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ある日の、八五郎とご隠居の会話ー「改憲勢力!?」


 兄弟ブログ「幸兵衛の小言」に掲載した記事に関連した内容を、「噺の話」らしく、八五郎とご隠居の会話として書いてみたい。
「幸兵衛の小言」の該当記事
 

八五郎 いますか?
ご隠居 おう、八っあんか、お上がりよ。
八五郎 こう暑くちゃあ、かないませんやね。
ご隠居 今日も35度超えだったそうだね。
八五郎 そうですよ。もし、38度を超えたら、半島で戦争が起きますぜ!
ご隠居 それは、三遊亭兼好のマクラだね。
八五郎 さすが、ご隠居!
ご隠居 それくらいは、私にだってわかるよ。
    ところで、何だい、今日は。
八五郎 選挙が終わって、あちこちで「三分の二」超えた、てなこと言ってます
    がね、これで、もう憲法改正なんですかね。
ご隠居 おう、八っあんにしては、珍しいじゃないか、政治のネタなんて。
八五郎 そりゃあ、気になりますよ。あっしにも赤紙が来るかもしれねぇ。
ご隠居 大丈夫だよ、四十男に、赤紙は来やしない。
    それに、憲法改正なんてぇなあ、そんな簡単に出来るこっちゃない。
八五郎 そうなんですか。あっしには、まるで分かりません。せっかくだから、
    教えてくださいよ。そういうことは、町内でご隠居だけが頼りなんす
    から。
ご隠居 おう、世辞がうまくなったじゃないか。
    そうだねぇ、まず、憲法改正の条件の一つは、たしかに各議院、だから
    衆議院と参議院だな、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で「発議」、
    要するに議案を出すことが第一の条件になるねぇ。
八五郎 そうでしょう、だからこの選挙で三分の二だから、憲法改正・・・。
ご隠居 まぁまぁ、慌てなさんな。次に大事なのが、国民投票で過半数の賛成が
    あることだ。
八五郎 また、あっしらが投票所へ行くわけですね。あっしは、ともかく戦争は
    嫌ですから反対しやすが、今の様子じゃ、もしかするってえと、半分が
    賛成するかもしれやせんね。だいたい、半分しか投票に行ってねぇんです
    から、その半分、有権者の四半分超えれば改正じゃねぇですか。
ご隠居 たしかに、投票率の低下は、問題だね。18歳から投票するようになった
    ことでもあるし、そろそろ投票の義務化を真剣に考える時かもしれない
    ねぇ。
八五郎 そうですよ。投票したくったって出来ない人もいるってぇのに、なんで
    投票しないのか、あっしには、分かりやせんですねぇ。
    ところで、その国民投票ってのは、いったい何について、○や×をつけ
    るんですか。
    人や政党に投票するのは分かりますが、憲法に投票ってのは、やった
    ことがねぇもんでね。
ご隠居 そこだ!
八五郎 えつ!?
ご隠居 なにを、キョロキョロしているんだよ、そこが大事ということだ。
八五郎 なんですよ、大きな声だすから、驚くじゃねぇですか。
    それで、何が大事なんでしたっけ?
ご隠居 だから、国民投票では、何に対して投票するか、ってことさ。
    2007年に決まった国民投票法は「個別投票方式」となった。
    だから、選挙結果を受けて安倍首相は自民党の改正草案を元に議論を、
    なんてぇことを言っているが、国民投票で、自民党草案の全面改正を
    まとめて賛否を問う、なんてぇことはできないんだよ。
    個別の項目について、改正案の賛成・反対を投票するんだ。もちろん、
    複数の項目を投票にかけることもできるんだが、せいぜい、3つから
    5つの項目になるだろうねぇ。
八五郎 あぇ、そうなんですか、一個づつの項目について、投票するんですね。   
ご隠居 そこまで行くには、まだまだやるべきことがあるんだ。
八五郎 ほう、それはいってぇ、何なんです。
ご隠居 三分の二以上の議員の賛成で発議が必要だが、発議する前にも、いろ
    いろやることがあるだろう。
    まず、憲法のどの項目を変えるのか、ということを決めなければなら
    ないが、そういったことは、ほとんど真剣な話し合いがないように
    思うねェ。
    そして、項目が決まっても、それをどう変えるか、改正案を作成しない
    ことには発議はできない。
    憲法改正と言ったって、それぞれの政党の考えは違っているので、
    そんなに簡単にまとまるこっちゃないんだよ。項目の検討も行って
    いなければ、もちろん改正案の検討も、これから。
    そういうことを、本来はもっと新聞やテレビもしっかり説明すべき
    だと思うね。そんなに簡単に、まとまる話じゃないんだよ、憲法改正
    なんてぇ大きな問題は。
八五郎 そりゃぁ、そうですよ。長屋で花見に行くにしても、熊の野郎は上野
    がいい、半公は向島はいい、あっしは王子がいいなんて、いつももめ
    ますからね。
ご隠居 たとえ話が、みみっちくなったが、まぁ、そういうことだ。憲法改正
    と言っても、党のそれぞれに何をどう変えるかという考えは違うからね。
八五郎 花見の時もそうでしたが、やっぱり、それぞれの考えってのを、腹を
    割って話し合わねぇことには、どうにも前に進まねぇでしょう。
ご隠居 おっ、いいこと言うじゃないか。その通りだね。花見の時は、腹を
    割って話して、結局どうなったんだい。
八五郎 早い話が、大家が酒と肴を出してくれるんなら、どこでもいい、って
    ことで落ち着きやした。
ご隠居 なんだい、そういうことか。
八五郎 そう馬鹿にした話ではござんせんよ。そういう知恵も、腹を割って話し
    たからこそ出てきたんですから。
ご隠居 そうかい、そうかい、それは良かった。それで花見は盛り上がったの
    かい。
八五郎 それが、大家の用意した酒は番茶、玉子焼きはタクワンと、偽物ばかり。
ご隠居 大家さんも、したたかだねぇ。うまいこと誤魔化されたんただね。
八五郎 そんなことはどうでもいいんですよ。憲法改正の方ですよ、大事なのは。
    こっちは、誤魔化されねえようにしねぇとねぇ。
ご隠居 そうなんだ。しかし、新聞やテレビは、相当その“誤魔化し”に加担して
    いるなぁ。
八五郎 そりゃぁ、どういうこってす?
ご隠居 投票前から、やみくもに「三分の二」対「三分の一」なんて分けるから
    おかしくなる。
    たとえば、憲法改正についての公明党の考えは、むしろ自民党より民進党
    に近い位だ。
    だから、与党も野党もなく、憲法改正の論議は、もっと公明正大に進め
    られるべきだね。
    「三分の二」だから、何をやってもいいんだ、という風潮が見受けられる
    のは、実に危険だ。
    今朝の朝刊でも、「改憲勢力、3分の2超す」などという見出しをつける
    のは、実にけしからん。
    野党だって、項目や内容の違いはあっても、「改憲」に好意的な党はある。
    公明党などは、「改正ありきではない」と強調してるのだから、新聞の
    そういった、国民に誤解を与える見出しに抗議すべきではないか、などと
    思うね。
八五郎 そうなんですよ。あっしは、九条はネギだけでいいと思っていましたが、
    去年あたりから憲法の九条も大事だと思ってましてね。あの強行採決っ
    てぇ乱暴なやり方に公明党が一枚加わってから、落語の『甲府い』や
    『堀の内』は聴かねェようにしてるんです。
ご隠居 お祖師様にちなむ落語は、ま、聴いてもいいんじゃないか。
八五郎 そうですか、じゃあ聴くことにします。
    それにしても、それぞれ思惑があるんですから、「改憲勢力」なんてぇ、
    ひとっ括(くく)りに括られたんじゃ誤解の元だ。
    それに、まだまだ、改憲するには、やんなくちゃならねえことが、山ほど
    あるんですね。
    いやぁ、ご隠居さん家に来て、勉強になりした。ありがとうござんした、
    じゃぁ、これで。
ご隠居 おいおい、八っあん、だめだよ、私の紙入れを持っていっちゃあ。
八五郎 あれ、いつの間に、懐にこんなものが・・・・・・。
ご隠居 何を言ってるんだい、お前さんが入れたんじゃないか。それじゃ泥棒
    だよ。
八五郎 泥棒・・・だから、いいんですよ、これで。この話のサゲになるじゃ
    ないですか。
ご隠居 えっ、この話のサゲ?
八五郎 にぶいなぁ、ご隠居も。 
    「泥棒にも、三分の理(三分の二)」でさあ。


 オソマツ様でした。

 無理は承知の試み、ご容赦のほどを。
 シリーズになるかどうかは、まだ、分からない。
 
 なかなか、メディアは“ご隠居”のようには教えてくれないので、適宜、続けようかとも思っている。

 長屋の住人に分かりやすい政治こそ、大事なのではなかろうか。
 政治は、庶民の生活とは切り離すことができない。
 

 今日、永六輔さんの訃報に接した。

 また一人、いろんなことを教えてくれる“ご隠居さん”を失った。


Commented by kousagi at 2016-07-11 22:09 x
おかげさまで、カッカと頭にのぼった血が少し下がりました。
落語国の言葉はいいですね。
ご隠居さん、またぜひ色々おしえてください。

高校時代から永さんの本でいろいろ教わりました。合掌。
Commented by saheizi-inokori at 2016-07-11 22:59
これは面白い!続編を期待します。
個別発議の原則というのが実際にどのように運用されるのか、去年の安保関連法案の一括審議という暴挙を見ると油断できないですね。
Commented by at 2016-07-12 06:58 x
「38度超えたら」「九条はネギだけで」楽しく拝読しました。

永六輔さんが書かれていました。
米国の酒場でサミー・デイビスJr.と偶然会ったとき、
「上を向いて歩こう(スキヤキ)」がBGMで流れてきた。
サミーが「この歌、大好きだ」というので、「私が作詞をしたんです」と教えると、にっこり笑って「その種のジョークも大好きだ」と握手を求めてきたそうです。
下町の喫茶店で執筆していた姿が忘れられません。本当に残念です。


Commented by kogotokoubei at 2016-07-12 08:44
>kousagiさんへ

メディアの、「改憲勢力」や「改憲派」という言葉の氾濫に腹が立ちましたが、そこで、ちょっと深呼吸した次第です。
少し、遊び心もなければ、長い戦いには勝てないと思って、洒落てみました。

永さんも、いい“ご隠居”だったなぁ。
ラジオのファンもたくさんいらっしゃるでしょうね。

東京やなぎ句会関係で何か書こうと思っていますが、少し先になるかな。
Commented by kogotokoubei at 2016-07-12 08:47
>佐平次さんへ

佐平次さんに褒められたんじゃ、続けなきゃなんねぇ^^

今後は、お祖師様の政党が、鍵を握りますね。
ブレーキ役になれるないのなら、与党にいる存在意義はないでしょう。
Commented by kogotokoubei at 2016-07-12 08:51
>福さんへ

数少ないクスグリにお気づきいただき、感謝します^^

永さんとサミー・デイビスJrとの逸話、いいですねぇ。
そういった粋な大人の会話、大好きです。

“ご隠居”シリーズ、なんとか続けようと思います。
Commented by 創塁パパ at 2016-07-12 16:14 x
選挙特番、8時につけて、あまりにつまらんので、10時にはラジオにして寝てしまいました。少しはこれを読んで気が晴れました(笑)
Commented by kogotokoubei at 2016-07-12 21:30
>創塁パパさんへ

拙ブログで、お気持ちが少しでも晴れたのなら、そんな嬉しいことはありません。

メディアは、選挙特番を、投票後のみではなく、投票前にもっと組むべきだと思うのですが、それでは視聴率も取れないし、スポンサーもつかない、ということなのでしょうね。

さて、次はどんな内容にしようかなぁ^^
Commented by 寿限無 at 2016-07-13 12:28 x
いつも楽しく拝見いたしております。
柳家ろべえの真打の名前が「小八」に決まったらしいですね。
先ずは報告まで。
Commented by kogotokoubei at 2016-07-13 12:41
>寿限無さんへ

そのようですね。
懐かしい名を継いでくれて、嬉しいですね。
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by kogotokoubei | 2016-07-11 21:09 | 八五郎とご隠居 | Trackback | Comments(10)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛