今年のマイベスト十席-その(2) マイベスト十席と特別賞決定
2015年 12月 27日
(1)瀧川鯉昇『御神酒徳利』
>ざま昼席落語会 ハーモニーホール座間 1月10日
(2)入船亭扇辰『徂徠豆腐』
>池袋演芸場 一月下席 昼の部 1月24日
(3)桂ひな太郎『締め込み』
(4)入船亭扇遊『鼠穴』
>ざま昼席落語会 ハーモニーホール座間 2月14日
(5)桂文我 「3.11と小金治さんの思い出」&『紺田屋』
>ざま昼席落語会 ハーモニーホール座間 3月14日
(6)柳家小満ん『樊會』
>柳家小満んの会 関内ホール 3月18日
(7)柳家小里ん『棒鱈』
>小柳枝・小里ん 二人会 三輪田学園百年記念館 4月18日
(8)立川龍志『花見の仇討ち』
(9)古今亭志ん輔 『幾代餅』
>龍志・志ん輔 二人会 国立演芸場 4月29日
(10)橘家円太郎『野ざらし』
>ざま昼席落語会 ハーモニーホール座間 5月9日
(11)初音家左橋『棒鱈』
>しんゆり寄席 川崎市アートセンター・アルテリオ小劇場 6月27日
(12)林家正雀『怪談乳房榎』
>ざま昼席落語会 ハーモニーホール座間 8月8日
(13)むかし家今松『業平文治漂流奇談より 業平文治』
>むかし家今松独演会 国立演芸場 9月12日
(14)露の新治『中村仲蔵』
>第62回 人形町らくだ亭 日本橋劇場 10月26日
(15)春風亭一朝『尻餅』
>三田落語会 昼席 仏教伝道ホール 12月19日
この十五席。
こうやって並べると、それぞれの高座が目に浮かぶなぁ。
この中から五つを落とすのは忍びないのだが、これも務め(^^)
さて、悩みに悩んで選んだ、今年のマイベスト十席・・・のご紹介の前に、特別賞の発表。
下手なテレビドラマのように、たまには引っ張ってみよう(^^)
まず、十回行った寄席の中から、逸品を選びたい。
上期と下期で、次の各一席とする。
<寄席の逸品賞>
上半期
三笑亭夢花『二人旅』
>新宿末広亭(真打昇進披露興行) 5月上席・夜の部 5月5日
2015年5月6日のブログ
芸協の三人の真打昇進披露興行で初めて聴いた夢花のこの噺には、腹がよじれた。いわゆる“キラーコンテンツ”だね。
下半期
春風亭柳好『宮戸川』
>新宿末広亭 11月上席・昼の部 11月8日
2015年11月9日のブログ
この人の高座の楽しさをどう表現したらいのだろう。噺の持ち味を十分に引き出しながら、笑いのツボを外さない技量は並じゃない。
次に新人賞。文句なく、この人。
<新人賞>
柳亭小痴楽
*該当高座
(1)『湯屋番』
>さがみはら若手落語家選手権 第4回予選会 杜のホールはしもと 2月28日
2015年3月1日のブログ
(2)『大工調べ』
>柳亭小痴楽・古今亭始 二人会 赤坂カルチャースペース嶋 3月7日
2015年3月8日のブログ
(3)『佐々木政談』
>東西交流落語会 横浜にぎわい座・のげシャーレ 11月25日
2015年11月26日のブログ
見かけと違って(?)、落語に打ち込む姿勢は真剣そのもの。
NHK新人落語大賞の来年の大本命と、私は思っている。まぁ、賞を取らなくても、確実に芸協の将来を背負って立つ存在になるだろう。
次に、新設した「まくら大賞」。
<まくら大賞>
柳家喜多八 「正しい立飲み(かぶと)の作法」(仮称)
鯉昇が見事な『御神酒徳利』を聴かせてくれた1月10日の「ざま昼席落語会」で、柳家喜多八による『親子酒』のマクラを選ぶ。
2015年1月11日のブログ
380席、超満員のお客さんに、「かぶと」(酒屋の立飲み)での本寸法の飲み方を情熱的に披露してくれた。
ネタばれになるのだが、喜多八の快癒への期待をこめて、あえてその概要をご紹介したい。
(1)前提条件
分厚いガラスの角ばったグラスに注がれた酒がこぼれて、ガラスの受け皿に
こぼれている
(2)グラスを持つ左手とつまみの右手
グラスを持つのは左手でなくてはならない。右手はつまみを持つために必要。
つまみがなくて、右手の指をしゃぶってでも五合は飲める。
喜多八殿下は、右手の指は風呂に入っても洗わない。
(3)グラスの底
こぼれて受け皿にある酒がグラスの底についているのを、皿の端で切って
から、飲む。
(4)受け皿にこぼれた酒の処置
グラスから酒を飲み、減った量と受け皿にこぼれている量が同じになった
ところで、皿の酒をグラスに注ぐ。早くても、遅くても、いけない。
(5)持ったグラス
一度左手で持ったグラスは、飲み終わるまで下に下ろさない
(6)つまみ
酒屋の口が斜めに向いたガラス瓶に入ったアタリメや豆で飲むが、
先輩たちは、がま口の中にアタリメが入っており、他の客にも配る。
食べると、十円玉の緑青の味がする
(7)酒は二杯まで
一軒のかぶとでは二杯まで。もっと飲みたければ別の店へ行くのが礼儀
こういった作法について、喜多八ならではの口ぶりや仕草で満員の会場を揺らした。
この年末年始にかけ入院とのことだが、ぜひ来年も喜多八殿下ならではの高座に出会いたい。
さて、ようやく(?)、今年のマイベスト十席の発表!
悩みに悩んだ十の高座、当該記事へのリンクと、ちょっと気取った寸評とともに記すことにしよう。
<平成27年マイベスト十席>
(1)瀧川鯉昇『御神酒徳利』
>ざま昼席落語会 ハーモニーホール座間 1月10日
2015年1月11日のブログ
喜多八との二人会は380席、過去最高超満員。その客席を唸らせた
三代目桂三木助を髣髴とさせ、円生にも迫る見事な高座!
(2)入船亭扇辰『徂徠豆腐』
>池袋演芸場 一月下席 昼の部 1月24日
2015年1月25日のブログ
蜀山人「世の中は われより先に用のある 人のあしあと橋の上の霜」をマクラに、
その橋の上に見事に浮かんだ豆腐屋の姿。これぞ扇辰噺の真骨頂!
(3)入船亭扇遊『鼠穴』
>ざま昼席落語会 ハーモニーホール座間 2月14日
2015年2月15日のブログ
「落ちぶれて 袖に涙のかかるとき 人の心の奥ぞ知らるる」、
夢と分かっていながら惹き込まれる人情劇。客席に飛ぶ火の粉が見えた!
(4)桂文我 「3.11と小金治さんの思い出」&『紺田屋』
>ざま昼席落語会 ハーモニーホール座間 3月14日
2015年3月15日のブログ
3.11、そして同じ年の小金治さん最後の高座(『渋酒』)をめぐる逸話に涙。本編の見事さを含め、文我でしかできえない珠玉の高座!
(5)柳家小満ん『樊會』
>柳家小満んの会 関内ホール 3月18日
2015年3月19日のブログ
お箪笥長屋に住む聘珍樓と崎陽軒の抱腹絶倒な会話を実に楽しそうに演じ、「我が骸骨を乞う」での見事なサゲ。手作り独演会ならではの小満ん劇場!
(6)立川龍志『花見の仇討ち』
>龍志・志ん輔 二人会 国立演芸場 4月29日
2015年4月30日のブログ
修行仲間同士の二人会で、この噺でもっとも笑わせてくれた高座。
志ん輔が「欲がないから好き」と言う噺家さんを、もっと聴こうと欲が出た!
(7)林家正雀『怪談乳房榎』
>ざま昼席落語会 ハーモニーホール座間 8月8日
2015年8月10日のブログ
ざまの夏、十二社の滝に重信の亡霊が見事に現れた、伝統を継ぐ怪談噺。
師匠八代目正蔵の継承者の高座、もっと聴かなきゃと反省!
(8)むかし家今松『業平文治漂流奇談より 業平文治』
>むかし家今松独演会 国立演芸場 9月12日
2015年9月14日のブログ
80分の長講で、初めて演じられた歴史に残る『業平文治』通し。
侍の血筋の文治が、堀丹波守のお抱えとなる大団円の工夫も実に結構!
(9)露の新治『中村仲蔵』
>第62回 人形町らくだ亭 日本橋劇場 10月26日
2015年10月27日のブログ
師匠露の五郎兵衛から伝わる正蔵版を見事に継承。
山崎街道に斧定九郎がはっきり見え、女房お岸が際立つ新治ワールドに感動!
(10)春風亭一朝『尻餅』
>三田落語会 昼席 仏教伝道ホール 12月19日
2015年12月21日のブログ
師走の三田で、楽しく品よくテンポよく繰り広げられた餅つき芝居。
芝居噺でも長屋噺でも、乗ってる一朝は“いっちょうけんめい”!
あぁ、ようやく十席選ぶことができた。
選ばなかった、ひな太郎、小里ん、志ん輔、円太郎、左橋の高座も、決してこの十席と見劣りしないのだが、心を鬼にして外したことを、あえて記しておこう。
さて、最後に、「幸兵衛大賞」の発表。
マイベスト十席に残った高座、噺家さんの中から選出する、新設の賞。
<幸兵衛大賞>
柳家小満ん
*柳家小満んの会(関内ホール)などに対して。
年間会員になった独演会の高座全般の素晴らしさや、同会のお洒落なプログラムの内容、新刊書でも如実に見受けられた卓越した文才。
総合的に、今年一人の噺家さんを選ぶなら、この人しかいない。
さぁ、マイベスト十席と特別賞各賞選びも、これにてお開き。
来年は、どんな噺家さんの名前や演目が並ぶのか、自分でも楽しみ。
一席も多く、得難い時間と空間に浸れることを、祈りたい。
長々のお付き合い、誠にありがとうございます。
でもよく覚えているなあ。
いえいえ、自分の記事を再確認して記憶を蘇らせているわけで、ブログを書いていなければ、ほとんど忘却の彼方です(^^)
さて、来年は、どんな噺家さん、どんな時間と空間に出会えることか。
世界も日本も、いろいろと気がかりなことが続きますが、落語を楽しむことができるだけでも幸せなのでしょうね。
仰る通り、落語が楽しめるのも世の中が平和で、かつ自分や家族が健康だからこそです。私も毎年年末にはその点に感謝しています。きな臭くなりつつある日本の現状ですが、来年も無事に落語が楽しめる事を願っています。
新治は、きっと、ほめ・くさんからもお褒めにあずかるのでしょう!
「大賞」を今まで決めていなかったのは、結局、自分がたくさん聴いた噺家さんや、その高座になるでしょうから、あまりに露骨に好みを押し出すことを逡巡していたのです。
しかし、自らの好みを度外視しては、こんなブログも成り立たないと開き直り(^^)設定した次第です。
やはり、好き嫌い、相性というものは、どうしてもありますからね。
とはいえ、聴かず嫌いの方などを見直す機会が少しでもあることも祈っています。
好きな噺家さんの高座での充実感も味わいたいですし、新たな出会いも含め、来年も無事落語を楽しめることを願う師走です。
喜洛庵上々さんの行らっしゃった回数には遠く及びませんが、落語を楽しむことができ、佐平次さんやI女史、M女史、Yさん、そして喜洛庵上々さん達と交流が出来た一年、幸せなのだと思います。
喜多八の快癒を願います。
来年もよろしくお願いいたします。
