似たりヨッタリ会(仮)の三人で前夜祭 龍志・扇遊・鯉昇 国立演芸場 9月6日
2016年 09月 07日
喜多会亡き後、彼を偲ぶ、国立演芸場と横浜にぎわい座の「睦会」最終回があり、博品館では今月26日、「膝栗毛」の最終回が、師匠小三治を招いて開催される。
しかし、どうも、ご本人不在のこういう会、私は気が進まないのだ。
天国の喜多八は喜んでいるのかなぁ、という思いがある。
「私は、精一杯生きている時に、高座を務めました。もういいんじゃないですか」
「四十九日も過ぎて、野暮、粋じゃない。生きている人で新しいのを、やっておくんなさい」
そんな声が聞こえるのだ。
喜多八を偲ぶ会は、少し時間を置き、一周忌、三回忌、七回忌などで、ご縁があればいいと思っている。
今まであった会は、せっかくの歴史を絶やさず、新たな顔ぶれで再会して欲しい。
落語愛好家の方のブログによると、今後のにぎわい座の会は、扇遊と鯉昇の二人にゲスト一人で「二人三客の会」として新たに始まるらしい。
これは、ゲストにもよるが、楽しみだ。
そして、国立演芸場は、12月に新たに始まる会の前夜祭ということで、立川龍志の名があがっていたので、なんとかやりくりして駆けつけたのだった。
この会について、チラシにこう書かれている。
「落語睦会」の後を受け継いで、とのこと。
12月から新しく始まる
4人の会のプレ公演として、
まずはその内の3人でおめもじ致します。
いぶし銀あり、
華やかさあり、
爆笑あり。
《噺小屋》初登場となる
立川龍志、
そしてお馴染み
入船亭扇遊、瀧川鯉昇で
新しい大人の会を
お届けいたします。
(次回12月より林家正蔵が入り、「ヨッタリ」となります)
さて、前夜祭のお客さんの入りだが、六割程度だったかなぁ。
12月は、きっともっと増えるに違いない。
次のような構成だった。
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ご挨拶 扇遊・鯉昇・龍志
(開口一番 入船亭辰のこ『子ほめ』)
立川龍志 『化け物使い』
(仲入り)
入船亭扇遊 『妾馬』
瀧川鯉昇 『ねずみ』
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ご挨拶 (8分、18:30~)
幕が上がると、三人が並んで頭を下げている。
扇遊から、いがぐみ(五十嵐)さんと打ち合わせ(飲み会?)して、龍志と正蔵を加えて四人の会にしようということになったこと、正蔵は、睦会の最初のメンバーで、こぶ平時代に三回目までは出演していたが、その後、忙しくなって来なくなった、などが説明された。
だから、今回も、正蔵がいつまで出演できるものやらで、会場から笑い。
以前、にぎわい座の睦会で、喜多八から正蔵のことは聞いたことがある。
当時、会の名については、「四人なのでヨッタリ会でいいか」と扇遊が言うと、喜多八が「兄さん、真面目に考えてください!」と怒ったらしい。検討の結果「睦会」になったらしいが、喜多八の、高座からは分からない一面を見る思いがした。
その後、鯉昇、龍志が挨拶。
龍志は、「なんで選ばれたかと言うと、また、すぐに死にそうな奴、ということでしょう」と言ってのけるところが、芸人らしくて可笑しい。昭和23年生まれは、喜多八の一つ上、28年生まれの他の二人の5歳年上になる。
いがぐみさんのサイトでFacebookを確認すると、三人の顔合わせの打ち合わせ(飲み会?)は、龍志、扇遊の前座時代の思い出話が弾み、なんと深夜まで7時間(!)に及んだとのこと。
扇遊から、12月からの会の正式な会の名の説明があった。この日手渡されたチラシにもあったが「一天四海」になったらしい。どこかから難しい熟語を見つけてきたようだ。
チラシには、こう書かれている。
会の名は「一天四海(イッテンシカイ)」。言葉の意味は全世界ですが、1人(喜多八)は天へ往き、4人が噺の海を繰り広げる、そんな意を込めて、心機一転、スタートですちなみに、「一天四海」の「船出の刻(とき)」と題する第一回は、「いがぐみ」さんのサイトに案内されているように、12月8日(木)の開催。
「いがぐみ」さんのサイト
入船亭辰のこ『子ほめ』 (13分)
開口一番は、先月の紀伊國屋ホールに続き、この人。
あの日の『十徳』に比べると、落ちる。マクラで来年には、たぶん二ツ目と言って会場から拍手があったが、前座も3年ともなると、やや慣れが出てきて、気が緩む日、高座もあるだろう。この高座に、そんな油断のようなものを感じた。
ぜひ、精進して、先輩の小辰を脅かすような存在になって欲しいものだ。
立川龍志『化け物使い』 (30分)
昨年4月、志ん輔との同じ会場での二人会以来。
2015年4月30日のブログ
あの日の『子別れ』『花見の仇討ち』は、どちらも結構だった。特に『花見の仇討ち』は昨年のマイベスト十席に選んだ、大爆笑の好演。
マクラでは、師匠談志の逸話シリーズ。昭和45年入門なので、翌年6月に参議院議員となった師匠の運転手としての苦労が多かったことを振り返る。海外旅行にも少なからず同行したようだが、行き先はカタール、UAE、ヨルダンなどだったとのこと。トランジットの待ち時間、あてがわれたホテルの部屋で、2時間しかないのに手荷物をすべて開けさせられ洋服などを吊るすように言われた、など。
話題にはしなかったが、前座名が金志、二ツ目で金魚家錦魚だから、師匠の命名においても、結構、辛い思い出があるのじゃないかな^^
楽しく中身の濃い5分ほどのマクラから本編へ。
口入屋の場面や最初に隠居の家を訪ねる部分などを割愛し、引っ越しの場面から演じた。

『榎本版 志ん朝落語』
この噺については、榎本滋民さんの『榎本版 志ん朝落語』(ぴあ)が詳しいので、同書からかつての名人たちによる型の違いを、先にご紹介する。
(1)四代目志ん生
すでに化けもの屋敷へ越してきて掃除もすみ、下男(権助)が隠居に
いとまを願い出るところから始まる。友だちが止めるのを聞かずにきた
ことは、回顧談として語る
(2)八代目正蔵
引っ越してきたばかりの家で、またも早速にこき使われる下男(清蔵)が、
国元の老父の大病を理由にいとまを願い出るところから始まり、許されると、
主従の縁は切れたのだからと開き直り、桂庵宿に寝泊まりしていた仲間が
三日ともたないからと止めるのを、三年辛抱してみせると見得を切って
当家へ来たと打ち明ける。酒屋の小僧の話では、この家には化け物が出る
ようだから、もう辛抱できないのでやめると出て行く。
正蔵は四代目小さんから伝授された内容に、自分で工夫を加えたとのこと
(3)初代小せん
発端は口入宿。仲間が止めるのを振り切って本所の隠居を訪ねる
(4)三代目三木助
まず、隠居の家から始める。人使いの荒さに耐えかねた奉公人が次々に
やめて行く様子を描写してから、千束屋に場面が変わる。隠居は、名称不特定
ではなく、本所割下水に住む元御家人の吉田と特定される
この型は、七代目可楽からの伝授と見られているが、品川へ行ったついでに
(正反対の)千住へ回ることを命じたり、下男(杢助)が指摘するような
豆腐屋に何度も買い物に行かせる無駄などは、三木助の新たな工夫だそうだ
ちなみに、志ん朝は、ほぼ三木助の型。もっとも丁寧な型と言えるだろうが、その分、噺家の力量がないとダレる恐れもある。
師匠談志のこの噺を知らないが、龍志は、正蔵型だった。しかし、下男の名は権助。
隠居のところを辞めると決まった後の権助と隠居の会話、そして、その夜から登場する化け物と隠居とのやりとりが主となるが、とにかく、聴いていて気持ちの良いリズムとテンポでの結構な高座だった。
権助が「この家には、お化けが出る」と言うと、隠居「化け物に“お”の字なんぞ付けるから、つけあがる」と返すあたりも可笑しい。
最初の夜に登場する一つ目小僧に向かって隠居が「小咄でもしろ」というのにも、笑ってしまった。
火鉢に火を起こさせて網でかき餅を焼かせるのだが、小僧がつい火を起こそうとして灰を噴き上げてしまい目に入ったら、「一つしかない目なんだから、大事にしろ」と言うのは、数少ない隠居のいたわりの言葉か^^
二日目の夜に現れた女の子の“のっぺらぼう”に洗濯をさせるのだが、「なに、ふんどしは嫌だ、お前たちの仲間にも“一反木綿”がいるだろう」の科白や、酒の酌をさせて「ゆで玉子をつまみにして、飲んでるようだなぁ」などのクスグリを、スピード感豊かな流れの中で、しっかりと程よいタイミングで挟む。
「なまじ目鼻がついているんで苦労している女はいくらもいるんだ」のクスグリにも会場は沸いたが、榎本滋民さんが、前掲書で「志ん朝名ギャグ・ベストテンでも上位を占めることは、まずまちがいあるまい」という位だから、師匠談志譲りではない。
三日目の大入道が力仕事でこき使われ、さて四日目、たぬきが登場。
一目見た隠居「お前だったのか。ずいぶん、やつれたなぁ」の可笑しいこと。
途中途中で、「言うことを聞かねぇと、ひでぇ目に遭わせるぞ」と脅す隠居が、化け物よりも怖い^^
権助や化け物たちに用を言いつける科白が、いわば“言い立て”のよに小気味よく繰り出される。
江戸前の落語と言える好高座、今年のマイベスト十席の候補とする。
この噺は、生では白酒の2011年6月の大手町での高座が出色で、その年のマイベスト十席に選んだ。
2011年6月11日のブログ
他には百栄に加え、調べたらこの隼町で扇橋でも聴いていた。
2010年9月12日のブログ
筋書きなどを書き残していないのが、残念。
入船亭扇遊『妾馬』 (35分)
仲入り後はこの人。
前座時代に、龍志には大変お世話になった、と述懐。龍志が談志に入門した二年後の昭和47年入門だ。過日の打ち合わせ会で、深夜まで7時間語り合うだけの思い出もあるのだろう。
4日の日曜日、あの暑い日に開催された謝楽祭では、師匠扇橋が好きだった“ホットコーヒー”と“ふかしイモ”を販売したとのこと。
落語、相撲の身分制度のことから、本編へ。一瞬、『目黒のさんま』か、とも思ったが、こちら。
結論から書くが、まるで落語の教本のような高座。
我儘な殿様が妹のお鶴を見染める場面を短く地でふってから、八五郎の登場。
大屋からお屋敷へ行けと言われるが渋る八五郎。しかし、「損はない」と言われた時の、一瞬の変わり身。「少なくとも、百両はもらえるだろう」で、満面の笑み。このへんに、人間の心理を見事に表す落語の可笑しさがある。
お屋敷の門番から、誰宛てに訪ねたのか聞かれ、「田中三太夫という人」と答えると、「人、とはなんだ!」に、「えっ、人じゃないの!?」と切り返すやりとりの間の良さでも、笑いが起こる。
殿様が、「朋友のように話せ」と言っているのを三太夫から通訳(?)してもらい、一瞬の間から「苦労人だねぇ」の一言も、なんとも可笑しい。こういう科白で笑いが起きるのだから、この日の会場は、たしかに、“大人”が多かったと言えるだろう。
殿様と三太夫を挟んだやりとりでの可笑しさで盛り上げ、お鶴の姿を発見してからは、陽から陰への転換。家を出る時の母親の一言で、し~んとさせる。しかし、泣かせる場面も、無駄にくどくはしない。
八五郎がご馳走になりご機嫌になる場面は、やや短縮気味だったように思うが、都々逸を三つ挟んで、「殿公、飲みに行こうか!」でサゲた。
折り目正しい綺麗な高座なのだが、決して軽くはない。
この人の高座は、常に三割バッター、という印象だが、この日は二塁打位には相当するだろう。
心地よいリズム、語り口の良さは終始一貫していたし、適度に無理なく笑いをとっていた高座、今年のマイベスト十席候補とする。
扇遊が落語の師匠役を務めた映画『ねぼけ』のチラシを入場の際にいただいたが、12月に一部の映画館で上映されるらしい。興味深い内容で、なんとか観たいものだ。
映画上映記念の落語会もあるようだ。
瀧川鯉昇『ねずみ』 (38分 ~20:52)
以前に日本橋での独演会(2011年9月)や、喜多八との「ざま昼席落語会」(2014年1月)で聴いている。
2011年9月2日のブログ
2014年1月11日のブログ
しかし、この会でこのネタの選択は、意欲的、と言えるのではなかろうか。
三木助->扇橋と伝承された噺で、扇橋一門の総領弟子がいる中での高座だからねぇ。
とは言いながら、過去の睦会で演じたことはある。2009年の師走に池袋の東京芸術劇場小ホールで16日と17日の二日間行われた「落語睦会 年末スペシャル」の初日で演じている。私は、翌日にだけ行っているので、聴いてはいない。
また、扇遊は2014年5月の睦会で演じている。
あの日は、喜多八の『お直し』が素晴らしかった・・・・・・。
2014年5月22日のブログ
座間で聴いた内容と少し違った設定は、「ねずみ屋」の主人が、腰を抜かすことになった「虎屋」の階段から落ちた事故で、背中を押した犯人を、以前は番頭と特定していたのだが、今回は、そう言明しなかった。
甚五郎が彫ったねずみを見た、近隣の住人の驚きようを見た仲間が「おまえは、柳昇か!?」には笑ったし、甚五郎のねずみのおかげで「ねずみ屋」に客が殺到した結果、やって来た客に主人が「行列の最後は名古屋です」と言うクスグリなども鯉昇らしく楽しいのだが、どうも、今一つこの高座にこっちが乗り切れなかった。
ネタとの相性、かなぁ。
日本橋の独演会と二年前の座間の鯉昇、そして同じ二年前の扇遊の高座、過去の自分の記事を読んでも、どれも印象がそれほど良かったとは言えない内容。
浪曲師の二代目広沢菊春の得意ネタ「左甚五郎」を、三代目桂三木助が自分の十八番「加賀の千代」と交換した、という逸話のあるネタだが、同じ甚五郎ものの中では、筋書きに起伏が少ないということは言えるだろう。
とはいえ、苦手なネタは、あまり作りたくない。
誰か、この噺の印象を一変させてくれるような、そんな高座に出会ってみたいと思う。
終演後、外はまだ昼の暑さの名残りが漂っていた。
龍志の、期待通りの高座が、何よりの収穫。
12月からの「一天四海」は、どうも“ヨッタリ”では多すぎないか、というのが正直な思い。
この三人でもいいでしょうに、などと心で呟きながら、地下鉄の駅に向かっていた。
快癒を祈っております。
談幸も、しっかりした古典を演じる人ですし、あの一門の層の厚さは、あなどれない^^
龍志は、何か病気だったのですか。
知りませんでした。
高座からは、まったくそういう様子は見受けられませんでしたが。
覚えにくいのは得じゃないし、いつまでも喜多八を列聖するのも粋じゃないなあ。なにイッテンすかい?
四派連合もいいのですが、高座の持ち時間を考えると、三人までかな、などと思ったりします。
立川流については、鯉昇の交友関係では、談幸の方が親しいのでしょうが、龍志と扇遊との関係の方が濃かったのでしょうね。
にぎわい座の「二人三客」の方は、楽しみですね。
いえいえ、お詫びには及びません。
そうだろうとは思っておりました。
行けませんでしたが、先月の末広亭の余一会にも、退院したばかりの人や、入院中の病院から駆けつけた人もいたようですね。
まだまだ聴いたことのない噺家さんがいます。
なんとか、龍志には間に合った・・・そんな思いです。
