春節、中国の人たちは日本で何を買うのか、など。
2015年 02月 18日
春節ということで、中国からの観光客の話題をさまざまなメディアが取り上げている。
講談社の「現代ビジネス」のサイトに、中国の春節の旅行事情に関する記事があり、結構興味深い内容を含んでいたので、紹介したい。近藤大介というライターは、『月刊現代』副編集長、『週刊現代』副編集長などを経て、現在は講談社(北京)文化有限公司副総経理とのこと。(太字は管理人)
「現代ビジネス」サイトの該当記事
まず、中国人の海外旅行者の大幅な伸び、その人数の凄さについて。
昨年12月3日、中国国家観光局の張吉林スポークスマンが記者会見を開いて、次のように述べた。
「先月、ついに今年の海外旅行者が、初めて1億人を突破しました。中国人の生活水準の向上によって、中国人と世界各国の人々との交流は、新たな1ページを刻んだのです。『請進来』(いらっしゃいませ)から『走出去』(いってらっしゃい)への転換です。
海外旅行の統計を取り始めた1998年は、843万人でした。それが今年、10.8倍を超えて1億人に達したのです。内訳は、アジア地域が89.5%で、うち香港・マカオ・台湾が70.4%、ヨーロッパ地域が3.5%、アフリカ地域が3.0%、アメリカ地域が2.7%、太平洋諸島諸国が1.1%、その他の地域が0.2%です。
わが国の観光客が100万人以上訪問した国は、韓国、タイ、日本、アメリカ、ベトナム、それにシンガポールの計6ヵ国です。今年に入って特に激増しているのが、韓国と日本への観光旅行です」
続いて、2月9日に北京で開かれた全国旅行市場工作会議で、国家観光局の杜江副局長は、次のように述べた。
「2014年の外国人の中国への観光客数は、前年比0.27%増の2636万人。それに対して中国人の海外(香港・マカオ・台湾を含む)への旅行客数は、前年比19.49%増の1億700万人で、初めて1億人を突破した」
貿易収支を真似て中国への「In」と「Out」を比べると、1億700万人-2636万人=80,640,000となって、約8000万人、海外へ行く旅行者が海外から中国へ来る旅行者を上回っている。
さて、春節での旅行先で日本は人気が高いようだが、その理由が挙げられている。
実際、今年の春節を挟んだ前後2週間ほどは、空前の海外旅行ラッシュとなっている。今年の5大人気スポットは、日本、韓国、台湾、タイ、バリ島だそうである。
日本が5大人気観光地の一角に入ったのは、主に3つの理由がある。第一に、円安元高だ。昨年来、日本旅行は3割くらい安くなった感じがする。現在の日本旅行の目安は、1日あたり1,000元(1元≒19.1円)で、4泊5日なら5,000元(約10万円)だ。だが春節の季節は値上がりが激しく、通常時の1.5倍くらいにハネ上がっているツアーもある。
訪日中国人が増えた二つ目の理由は、日本政府が1月19日に、ビザの条件を緩和したことである。観光ビザの規定というのは、4つの官庁の合議で決める。外務省、法務省、警察庁、国土交通省(観光庁)である。このうち国土交通省が開放派で、法務省と警察庁が保守的、外務省がその中間だそうだ。だが今回は、安倍官邸の強い意向を受けて、大幅緩和となった。
具体的に個人の観光ビザに関しては、高額所得者及びその家族は初回でも5年間の数次ビザを発給し、中間層でも過去3年以内に日本への渡航歴があれば、家族も含めて数次ビザを発給するとした。多くの中国人は、一度日本へ来ると、「親日」になって帰国する。そうした層をもう一度、日本に取り込もうというのである。もちろん団体旅行であれば、もっと簡単にビザを発給する。
三番目の理由は、昨年11月の北京APECで、安倍晋三首相と習近平主席が握手したことである。習近平主席の仏頂面握手は物議を醸したが、それでも敵同士のようだった両国が、表面的にでも和解してみせたことで、中国人からすれば日本旅行に行きやすくなったのである。
一度日本に来ると、多くの中国人が親日家になって帰る、ということは、実に嬉しいことだ。
日本への旅行者の数、そして、いわゆる経済効果について、次のように書かれている。
昨年、日本を訪れた中国人観光客は240万9200人で、前年比83.3%増! 今年は300万人を突破し、台湾と韓国を抜いてトップに立つのが確実と見られている。一人あたりの平均消費額も23万円とダントツで、計5,600億円も日本に落としてくれた。これは全体の2兆305億円の約27%にあたる。
日本人の礼儀正しさ、綺麗好き、優しさ、などが親日家になる要素に入るのだろうが、よく考えると主たる旅行目的が買い物であろうから、お店の人が丁寧に優しく振る舞うのは、どこの国、都市だって共通だろうとは思う。しかし、、自国(中国)の接客態度との差は大きかろう。
日本土産の人気商品について。
また、中国新聞網の記事によれば、一昔前の日本みやげの「三種の神器」は、デジタルカメラ、炊飯器、腕時計だった。だがいまは、ステンレスボトル、化粧品、バッグに変わったという。
ステンレスボトルとは、水筒のことだ。実際に私も売り場へ行ってみて驚いたが、大量に並んだ商品は、すべて中国人の観光客向けに並べたものだった。保温専用のもの、保冷専用のもの、中にコップのついたもの、口が広いものに狭いもの、片手で開けられるもの・・・。これらが大きさ別、色別に多種多様に並んでいる。加えてボトルを入れるポーチや、中を洗う洗剤など、付属用品までズラリ取り揃えてあるのだ。
お土産の人気製品については、次のような情報もある。時事ドットコムからの引用。
時事ドットコムの該当記事
日本旅行、洗浄便座購入が人気=旧正月、519万人が海外へ−中国
【北京時事】中国国家観光局は17日、春節(旧正月)に伴う大型連休(18~24日)を前に、期間中に海外(香港・マカオを除く)旅行のため出国する国民が、前年と比べ約10%増の延べ519万人に上ると発表した。「海外旅行ブーム」が本格化する中、円安などの影響で日本旅行に人気が集まっており、中国メディアは日本で温水洗浄便座を買う中国人観光客に焦点を当てた記事を相次いで掲載している。
「中国の消費者はなぜ、日本の洗浄便座をわれ先に買おうと熱狂するのか」。15日付の中国紙・北京青年報はこう見出しを掲げる記事を掲載。除臭、洗浄、抗菌などの機能の付いた便座は電気炊飯器に続き、日本での買い物で欠かせない一品となっており、約2000元(約3万8000円)の商品が売れ筋だと紹介した。
共産党機関紙・人民日報も先に、「中国にも同じ商品があるのに、なぜ日本で便座を買うのか」と問い掛け、「彼らは国内の製品では満足を得られていない」と指摘。「コピー・偽物を取り締まり、絶えず技術革新を行えば、近い将来に中国で製造した便座にも人気が集まると信じる」として、日本に学ぶことが必要との見方を示した。
日本政府観光局によると、昨年の中国からの訪日者数は約240万人で、前年比83%増を記録した。北京の日本大使館によれば、春節前の1月の訪日ビザ発給件数は中国全土で約25万件で、昨年1月の約14万5000件を大幅に上回った。(2015/02/17-18:35)
春節での日本土産のおかげで、中国で「TOTO」や「INAX」という言葉が普及しそうだ。
しかし、ウォシュレットが売れるということは、中国で「お尻を洗いたい」という文化が浸透し始めたということで、これは、結構画期的なことだと思う。
三宅秀道著の『新しい市場のつくりかた』(東洋経済新報社、2012年発行)は、「なぜトーマス・エジソンには、ウォシュレットがつくれなかったのだろう?」という問いかけに対し、「自分のお尻を洗えないという不幸せを不幸せと思えなかったことにある。つまり、「お尻を洗うと気持ちがよいのではないか?」という問題を発明することができなかったからだ、としている。著者は、新市場の創出には4つの制約条件があると指摘する。
三宅秀道著『新しい市場のつくりかた』
湯之上隆が著書『日本型モノづくりの敗北』(文春新書、2013年発行)の中で、『新しい市場のつくりかた』を元に、制約条件と、「しあわせ創出」による新市場の創出について、次のような図をつくっている。(この図そのものは管理人作成)
湯之上隆著『日本型モノづくりの敗北』

ウォシュレットは、新たな「しあわせ創出」であり、「問題の発明」「市場の発明」であるという主張は、今後の日本の製造業にとって重要な示唆だと思う。
さて、一部の富裕層ではあろうが、中国の人も「お尻をきれいにすることが、しあわせ」と思うようになってきたのは、文化的制約を越えたということで、結構、画期的なことではなかろうか。
しかし、新しい「しあわせ」感が出来上がっても、上の図でも分かるように、他の制約条件が満たされているかどうかも、重要。特に「技術的制約」や「社会的制約」は、まだ課題がありそうだ。
だから、日本の便座は、そのまま中国で使えるのか、という疑問が湧く。
そう思っていたら、チャイナネット(「中国網」)に、次のような記事が掲載されていた。
「チャイナネット」の該当記事
日本のウォシュレット、中国での使用で注意すべきことは?
発信時間: 2015-02-17 11:23:31
日本製の炊飯器に続き、日本製のウォシュレットも流行している。日本を訪れた多くの中国人消費者の購入リストのうち、除臭・水洗・ドライ・抗菌・マッサージ機能を持つウォシュレットが「必買品」の一つになっている。中国人ツアー客がよく訪れる家電量販店では、売り切れが相次いでいるほどだ。
人々は日本製のウォシュレットを購入すると同時に、この海外製品が自国での使用に適していない可能性に注意するべきだ。北京青年報の記者の調べによると、一部の消費者は日本から持ち帰ったウォシュレットを使い始めたばかりで、水が詰まるという問題を報告している。検査の結果、水垢が吐水口を詰まらせたことが分かった。このウォシュレットには温水機能がついているが、実際には小型貯水タンク内の水を常に加熱することで温度を維持している。問題はここにある。日本の水は水質が柔らかく、加熱と冷却によって多くの水垢が発生することはない。中国の多くの地域では水質が硬く、水垢によって吐水口を詰まらせやすい。ゆえに水質が硬い地域では、このウォシュレットを5−6ヶ月使用しただけで、吐水口が故障する可能性がある。記者の調べによると、ウォシュレットには全世界のアフターサービスが存在せず、中国で故障した場合は厄介なことになる。
それから日本でウォシュレットを購入する中国人消費者は、日本の電圧が110Vで、中国は220Vであることに注意が必要だ。ウォシュレットのようにプラグを直接差し込み交流を使用する家電は、携帯電話やノートPCのような電圧範囲が広い製品ほど便利ではない。他にもこれらのウォシュレットは取り付けの際に、近くに水道や電線とコンセントが必要だ。中国の多くの家屋は建築の際にこれらの設備を取り付けておらず、わざわざ水道管や電線を引っ張ってきて取り付けても、海外で目にするほど美しくは見えない可能性がある。
せっかく買っていった洗浄便座も、そのままでは使えない可能性がある。いや、そのまま使えない可能性の方が高いのではなかろうか。
お店でも、使用するための注意事項を説明するのだろうが、中国語が話せる店員は、それほど多くはいないだろう。
もし、せっかく買った便座が家に帰って使えないために、それまで抱いていた親日の感情が、反日感情に変わらなければいいのだが。
とても「水に流して」と言って許してくれそうには思えない^^
