人気ブログランキング |

噺の話

kogotokoub.exblog.jp
ブログトップ

新宿末広亭 5月上席 居続け(2) 夜の部 真打昇進披露興行 5月2日

 さて、夜の部、真打昇進披露興行である。
 昼の部からは多くのお客さんが帰って行ったが、一階椅子席はほぼ満席。2階にも数名のお客さん。桟敷は七割位の入りだったろうか。真打昇進披露興行としては、寂しくない客席と言えるだろう。

 自分の体の快復具合を、寄席の“居続け”で確かめてみよう、と思っていた。
 
 入院前、落語協会の真打昇進披露興行の彦丸の日、居続けで“落語貯め”を楽しむことができた。
 それなら退院後は、落語芸術協会の披露興行で居続けをしようかと思っていたら、外来診察の日が、期待の新真打、円満の日に当たった次第。これも“縁”だね。

 昼の部がハネた後、当初は足腰が辛ければ夜の部は椅子席にしようかと思っていたのだが、まったく疲れもなく大丈夫そうなので、好みの下手桟敷に席を確保。
 
 さて、落語芸術協会、新真打披露興行の二日目の幕が開いた。

 後ろ幕は、「神田鯉栄賛江 たまごの会贔屓与利」となっている。古今亭志ん輔が会派の枠を超えて若手の鍛錬の場としてきたのが、たまごの会。池袋の会には、行ったこともある。志ん輔がほぼ手弁当で頑張っていた活動からの卒業生か、と思うと結構嬉しくなった。

 開口一番から順に、感想などを記す。

三遊亭馬ん長『雑俳』 (6分 *16:50)
 「ばんちょう」と読む。初めての前座さん。円馬門下。短髪で見た目はすっきり。語り口も悪くない。今後も聴きたくなる人。

昔昔亭桃之助『生徒の作文』 (9分)
 連雀亭に最初に行った時に初めて聴いた二ツ目さんの一人。
 正しくは、昔昔亭なのだが、末広亭のプログラムでは昔々亭、となっていたなぁ。
 以前も聴いた草津温泉の落語会のことから、短くこのネタを披露。
 二ツ目の香盤では筆頭になったので、来年の真打昇進は間違いない。持ち味の明るさは結構だが、もうちょっと落ち着きのある高座になると良いと思う。今後も神田連雀亭や巣鴨獅子座を含め、精進してもらいたい。 

宮田章司 売り声 (8分)
 坂野比呂志 亡き今、両協会を含め唯一人の色物芸だろう。
 あさがおの種売りなどから、最後はあの物産飴屋を聴かせてくれた。

三笑亭夢丸『みそ豆』 (11分)
 久しぶりに、この人の元気な高座に会えた。
 マクラでの学校寄席の手ぬぐいを芋に見立てて食べる仕草も楽しいし、ネタとの相性も良い。
 短い時間でも漫談ではなくしっかりネタを演じ、その出来が結構。豆が実に旨そう。
 当代正蔵には、寄席でこのネタをよく聴かされたが、私は夢丸の方がはるかに良いと思った。

桂伸治『お菊の皿』 (14分)
 高座に上がった途端、客席を一気に明るくさせる噺家さんがいるが、この人はその筆頭ではなかろうか。
 とにかく、なんとも言えない笑顔をふりまきながら登場し、その笑顔の延長線上にマクラがありネタがある、という印象。
 お菊の幽霊登場場面では三味線、太鼓、笛も含むハメ物の演出もあり、とてもこんな時間で演じたとは思えない好高座だった。

林家今丸 紙切り (13分)
 どうも、私はこの人の語りが好きになれない。
 できるだけ好みに偏らず幅広く芸を見るようにしているのだが、努力だけでは難しい相性の壁がある。

三笑亭茶楽『紙入れ』 (12分)
 全般的に、完成度の高さを感じた。
 たとえば、本屋の新吉を、旦那が留守だから来て欲しい、と手紙で呼び出した女将さんが、新吉が旦那にばれることが心配だと言うと、「大丈夫だよ、女中には口止めしてあるんだから」と、さりげなく金を懐に入れる仕草をするあたりが結構。
 好みの分かれるそうなのは、女将さんと新吉が、その最中に旦那が帰って来た、という構成にしていることだろう。
 大人の演出、と言うこともできるが、反対に艶っぽ過ぎmあるいは野暮との指摘を受けるかもしれない。
 私は前者に属する。品を保ちながらの語り口が、全体の底流にあるように思うからだ。
 やはり、この人は、上手い。
 
三笑亭夢太朗 漫談(&『鯉泥』) (11分)
 六時を回り、時間調整も必要だったとは察するが、『鯉泥』は最後の最後に少しだけで、ネタとは言いにくく残念。

東京ボーイズ 漫談 (10分)
 この人たちの「なぞかけ問答」の凄いのは、いつもその時々の話題を交えたネタが増えていること。
 この日は、永六輔作の「大往生」まで披露してくれた。
 とても、10分だったとは思えない内容の濃さ、そして可笑しさ。
 今後も長く、芸協の充実した色物を支えて欲しい。

神田松鯉『荒木又右衛門-奉書試合』 (13分)
 以前、途中で眼鏡を取るのは「誤ってかけてきたのか」と書いたところ、コメントで、あれは松鯉の❝型❞なのだと教えていただいた。
 この日も、高座には眼鏡をかけて登場し、途中から外した。相当視力が弱っているのか、と感じた次第。
 しかし、内容に視力は影響ないようで、つい聴き込んでしまった。真剣白刃取りの柳生の秘伝に関する一席、結構でした。

三遊亭小遊三『短命』 (13分)
 仲入りは、この人。拍手が多いのは、やはり笑点の人気者だからか。
 笑わせる技量は、疑いなく高い。しかし、私は、八五郎の相手が、ご隠居ではなく、兄貴分のような口調なのが気になった。老け役は、あまり得意ではないのかなぁ。

 ここで休憩。
 足腰を延ばす。尻が少し痛くなってきたが、これは居続けなら毎度のこと。
 体調に問題はない。

 芸協の三人真打披露興行の良いところは、全員揃った披露口上があり、主任に限らず全員の高座があることだ。

 煎餅を食べながら、口上を楽しみに待っていた。

真打昇進披露口上 (15分)
 幕が開いた。後ろ幕は「三笑亭可風賛江 可風会与利」に替わった。

 なんとも多くの人が舞台に並んでいる。
 下手から、司会役の夢太朗・円馬・松鯉・可風・円満・鯉栄・可楽・茶楽・小遊三、の九人。
 まず、円馬から。
 円満は師匠であった橘ノ円亡き後兄弟子の円馬門下という位置づけになっている。円満がすでに五十路を超えていて、円馬とあまり変わらない年齢。円馬は、一席だけ円満に稽古したネタがあるが、円満がその噺をかけているのを聴いたことがないし、この披露目でも演(や)らないでしょう、と言っていた。いったい、どのネタなのだろうか。
 神田松鯉によると、講談界は、今では女流が過半数を超えているらしい。鯉栄への誉め言葉は、江戸っ子の“巻き舌”ができる人、とのこと。それは、この後のご本人の高座で確認できた。
 可楽は、昨年同様、とにかく“ぶっ飛んでいる”という印象。歌丸があの番組を止めることを、さかんに歌丸が死んだ、と言っていた(^^)
 以前の芸協の口上を考えると、実に真面目(?)になったなぁ、という印象だ。

 口上の後に、あらためて幕が上がる。後ろ幕は、もちろん円満宛で「江戸円満会与利」。

神田鯉栄『山内一豊-出世の馬揃え』 (16分)
 なるほど、“江戸っ子の巻き舌”の栄える高座。
 最初の後ろ幕がこの人への“たまごの会”贔屓からのものだったが、昇進したということは、もう連雀亭で聴くことはできないわけか。
 師匠の高座とこの人のそれで、講談をもっと聴こう、と思わせてくれた。

三笑亭可風『初天神』 (13分)
 この人は、第8回の相模原若手落語家選手権で優勝した実力者。
 結構、ユニークな経歴を重ねている。“いじわるばあさん”の八代目古今亭志ん馬に入門したが、師匠没後に小笠原諸島の父島でウミガメの調査をした後、 三笑亭可楽に入門。
 飴までの短い内容だったが、力みのない高座、無理に笑わせようとしない姿勢は、この人のこれまでの半生が背景にあるのか、などど思わないでもない。

三遊亭円馬『うなぎや』 (12分)
 実に楽しい高座だった。細かな構成の面では、前半、うなぎ職人がいない時に酒の肴に出された丼に山盛りの胡瓜の糠づけが、後でうなぎを捕まえるための糠につながる伏線となって効いていた。
 こういう高座を聴くと、短い時間だからと言っても、漫談をすることを認めたくなくなる。

三笑亭可楽 漫談 (11分)
 歌丸ネタなどに加えてイスラムの男の被り物と付け髭には、笑った。

ボンボンブラザース 曲芸 (10分)
 大好きな紙の芸を中心に、客席を沸かせた。最強の膝の役として主任につなぐ。

橘ノ円満『金明竹』 (27分 *~21:03)
 なんと、このネタ。
 十八番の一つのようだ。
 前座噺の範疇に入るが、三代目金馬の名演も残っているし、あの名人橘家円喬は、四度の言い立てすべて順番を替えて披露した、という逸話が残っている、真打が魅せることのできる噺でもある。
 円満は、与太郎の店の掃除からを、たっぷり。
 聴かせどころである上方者の言い立ては、緩急をつけた余裕を感じさせる語り口。
 なんと言っても感心したのは、その言い立ての可笑しさのみならず、主人、女将さん、店にやって来るいろんな人々、そして影の主役である与太郎の見事な演じ分け。
 この噺の後半は、どうしても演者も聴く側も言い立てが主役で、登場人物が脇役、という印象が強いのだが、骨董屋の少し頑固な主人、そして、天真爛漫とでも言うべきその女房の個性が前面に出てくる、言葉よりも人が生きる高座、という印象。
 なかなか説明できにくいのだが、相当な数、この噺を演(か)けているな、と思わせる好高座。
 十分に、真打の『金明竹』だった。

 ほぼ8時間の居続けは、円満の高座で実に心地よくお開き。
 尻は少し痛いが、これも心地よい痛み(^^)
 体調も問題なく、寄席の楽しさを、存分に味わうことができた。 
Commented by 和爺ぃ at 2016-05-05 01:03 x
ナント居続けとはまた、すっかりご快復ですネ!
アタシは前日の1日に池袋の昼席ヘ行ってきましたが、そちらも補助席を含めて満席で、補助席に座ったアタシのお尻はもう限界、さすがに居続けは無理でしたね〜
Commented by kogotokoubei at 2016-05-05 10:43
>和爺ぃさんへ

池袋の芸協の芝居ですね。
あの補助席では、私も居続けはしないでしょう(^^)
末広亭の桟敷は、足が痺れてきたら伸ばすこともできるので、なんとか持つのですよ。
連休は、どちらの寄席も盛況なようで、結構なことです。
こういう時期に、家族と一緒に初めて寄席で落語に触れて好きになる、そんな人が増えるといいですね。
Commented by 幾代太夫 at 2016-05-05 11:42 x
幸兵衛様

退院後の経過もよろしく、なによりでございます。

東京かわら版最新号によると、円満師の目標の一つに前座噺で主任をとれること、とあります。
結構な金明竹であったのでしょう、羨ましいです。
Commented by kogotokoubei at 2016-05-05 16:43
>幾代太夫さんへ

ありがとうございます。

そうですか、前座噺で主任・・・喬太郎が『道灌』でトリをとることに執着していた時期がありましたが、同じような意図なのでしょうかねぇ。

円満のこの噺は、女将さんが実に楽しい。見た目のふくよかさも良い影響を与えているように思います。
今後が、実に楽しみです。
Commented by ほめ・く at 2016-05-05 17:41 x
リタイア―すれば毎日がホリディと思っていましたが、どっこいそうは行きません。末広亭の上席も行きたかったんですが、どうも日程上無理なようで、幸兵衛さんの記事で満足することにしました。
4日は国立の「芸協二ツ目特選」に行きましたが、後ろの席の女性4人がこの会がはねてからタクシーに分乗して末広亭の夜席に駆けつけると話してました。凄いパワーです。
円満はとおに真打のレベルに達していましたが、芸協は年功序列を固く守っているため漸く昇進を果たしました。6月の池袋には何とか行きたいと思っています。
Commented by kogotokoubei at 2016-05-05 18:10
>ほめ・くさんへ

私も都合が合わず行けなかった、大演芸まつり「芸協二ツ目特選」を、ほめ・くさんの記事で疑似体験できました。
小痴楽は、国立の後で末広亭の手伝いに行ったはずです。

池袋での披露目にも行きたいのですが、行ける可能性は半々、というところです。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by kogotokoubei | 2016-05-04 23:58 | 寄席・落語会 | Comments(6)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛