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ざま昼席落語会 むかし家今松・橘家圓太郎 ハーモニーホール座間 5月9日

 私が住む場所から遠くない相武台前駅から歩ける会場で開催される、座間の長寿地域落語会は、この日で通算189回。
 入場の際にいただいたチラシには、「開館20周年記念落語会直前シリーズNo.3 落語通が選ぶ人気落語家セレクション」と記載されていた。
 ちなみに、この「開館20周年記念落語会」とは、7月11日に、“大ホール”で開催される「扇遊・鯉昇・喜多八三人会」(いわゆる、睦会)のことだ。
 前売りで2,000円はお手ごろな木戸銭なのだが、私はまだ都合がはっきりしないので、買っていない。
 
 約300席の会場は八割五分(細かい!)ほどの入りか。ところどころ空いた席はあるが、結構な埋まり具合。

 次のような構成だった。
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(開口一番 柳亭市助『たらちね』)
むかし家今松 『家見舞い』
橘家圓太郎  『野ざらし』
(仲入り)
橘家圓太郎  『疝気の虫』
むかし家今松 『帯久』
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柳亭市助『たらちね』 (17分 *14:00~)
 実にしっかりした高座。「楽しみは、春の桜に秋の月、夫婦揃って三度喰うメシ」なども挟み、小さん門下としても代表的な噺を見事に演じて開口一番の役割を果たした。
 入場の際にいただいた次回190回、6月13日の会のチラシに、「直前シリーズNo.4 市馬一門兄弟会」と市馬の弟子四人の会が案内されており、「祝二つ目昇進 柳亭市助改め 柳亭市童」と書かれている。
 残念ながら、落語協会のホームページが、いまだに工事中なので、いつ、どの席から二ツ目になるかは、詳しくは分からないが、実に目出度い。この人には期待している。
 6月の会には、兄弟子の市楽、市江、市弥と市童の四人で出演するようだ。これまでこの会の開口一番を伝統(?)として担ってきた市馬会長門下生の会だ。
 それにしても、あの会長さんは、お元気なのかどうか。市童の二ツ目昇進と襲名のことや、明日11日から始まる国立演芸場の真打昇進披露なども協会のホームページで案内して欲しいものだが・・・・・・。

むかし家今松『家見舞い』 (27分)
 マクラは、この人にしては珍しいと思うような時事ネタで、結構政権への批判があった。アメリカで英語で演説した某首相に対し、「あたしだって、(カンペがあれば)話せますよ」とか、帰国してゴルフ三昧であることなどの後に、あの人が首相であることこそ“災難”と切れ味鋭い。
 3月の桂文我を少し思い出すようなマクラが、実に私には爽快だった。
 そのうちアメリカに見捨てられたらどうするんですか、国と国のみならず、いろんな付き合いがあって人間関係も難しい、とつないで本編へ。
 本編も、なんとも良い感じの今松ワールドだった。兄貴分の新築祝いで仲間に遅れをとった二人。この二人の「おあしはあるのかよ」「どこでも使える?」などという会話も、何とも可笑しい。
 二人合わせても五十銭しかない。しかし、二人のうち先輩格の方が古道具屋に行けば何かあるだろう、と訪ねるあたりは、その当時は、きっと数十銭でも、何か見つかったのだろうと思わせる。
 屏風が五十円、掛け軸が三十五円、時計が十二円では、この二人の手が出るはずもないのいだが、そういった品物を断わる会話も、飽きさせない。
 先輩格が、「おい、どうだ、屏風・・・そうか、どうも屏風は気に入らねぇらしい」「掛け軸はダメらしい」「時計は、チクタクうるさいし、針が回るからダメ」などと一人で掛け合いを演じて道具屋に対応する。
 十銭で“掘り出し物”を入手し、兄貴分の家に向かう途中、甕を洗う場面がある。先輩格が、年下の甕の水を出す姿を「いいかたちだねぇ、音羽家!」とヨイショし、荒縄を丸めて洗わせる場面も、なんとも楽しい。
 『落語の鑑賞 201』(新書館、延広真治編、二村文人・中込重明著)には、八代目雷門助六の思い出話として、司馬龍生の高座での二人が甕を洗う場面がいい呼吸で、なんとも言えずおかしかった、という言葉を紹介しているが、もしかすると、その呼吸に近い味わいだったのではなかろうか、と思った。『落語鑑賞201』(新書館、延広真治編、二村文人・中込重明著)
 兄貴の家に甕を据えて井戸の水で満たした二人は、湯屋には行かず、そのままご馳走になる。湯屋に行かなかったのが時間短縮のためか、そういう今松の型なのかは分からないが、湯屋には行かなくとも不自然ではない。なぜなら、二人しか、あの甕の正体を知らないのだから、少しくらい汗をかいた程度なら、そのまま居座ってもおかしくはない。
 兄貴分にお礼にご馳走すると言われ、冷奴→古漬け(かくやのこうこ)→炊きたてのご飯、と出されて先輩格が一口食べては後輩から「それに使った水は?」と言われて気づき、「今、断っている」としてその都度箸を置き、最後は鮒と鯉(肥え)の地口のサゲへ。
 今松は、こういう噺も決して下品にならず、兄弟分の二人の会話や道具屋とのやりとりで、じわ~っと笑わせてくれる。会場には熟練の落語愛好家の方が多かったようだが、程よく笑いが起こっていた。知っているんだよね落語を、この会のお客さんは。
 三年前の二月の会における『子別れ-通し-』も良かった。そして、こういった滑稽噺にも、この人の味わいが増すような気がした。今年のマイベスト十席候補としたい。

橘家圓太郎『野ざらし』 (34分)
 マクラでは、こういう自主的(?)に集まる会が良い、無理やり連れて来られた会は、良くない、などと伝統ある地域落語会に、ちょっとしたヨイショか、あるいは最近何かあったか^^
 好きなことは一人でやるもんで、徒党を組んではダメ、などという話からマクラ全体で七分ほどふって本編へ。
 円太郎の調子の良い科白回しと、勘どころを押さえた演出を堪能した。二代目の正蔵が中国の伝わる噺を元に落語として翻案し、初代円遊が今に伝わる滑稽噺に作り替えたと言われるネタ。円遊の創作では、「野を肥す骨をかたみにすすきかな」と尾形清十郎に手向けをさせておいて、その後「四方の山々雪解けて、水かさまさる大川の上げ潮、南風(みなみ)でどぶゥリ、どぶゥリ」という科白があるので、春を秋が混在していると指摘されるが、円太郎は「四方~」を省いた。これで、春の噺ということを明らかにしたように思う。好みもあるが、これも工夫の一つだろう。
 他にも、いくつか工夫が見受けられた。八五郎が勇んで向島にやって来て、橋の上から釣り人をからかって、川岸に向かう場面、「話をする前に、嫌うんじゃない。060.gif話をしてから嫌いましょ、話をしてから嫌いましょ」と口ずさんで降りて行ったのは、妙に可笑しかった。
 八五郎が手向けた骨が年増になって夜訪ねて来るという妄想の場面も、年増がつねる「ツネツネ」「イタイイタイ」「ツネツネ」「イタイイタイ」のやりとりや、くすぐる場面「くちゅくちゅくちゅくちゅ」「くすぐった~い」なども、明るい色気があって楽しかった。
 骨が四つあって、「その中で一番いい女、コツユニバースが訪ねておいで」というのは、初めて聴いたなぁ。
 幇間新朝が八五郎宅にやって来ての流れるような科白も結構。今年のマイベスト十席候補とするのを躊躇わない高座だった。

橘家圓太郎『疝気の虫』 (23分)
 仲入り後、再登場。着物を着替えてきており、この後に今松が「一着でも重いのに、偉い」と言っていた。 
 自分が質屋の倅であったことや、近くに産婦人科の子の友達がいて今では病院を継いでいる、とマクラでふった。落語家も含め、劣性遺伝が多く、なかなか医者の若先生も難しいようで、と二代目の若先生が夢で疝気の虫と会話して虫の苦手が唐辛子を聞き、名医と言われる父親に代わって疝気の患者の家に往診に行く設定で噺を進めた。
 腰がつる痛みは、疝気の虫が「ちんとととん」の技を使うからで、腹がシクシク痛むのは、「パッパッパッ」をするからと、仕草まじりで楽しく聴かせる。
 疝気の虫が患者の女房の腹に移って、その女房が唐辛子水を飲み、「さぁ、隠れ家、隠れ家」と探しながら、圓太郎が下がって行ったのも、この噺ならではのサゲ。

むかし家今松『帯久』 (44分 *~16:38)
 昨年来た際、会場の最寄り駅である相武台前駅の裏にコンビニが二軒並んでいて、同じような品揃えなので、どちらかは無くなっているだろうと思ったら、二軒ともあった、と地元の人が頷けて、この噺にふさわしいマクラから本編へ。このあたりは、流石である。
 米朝が十八番としていた。平成14年、最後のサイケイホールでの独演会でも演じていた。だから、『米朝らくごの舞台裏』に含まれていないのが、少し残念。
 上方版では噺の中心となる二軒の呉服屋は、和泉屋与平が東横堀に沿った瓦屋町三丁目、帯屋久七が同じく二丁目。東京版では和泉屋が日本橋本町四丁目、帯久が同二丁目となる。
 和泉屋の主人は実に良い人。帯屋が三月に二十両、五月に三十両、七月に五十両、九月に七十両、そして十一月に百両借りに来ても、借用書も書かずに貸して、なおかつご馳走しているほどの人。
 最後の百両を大晦日に帯屋の主人が返しに来て、急がしさに紛れて帯屋と返金された百両を残したまま番町の客に出向いてしまって、帯屋がその百両を持って帰ったことから、ドラマが始まる。
 その後、それまで繁昌していた和泉屋に不幸が続き、帯屋は本来は帰すべき百両を元にした粗品つき販売が当たって、売上げが右肩上がりとなる。
 あくまでも落語の世界であり、作り話なのだが、あまりにも和泉屋が人が良すぎる、と思うのは、こちとらの心が汚れたからか^^
 今松は、和泉屋と帯屋とのやりとりを丁寧に演じたが、後半、立場が逆転してからの帯屋が、それほど悪い奴に見えないのは、この方の人柄か。
 サゲは、一件落着後に奉行から、還暦で“本卦がえり”か、と言われ、いえ分家にやっかいになっています、という本来のもの。
 この本卦がえりという言葉が今日では“死語”に近い。相当前になるが、三三で「身をこがして」という言葉でサゲを聴いたことがある。また、志の輔は「帯だけにきつく」でサゲている。 
 今日では伝わらないサゲを替える工夫も重要だし、あえて本来のサゲを使うことも、言葉を延命させる意味では大切だ。どちらが良いとは一概に決められないのだが、まさに本卦がえりの私としては、本来のサゲで良かった。
 長講、熱演ではあったのだが、『家見舞い』の軽妙洒脱な高座の良さがどうしても際立っていただけに、やや間延びした印象を受けた。それは、この噺の難しさでもあるかもしれない。

 芸達者二人の、それぞれ色合いの違う二席を楽しんだ。結果として、仲入り前の二席が強く印象に残ったのだが、決してもう一席が悪いのではなく、一席目が良すぎた、というのが実感だ。
 そんなことを思いながら、コンビニが駅裏に二軒並ぶ、相武台前の駅に向かっていた。
 

Commented by at 2015-05-11 06:57
今松はいまだ聴いたことがありません。寄席にはあまり出ない?
その話芸にファンがついているということは存じております。

先代馬生の弟子たちが芸を磨き、その弟子たちが今世に出てきた・・・
芸の伝承は人から人へ、ですね。

Commented by kogotokoubei at 2015-05-11 08:50
>福さんへ

今松師匠、寄席にもたまに出ますし、末広亭の師走下席夜の部主任は恒例です。

下記のホームページ「出演情報」でご確認いただき、せひお聴きください!

http://www.cd-v.net/imamatsu/

雲助入門後に前座の仕事を教えた兄弟子です。
先代馬生一門は、芸達者が揃っていますね。
Commented by saheizi-inokori at 2015-05-11 09:02
充実の高座への興奮ぶりが伝わってきます。
円熟に近い二人ですものね。
Commented by kogotokoubei at 2015-05-11 12:16
>佐平次さんへ

こういう達人同士の二人会は実に結構だと思います。
この会への二人の最初の出演は1996年9月の共演で、円太郎がまだ二ツ目あさり時代とのこと。
今松の総出演回数と円太郎が真打になってからの回数も、この日で同じ18回らしいです。
住まいの近所に、伝統ある、またお客に優しい木戸銭の落語会があるのは、恵まれたことだと思います。
Commented by kisegawa at 2015-05-12 10:04
「家見舞い」を寄席の15分でやる場合は道具屋での「屏風」や「掛け軸」などのやり取りの部分がありません。お湯屋へ行く場面はもともとなかったと思います。きっと余計なことなのでしょう(笑)「帯久」は言葉や噺の構成などは吟味し無駄なく造っているので今回の高座に限り、後半部分のテンポ設定を誤ったという印象です。こういう長い噺は運び方が本当に難しいですね。政権への批判は日立寄席の枕で毎回延々とやってます。もう今日は落語はないんじゃないかと思う頃やっと噺に入るという(笑)
Commented by kogotokoubei at 2015-05-12 12:14
>kisegawaさんへ

コメント、誠にありがとうございます。
なるほど、あの道具屋でのやりとりを割愛して縮めるんですね。
しかし、先日のような長さでこそ聴ける科白のやりとりは好きだなぁ。
ブログの記事では書き忘れましたが、「焼けた火箸を水につけたような、ジューッって音のしないものはないの」という科白、今松師匠で聴くと、なんとも結構な味があるんですよね^^
「帯久」は、最後のお白洲の場面で少し急いだような印象を受けましたが、なるほど、そうでしたか。
マクラであれだけ長い時事ネタは、末広亭や独演会ではお聞きした印象がないので、少し刺激的でした。
いずれにしても、今松師匠は得難い噺家さんだと思います。
今後も、お気軽にこちらの引っ越し先にお立ち寄りください。
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by kogotokoubei | 2015-05-10 21:40 | 寄席・落語会 | Trackback | Comments(6)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛
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