頃、落語クラブで「弥次郎」を全校生徒1500人の前で発表させられたのが出合いです。つまり、落語には聞き手ではなく演者として入ったという稀なタイプです(笑)」
醤油で有名な千葉の野田の小学校での、“噺家デビュー”である。とはいえ、一席何十分もしゃべったわけではない。当たり前だけど。クラスの代表として全校生徒の前でスピーチをすることになり、落語を少しご披露した、ということ。
その一之輔は、21人抜きで真打に昇進した時点で、持ちネタが150あったらしい。
大師匠の柳朝からの伝統だが、一門は、師匠の家の掃除などはやらせず、そんな時間があったら映画や芝居を観るか稽古をしろ、という方針だったからね。
一之輔は、ネタによっては、演出やクスグリが聴く度に変わるものがあるが、そのへんについて、興味深い言葉。
「僕は『今日はこのギャグを入れよう』とあらかじめ決めてやることはほとんどない。お客さんの前で喋っていて、その場で出たものをやることが多いです。今日のお客さんはノリがいいなってときがあるんですよ。で、自分もノっているんだけど、同時に冷静な部分もあって『この登場人物だったらこういうことをやりそうだな』っていうアイデアが浮かんできて、それを生かしていく感じです。まぁ、基本的には何でもありですから、ただ古典なんで全部変えるのは嫌なんです。そのさじ加減をはかりながらやるのが大事なのかな。もちろん、僕自身の美学であって、他の噺家には当てはまりませんが」この記事の執筆者はこの一之輔の言葉に続けて、「これってまさにジャズ!」と書いている。
前回の記事の冒頭で、落語とジャズの共通性について書いたが、アドリブ、即興性ということだ。
一之輔が「僕自身の美学」と形容するとは、少し意外。彼が「美学」なんてぇ言葉を使うことは、そうは多くないのじゃないかなぁ。
それだけ寄席や落語会の空気、お客さんの雰囲気による即興性、ひらめきを大事にしている、ということだろう。
その一之輔は、古典落語について、なんとも個性的な形容をしている。
「古典落語という型が自分の体に合っているんでしょうね。基本的には楽しいからずっとそれでやってきているというだけ。その場その場でゴキゲンにできればいいし、それでお客さんに笑ってもらえればいいかって。落語って出てくる人たちが真剣じゃないのがいいなと僕は思うんです。ガツガツしている人をバカにしたり、逆に絶対に足をひっぱりそうな人を受け入れちゃう懐の深さがあったり。だから聴くと温泉に浸かっているような気分になれる。いや、せいぜい足湯ぐらいですかね(笑)」「足湯」という表現、なかなか言い得て妙ではなかろうか。
もし、一之輔論的なことを書くならば、こういった言葉に、その鍵が隠されているのではなかろうか。
他にも紹介したい内容は山ほどあるが、最後に一つだけご紹介したいのは、この雑誌らしいヴィジュアルのページ、「ジャズと落語の街に行こう」。
新宿、神保町、渋谷、浅草、野毛の五つの地域にある落語とジャズに関するスポットの地図、そして豊富な写真を見て、自分が行ったことのある場所を発見して嬉しくなったり、行ったことのない場所を知って行きたくなったり。
内容は・・・やはり、これは実際に読んで、見てもらわないといけないなぁ。
とにかく、飽きない「ジャズと落語」の特集。
すでに、次の号が発売されている。
少し紹介するのが遅れてしまった。
「すばる」に、時間をかけ過ぎたか^^
久しぶりに「POPEYE」を楽しんだ。
読みながら、ちょっとしたノスタルジーに浸った。
「POPEYE」の発行元であるマガジンハウスは、その昔、平凡出版という名で、あの「平凡パンチ」を発行していたなんてことを知っている人が、どんどん少なくなっていくのだろうなぁ。
当然の事ですが、最近の噺家さんやミュージシャンから、同じ匂いを感じる事はあまり出来なくなってしまいましたが、これからも覗き続けたいと思います。
“社会生活からは外れたけれど才能豊かな人たち”は結構多いかもしれませんが、その才能を発揮できるかどうか、が重要なのでしょうね。
“恐る恐る”でも“ワクワク”というYOOさんの表現、分かるなぁ。
たしかに、「おやっ!?」と思わせる芸人さんやミュージシャンはかつてよりは少ないのでしょうが、その出合いを期待し続けたいと思います。
