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噺の話

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三代目の美しい“セクハラ”や、地下鉄路線図など-『当世落語家事情』より。


 春一番の雨と風により、日曜恒例のテニスはお休み。

 寄席に行こうか、とも思ったが、インフルエンザが渦巻く人ごみの中に行くこともないかと思い、落語の本を読んでいた。


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笑福亭松枝著『当世落語家事情』(弘文出版)

 笑福亭松枝の『当世落語家事情』は弘文出版で1997年に発行されたもの。
 神保町で手に入れてから、長らく本棚に積ん読、の状態だった。

 松枝は六代目松鶴の五人目の弟子、昭和25年生まれで昭和44年に入門。

 拙ブログにいただいたコメントで教えていただき記事でも紹介した本、『ためいき坂 くちぶえ坂』の著者でもある。
2012年6月18日のブログ

 六代目とその一門について、あの本はなんとも楽しく読んだ。
 そして、その後に発刊された本書も、なかなか読み応えがある。

 本書の「春団治の海」の章から引用。
 ここでは、弟子を含む一門のことが書かれているが、ご本人に関する部分を紹介する。
 「ようこそのお運び、厚く御礼申し上げます・・・・・・」
 華やかはずみ出ばやし「野崎」、しっとり艶やか色紋付。体形、顔立ち整って、粋な身ごなしは、高座への僅か数歩でうかがい知れる。
 対して、その喋り出しは地味である。陰気ですらある。このギャップに初めての客は一瞬戸惑う。が、やがて彼らはその目を耳を、五感のありったけを集中させ、話にドップリ、法悦境に浸る。
 『春団治』を観に来い。聴きに来い。的確で生き生きとした人物と情景の描写、練りつくされた間と呼吸、話の構成の妙、面白く、そして美しく冴えわたった芸と舞台は“洗練の極み”である。春団治を観に来い。聴きに来い。
 松枝の、実に的確な評である。
 しかし、この本では、決して褒めるだけではないところが、魅力でもある。
 その春団治を、寄席三味線の内海英華がボヤく。口をとがらせ、しかし嬉しげに。
 「最近、三代目(春団治のこと)、ウチの若い娘(弟子達)のお尻、撫で倒しよんねん・・・・・・」
 もちろん、撫でて倒してコトに及ぶわけではない。昔はいざ知らず・・・・・・。
 通りすがりに軽くお尻を触る、そういった仕草さえ洒落ていて美しく、微笑ましい。触られた当人はもとより周りをも和ませる。米朝の紳士、文枝の円満をもってしてもこうはいかない。
 お尻を触る仕草さえ、「洒落ていて美しい」なんてぇ噺家さんは、そうはいない(^^)

 今の世の中、芸能の世界ですらお尻を触りでもしたら“セクハラ”と言われそうだが、三代目の“芸”は、高座だけではなかったのである。

 この本では、同じ業界人(?)同士、楽屋でしか知りえない逸話なども紹介されているのだが、三代目について、こんな話も登場する。

 -春団治の腹部には、十二指腸潰よう、胃潰ようの何針にも及ぶ手術跡がある。ある日、舞台を降りて着物を脱ぐと、次の着替えに入った米朝が自分の胆石のやはり何針もの手術跡を見せて言った。
「わしのコレは昭和40年やったが、三代目(春団治)のそれは?」
「エー、横の線が五十二年、縦の線が確かオリンピックの前の・・・・・・」
 米朝に襦袢を着せかけながら米二は思った。
「地下鉄の開通じゃあるまいに・・・・・・」

 米二に「座布団二枚」という感じ(^^)

 本書発行時期から察して、約二十年前の楽屋での会話だろうか。

 本章には、なんとも個性的な三代目の弟子達の逸話がたくさん紹介されていて、それも楽しい。
 ぜひ、あの芸の一端なりとも、皆さんに継いで欲しい。

 しかし、美しい尻触りや、体に残る地下鉄路線図は、真似しようにも、真似できないだろうなぁ。

Commented by kousagi at 2016-02-14 22:51 x
春団治師匠の楽しい逸話、ありがとうございます。
内海英華さんも書いてはりました。
bit.ly/1owuLxg

2006年「東へ西へ」の「高尾」、英華さんの女道楽に続けての高座を思い出します。
Commented by 小言幸兵衛 at 2016-02-15 17:51 x
>kousagiさんへ

なぜか、ログインしているとコメントできない状況なので、外から(?)返信いたします。

英華さんの記事、拝見しました。

次の四行に、三代目への熱い思いが、溢れていますね。
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この世で一番たくさん春団治師匠の横で三味線を弾きました!
この世で一番たくさん春団治師匠のはめもんを弾きました!
この世で一番たくさん春団治師匠の踊りを弾きました!
この世で一番たくさん出囃子「野崎」を弾きました!
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 私が英華さんをお聴きできたのも、「東へ西へ」のおかげです。

 情報、ありがとうございます。
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by kogotokoubei | 2016-02-14 18:28 | 落語の本 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛