しんゆり寄席 川崎市アートセンター アルテリオ小劇場 6月27日
2015年 06月 28日
ようやく野暮用の多かった時期も過ぎ、久し振りの落語会。
落語芸術協会(芸協)ホームページで見つけた、我が家から遠くない新百合ヶ丘駅近くでの、地域落語会。
芸協の噺家さん三人、そして落語協会が一人で四人が出演。
会場は、何度も行っている麻生市民館からすぐ近くで、駅から十分とかからない場所にあった。
ざま昼席落語会はよく行くが、第31回を迎える川崎の会は、初めてである。
いただいたプログラムには、「主催:川崎市アートセンター」「後援:しんゆり・芸術のまちづくり」と記載されている。
左橋と米多朗が地元川崎在住で、この二人を中心に開催されているるようだ。
全労災さんの団体のお客さんもあったようで、会場の前から同団体の係りの方に誘導されて三階に設置されたそちらのお客様専用受付に行ってしまい、「昨日電話で予約した者です」と言ったが、リストに名前がない。そりゃそうだ。
会場と同じ二階の一般の受付でチケットをもらい、しばし待って一時半に開場。自由席なので、階段状、約200席のホールの前方中央に席を確保。非常に観やすい会場だ。開演前に見ると、九割ほど席が埋まっていた。
川崎市アートセンター アルテリオ小劇場
終演後の交流会でお聞きしたら、約160名のご来場で、この会として最多とのこと。
次のような構成だった。
--------------------------
三遊亭遊松 『寄合酒』
笑福亭和光 『荒茶』
(仲入り)
初音家左橋 『棒鱈』
桂米多朗 『文七元結』
--------------------------
三遊亭遊松『寄合酒』 (16分 *14:00~)
初の前座さん。4年目らしいが、遊三が75歳でとった最後(だろうな?)の弟子とのこと。遊三一門は、三遊亭小遊三-三遊亭左遊-三遊亭遊吉-三遊亭とん馬-三遊亭遊松の五人になるわけだが、なんと、とん馬と本人の入門時期が、30年空いているとのこと。
なるほど、遊三が無理をして(?)とっただけのことはある人だ。見た目もスッキリしているし、語り口が良く、リズムも悪くない。市助が市童となって二ツ目になったので、前座さんの中では、極めて上位に位置する人だと思う。
笑福亭和光『荒茶』 (26分)
池袋で一度聴いている。あまり、良い印象ではなかったのだが、今回は地域落語会のアットホームな空気の中で、なかなか楽しい高座だった。
マクラでは鶴光一門の名前のことや、師匠から教わった小咄、 「これ炭酸か?」「ソーダ」などで、会場を沸かせていた。しきりに汗を手拭いで拭っている姿には、数年前までの白酒を思い出したなぁ。ここで、仲入り。
抽選会 (11分)
和光と遊松が登場し、開演前に集めた名前札を元にした抽選会。
・出演者の色紙
・J-COM提供のノベルティ
・出演者の手拭い
が当たった人もいるが、私のように当たらなかった人のほうが多い。当り前か。
初音家左橋『棒鱈』 (29分)
前回、抽選会用の手拭いを持って来るように出演者に連絡しておいて、自分が忘れたとのこと。7月下旬から8月にかけて出演する芝居(『ゴールデン街青春酔歌』)のことから、二ツ目の小駒時代にいくつか出たテレビ(「御宿かわせみ」や「嫁の座」など)のことが語られたが、この人、結構役者やってるんだね。
地元のお客さんを相手に、茶飲み話をしているような空気を感じる楽しいマクラから、本編へ。 江戸っ子二人の会話、仲居とのやりとりも程よく会場を笑わせる。
薩摩の侍の歌が実に楽しかった。百舌の嘴、十二ヶ月を、この高座ほど、しっかり身振り手振りをつけて聴いたことはないように思う。なるほど役者さんだ、と思った次第(^^)
酔っ払った江戸っ子が薩摩の侍に毒づいて斬られそうになると、兄貴分の寅さんが助けに入る、という演出も、私は初めてだ思うが、理屈として真っ当だ。
その芸の深さにおいて、今年のマイベスト十席候補としたい。
桂米多朗『文七元結』 (38分 *~16:13)
初めて聴く。米助の弟子で、このネタ出しがあったので、それも興味があった。
お客さんの拍手も、地元の方が多いのだろう、暖かさを感じた。左橋と同じ区に住んでいるらしい。落語家になってから、母親の父、本人のお爺さんが無声映画の弁士(活弁)だったことを親から聞かされた、とのこと。
米助に入門する前は、東八郎の劇団にいたようだが、そう言われれば、根っからの噺家さんというより、劇団員風の容貌。
前半を地で説明した短縮版で、長兵衛が佐野槌の女将から五十両を借り吾妻橋にさしかかった場面から。
文七と長兵衛のやりとりにおいて、文七が橋から飛び込もうとするのを長兵衛が止める場面をきっかけに、二人のカミ・シモを入替える工夫は、空間の広さが出て、良かったと思う。
翌朝の達磨横町での長兵衛夫婦の喧嘩など、なるほど、劇団員だった人だなぁ、と思わせるメリハリのついたやりとりで、聴かせる。
師匠米助も、寄席で漫談ではなく噺をするのを最近は聴いている。稽古は他の師匠につけてもらうことも多いだろうが、この人は今後も聴きたい、と思わせる高座だった。
終演後に会費千円で交流会があると聞いていて、参加するかどうか迷っていたが、仲入りで参加することに決めていた。
一階上で、出演者を含めた交流会は、ビールもあればワインもあり、ボランティアの方の手づくりの肴もたくさん並べられた、落語会と同様、人の暖かさを感じる懇親会だった。
噺家さんともお話し、この会を支えている方や、先輩の落語愛好家の方々とも楽しくお話をしたが、その内容は、秘密とさせていただく。
ざま昼席落語会は、もうじき200回。こちらは四年前から始まって次で32回。
同じような、地域落語会であるとはいえ、こちらは、多くの方が手弁当でこの会を守り立てようとしている真っ最中、という熱気を感じた。
また、地元の左橋、米多朗の両師匠も、この会に対し特別な思いで臨んでいる、そんな熱さを感じた会。行って良かった。
詳しくは、お会いした際にお話しますが、落語を含む芸能やジャズなどのイベントをボランティア的に支えている地元の皆さんの、肩肘はらない交流会でした。
落語会の後、気の合う仲間二十名くらいで軽い居残り会を楽しむ、という実に結構な会でした。
「棒鱈」は、2011年の師走の末広亭で、柳家さん喬の高座が印象的でしたが、左橋の高座は、決して負けていませんでした。
他の芸協の三人の方も、良かったですよ。
交流会で結構話すことができたのですが、遊松は実に好青年です。噺家らしくない、ともいえますが、今後期待できます。
結果として、地域寄席応援キャンペーンと芸協応援キャンペーンの両方ができた、そんな思いで帰ってきました。