文楽の“鬼”の散りぎわに、「庶民の芸能」への深い愛を感じた。
2014年 06月 22日
NHK Eテレ「鬼の散りぎわ~文楽・竹本住大夫 最後の舞台~」
*NHK Eテレのサイトより
番組では、いろいろと印象的な場面や言葉があるのだが、若かりし頃に、住大夫が「雲の上の人」と語る山城少掾について稽古してきたことを紹介した後、本人の次の言葉が、思いを良く表わしていると思った。
「文楽はよろしいで 浄瑠璃ってええもんでっせ
ほんまによう出来てるわ
せやからこれ 三百年も続いてんねんな
そんだけやっぱり 先輩 亡き先輩方に感謝せないかんな
こんな結構な芸を残してもろうてるさかいね
これを後々 ずっと続けていってもらわないかん」
きっと、こういった思いを常に忘れていないのだろう、この人間国宝は。
この後に弟子竹本文字久大夫への稽古場面があるのだが、その様子に“芸を残す”ための執念を感じる。
文字久大夫は入門30年、58歳なのだが、住大夫は途中で「しっかりせい!」と一喝!
弟子への稽古の様子の後には、カルチャースクールでの素人への稽古風景、最後の教室の様子が紹介された。
驚いたのは、まったく手を抜かないこと。真剣に教え、叱る。
「もっと本読みしてこなあかん!」と一喝。
庶民に愛された芸能、三百年続いた大阪の文化、ということへの思いがあるからこそなのだろう。
その後、故団十郎や、坂田藤十郎などが登場し、歌舞伎への住大夫など文楽からの教えの重要性が語られる。
大阪での最後の舞台、国立文楽劇場の楽屋。たくさんの人が訪れるのだが、人形遣いの人間国宝で住大夫と苦労をともにしてきた吉田蓑助と手を握り合ってお互い涙する場面には・・・こちらも胸が熱くなった。
*終演後に舞台で手を取り合う竹本住大夫と吉田蓑助(NHK Eテレのサイトより)。
何も言わなくても、この二人は分かり合えるのだろう。
舞台での挨拶。
「私が去りました後、
大阪で生まれ育った文楽を
ご後援くださいますことをお願い申し上げます」
この言葉、一番聞かせたいのは、その大阪の市長である。
竹本住大夫については、『桂吉坊がきく藝』から二つの記事を書いたのでご興味のある方はご覧のほどを。
2014年5月31日のブログ
2014年6月1日のブログ
再放送は、2014年6月28日(土)午前0時00分、金曜日深夜。見逃した方は、ぜひ。 .
また、29日(日)の夜九時からは、同じEテレの「古典芸能への招待」で、国立文楽劇場の最後の公演「菅原伝授手習鑑」の放送がある。これは観なきゃ。NHKサイトの該当ページ